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8章 飲み会とアフター
49.お姐さんの攻撃 1000HPダメージ
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ユルゲン爺さんの仲間は筋骨隆々の剣士な顎髭おやじと、妖艶な弓使いの年増美女、四角いエラの張った顔をした武闘家の青年、冷めた顔をした白魔法士の若い女の子だった。
俺のオススメの居酒屋で、俺は酒の肴としてメンバーに紹介された。
ノリも良く、俺がウォーレンの部下だと知ると、ウォーレンを知ってるメンバーが食いついてくれた。若い女の子以外はみんな一時期ウォーレンとパーティーを組んでいたらしい。
「へぇ~、あんたウォーレンの部下なの。聖堂騎士ってツラじゃないけどねぇ」
妖艶なお姐さんに肩を撫でられた。これくらいの年上ならまだ全然イケるわ。
「ははは、実は最近左遷されて男ばかりの大聖堂に飛ばされたクチで」
「前はどこにいたか当てようか。王宮騎士ね」
「よくわかりましたね!」
「ツラがいい男はだいたい王宮に集められるからねぇ。そして詰めの甘いあんたみたいなのが弾かれるのよ」
「ははは……胸を抉らないでください……泣いちゃいますよ」
「よーしよしよし」
それ、犬を宥める掛け声じゃん! でもギュッと胸に抱き寄せられるのは嫌いじゃない。
妖艶なお姐さんの隣に座る四角い顔の兄さんは炙った肉しか乗ってない丼をかきこんでいる。武闘家の筋肉を作るのは肉! って言ってた。
「爺さんが一緒に飯食うとか言い出すからどんな奴かと思ったわ。なるほど~爺さんと気が合いそうだわ」
言いたいことはわかる。この爺さんもチャランポラン系だよな。
「こんな部下を持って苦労してるだろうな。振り回されてるウォーレンを見てみたいもんだわ」
イカツイ顎髭オヤジはグイグイ飲んでるけど頰を赤く染めているから、ザルというわけではなさそうだ。
「ウォーレンが神官長かぁ。らしいっちゃらしいな」
すでにほろ酔いの口調になっている。酒には弱そうだけど、パーティーのリーダーらしい。
「前から神官って雰囲気のまま冒険者をしていたからな。清廉潔白でさぁ、近寄り難い雰囲気があって、でも万人に慈悲深いってぇのか。大聖堂に戻るって聞いた時も、その日が来たか~くらいのもんだったしな」
割り切ったセリフに似合わないしんみりした顔をしている。もう酔ったか?
白魔法士の女の子はチラッとみんなを見ながら、カクテルをストローで吸っている。
かなりの度数のカクテルを冷たい表情を変えずに吸いまくっているところをみると、1番のザルはこの娘かもしれない。
俺に興味がないのか、無口なだけか、会ってからまだ一度も声を聞いていない。
まぁ神官長の後任で入ったメンバーらしいから、神官長繋がりの俺と話すこともないんだろうけど。
「ユルゲン爺さんと神官長ってどういう関係なんですか? 神官と冒険者ってあんまり接点ないと思うんですけど」
「昔な、教師の真似事みたいなことをしていた時の教え子じゃ。その時はまだあの子も神官になる前だったかの。ワシは教師としては首を切られたもんで、刺激の多そうな冒険者に転職した。でも、あいつのことは色々心配で、たまに顔を見にいっとったんじゃ」
「その時に冒険者になるように唆したわけだ」
「ひひひ、思春期の悩み多き青年に悪いことを吹き込んで道を踏み外させるのがワシの趣味なんじゃ~、って全部ワシのせいか?! 一応、選んだのはあの子じゃぞ?」
神官長の実家は複雑だ。
実父が義母と結婚して、子供が生まれた途端に義母に家を追い出された。幼い頃から聖堂で神官見習いをしていても、完全に実家と縁が切れることはなく、かなり悩んだことだろう。
真面目な神官長が道を踏み外すように――いや、実家の敷いたレールから外れるような行動を取れたキッカケはユルゲン爺さんだろう。
あとは冒険者になって消えてくれと願う義母の影か。想像したら反吐が出るけど。
今も実家の影響を受けている神官長だけど、それでも操り人形じゃなく、自分の信念を持って行動しているようにみえる。
それは冒険者になった経験からだろう。
「冒険者っていい経験ができそうですね~。俺は騎士しかしたことがないから憧れますよ」
「お綺麗じゃ、やっていけねぇけどな。生きるか死ぬか紙一重のとこで生きてるから体だって傷だらけだし」
「あぁ、神官長も大きな傷がありますもんね。肩と脇腹とか」
「ウォーレンはそういうとこも不器用なのよねぇ。後衛のくせに周りを庇ったりするからさ。肩の傷はあたしを庇ったやつね」
妖艶なお姐さんがグラスを回しながら俺の肩に手を置いて手慰みに耳たぶを引っ張ってくる。この人もかなり酔ってるな。
「あたしの傷があいつに刻まれてるってエロくない? 羨ましいでしょ」
「はい?」
「だってあんた、あいつの裸を見る関係なんでしょ?」
ドキーッ!!
