13 / 54
2章 王子とペット
12.ペットの悪夢
しおりを挟む
ラシャは魔王城に戻ってからレオンと同じベッドで寝ている。それは満月の夜以降も変わらない。
ただ、あの日以降、あまりレオンと目が合わなくなり、それが少し寂しい。でも嫌われているというより、赤くなって目をそらすところを見ると照れているだけかもしれない。
毎晩、レオンの横でふわふわの金髪を撫でながら寝るのが日課になっている。ただ、警戒しているらしいレオンは、朝になるとベッドの端で落ちそうになりながら寝ているが……。
ただ、添い寝当初は朝に目が覚めるとソファに移動していたレオンが、今はギリギリ同じベッドに残っている。それは、あの満月の一夜があってからだ。
フェルディナンの迷惑なお節介だと思ったが、そのおかげで前より心の距離が近づいたのかもしれない。
だがある日、レオンは深夜にうなされていた。
「ゥ……ッ…………」
「レオン、大丈夫か?」
そのレオンのうなり声で目が覚めたラシャは、レオンの体を揺する。
真っ青になりながらレオンが飛び起きた。額には脂汗がにじんで、呼吸を荒くし、目を恐怖に見開いていた。
「悪い夢をみたんだな」
レオンとの出会いは『隷属の首輪』に絞め殺されそうな場面だった。何より奴隷という境遇だ。怖い思いもたくさんしてきたのだろう。
それでも、ラシャに気づいたレオンが少しホッとしたように肩の力を抜いたのは、気を許されているようで嬉しい。
「おいで」
ラシャは座ったままのレオンを呼び、再びラシャの側で寝かしつける。
「アレクシスに読んでいた絵本に書いてあったんだけど、悪夢は悪い精霊の悪戯なんだ。精霊は耳から悪夢を囁いてくる。だから精霊に悪戯されないよう耳を塞いであげよう」
レオンの片耳を胸に押し当てるように添い寝する。もう片方の耳は片手でレオンの髪を撫でながら軽く押さえた。
柔らかな髪はずっと触っていたくなるほど心地よく、ラシャの胸をくすぐる。
「俺が守るから、安心しておやすみ」
レオンの頭を抱えるようにして目を閉じる。腕の中で、レオンの緊張が徐々に抜けていくのがわかった。しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。
これはただのおまじないで、レオンの悪夢を払う効果はわからない。でも、腕の中で安心しているペットを見ると幸せを感じる。
ラシャもレオンの寝息に誘われるまま寝ていた。
その夜以降、朝起きるとレオンがラシャの胸にひっついていることが増えた。
ただ、あの日以降、あまりレオンと目が合わなくなり、それが少し寂しい。でも嫌われているというより、赤くなって目をそらすところを見ると照れているだけかもしれない。
毎晩、レオンの横でふわふわの金髪を撫でながら寝るのが日課になっている。ただ、警戒しているらしいレオンは、朝になるとベッドの端で落ちそうになりながら寝ているが……。
ただ、添い寝当初は朝に目が覚めるとソファに移動していたレオンが、今はギリギリ同じベッドに残っている。それは、あの満月の一夜があってからだ。
フェルディナンの迷惑なお節介だと思ったが、そのおかげで前より心の距離が近づいたのかもしれない。
だがある日、レオンは深夜にうなされていた。
「ゥ……ッ…………」
「レオン、大丈夫か?」
そのレオンのうなり声で目が覚めたラシャは、レオンの体を揺する。
真っ青になりながらレオンが飛び起きた。額には脂汗がにじんで、呼吸を荒くし、目を恐怖に見開いていた。
「悪い夢をみたんだな」
レオンとの出会いは『隷属の首輪』に絞め殺されそうな場面だった。何より奴隷という境遇だ。怖い思いもたくさんしてきたのだろう。
それでも、ラシャに気づいたレオンが少しホッとしたように肩の力を抜いたのは、気を許されているようで嬉しい。
「おいで」
ラシャは座ったままのレオンを呼び、再びラシャの側で寝かしつける。
「アレクシスに読んでいた絵本に書いてあったんだけど、悪夢は悪い精霊の悪戯なんだ。精霊は耳から悪夢を囁いてくる。だから精霊に悪戯されないよう耳を塞いであげよう」
レオンの片耳を胸に押し当てるように添い寝する。もう片方の耳は片手でレオンの髪を撫でながら軽く押さえた。
柔らかな髪はずっと触っていたくなるほど心地よく、ラシャの胸をくすぐる。
「俺が守るから、安心しておやすみ」
レオンの頭を抱えるようにして目を閉じる。腕の中で、レオンの緊張が徐々に抜けていくのがわかった。しばらくすると静かな寝息が聞こえてきた。
これはただのおまじないで、レオンの悪夢を払う効果はわからない。でも、腕の中で安心しているペットを見ると幸せを感じる。
ラシャもレオンの寝息に誘われるまま寝ていた。
その夜以降、朝起きるとレオンがラシャの胸にひっついていることが増えた。
0
お気に入りに追加
421
あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜
・話の流れが遅い
・作者が話の進行悩み過ぎてる

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる