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4章 孤児院と神域
21.心のフォルダに収納
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大聖堂での警備――と思って出勤したら、朝のミーティングで配置換えがあった。
「神官長殿が本日、孤児院を訪問する。近場とはいえ、つい先日の不審者騒ぎもある。何名か護衛についてもらうために、配置換えを行う」
つまり? 神官長のそばでお仕事ってことだ!
脳内反射で手を上げた。
「隊長! 護衛に立候補しまっス!」
「なに? ……孤児院でも女は老婆と幼女しかおらんぞ?」
「心外でありまーす! こう見えても幼い妹がいるので、扱いには慣れております!」
「……まぁいい。護衛の1人はクラレンスだな。あとは――――」
やったね! 楽しいお仕事になりそうだ。
もちろん、公私はわけるさ。これでもできる男だ。
ただちょっと、昼間の神官長を眺めて心のフォルダに収めたいだけだ。
集合場所にきた神官長は、今日も冷たい目をして鋭く俺たち護衛を見た。
ショーパブでのことを知った上で見ると、いつもよりも顔色がいいように感じた。
媚薬の影響がまだ残っているのか、溜まった精液を出しまくってスッキリしているのか。頬に赤みがさしてみえるし、グリーンの目が明るい。
「護衛……か。ただの孤児院訪問なんだがな」
「神官長。この間のことがあります。本日、私は王宮にいくことになっていますし、護衛を連れて行くことに賛同します」
「ふむ。……わかった」
すこしゴネていた神官長は、神官長付き副官の後押しでようやく護衛を連れていくことに頷いた。
別に護衛がいようといまいと、関係ないはずなんだけどな。なんで嫌がるんだろ。
神官と聖堂騎士隊の間に派閥争いみたいなのがあるのか? それとも、騎士の手を煩わせるのは申し訳ない、とか?
そう思っていたら、副官にこぼしている愚痴が聞こえた。
「……私はそんなに頼りなく見えるか? それなりに腕に覚えはあるんだが」
なんだ、プライドの問題か~。
たしかに、神官長は体格がいい。服の上からでもわかる。何かしら鍛えていそうな厚みがあるし、背は俺より高い。
でも、さすがに日々訓練をしている騎士と比べるとなぁ。
副官にも首を振られて、少し肩を落として見えたのが微笑ましい。
心のフォルダに収納しました。
孤児院は大聖堂の裏手に立つ別館にある。敷地は隣り合っているが、大聖堂も孤児院も敷地が広いから、歩くとそれなりに時間がかかる。
大聖堂の建物は尖塔がいくつも装飾された、荘厳で美麗な建物だが、裏手の宿舎や孤児院はいたってシンプルだ。
それでも、規模は大きく少し装飾がされているため、一般の民家とは全く違う。
以前はそこまで大きくなかった孤児院だが、神官長が変わってから大きく増築した。今、ここで暮らす子供たちは50人くらいだ。
「ようこそ、おこしくださいました。神官長様」
威厳のある老女が出迎えてくれた。
後ろに並ぶ職員も年老いたものばかりだ。
子供たちも出迎えてくれたけど、興味津々に神官長一行を見ているものもいれば、うろちょろ走り回っているのもいる。子供らしい姿にちょっとほっこりした。
警備隊長が言っていた通り、若い女性はほとんどいない。15才くらいの孤児の年長娘がいるくらいだ。
いや、決して品定めじゃないぞ!? 俺の守備範囲外だし、手を出そうもんなら神官長に殺されそうだ。
神官長は大聖堂にいる時とは打って変わって、穏やかな笑みを浮かべている。子供たちを見る目も慈悲深い。
孤児院の中に案内されると、部屋の様子や備品の状態を確認していく。
「そうか孤児が増えたんだったな。机を足さないとならんな。あと勉強道具か」
職員から聞き取りしながら、子供たちの学習の様子や遊ぶ様子をみていく。
普段の子供の様子や困りごとなど、職員それぞれの話に耳を傾ける様子は、忙しい神官長にしては手厚すぎるくらいだ。
この王国は子供の識字率が高い。俺も平民ながら無償の学校で勉強と剣術を習って、王国軍所属の騎士になった。
近隣国では1番子供の教育に力を入れている国だ。
それもこれも、昔現れた聖女が進言していったらしいが……もう数百年も昔の話で歴史本の中の存在だな。勉強以外に飯が美味いのも聖女の故郷の味らしい。
この孤児院の食事もなかなか美味い。見回りを終えるとちょうど昼時になり、食堂に案内された。
テーブルに配膳されたのは、煮た野菜と卵そぼろ鶏そぼろを乗せた三色丼にプラスサラダだ。
そして、普段は執務室で食べている神官長も一緒だ。
俺くらいになると、神官長を見るだけで白米が食えるってのに豪勢なもんだ。
「――神に感謝を。いただきます」
お祈りの後に食事が始まる。
子供たちの食事風景を見るのも視察の一環なんかな?
食事風景を見るなら子供たちと共に食事するのが効率的ではある。身分がある人間としては孤児たちと同席するなんて、その柔軟な態度に驚くけど。
でも孤児院側に驚きはなく、粛々と同じ食堂内に配膳されたから、いつものことなのか。
俺も神官長と同じ食卓を囲むことになって、目の前の神官長を眺め放題だ。
本日の神官長は動きやすさ重視なのか、男にしては長い髪を後ろで束ねている。
服装も神官らしい足元まで覆うダボついたローブではなく、体の線が出るようなパンツにブーツスタイルだ。上着に大聖堂のマークが入っているから神官の軽装スタイルみたいなのがあるのかな。
夜の店にも似たようなスタイルでくるとはいえ、明るい陽の下だと、スタイルの良さが際立つ。
「なんだ?」
あまりに眺めすぎて気づかれた!
「神官長殿が本日、孤児院を訪問する。近場とはいえ、つい先日の不審者騒ぎもある。何名か護衛についてもらうために、配置換えを行う」
つまり? 神官長のそばでお仕事ってことだ!
脳内反射で手を上げた。
「隊長! 護衛に立候補しまっス!」
「なに? ……孤児院でも女は老婆と幼女しかおらんぞ?」
「心外でありまーす! こう見えても幼い妹がいるので、扱いには慣れております!」
「……まぁいい。護衛の1人はクラレンスだな。あとは――――」
やったね! 楽しいお仕事になりそうだ。
もちろん、公私はわけるさ。これでもできる男だ。
ただちょっと、昼間の神官長を眺めて心のフォルダに収めたいだけだ。
集合場所にきた神官長は、今日も冷たい目をして鋭く俺たち護衛を見た。
ショーパブでのことを知った上で見ると、いつもよりも顔色がいいように感じた。
媚薬の影響がまだ残っているのか、溜まった精液を出しまくってスッキリしているのか。頬に赤みがさしてみえるし、グリーンの目が明るい。
「護衛……か。ただの孤児院訪問なんだがな」
「神官長。この間のことがあります。本日、私は王宮にいくことになっていますし、護衛を連れて行くことに賛同します」
「ふむ。……わかった」
すこしゴネていた神官長は、神官長付き副官の後押しでようやく護衛を連れていくことに頷いた。
別に護衛がいようといまいと、関係ないはずなんだけどな。なんで嫌がるんだろ。
神官と聖堂騎士隊の間に派閥争いみたいなのがあるのか? それとも、騎士の手を煩わせるのは申し訳ない、とか?
そう思っていたら、副官にこぼしている愚痴が聞こえた。
「……私はそんなに頼りなく見えるか? それなりに腕に覚えはあるんだが」
なんだ、プライドの問題か~。
たしかに、神官長は体格がいい。服の上からでもわかる。何かしら鍛えていそうな厚みがあるし、背は俺より高い。
でも、さすがに日々訓練をしている騎士と比べるとなぁ。
副官にも首を振られて、少し肩を落として見えたのが微笑ましい。
心のフォルダに収納しました。
孤児院は大聖堂の裏手に立つ別館にある。敷地は隣り合っているが、大聖堂も孤児院も敷地が広いから、歩くとそれなりに時間がかかる。
大聖堂の建物は尖塔がいくつも装飾された、荘厳で美麗な建物だが、裏手の宿舎や孤児院はいたってシンプルだ。
それでも、規模は大きく少し装飾がされているため、一般の民家とは全く違う。
以前はそこまで大きくなかった孤児院だが、神官長が変わってから大きく増築した。今、ここで暮らす子供たちは50人くらいだ。
「ようこそ、おこしくださいました。神官長様」
威厳のある老女が出迎えてくれた。
後ろに並ぶ職員も年老いたものばかりだ。
子供たちも出迎えてくれたけど、興味津々に神官長一行を見ているものもいれば、うろちょろ走り回っているのもいる。子供らしい姿にちょっとほっこりした。
警備隊長が言っていた通り、若い女性はほとんどいない。15才くらいの孤児の年長娘がいるくらいだ。
いや、決して品定めじゃないぞ!? 俺の守備範囲外だし、手を出そうもんなら神官長に殺されそうだ。
神官長は大聖堂にいる時とは打って変わって、穏やかな笑みを浮かべている。子供たちを見る目も慈悲深い。
孤児院の中に案内されると、部屋の様子や備品の状態を確認していく。
「そうか孤児が増えたんだったな。机を足さないとならんな。あと勉強道具か」
職員から聞き取りしながら、子供たちの学習の様子や遊ぶ様子をみていく。
普段の子供の様子や困りごとなど、職員それぞれの話に耳を傾ける様子は、忙しい神官長にしては手厚すぎるくらいだ。
この王国は子供の識字率が高い。俺も平民ながら無償の学校で勉強と剣術を習って、王国軍所属の騎士になった。
近隣国では1番子供の教育に力を入れている国だ。
それもこれも、昔現れた聖女が進言していったらしいが……もう数百年も昔の話で歴史本の中の存在だな。勉強以外に飯が美味いのも聖女の故郷の味らしい。
この孤児院の食事もなかなか美味い。見回りを終えるとちょうど昼時になり、食堂に案内された。
テーブルに配膳されたのは、煮た野菜と卵そぼろ鶏そぼろを乗せた三色丼にプラスサラダだ。
そして、普段は執務室で食べている神官長も一緒だ。
俺くらいになると、神官長を見るだけで白米が食えるってのに豪勢なもんだ。
「――神に感謝を。いただきます」
お祈りの後に食事が始まる。
子供たちの食事風景を見るのも視察の一環なんかな?
食事風景を見るなら子供たちと共に食事するのが効率的ではある。身分がある人間としては孤児たちと同席するなんて、その柔軟な態度に驚くけど。
でも孤児院側に驚きはなく、粛々と同じ食堂内に配膳されたから、いつものことなのか。
俺も神官長と同じ食卓を囲むことになって、目の前の神官長を眺め放題だ。
本日の神官長は動きやすさ重視なのか、男にしては長い髪を後ろで束ねている。
服装も神官らしい足元まで覆うダボついたローブではなく、体の線が出るようなパンツにブーツスタイルだ。上着に大聖堂のマークが入っているから神官の軽装スタイルみたいなのがあるのかな。
夜の店にも似たようなスタイルでくるとはいえ、明るい陽の下だと、スタイルの良さが際立つ。
「なんだ?」
あまりに眺めすぎて気づかれた!
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