上 下
1 / 14

最期の願い

しおりを挟む
とある王国の公爵家に赤子が生まれた。
銀色の髪に紫の瞳、隣国の王妃であった母によく似て赤子だというのに美しい顔立ちであった。
そして生後間もない赤子であるにも関わらず、その身分から王子の婚約者という立場へとなったのだった。

15年後、少女は美しくそして賢く成長した。
長い時をかけて交流を深めてきた王子との間も良好であった。
しかし、それは社交界でのデビューの時に起こった。
王子が伯爵令嬢に一目惚れしたのだ。
彼は言った。
「すまない。婚約を白紙にしてほしい」と。
少女は言った。
「もう決意されているのですね。ならばその気持ちを応援しますわ」と。
本人同士は納得しあっての婚約解消であったが、それを知った少女の父ー公爵は大激怒。
「何故、婚約を解消などと!何のために生まれたと思っている!!」
「ですが、お父様。あの方は他に好きな方が出来たのです。それは喜ばしいことではありませんか」
王子は伯爵令嬢にアプローチする前に少女との婚約を解消したいと言ったのだ。
自分に非があるからどんな無茶なことでもいうことを聞くと言って。
そんな誠実な方の願いを何故断れるでしょうかと少女は思う。
しかし、公爵は許さなかった。
自分の思惑がうまくいかなかったことに。目の前の少女が反抗することに。
「役立たずの娘など、もう必要ないっ!」
そう怒鳴ると、公爵は壁に飾ってあった剣を握ると少女の胸へと突き刺した。
ずるりと引き抜かれる剣の刃は赤く、少女の胸からは血が流れ落ちる。
力が入らず、自身の血で染まった絨毯の上で少女は自身の死を確信した。

(死ぬのね、私・・・。思えば、何の楽しみもない人生だった。王子。あの時の彼はキラキラした目をしていた。
ずっと、私と同じ様な目をしていたのに・・・。ふふ、もし、生まれ変われるのならば、私、平民に生まれたいな。
そうすれば、自由にいろんなことがきっと出来・・・る・・・・・)

物言わず、動かなくなった少女を公爵はただ見つめていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

リアンの白い雪

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
その日の朝、リアンは婚約者のフィンリーと言い合いをした。 いつもの日常の、些細な出来事。 仲直りしていつもの二人に戻れるはずだった。 だがその後、二人の関係は一変してしまう。 辺境の地の砦に立ち魔物の棲む森を見張り、魔物から人を守る兵士リアン。 記憶を失くし一人でいたところをリアンに助けられたフィンリー。 二人の未来は? ※全15話 ※本作は私の頭のストレッチ第二弾のため感想欄は開けておりません。 (全話投稿完了後、開ける予定です) ※1/29 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

婚約破棄された私は、年上のイケメンに溺愛されて幸せに暮らしています。

ほったげな
恋愛
友人に婚約者を奪われた私。その後、イケメンで、年上の侯爵令息に出会った。そして、彼に溺愛され求婚されて…。

諦めた令嬢と悩んでばかりの元婚約者

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
愛しい恋人ができた僕は、婚約者アリシアに一方的な婚約破棄を申し出る。 どんな態度をとられても仕方がないと覚悟していた。 だが、アリシアの態度は僕の想像もしていなかったものだった。 短編。全6話。 ※女性たちの心情描写はありません。 彼女たちはどう考えてこういう行動をしたんだろう? と、考えていただくようなお話になっております。 ※本作は、私の頭のストレッチ作品第一弾のため感想欄は開けておりません。 (投稿中は。最終話投稿後に開けることを考えております) ※1/14 完結しました。 感想欄を開けさせていただきます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

婚約を解消したら、何故か元婚約者の家で養われることになった

下菊みこと
恋愛
気付いたら好きな人に捕まっていたお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

地味女は、変わりたい~告白するために必死で自分磨きをしましたが、相手はありのままの自分をすでに受け入れてくれていました~

石河 翠
恋愛
好きな相手に告白するために、自分磨きを決心した地味で冴えない主人公。彼女は全財産を握りしめ、訪れる女性をすべて美女に変えてきたという噂の美容サロンに向かう。 何とか客として認めてもらった彼女だが、レッスンは修行のような厳しさ。彼女に美を授けてくれる店主はなんとも風変わりな男性で、彼女はなぜかその店主に自分の好きな男性の面影を見てしまう。 少しずつ距離を縮めるふたりだが、彼女は実家からお見合いを受けるようにと指示されていた。告白は、彼女にとって恋に区切りをつけるためのものだったのだ。 そして告白当日。玉砕覚悟で挑んだ彼女は告白の返事を聞くことなく逃走、すると相手が猛ダッシュで追いかけてきて……。 自分に自信のない地味な女性と、容姿が優れすぎているがゆえにひねくれてしまった男性の恋物語。もちろんハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

プロポーズされたと思ったら、翌日には結婚式をすることになりました。

ほったげな
恋愛
パーティーで出会ったレイフ様と親しくなった私。ある日、レイフ様にプロポーズされ、その翌日には結婚式を行うことに。幸せな結婚生活を送っているものの、レイフ様の姉に嫌がらせをされて?!

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

処理中です...