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5章 嫁取りの宴

38.責任のとりかた *

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 今は使われていない離宮は、かつて魔王の嫁たちが住んでいた場所だ。だが、5人の嫁たちは既に亡くなったか故郷に帰っているため離宮には誰もいない。
 埃っぽさがあるが、たまに手入れされている様子のある一室に、ラシャは監禁されていた。

「どこ、が、保護、なん、だっ!」

 まだ痺れ薬の影響で息苦しいラシャだが、なんとか抗議しようと手を持ち上げた。
 その両手には鎖がついた手枷がはめられ、部屋から逃げ出せないように拘束されていた。
 ブレーズは部屋の確認をするように、あちこちの棚を漁っていた。

「何を考えているか分からん輩どものいる城に、おまえを置いておけない。ここならおまえを隔離できるから安全だろう。明日には俺の手の者を配置して住み心地良く整えてやる」
「なん、で! 手枷、を、するんだ!」

 ラシャがジャラジャラ鎖を振ると、近くに来たブレーズに煩わしそうな顔で鎖をつかまれた。

「おまえは勝手に城に帰ろうとするだろ。俺を信用していないからな」

 わかっているなら、信用される行動を取れ、とラシャは言いたい。
 ただ、こんな状況でブレーズと口論などしていられない。

「フェル……を、よんで」
「フェルディナンに、……あとはペットか?」

 ブレーズの手がラシャの剥き出しの胸に散る赤い跡を擦る。

「飼い主に噛み付く狂犬なんぞ、1番厄介だ。そいつを始末するまでは危なくて返せない」
「やめろ……っ!」

 ラシャはブレーズと睨み合った。
 だが、ラシャはその気迫もすぐに力つき、浅い息をしながらベッドにくずれおちた。
 そのラシャの前髪を、優しい手つきでブレーズがかきあげた。監禁しておいて、何故か優しい手つきで触れてくるブレーズの様子がラシャは理解できない。

「まだ、痺れ薬が残っているな。一晩寝たら薬は抜けるか」

 間近でラシャを見つめるブレーズの目にはいつもの激情がない。静かで甘さすらある。
 そのブレーズがラシャの頬を撫でながらラシャを抱える。
 そのまま唇が合わさった。

「ッ!!」

 驚いて抵抗しようとするが、ブレーズとの力の差ではピクリとも頭を動かせなかった。

「ンッ!ゥンッ!!」

 口に親指を入れられ、無理やり口を開かされた。ブレーズの舌が潜りこんできて、ラシャのものに絡みついた。
 唾液が絡まり湿った音をたてながら、ブレーズに口内をあさられた。
 舌を引っ張り出され、先を吸われると体から力が抜ける。
 快感ではない。精気を吸われたからだ。

「ン……は……」

 痺れ薬で力の入りにくかった体から精気が抜けて、ますます力がなくなる。
 ラシャは精気を作れない体質だ。だから自分より弱い生き物から精気を奪って生きている。それは花だったりレオンだった。
 だが、逆に自分より強いものと粘膜接触するとどうなるか。逆に吸い取られてしまう。
 生きるための最低限の精気だけ残して、ブレーズに吸い取られてしまった。

「ンァ…………はぁ……は」

 ブレーズがようやくキスをやめた。ラシャはもう歩き回るほどの精気すら残っていなかった。逃げられないようにラシャは精気を吸われたんだと気づいた。

「死なない程度に精気は補給してやる。朝摘みの花を持って来させよう」
「…………ッ」

 完全に上から目線で好き勝手しようとしているブレーズに、ラシャは悔しい思いを抱いた。だが、だからといって精気の補給を断ることはできない。
 体が動けば、向こう見ずにもブレーズに殴りかかっていたかもしれない。でもやはり体は動かせなかった。
 ブレーズがベッドに乗った振動で軋む音が響いた。

「ラシャ」

 ブレーズが覆いかぶさるようにラシャの上に乗った。その目が甘く潤んでみえる。

「おまえの精気は甘くて美味いな」

 ブレーズの手がラシャの肩を抑える。そのまま、ラシャの肩にある歯形を上から消そうとするように強く噛んだ。その痛みにラシャは目を閉じて耐える。
 ラシャから滲んだ血がついた唇をペロリと舐めるブレーズの目には情欲が浮かんでいる。
 ブレーズがラシャの太ももに腰を押し付けた。そこには固いものがあるのを感じた。

「おまえの精気を吸うと、血を舐めると、気持ち良くなる。……これが催淫か?」

 ブレーズが恥ずかしげもなく、腰布を外し、大きく立ち上がったグロテスクなものをラシャに見せた。

「おまえの精気を吸うと、体が熱くなって、これが大きくなってしまった。おまえに責任を取ってもらうか」

 ラシャの手を掴んだブレーズは、ラシャの手に自分のものを握らせると、その上からブレーズの手で覆い、離せないようにしながら抜きはじめる。

「はっ……は……」

 ラシャに覆いかぶさったまま、ラシャの手を使って強制的に自慰行為に巻きこんだブレーズは、しばらくラシャの手を楽しんでから熱いものをラシャの顔に飛ばした。

「ンッ!……はぁ……はぁ……いいぞ」

 汚れたラシャの顔を恍惚として見下ろすブレーズに、ラシャは精一杯の蔑んだ目を向けた。
 ブレーズは自身の力をなくしたものをまた腰布で覆うと、ラシャの上から降りた。
 汚したラシャの顔を拭うと、またキスを落とす。今度は精気もほとんど抜けない軽いものだった。

「また朝にくる。それまで寝ていろ」

 ブレーズの指が眉間にあたり、意識が朦朧としてきた。
 ラシャはそのまま意識を失った。
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