上 下
3 / 7

拒絶

しおりを挟む
使用人達は、首を傾げていた。
気分転換に出かけた筈のクリスティーヌが蒼ざめながら帰ってきた事に。
訳を知りたくとも、早々にクリスティーヌは部屋に篭ってしまい、どうする事も出来ない。
そんな使用人の戸惑いなど知る由もなくクリスティーヌは震えていた。

「何故、何故なの?アイザックさま・・・」

その大きな瞳からポロポロと涙を零し、クリスティーヌは嘆いた。
そして、最近のアイザックの様子がおかしかった意味がわかった。
彼の買い物の請求書には私の知らないドレスや装飾品があったではないか。
彼の帰りが遅い日や翌日にはふんわりと甘い香りが漂っていたではないか。
自身を抱かなくなったではないか。

「なんで、よりにもよって・・・」

なぜ、あの人なのか。
浮気された事よりも、その事がショックで仕方がなかった。
イザベラよりも自身を選んでくれたのではなかったのか。
クリスティーヌは下唇を噛み締め、悲しみから悔しさが滲み出す。
固く握られた拳がふるふると震え出す。
その時だ。ノックの音が響いた。

「クリスティーヌ?私だ」
「!あ、アイザックさま」
「どうしたんだい?買い物の帰りから塞ぎ込んでいると聞いたが・・・」

心配そうな声に、クリスティーヌは扉まで駆け寄り、ドアノブに手を伸ばしてはたと止まった。
今、彼の顔を見て責めずにいられる自信がない。

「クリスティーヌ?」
「御免なさい、少し、具合が悪いの。今日は、別々でね、寝ましょう・・・」
「具合が?大丈夫かい?顔を見せておくれ」
「うつしたらダメだから、ごめんなさい。もう、私、寝ます・・・」
「クリスティーヌ?クリスティーヌ!?」

アイザックの自身を呼ぶ声を耳で塞ぎ、布団を深く被り、クリスティーヌはなんとかやり過ごした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話

ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。 完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。

謝罪のあと

基本二度寝
恋愛
王太子の婚約破棄騒動は、男爵令嬢の魅了魔法の発覚で終わりを告げた。 王族は揃いも揃って魅了魔法に操られていた。 公にできる話ではない。 下手をすれば、国が乗っ取られていたかもしれない。 男爵令嬢が執着したのが、王族の地位でも、金でもなく王太子個人だったからまだよかった。 愚かな王太子の姿を目の当たりにしていた自国の貴族には、口外せぬように箝口令を敷いた。 他国には、魅了にかかった事実は知られていない。 大きな被害はなかった。 いや、大きな被害を受けた令嬢はいた。 王太子の元婚約者だった、公爵令嬢だ。

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

「私が愛するのは王妃のみだ、君を愛することはない」私だって会ったばかりの人を愛したりしませんけど。

下菊みこと
恋愛
このヒロイン、実は…結構逞しい性格を持ち合わせている。 レティシアは貧乏な男爵家の長女。実家の男爵家に少しでも貢献するために、国王陛下の側妃となる。しかし国王陛下は王妃殿下を溺愛しており、レティシアに失礼な態度をとってきた!レティシアはそれに対して、一言言い返す。それに対する国王陛下の反応は? 小説家になろう様でも投稿しています。

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

王太子殿下が欲しいのなら、どうぞどうぞ。

基本二度寝
恋愛
貴族が集まる舞踏会。 王太子の側に侍る妹。 あの子、何をしでかすのかしら。

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

処理中です...