俺のオススメの居酒屋で、俺は酒の肴としてメンバーに紹介された。
ノリも良く、俺がウォーレンの部下だと知ると、ウォーレンを知ってるメンバーが食いついてくれた。若い女の子以外はみんな一時期ウォーレンとパーティーを組んでいたらしい。
「へぇ~、あんたウォーレンの部下なの。聖堂騎士ってツラじゃないけどねぇ」
妖艶なお姐さんに肩を撫でられた。これくらいの年上ならまだ全然イケるわ。
「ははは、実は最近左遷されて男ばかりの大聖堂に飛ばされたクチで」
「前はどこにいたか当てようか。王宮騎士ね」
「よくわかりましたね!」
「ツラがいい男はだいたい王宮に集められるからねぇ。そして詰めの甘いあんたみたいなのが弾かれるのよ」
「ははは……胸を抉らないでください……泣いちゃいますよ」
「よーしよしよし」
それ、犬を宥める掛け声じゃん! でもギュッと胸に抱き寄せられるのは嫌いじゃない。
妖艶なお姐さんの隣に座る四角い顔の兄さんは炙った肉しか乗ってない丼をかきこんでいる。武闘家の筋肉を作るのは肉! って言ってた。
「爺さんが一緒に飯食うとか言い出すからどんな奴かと思ったわ。なるほど~爺さんと気が合いそうだわ」
言いたいことはわかる。この爺さんもチャランポラン系だよな。
「こんな部下を持って苦労してるだろうな。振り回されてるウォーレンを見てみたいもんだわ」
イカツイ顎髭オヤジはグイグイ飲んでるけど頰を赤く染めているから、ザルというわけではなさそうだ。
「ウォーレンが神官長かぁ。らしいっちゃらしいな」
すでにほろ酔いの口調になっている。酒には弱そうだけど、パーティーのリーダーらしい。
「前から神官って雰囲気のまま冒険者をしていたからな。清廉潔白でさぁ、近寄り難い雰囲気があって、でも万人に慈悲深いってぇのか。大聖堂に戻るって聞いた時も、その日が来たか~くらいのもんだったしな」
割り切ったセリフに似合わないしんみりした顔をしている。もう酔ったか?
白魔法士の女の子はチラッとみんなを見ながら、カクテルをストローで吸っている。
かなりの度数のカクテルを冷たい表情を変えずに吸いまくっているところをみると、1番のザルはこの娘かもしれない。
俺に興味がないのか、無口なだけか、会ってからまだ一度も声を聞いていない。
まぁ神官長の後任で入ったメンバーらしいから、神官長繋がりの俺と話すこともないんだろうけど。
「ユルゲン爺さんと神官長ってどういう関係なんですか? 神官と冒険者ってあんまり接点ないと思うんですけど」
「昔な、教師の真似事みたいなことをしていた時の教え子じゃ。その時はまだあの子も神官になる前だったかの。ワシは教師としては首を切られたもんで、刺激の多そうな冒険者に転職した。でも、あいつのことは色々心配で、たまに顔を見にいっとったんじゃ」
「その時に冒険者になるように唆したわけだ」
「ひひひ、思春期の悩み多き青年に悪いことを吹き込んで道を踏み外させるのがワシの趣味なんじゃ~、って全部ワシのせいか?! 一応、選んだのはあの子じゃぞ?」
神官長の実家は複雑だ。
実父が義母と結婚して、子供が生まれた途端に義母に家を追い出された。幼い頃から聖堂で神官見習いをしていても、完全に実家と縁が切れることはなく、かなり悩んだことだろう。
真面目な神官長が道を踏み外すように――いや、実家の敷いたレールから外れるような行動を取れたキッカケはユルゲン爺さんだろう。
あとは冒険者になって消えてくれと願う義母の影か。想像したら反吐が出るけど。
今も実家の影響を受けている神官長だけど、それでも操り人形じゃなく、自分の信念を持って行動しているようにみえる。
それは冒険者になった経験からだろう。
「冒険者っていい経験ができそうですね~。俺は騎士しかしたことがないから憧れますよ」
「お綺麗じゃ、やっていけねぇけどな。生きるか死ぬか紙一重のとこで生きてるから体だって傷だらけだし」
「あぁ、神官長も大きな傷がありますもんね。肩と脇腹とか」
「ウォーレンはそういうとこも不器用なのよねぇ。後衛のくせに周りを庇ったりするからさ。肩の傷はあたしを庇ったやつね」
妖艶なお姐さんがグラスを回しながら俺の肩に手を置いて手慰みに耳たぶを引っ張ってくる。この人もかなり酔ってるな。
「あたしの傷があいつに刻まれてるってエロくない? 羨ましいでしょ」
「はい?」
「だってあんた、あいつの裸を見る関係なんでしょ?」
ドキーッ!!
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