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本編
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月日が流れるのは早いもの。
マリア様と、ルーク様はかなり仲が良くなられて、1ヶ月に5.6回は公爵家に来られてるため、私達使用人も忙しない日々を過ごしていました。
ルーク様は来られる度に、私を自分付きの侍女にと冗談を言われておられましたが、マリア様やクラウス様が止めてくださるお陰で、今もここでずっと働くことが出来ています。
ルーク様も最近は諦めておられるようで、時々、前世のお菓子を求められる程度で済むようになりました。
そんな日々を送り気づけば2年の月日が経っていました。
マリア様も10歳の誕生日を迎え、今度のパーティーにて社交界デビューを果たすこととなりました。
もちろん、婚約者たるルーク様がパートナーなので、お二人は最初のダンスを踊られることが決まっています。
その為、今、マリア様はダンスのレッスンを必死になされ、また、体格維持のため、甘いお菓子の誘惑を必死で我慢されています。
さて、私はマリア様の当日の衣装を考えなくては。
え?なぜ私がマリア様の衣装を考えているのかって?
マリア様がキラキラした目で、私に
「私、エルゼのデザインした服が着たいわ」
と、言われたんですよ!
当たり前のようにオーケーしちゃいましたとも!!
さて、この世界のドレスは基本すとーんと落ちたワンピースタイプが多い。
腰元をキュッと締め付けるようなデザインは未だ見たことがない。
ならばと、ゴスロリ風のドレスならば受けがいいかもしれないなぁと描いてみる。
マリア様の金色の髪には、青い服が似合うだろう。
胸元はレースで縫い合わせ、後ろをリボンでキュッと締め付ける。
スカートはふんわりとさせるために中にペチコートをはいて。
ふわふわと浮かんだデザインが形になる。
書き終え、衣装担当の針子に見せるとブルブルと震え、素敵!!といい、針子のリーダーであるチーフ様に見せる。しかし、チーフ様は眉を顰める。
その顔を見て、気づいてしまった。
この世界、型紙がないということに。
それどころか、マネキンもないではないか!
どうやってこの立体的な図案を作るというのかと。
「素敵なドレス。でも、現実味がないわねぇ」
と、チーフ様は言う。
そりゃそうだ。
だって、これはマネキンで立体を表現するのを前提に考えられたデザインなんだもの。
私が作れるマネキンはなんだ?
ワイヤーを繋げたもの?
無理だろう。そもそもワイヤーが存在しない。
木を削ったもの?
無理だろう。だって、削ってる間にパーティの日になってしまう。
ふと、目に入ったのはクッション。
そうだ、クッションなら・・・
カバーをしていないクッションをいくつか重ね合わせ、人の形に仕上げていく。
そして、庭師からもらった棒を組み合わせ、立たせる。
出来た。
たぶん、この世界で初のマネキンだ。
チーフ様にマネキンを見せる。
驚いたようだったが、この有効性は十分理解している様子だった。
「これなら、このデザインが作れるわね」
チーフ様の目には隈ができていた。
デザインを見つめ、ずっと、考えていてくれていたのだと、すぐにわかった。
「はい!」
マネキンで型を取り、仮布で形を作る。
マリア様に着てもらって、マリア様の形に合わせる。
仮布をほどき、本来のドレスの布と合わせ、切り、縫い合わせていく。
私のデザインが、形になっていく。
それを身近で見れるのがとても嬉しい。
そして、ドレスが完成した。
コルセットではないが、コルセットと同様にキュッと腰を細くするドレス。
今までにない、デザインのそれはマリア様のデビューをより華やかにしてくれるだろう。
そして、当日。
「ふふ。どう?似合うかしら?」
「はい、とっても、とってもお似合いです!!」
ドレスを着たマリア様は本当に美しかった。
まるで妖精のようだ。
動くたびにふんわりと動くドレス。
マリア様の容姿としっかりとマッチしている。
「エルゼ、ありがとう」
そう微笑まれるマリア様。
その成長をとても嬉しいと思い、感動からポロリと涙が流れた。
華やかな光と音楽が鳴り響く中、パーテーは始まった。
騒めく会場。
大方の参加者が来られたのを確認し、
高々とラッパの音が鳴り響いた。
「皇太子殿下ルーク様と、公爵家ご令嬢マリア様の登場です」
ルーク様はマリア様の手を取り階段をゆっくりと降りていく。
絵になる2人に会場の参加者はため息をついた。
そして、女性陣はマリア様のドレスを見て驚愕する。
なんて素敵なドレスなのだろうと。
そして、口々にマリア様の話題が会場に広がる。
私は、それを陰で見つめ、よっしゃーと拳をぐっとした。
その時、気づいてしまった。
マリア様を恨めしそうに見つめる少女に。
あれは・・・ヒロイン?
どうしてここに。
ヒロインは古びたドレスを着て会場の壁際に立っていた。
よーく耳を凝らすとブツブツと何かを呟いでいる。
「なによ、あのドレス。こんなの原作になかったじゃない。私は今日、ここでルーク様と目が合い一目惚れされるはずなのに、ルーク様ったらこちらを見もしない。だいたい、マリアの顔、もっと厚化粧のはずでしょう?!どうしてあんな優しい顔をしてるのよ!!あの女はもっとつり目でケバケバしくて、ルーク様もウザがるはずなのに!!!」
あ、この女。
私と一緒だ。
原作を知ってる、転生者だ!!!
