【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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10章 崩壊と再生(最終章)

62.恋バナの切り出し方は下手なほう

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 神官長による参考人としての発言が公的に記され、汚職事件は粛々と処理された。
 大聖堂ではバシリオ神官とその下で働いていた神官見習いが捕縛され、証拠品の押収がされた。
 王宮でもバシリオとつながりのある者が捕縛され、王宮の勢力図が少し書き換えられた。

 また、俺の夜の勤め先であるショーパブについても、オーナーへ取り調べの手が及んだらしいが、そちらはいつの間にか姿を眩ませていたらしい。
 おかげで雇われ店長のジェイは突然のオーナー出奔にしばらくバタバタと駆け回っていた。

 ただ、ウォーレンの実家であるクロフォード家に捜査の手が及んだという話は聞かなかった。おそらくウォーレンの義弟が汚職事件に関わっていたことについては闇に葬られんだろう。

 一連の事件が終わり、俺はようやく一息ついた。
 俺の職務違反については神官長の護衛の任務についていたということになり不問となった。ただ、上司にも誰にも伝えず行動したことで、命令系統に混乱を招いたとされ、しばらくの減給処分を受けたのは少し痛い。

 まぁ、これでもう神官長の夜の仕事も終わりだ。
 ショーパブにも……来ないんだろうな。



「ってなんでまだ来てんだ?!」
「おまえのデカい財布だろ? 大事にしろよ」

 ショーパブ店長のジェイにウォーレンの来店を伝えられて、椅子から転げ落ちそうになるほど驚いた。

 いやいやいや、でもあの人もうこの店に用はないはずだけど?!
 まてよ? クラレンスとして来店した時に「息抜きできる店」みたいなことを言ってたな。息抜きだけじゃなくてチンコも抜いてるんだけど。
 つまり仕事抜きで来たってことか?
 ドクドクうるさい心臓がようやく落ち着いて来た。

 少し……ほんの少し、俺に会いに来たのかな~とは思ったりして。キャストと客以上の気持ちで。でもそれは……期待しすぎだよな。
 もしそうだとしても、ランスが覆面をしている限り、キャストと客以上の関係にはなれないんだけど。

「今日はホール席からショーを見たいんだとさ。VIPルームも空いてるからご要望があれば黒服に言ってくれ」
「うぃ~」
「こら、気ぃ抜けてんじゃねぇ!」

 ジェイは俺の頭を叩いて楽屋を出ていった。でもやたら上機嫌にニヤニヤしていた。
 ウォーレンの来店が久しぶりだったからかな。

 じわっと汗の滲む手を拭う。
 壁際に寄ってホールの見渡せる小窓から向こう側を覗いた。
 ホールには昔の記憶と同じように、パッと見ただけで目を引くボックス席があった。

 薄暗い店内照明をものともせずに色白の相貌が輝いている。静謐な表情と色の白さが相まって石膏像のようだ。その顔が俺を見ると人間に戻って親しみやすく崩れることを知っている。

 華やかな金髪は近づくとシラキスの香りを放って俺を惹きつける。
 服の上からでも鍛えているのがわかる体は、脱いだらそそるし傷の多さに驚く。
 長い足は強靭に俺を支えて快感に導く。

 そして正真正銘に神の恩恵を受けている後光の差すイケメンだ。
 あ~~~全部すき。
 でもそのイケメンにきっぱりふられた俺。なのに俺に会いにくるイケメン。ジレンマがすぎるぅ!

「おいランス? 大丈夫か? さっきから窓に張り付いて固まってさぁ」

 リックが目の前でヒラヒラ手を振っていた。またしばらく意識が飛んでいたらしい。

「いやほら、ウォーレンが……」
「久しぶりに来たから嬉しいんだ? でも初めからVIPルームじゃないって珍しいなぁ。なんでホール席なんだろ」
「それは………………き、気分転換かな」

 そうだ思い出した。前に、内偵調査が終わったらホール席から直近でダンスする俺を見ろよって言ったことがあるからだ。
 思い出すと恥ずかしすぎる。律儀に約束を守ってくれたウォーレンに応えたいけど、失態を犯しそうだ。

「……なぁ、ショーの途中でチンコ立ったらどうしてる?」

 リックに無言で殴られた。恋バナってどうやって切り出したらいいか分からん!

「んなこという暇があったらトイレで抜いてこい!」

 マジでその方がいいのかも。
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