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記念の番外編
同日3巻記念ーほっといてくださいーとのコラボ企画
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注意書き
今回のお話は第12回ファンタジー小説大賞にて読者賞を受賞された【ほっといて下さい】の作者 三園 七詩様とのコラボ企画となります。
同時期に1巻が発売され、それが縁で仲良くさせていただいておりまして……
この度再び3巻が同じ日に発売されることになり、せっかくなのでぜひ記念にと企画してくださりました!
コラボという事で、【ほっといて下さい】の世界と【チートな鍛冶屋さん】の世界のお互いの主人公が交流するというある意味特殊なお話ですが、楽しんでいただけると嬉しいです!
【ほっといて下さい】の方にも三園 七詩様が書いてくださるメリア達が活躍するお話が出てきますので、よければそちらもよろしくお願いします。
ここで簡単にですが、【ほっといて下さい】を読まれていない方のために簡単なあらすじと登場人物の紹介をさせていただきます。もし、読まれている方はそのままどうぞ本編へ。
※【ほっといて下さい】はコミカライズもされておりますので、そちらもよければご覧いただけると世界観がよりわかりやすいかもです。
~あらすじ~
事故に遭い命を落とした主人公ミズキ。目が覚めると幼女に転生していた!
無自覚チートとその愛されキャラで出会う人を虜にしてしまいます。
こうして過保護な保護者達との異世界ぼのぼの生活が始まったのだった。
ミヅキ…【ほっといて下さい】の主人公。見た目は子ども、中身は大人。無自覚なチートを撒き散らし保護者をヒヤヒヤさせてしまう天然トラブルメーカー。
シルバ…伝説級の魔獣であるフェンリル。ミヅキに運命を感じて従魔になった。
シンク…鳳凰の雛。ミヅキに命を救われて従魔になった。
魅力的なキャラクターが多いのですが、今回登場するキャラだけを紹介させていただきます。
長々とした前置き、失礼しました。
それでは、本編をどうぞお楽しみ下さい(о´∀`о)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それが起こったのはいつもの様にみんなでご飯を食べ、日向ぼっこをしていた時のこと。
オニキスはいつもの様に私の膝の上にいたんだけど……少し虫に気を取られ、離れた隙にオパールがそこに座ってしまった。
そして、戻ってきたオニキスがそれを見てショックを受けて退いて退いてと頼むけど、オパールはそれを拒否!
そこから喧嘩に発展してしまったのだ。
もちろん、慌てて止めに入ったけれど、オニキスの一言がオパールを完全に怒らせた。
ーーオパール、1匹じゃ、何もできない!オニキス、出来る!オニキス、エライ!エライ!
ーー~~~っ!そんなことない!出来る!!
まさに売り言葉に買い言葉。
オパールは1匹で力を使おうと力んだ。
その瞬間、空気が歪み……そして何かにぶつかる様な強い衝撃と共に私の意識は遠のいた。
ペチペチと頬が何かに叩かれている様な感覚。
少し小さくて暖かい。
「ーーだいーぶ?おーて」
目を開くとそこにはキラキラと輝く宝石のような瞳をした黒い髪の小さい女の子がいた。
年はミィナちゃんよりも下だろうか?
隣には、大きな黒い塊……いや、狼がちょこんと座って女の子を優しい目で見つめている。
その目を見ていなかったら、怖くて思わず叫んだに違いない。
実際、狼の私を見る目は鋭く獲物かどうかを確かめるような感じだったから!
「おねーさん、だいじょーぶ?」
女の子が心配そうに尋ねてくれる。
「あ、ごめんね、ありがとう。大丈夫だよ」
起き上がって、辺りを見渡す。
うっそうと生い茂る木々に小さな湖、色鮮やかな花。
その中に倒れている、白い蛇と茶色い兎。
「フロー!アンバー!!」
急いで駆け寄り抱き起こすと、フローがゆっくり瞬きをしながら目を覚ました。
それに続けて、アンバーも長い耳をピクピクとさせながら、起き上がる。
ーーご主人様。
「大丈夫?」
ーーはい。大丈夫です。
ーーううー……主さま、何があったのでしょう?