マリア様と、ルーク様はかなり仲が良くなられて、1ヶ月に5.6回は公爵家に来られてるため、私達使用人も忙しない日々を過ごしていました。
ルーク様は来られる度に、私を自分付きの侍女にと冗談を言われておられましたが、マリア様やクラウス様が止めてくださるお陰で、今もここでずっと働くことが出来ています。
ルーク様も最近は諦めておられるようで、時々、前世のお菓子を求められる程度で済むようになりました。
そんな日々を送り気づけば2年の月日が経っていました。
マリア様も10歳の誕生日を迎え、今度のパーティーにて社交界デビューを果たすこととなりました。
もちろん、婚約者たるルーク様がパートナーなので、お二人は最初のダンスを踊られることが決まっています。
その為、今、マリア様はダンスのレッスンを必死になされ、また、体格維持のため、甘いお菓子の誘惑を必死で我慢されています。
さて、私はマリア様の当日の衣装を考えなくては。
え?なぜ私がマリア様の衣装を考えているのかって?
マリア様がキラキラした目で、私に
「私、エルゼのデザインした服が着たいわ」
と、言われたんですよ!
当たり前のようにオーケーしちゃいましたとも!!
さて、この世界のドレスは基本すとーんと落ちたワンピースタイプが多い。
腰元をキュッと締め付けるようなデザインは未だ見たことがない。
ならばと、ゴスロリ風のドレスならば受けがいいかもしれないなぁと描いてみる。
マリア様の金色の髪には、青い服が似合うだろう。
胸元はレースで縫い合わせ、後ろをリボンでキュッと締め付ける。
スカートはふんわりとさせるために中にペチコートをはいて。
ふわふわと浮かんだデザインが形になる。
書き終え、衣装担当の針子に見せるとブルブルと震え、素敵!!といい、針子のリーダーであるチーフ様に見せる。しかし、チーフ様は眉を顰める。
その顔を見て、気づいてしまった。
この世界、型紙がないということに。
それどころか、マネキンもないではないか!
どうやってこの立体的な図案を作るというのかと。
「素敵なドレス。でも、現実味がないわねぇ」
と、チーフ様は言う。
そりゃそうだ。
だって、これはマネキンで立体を表現するのを前提に考えられたデザインなんだもの。
私が作れるマネキンはなんだ?
ワイヤーを繋げたもの?
無理だろう。そもそもワイヤーが存在しない。
木を削ったもの?
無理だろう。だって、削ってる間にパーティの日になってしまう。
ふと、目に入ったのはクッション。
そうだ、クッションなら・・・
カバーをしていないクッションをいくつか重ね合わせ、人の形に仕上げていく。
そして、庭師からもらった棒を組み合わせ、立たせる。
出来た。
たぶん、この世界で初のマネキンだ。
チーフ様にマネキンを見せる。
驚いたようだったが、この有効性は十分理解している様子だった。
「これなら、このデザインが作れるわね」
チーフ様の目には隈ができていた。
デザインを見つめ、ずっと、考えていてくれていたのだと、すぐにわかった。
「はい!」
マネキンで型を取り、仮布で形を作る。
マリア様に着てもらって、マリア様の形に合わせる。
仮布をほどき、本来のドレスの布と合わせ、切り、縫い合わせていく。
私のデザインが、形になっていく。
それを身近で見れるのがとても嬉しい。
そして、ドレスが完成した。
コルセットではないが、コルセットと同様にキュッと腰を細くするドレス。
今までにない、デザインのそれはマリア様のデビューをより華やかにしてくれるだろう。
そして、当日。
「ふふ。どう?似合うかしら?」
「はい、とっても、とってもお似合いです!!」
ドレスを着たマリア様は本当に美しかった。
まるで妖精のようだ。
動くたびにふんわりと動くドレス。
マリア様の容姿としっかりとマッチしている。
「エルゼ、ありがとう」
そう微笑まれるマリア様。
その成長をとても嬉しいと思い、感動からポロリと涙が流れた。
華やかな光と音楽が鳴り響く中、パーテーは始まった。
騒めく会場。
大方の参加者が来られたのを確認し、
高々とラッパの音が鳴り響いた。
「皇太子殿下ルーク様と、公爵家ご令嬢マリア様の登場です」
ルーク様はマリア様の手を取り階段をゆっくりと降りていく。
絵になる2人に会場の参加者はため息をついた。
そして、女性陣はマリア様のドレスを見て驚愕する。
なんて素敵なドレスなのだろうと。
そして、口々にマリア様の話題が会場に広がる。
私は、それを陰で見つめ、よっしゃーと拳をぐっとした。
その時、気づいてしまった。
マリア様を恨めしそうに見つめる少女に。
あれは・・・ヒロイン?
どうしてここに。
ヒロインは古びたドレスを着て会場の壁際に立っていた。
よーく耳を凝らすとブツブツと何かを呟いでいる。
「なによ、あのドレス。こんなの原作になかったじゃない。私は今日、ここでルーク様と目が合い一目惚れされるはずなのに、ルーク様ったらこちらを見もしない。だいたい、マリアの顔、もっと厚化粧のはずでしょう?!どうしてあんな優しい顔をしてるのよ!!あの女はもっとつり目でケバケバしくて、ルーク様もウザがるはずなのに!!!」
あ、この女。
私と一緒だ。
原作を知ってる、転生者だ!!!
応援ありがとうございます!
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