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3章 王子の仕事
17.【消毒】(1)*
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しばらく呆然としていたラシャだが、慌てて後を追うように宿屋に戻った。
宿屋の玄関に入ると、ちょうど看板娘のビビと出くわした。
顔を青くしていたビビはラシャを見ると途端に安堵した。どうやら食堂でのことを聞きつけて心配して見に来てくれたようだ。
「よかったわ、ラシャ! さっきのやつに何かされたんじゃないかと思って……大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。ただあのおっさんが食堂の裏で伸びてるんだ。邪魔だよね、ごめん」
「いいよいいよ! 今の季節、ほっといても死なないわよ」
カラカラと笑ったビビに少し安堵し、ラシャは宿の階段を駆け上がった。
なんとなくフォローしなければならない気持ちでラシャは慌ててレオンの後を追いかけたが、これまたなんとなく扉を開けるのが怖い。
心を落ち着けて扉を開くと、レオンはこちらを背にして窓から外を見ているようだった。
「レオン」
呼びかけながらゆっくり近づき、窓を向いているレオンの顔を覗きこむ。
それでもレオンはラシャを見ずに、怒っているような悲しんでいるような顔で窓の向こうを睨んでいる。
「なぁレオン……何か怒ってるんだろ? でも何で?」
ラシャにとってはおっさんとのキスなど何てことない。魔法使いが魔法で攻撃する、剣士が剣で攻撃するのと同じようなものだ。
ラシャは人間相手でも腕力では勝てないし、魔法を使うにしても精気が減ってしまったり手間取ったりとリスクがある。それで言えば油断した人間に、軽くお灸を据えるには良い方法だと思った。
もちろん、レオンとのキスは別だ。それは精気の安定的補給に必要だし、毎回気持ちよく貰いたいと思っている。だから好みの人間で精気を美味しく感じるレオンを選んだ。
でも、まさかあの行為にレオンがこれほど怒るとは……。
「やっぱり、おっさんとキスしたのがダメだったかな……。レオンからしたら、あんなおっさんと間接キスすることになるし、嫌だよな」
動かないレオンに言い訳するのも何だか辛い……。ラシャは少しやり方を間違ったかも、と反省しながら俯いた。
「……俺、今日はソファで寝るから――」
レオンが不意にため息をついた。
グッと頭を掴まれてレオンを見上げると乱暴にキスされた。
「んッ!」
口内を荒々しく掻き回す舌は、あの欲情に翻弄された満月の夜を思い出すもので、ラシャの顔は熱くなった。
「ぁ…ふ」
レオンの唇が離れると、そのままソッとラシャの耳に押し付けられた。
『ク、チ、ナ、オ、シ』
聞こえた吐息に驚いてレオンを見る。
「レオン!声が……?! いや……声は出てないのか?」
レオンの声は出ないが、吐息で絞り出すように言葉を伝えようとしているらしい。でもやはり呪印の影響があるのか、普通に喋るようには行かないようだ。
掠れた吐息は途切れて聞き取りづらい。
だが、レオンはそれでもラシャの耳に吐息を漏らす。
『……ショー、ド、ク』
レオンからもう一度深くキスされて、ラシャは気持ちよさで体の力が抜ける。その腰を抱き上げられ、そのままベッドに押し倒された。
「レオン!?」
『ゼ、ン、ブ、ショー、ド、ク』
あの満月以降、レオンとキス以上の接触はなかった。それはお互いに必要がなかったからだけど……。
レオンに首筋を舐め上げられて、ラシャはあの夜を思い出し、背がゾクゾクと震えた。
「れ……おん……」
レオンはラシャの手を握ると、見せつけるように指をゆっくり舐める。指を一本ずつ舐め、指の間をくすぐるように舐められ、また少しゾクリとした。
「手……汚いかな」
『おっ、さ、ん。さ、わっ、た』
もうそれほど怒っている様子はなかったが、手を舐めながら暗く沈んだ緑の目で流し見られると、そわそわする。
少しレオンの目に欲情があるように見える。でも、消毒と言われているのに拒否はしにくい。
チュッチュと音を立てながら軽くキスされているとムズムズするし、舌が掌をツーッと動いて甘噛みするのでくすぐったい。ラシャはくすぐったいのを堪えた。
その堪えてうつむいたラシャのうなじをレオンのもう片方の手がなぞった。
「はわッ!」
指で上下になぞられながら、今度は耳の下をまた舐められて、ラシャはビクンと震えた。
「ね、ねぇ……そこ、触られたかな?」
レオンが悪戯っぽく笑っている。
その表情からは、我慢しているラシャを更にくすぐってからかっているように見える。
レオンの手が服の上から乳首をつまんだ。
「ひゃ!……ァン」
服の上からクリクリとこねられ、またゾクゾクとして身をよじる。
「そこ……!絶対に触らせてない……ッ」
『か、く、に、ん』
ラシャはシャツの前を開かれて、レオンに素肌を直接舐められた。
宿屋の玄関に入ると、ちょうど看板娘のビビと出くわした。
顔を青くしていたビビはラシャを見ると途端に安堵した。どうやら食堂でのことを聞きつけて心配して見に来てくれたようだ。
「よかったわ、ラシャ! さっきのやつに何かされたんじゃないかと思って……大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。ただあのおっさんが食堂の裏で伸びてるんだ。邪魔だよね、ごめん」
「いいよいいよ! 今の季節、ほっといても死なないわよ」
カラカラと笑ったビビに少し安堵し、ラシャは宿の階段を駆け上がった。
なんとなくフォローしなければならない気持ちでラシャは慌ててレオンの後を追いかけたが、これまたなんとなく扉を開けるのが怖い。
心を落ち着けて扉を開くと、レオンはこちらを背にして窓から外を見ているようだった。
「レオン」
呼びかけながらゆっくり近づき、窓を向いているレオンの顔を覗きこむ。
それでもレオンはラシャを見ずに、怒っているような悲しんでいるような顔で窓の向こうを睨んでいる。
「なぁレオン……何か怒ってるんだろ? でも何で?」
ラシャにとってはおっさんとのキスなど何てことない。魔法使いが魔法で攻撃する、剣士が剣で攻撃するのと同じようなものだ。
ラシャは人間相手でも腕力では勝てないし、魔法を使うにしても精気が減ってしまったり手間取ったりとリスクがある。それで言えば油断した人間に、軽くお灸を据えるには良い方法だと思った。
もちろん、レオンとのキスは別だ。それは精気の安定的補給に必要だし、毎回気持ちよく貰いたいと思っている。だから好みの人間で精気を美味しく感じるレオンを選んだ。
でも、まさかあの行為にレオンがこれほど怒るとは……。
「やっぱり、おっさんとキスしたのがダメだったかな……。レオンからしたら、あんなおっさんと間接キスすることになるし、嫌だよな」
動かないレオンに言い訳するのも何だか辛い……。ラシャは少しやり方を間違ったかも、と反省しながら俯いた。
「……俺、今日はソファで寝るから――」
レオンが不意にため息をついた。
グッと頭を掴まれてレオンを見上げると乱暴にキスされた。
「んッ!」
口内を荒々しく掻き回す舌は、あの欲情に翻弄された満月の夜を思い出すもので、ラシャの顔は熱くなった。
「ぁ…ふ」
レオンの唇が離れると、そのままソッとラシャの耳に押し付けられた。
『ク、チ、ナ、オ、シ』
聞こえた吐息に驚いてレオンを見る。
「レオン!声が……?! いや……声は出てないのか?」
レオンの声は出ないが、吐息で絞り出すように言葉を伝えようとしているらしい。でもやはり呪印の影響があるのか、普通に喋るようには行かないようだ。
掠れた吐息は途切れて聞き取りづらい。
だが、レオンはそれでもラシャの耳に吐息を漏らす。
『……ショー、ド、ク』
レオンからもう一度深くキスされて、ラシャは気持ちよさで体の力が抜ける。その腰を抱き上げられ、そのままベッドに押し倒された。
「レオン!?」
『ゼ、ン、ブ、ショー、ド、ク』
あの満月以降、レオンとキス以上の接触はなかった。それはお互いに必要がなかったからだけど……。
レオンに首筋を舐め上げられて、ラシャはあの夜を思い出し、背がゾクゾクと震えた。
「れ……おん……」
レオンはラシャの手を握ると、見せつけるように指をゆっくり舐める。指を一本ずつ舐め、指の間をくすぐるように舐められ、また少しゾクリとした。
「手……汚いかな」
『おっ、さ、ん。さ、わっ、た』
もうそれほど怒っている様子はなかったが、手を舐めながら暗く沈んだ緑の目で流し見られると、そわそわする。
少しレオンの目に欲情があるように見える。でも、消毒と言われているのに拒否はしにくい。
チュッチュと音を立てながら軽くキスされているとムズムズするし、舌が掌をツーッと動いて甘噛みするのでくすぐったい。ラシャはくすぐったいのを堪えた。
その堪えてうつむいたラシャのうなじをレオンのもう片方の手がなぞった。
「はわッ!」
指で上下になぞられながら、今度は耳の下をまた舐められて、ラシャはビクンと震えた。
「ね、ねぇ……そこ、触られたかな?」
レオンが悪戯っぽく笑っている。
その表情からは、我慢しているラシャを更にくすぐってからかっているように見える。
レオンの手が服の上から乳首をつまんだ。
「ひゃ!……ァン」
服の上からクリクリとこねられ、またゾクゾクとして身をよじる。
「そこ……!絶対に触らせてない……ッ」
『か、く、に、ん』
ラシャはシャツの前を開かれて、レオンに素肌を直接舐められた。
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