【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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10章 崩壊と再生(最終章)

65.拷問の鉄球つきネックレスより重い

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 ベッドに並んで寝転んでいると、ウォーレンが手を握り、何度も指にキスをしてくる。

「くすぐったいな」
「そうか? 不思議でな。舞台の上でダンスの動きを見せる時は華奢に見えるのに、こうしてみると無骨な手だから」

 これでも騎士だからなぁ。がっしりして節張っているし、豆が潰れて硬くなった手だ。

「実は……プレゼントがあるんだが、ランスは受け取ってくれるだろうか」
「おう! 食べ物でも花でもアクセサリーでも何でもこいよ!」
「かなり重たいものなんだが」
「重たい? ダンベルか?」
「あなたにかかる新しい鎖になるかもしれない」
「……拷問の鉄球つきネックレス?」

 ウォーレンがクスッと笑った。

「ランス、笑わせるのはやめてくれ。わかっているんだろう?」

 顔が熱くなる。まさか、そんなはずはないと思うから、からかってしまう。
 こんな覆面をした男相手にする話のはずがない。
 でもウォーレンの浮かべる笑顔をみたら……とろけるような笑顔をみたら……つまり…………?

「指輪を作ったんだ。この無骨な指に合うサイズの指輪を。あと借金は私が肩代わりできるよう店長経由で話をつけてある」
「………………ッ! それって……」
「あなたが前に言っていただろう? 私が借金を肩代わりするなら、あなたを身請けできると。ランス、私の嫁になってくれるんだよな?」

 ウォーレンが俺の手を握り、薬指にキスしてくる。そのキスに指先が痺れる。心臓が痛いほど苦しい。

「なんでだよ……付き合うとか飛び越してんじゃん」
「手順が必要か? あなたは羽のように軽いから、早めに嫁という鎖をかけて私に繋いでおきたいんだが」
「おもっ……!」
「あぁ、だから重たい私の感情まで受け取る覚悟があるか、と聞いている」

 そうは言うけど、ウォーレンと繋がった手はしっかりと握られて離れない。
 こんなの……逃げられないだろ。
 今夜のウォーレンがやけに執着心てんこ盛りで迫ってくると思ったら、まさかこういう展開とはね……。

「あんた、覆面をしたままの男によくプロポーズできるな」
「何を言っている、ランス。私は――――――」

 激しい衝撃音と共に店が揺れた。

「なんだ?!」

 一度では終わらず2度目の衝撃で天井から埃が落ちる。
 まさか建物が崩れるんじゃないだろうな?!

 ウォーレンを机の下に押し込みしばらく様子を見る。幸いにも3度目の衝撃はこない。たまにミシッ……と軋む音が不吉だけど、すぐに崩落するというほどではなさそうだ。
 一体何が起こったんだ?

 衝撃音の後、階下から悲鳴や騒がしい物音が響いているから何かが起こっているのは確実だった。
 さっきの衝撃だけで終わるのか、それとも――
 階下が見渡せるバルコニーに駆け寄ってカーテンを乱暴に引き開けた。

 悲鳴が上がっている。
 バルコニー下は大惨事だった。
 店の正面側に大穴が開き、もうもうと煙が立ち込めている。破壊された石材がホールに散らばり、数人の怪我人がもがいている姿が見える。
 そこに、この店には似つかわしくない武装した男達がいて、武器を構えて威嚇している。

「なにが……?!」
「下はどうなっている?」

 机の下から出たウォーレンが険しい顔で後ろに立っていた。

「店に外からの大穴が開いて、武器を持つ男が10人ほどでホールを制圧しようとしている。荒事対策に店にも武器はあるはずだけど……、いや、俺も下に加勢にいく。ウォーレンはここで身の安全を確保していてくれ!」

 頷くウォーレンを確認して部屋の扉へ向き直る。

 突然、激しく扉が開いた。
 ギラリと光る剣の不穏さに、咄嗟にウォーレンの前に出てその身を庇う。
 ただ、今の俺は武器も持たない半裸男だから、心許なさは半端ない。

「なーるほど、下の男たちだけじゃないわけか」
「憶測だが、私が狙いではないか?」
「下の制圧もそこそこに、わざわざ2階のこの部屋へこの人数か。……たしかに、あんた目当ての可能性が高いな」

 人のプロポーズを邪魔してくれちゃって、覚悟しとけよ!
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