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2章 王子とペット

12.ペットの悪夢

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 ラシャは魔王城に戻ってからレオンと同じベッドで寝ている。それは満月の夜以降も変わらない。
 ただ、あの日以降、あまりレオンと目が合わなくなり、それが少し寂しい。でも嫌われているというより、赤くなって目をそらすところを見ると照れているだけかもしれない。

 毎晩、レオンの横でふわふわの金髪を撫でながら寝るのが日課になっている。ただ、警戒しているらしいレオンは、朝になるとベッドの端で落ちそうになりながら寝ているが……。
 ただ、添い寝当初は朝に目が覚めるとソファに移動していたレオンが、今はギリギリ同じベッドに残っている。それは、あの満月の一夜があってからだ。
 フェルディナンの迷惑なお節介だと思ったが、そのおかげで前より心の距離が近づいたのかもしれない。

 だがある日、レオンは深夜にうなされていた。

「ゥ……ッ…………」
「レオン、大丈夫か?」

 そのレオンのうなり声で目が覚めたラシャは、レオンの体を揺する。
 真っ青になりながらレオンが飛び起きた。額には脂汗がにじんで、呼吸を荒くし、目を恐怖に見開いていた。

「悪い夢をみたんだな」

 レオンとの出会いは『隷属の首輪』に絞め殺されそうな場面だった。何より奴隷という境遇だ。怖い思いもたくさんしてきたのだろう。
 それでも、ラシャに気づいたレオンが少しホッとしたように肩の力を抜いたのは、気を許されているようで嬉しい。

「おいで」

 ラシャは座ったままのレオンを呼び、再びラシャの側で寝かしつける。

「アレクシスに読んでいた絵本に書いてあったんだけど、悪夢は悪い精霊の悪戯なんだ。精霊は耳から悪夢を囁いてくる。だから精霊に悪戯されないよう耳を塞いであげよう」

 レオンの片耳を胸に押し当てるように添い寝する。もう片方の耳は片手でレオンの髪を撫でながら軽く押さえた。
 柔らかな髪はずっと触っていたくなるほど心地よく、ラシャの胸をくすぐる。

「俺が守るから、安心しておやすみ」

 レオンの頭を抱えるようにして目を閉じる。腕の中で、レオンの緊張が徐々に抜けていくのがわかった。しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。
 これはただのおまじないで、レオンの悪夢を払う効果はわからない。でも、腕の中で安心しているペットを見ると幸せを感じる。
 ラシャもレオンの寝息に誘われるまま寝ていた。

 その夜以降、朝起きるとレオンがラシャの胸にひっついていることが増えた。
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