「わからない」
フローとアンバーにあってホッとしたけど、助けてくれた女の子と狼を放置していたことに気がついた。
「あ、ごめんなさい。さっきは助けてくれてありがとう。私は、メリア。フォルジャモン村で鍛治師をしているの」
「んーん。おねーさん、たまたま倒れてたの、見つけただぇだよ。それより……」
じっと、フローとアンバーを見つめる彼女。
「この子達は、私の家族で……フローとアンバーっていうの」
「かーいね」
「ありがとう。その子は、あなたの家族?」
「うん!そーだよ!!シルバっていうの」
「そうなんだ。それで、あなたの名前は?」
「あ……わしゅれてた。ミヅキだよ」
「ミヅキ……ちゃん?それで、ここはどこなのか、聞いてもいいかな?」
ミヅキちゃんの話では、ここは彼女とシルバくんー何となく呼び捨てにしたらダメな気がするーが初めてあった思い出の場所で久しぶりに遊びにきたら、私たちが倒れていたらしい。
「そうなんだ……」
だから、隣に座っているシルバくんが機嫌悪そうにしているのか。
「おねーさんは、どーちて?」
「わからない」
心当たりはある。オパールの力の暴走……でも、見ず知らずの幼女に話していいものではないだろう。
その時だ。赤い鳥がミヅキちゃんに何かを渡した。
「オパール!!」
それは傷だらけになったオパールだった。
自身の力で傷をつけてしまったのだろう、息も絶え絶えになっている。
「だいじょーぶ」
ミヅキちゃんはそういうとふわっと光ったように見えた。
その光の中で、オパールの傷が癒えていく。
「すごい……」
「あい!」
自信満々にミヅキちゃんからオパールを渡されると、クークーと小さな寝息を立てていた。
「よかった」
「こっちに、ほかもいるって」
くいくいと引っ張られ、案内された先にはオニキスとルビーくんの姿が。
2匹とも、怪我もしてないようでホッとした。
「ミヅキちゃん、本当にありがとう」
「どーいたちまして!」
オニキスとルビーくん、オパールも目覚めたと思ったら、みんなで集まって何かを話し始めてしまった。
その時だ。
「え、いちぇかい?!」
ミヅキちゃんがそう言ったのが聞こえた。
シルバくんと先ほどオパールを連れて来てくれた赤い鳥、何やらミヅキちゃんは2匹とお話しできるようだ。
そういえば、家族って言ってたっけ?
眷属なのかな?でも、今異世界って言わなかった??
もしかして、みんなが話しているのもそのせい?
疑問で頭がぐるぐるしていると、ぐーとお腹が鳴った。
嘘でしょ?こんな時に普通鳴る?!
恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じたけど、ミヅキちゃんは笑うことなく自分の住む町に行こうと誘ってくれた。
ミヅキちゃんはシルバに。
私はとりあえず、話し終えたらしいみんなに声をかけてオニキスに乗る。
「おっきーね」
「この子は自由に大きさを変えれるの」
そんなふうにぼのぼのとした会話をしているとすぐに町に着いた。
遠巻きに優しくミヅキちゃんを見守る視線と、私を見て怪しむ視線を感じる。
街の警備員だろう人から身分証を提示するよう言われて、以前作ったギルド証を見せると怪しまれた。
な、なぜ?
「おにーさん、おねーさんは遠い国から来たのよー」
ミヅキちゃんがそういうと、警備員は納得して通してくれた。
どうやらミヅキちゃんはここのアイドルみたいな存在らしい。
食事処に行くとそこでは連れてきた従魔は少し離れた待機スペースに案内すると言われた。
テイマーという職業があり、魔獣と仲良くなれると魔獣が従うらしい。
そして、そうやって従う魔獣を従魔と呼んでいるそうだ。
フロー達は魔獣ではないけれど、お店のルールなら仕方ない。
私とミヅキちゃんは2人でテーブルにつき、みんなはその待機スペースで待ってもらうことになった。
フロー達は早々にシルバくん達が話をして仲良くなって来ているようで、食事中は気にする必要はなさそうだ。
◆◇◆
待機スペースにて一番最初に声を上げたのはシルバと呼ばれたフェンリルだった。
どうやら、魔獣や神獣の眷属という違いはあれど、意思の疎通は可能なようだ。
【おい、お前らは何なんだ】
ーー僕ら?
【そうだ。俺たちとは違う何かの力を感じる】
ーー僕らは眷属。ここじゃない世界を見守る神獣さまに仕えるもの。そして、ご主人様は僕らを家族と呼ぶよ。
フローが普段とは異なる喋り方で答える。
【眷属?やはり異世界のものか】
ーーオパール、失敗したせい。せい!
オニキスが責めるようにオパールの周りで騒ぎ立てる。
反撃することなく、ポロポロとオパールは涙をこぼした。
【失敗は誰でもあるよー】
赤い鳥は自らシンクと名乗り、オパールを慰める。
自分よりも弱いものを守ろうとするのは神獣としての本能のようなものだろうか?
ーーなんや、わしらの力はこの世界じゃ制限されてしもうとるみたいやしなぁ。
ーー主さまを守るには、不十分ですわね。
眷属は世界に属するもの。故に目覚めた時にこの世界が別の世界だとは気づいていたようだ。
だが、メリアを不安にさせまいとしたのだろう。
【まあ、お前らがミヅキに害をもたらすんじゃないならかまわんがな】
【うんうん】
ーー僕らも、同じだよ。ご主人様に悪さしないなら構わないー。
こうして、従魔と眷属の協定が結ばれたのであった。
◆◇◆
そんな話がされていたとは思わず、私とミヅキちゃんはメニューを見てどれにしようか悩んでいた。
「うーん、どれがいいかな?」
「こりぇとこりぇ、きににゃるけど、こんにゃに食べれない……」
「なら、私がこっちを頼むから、ミヅキちゃんはそっちにしない?」
「いいの?」
「うん」
運ばれてきたサラダとお肉のセットとシチューのセットは、素朴な味だった。
塩味が足りないというか、全体的に素材味!!
ここだとこれが普通なのかな?とミヅキちゃんを見ると彼女は彼女でそうだったと言わんばかりの顔をしている。
むむむと眉を曲げたと思ったら、パッと塩を取り出してかけた。
「いりましゅか?」
「ありがとう、もらうよ」
その後は無言でもぐもぐと食べ合う。
き、きまずい。
それは彼女も同じだったようだけど、ふと目が会った瞬間、彼女は言った。
「あの、うさたん、しゃわりたいです」
「え?アンバーのこと??後で撫でる?」
「なでましゅ!」
元気に腕を上にあげて喜ぶミヅキちゃんに、思わず笑みが溢れる。
こんなに可愛い子のお願いなら、アンバーには生贄になってもらおう。
そんなミズキちゃんに私からもお願いをしてみることにした。
「シルバくん、私もヨシヨシしてもいいかな?」
「どーじょ!!」
あのでっかいもふもふは絶対気持ちいと思ったんだよね!!
その後、支払いで少し揉めたけれど、宝石の価値は同じようで何とかなった。
まさか、通貨が違うなんて思わないじゃない!
念のためにアイテムボックスにダイヤモンドを入れておいてよかった……
その後、ミヅキちゃんの案内で町を見て回る。
手芸屋さんのところでふと思いついて、ミヅキちゃんの瞳の紫と、シルバくんの黒、シンクの赤を購入し、お店の人に頼んで少し場所を借りる。
「ミヅキちゃん、ちょっと待っててね」
「うん?」
3色3本ずつ1メートルぐらいに切って、順番に結んでいく。
最初は難しいけど、慣れると単純作業だし、ミヅキちゃんは小さいからすぐにできるだろう。
最後に留め具用の木製ビーズを買って、これでよし。
「ごめんね、お待たせ」
「いえ、だいじょーぶですよ」
その後も、いろんな話をして、あっという間に夕方になった。
「おねーさん、これからどうしゅるの?」
その声は、私たちの帰る場所がないことを知っているかのようなそんな声に感じた。
「わかんないけど、きっと大丈夫」
オパールの力でここにきたのなら、きっとオパールの力で帰れるはずだ。
それより……
「ミヅキちゃん、今日一日付き合ってくれてありがとう」
そう言って私は、手芸屋さんで作らせてもらったミサンガを渡した。
「こりぇ」
「さっきのお店で作らせてもらったんだ。感謝の印だよ!」
「わ、わたし、なにも渡せにゃ……」
その時、シンクの羽がはらりと2枚落ちた。
シンクの方をミヅキちゃんは見つめるけど、シンクは知らん顔で毛繕いをしている。
ミヅキちゃんはもう!と少し拗ねたかのような顔をしたかと思うと、シンクに本当に嬉しそうにお礼を言った。
そして、私に1枚その綺麗な羽を渡してくれる。
「おともだちの、印だね!」
「うん!!」
私がそういうと、ミヅキちゃんは微笑んだ。
羽が嬉しくて、ギュッと抱きしめる。
次の瞬間、ミヅキちゃんが焦ったかのような顔をして何かを叫んだ。
でも、その言葉は私には聞こえなかった。
まるで、ここにきた時のように、私の意識はぐるりぐるりと回転するように落ちていったから。
ーー主。妾の主。大丈夫かえ?
目を覚ますと、セラフィが一番に目の中に飛び込んできた。
辺りを見渡すと、そこは見慣れた家の庭だった。
少し花や草が散らばっている。
「え?あれ??」
ミヅキちゃんや、シルバくんは??
そう尋ねる私を、みんな怪訝そうに見てくる。
ーーごめんなさい、ごめんなさい。
オパールの力で、私は今の今まで意識を失っていたそうだ。
セラフィが必死に治療してくれていたらしい。
じゃあ、あれは……夢?
そう思った瞬間、カサリと手の中に何かがあることに気づく。
広げると、そこには赤い羽が。
それに、アイテムボックスの中に入れていたダイヤモンドもない。
代わりにあるのは紫と赤と黒の刺繍糸。
……本当に、夢だったのだろうか?
もし、違うとしたら、また会えるだろうか?
あの可愛い女の子に。
今回のお話は第12回ファンタジー小説大賞にて読者賞を受賞された【ほっといて下さい】の作者 三園 七詩様とのコラボ企画となります。
同時期に1巻が発売され、それが縁で仲良くさせていただいておりまして……
この度再び3巻が同じ日に発売されることになり、せっかくなのでぜひ記念にと企画してくださりました!
コラボという事で、【ほっといて下さい】の世界と【チートな鍛冶屋さん】の世界のお互いの主人公が交流するというある意味特殊なお話ですが、楽しんでいただけると嬉しいです!
【ほっといて下さい】の方にも三園 七詩様が書いてくださるメリア達が活躍するお話が出てきますので、よければそちらもよろしくお願いします。
ここで簡単にですが、【ほっといて下さい】を読まれていない方のために簡単なあらすじと登場人物の紹介をさせていただきます。もし、読まれている方はそのままどうぞ本編へ。
※【ほっといて下さい】はコミカライズもされておりますので、そちらもよければご覧いただけると世界観がよりわかりやすいかもです。
~あらすじ~
事故に遭い命を落とした主人公ミズキ。目が覚めると幼女に転生していた!
無自覚チートとその愛されキャラで出会う人を虜にしてしまいます。
こうして過保護な保護者達との異世界ぼのぼの生活が始まったのだった。
ミヅキ…【ほっといて下さい】の主人公。見た目は子ども、中身は大人。無自覚なチートを撒き散らし保護者をヒヤヒヤさせてしまう天然トラブルメーカー。
シルバ…伝説級の魔獣であるフェンリル。ミヅキに運命を感じて従魔になった。
シンク…鳳凰の雛。ミヅキに命を救われて従魔になった。
魅力的なキャラクターが多いのですが、今回登場するキャラだけを紹介させていただきます。
長々とした前置き、失礼しました。
それでは、本編をどうぞお楽しみ下さい(о´∀`о)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それが起こったのはいつもの様にみんなでご飯を食べ、日向ぼっこをしていた時のこと。
オニキスはいつもの様に私の膝の上にいたんだけど……少し虫に気を取られ、離れた隙にオパールがそこに座ってしまった。
そして、戻ってきたオニキスがそれを見てショックを受けて退いて退いてと頼むけど、オパールはそれを拒否!
そこから喧嘩に発展してしまったのだ。
もちろん、慌てて止めに入ったけれど、オニキスの一言がオパールを完全に怒らせた。
ーーオパール、1匹じゃ、何もできない!オニキス、出来る!オニキス、エライ!エライ!
ーー~~~っ!そんなことない!出来る!!
まさに売り言葉に買い言葉。
オパールは1匹で力を使おうと力んだ。
その瞬間、空気が歪み……そして何かにぶつかる様な強い衝撃と共に私の意識は遠のいた。
ペチペチと頬が何かに叩かれている様な感覚。
少し小さくて暖かい。
「ーーだいーぶ?おーて」
目を開くとそこにはキラキラと輝く宝石のような瞳をした黒い髪の小さい女の子がいた。
年はミィナちゃんよりも下だろうか?
隣には、大きな黒い塊……いや、狼がちょこんと座って女の子を優しい目で見つめている。
その目を見ていなかったら、怖くて思わず叫んだに違いない。
実際、狼の私を見る目は鋭く獲物かどうかを確かめるような感じだったから!
「おねーさん、だいじょーぶ?」
女の子が心配そうに尋ねてくれる。
「あ、ごめんね、ありがとう。大丈夫だよ」
起き上がって、辺りを見渡す。
うっそうと生い茂る木々に小さな湖、色鮮やかな花。
その中に倒れている、白い蛇と茶色い兎。
「フロー!アンバー!!」
急いで駆け寄り抱き起こすと、フローがゆっくり瞬きをしながら目を覚ました。
それに続けて、アンバーも長い耳をピクピクとさせながら、起き上がる。
ーーご主人様。
「大丈夫?」
ーーはい。大丈夫です。
ーーううー……主さま、何があったのでしょう?
「わからない」
フローとアンバーにあってホッとしたけど、助けてくれた女の子と狼を放置していたことに気がついた。
「あ、ごめんなさい。さっきは助けてくれてありがとう。私は、メリア。フォルジャモン村で鍛治師をしているの」
「んーん。おねーさん、たまたま倒れてたの、見つけただぇだよ。それより……」
じっと、フローとアンバーを見つめる彼女。
「この子達は、私の家族で……フローとアンバーっていうの」
「かーいね」
「ありがとう。その子は、あなたの家族?」
「うん!そーだよ!!シルバっていうの」
「そうなんだ。それで、あなたの名前は?」
「あ……わしゅれてた。ミヅキだよ」
「ミヅキ……ちゃん?それで、ここはどこなのか、聞いてもいいかな?」
ミヅキちゃんの話では、ここは彼女とシルバくんー何となく呼び捨てにしたらダメな気がするーが初めてあった思い出の場所で久しぶりに遊びにきたら、私たちが倒れていたらしい。
「そうなんだ……」
だから、隣に座っているシルバくんが機嫌悪そうにしているのか。
「おねーさんは、どーちて?」
「わからない」
心当たりはある。オパールの力の暴走……でも、見ず知らずの幼女に話していいものではないだろう。
その時だ。赤い鳥がミヅキちゃんに何かを渡した。
「オパール!!」
それは傷だらけになったオパールだった。
自身の力で傷をつけてしまったのだろう、息も絶え絶えになっている。
「だいじょーぶ」
ミヅキちゃんはそういうとふわっと光ったように見えた。
その光の中で、オパールの傷が癒えていく。
「すごい……」
「あい!」
自信満々にミヅキちゃんからオパールを渡されると、クークーと小さな寝息を立てていた。
「よかった」
「こっちに、ほかもいるって」
くいくいと引っ張られ、案内された先にはオニキスとルビーくんの姿が。
2匹とも、怪我もしてないようでホッとした。
「ミヅキちゃん、本当にありがとう」
「どーいたちまして!」
オニキスとルビーくん、オパールも目覚めたと思ったら、みんなで集まって何かを話し始めてしまった。
その時だ。
「え、いちぇかい?!」
ミヅキちゃんがそう言ったのが聞こえた。
シルバくんと先ほどオパールを連れて来てくれた赤い鳥、何やらミヅキちゃんは2匹とお話しできるようだ。
そういえば、家族って言ってたっけ?
眷属なのかな?でも、今異世界って言わなかった??
もしかして、みんなが話しているのもそのせい?
疑問で頭がぐるぐるしていると、ぐーとお腹が鳴った。
嘘でしょ?こんな時に普通鳴る?!
恥ずかしくて顔が赤くなるのを感じたけど、ミヅキちゃんは笑うことなく自分の住む町に行こうと誘ってくれた。
ミヅキちゃんはシルバに。
私はとりあえず、話し終えたらしいみんなに声をかけてオニキスに乗る。
「おっきーね」
「この子は自由に大きさを変えれるの」
そんなふうにぼのぼのとした会話をしているとすぐに町に着いた。
遠巻きに優しくミヅキちゃんを見守る視線と、私を見て怪しむ視線を感じる。
街の警備員だろう人から身分証を提示するよう言われて、以前作ったギルド証を見せると怪しまれた。
な、なぜ?
「おにーさん、おねーさんは遠い国から来たのよー」
ミヅキちゃんがそういうと、警備員は納得して通してくれた。
どうやらミヅキちゃんはここのアイドルみたいな存在らしい。
食事処に行くとそこでは連れてきた従魔は少し離れた待機スペースに案内すると言われた。
テイマーという職業があり、魔獣と仲良くなれると魔獣が従うらしい。
そして、そうやって従う魔獣を従魔と呼んでいるそうだ。
フロー達は魔獣ではないけれど、お店のルールなら仕方ない。
私とミヅキちゃんは2人でテーブルにつき、みんなはその待機スペースで待ってもらうことになった。
フロー達は早々にシルバくん達が話をして仲良くなって来ているようで、食事中は気にする必要はなさそうだ。
◆◇◆
待機スペースにて一番最初に声を上げたのはシルバと呼ばれたフェンリルだった。
どうやら、魔獣や神獣の眷属という違いはあれど、意思の疎通は可能なようだ。
【おい、お前らは何なんだ】
ーー僕ら?
【そうだ。俺たちとは違う何かの力を感じる】
ーー僕らは眷属。ここじゃない世界を見守る神獣さまに仕えるもの。そして、ご主人様は僕らを家族と呼ぶよ。
フローが普段とは異なる喋り方で答える。
【眷属?やはり異世界のものか】
ーーオパール、失敗したせい。せい!
オニキスが責めるようにオパールの周りで騒ぎ立てる。
反撃することなく、ポロポロとオパールは涙をこぼした。
【失敗は誰でもあるよー】
赤い鳥は自らシンクと名乗り、オパールを慰める。
自分よりも弱いものを守ろうとするのは神獣としての本能のようなものだろうか?
ーーなんや、わしらの力はこの世界じゃ制限されてしもうとるみたいやしなぁ。
ーー主さまを守るには、不十分ですわね。
眷属は世界に属するもの。故に目覚めた時にこの世界が別の世界だとは気づいていたようだ。
だが、メリアを不安にさせまいとしたのだろう。
【まあ、お前らがミヅキに害をもたらすんじゃないならかまわんがな】
【うんうん】
ーー僕らも、同じだよ。ご主人様に悪さしないなら構わないー。
こうして、従魔と眷属の協定が結ばれたのであった。
◆◇◆
そんな話がされていたとは思わず、私とミヅキちゃんはメニューを見てどれにしようか悩んでいた。
「うーん、どれがいいかな?」
「こりぇとこりぇ、きににゃるけど、こんにゃに食べれない……」
「なら、私がこっちを頼むから、ミヅキちゃんはそっちにしない?」
「いいの?」
「うん」
運ばれてきたサラダとお肉のセットとシチューのセットは、素朴な味だった。
塩味が足りないというか、全体的に素材味!!
ここだとこれが普通なのかな?とミヅキちゃんを見ると彼女は彼女でそうだったと言わんばかりの顔をしている。
むむむと眉を曲げたと思ったら、パッと塩を取り出してかけた。
「いりましゅか?」
「ありがとう、もらうよ」
その後は無言でもぐもぐと食べ合う。
き、きまずい。
それは彼女も同じだったようだけど、ふと目が会った瞬間、彼女は言った。
「あの、うさたん、しゃわりたいです」
「え?アンバーのこと??後で撫でる?」
「なでましゅ!」
元気に腕を上にあげて喜ぶミヅキちゃんに、思わず笑みが溢れる。
こんなに可愛い子のお願いなら、アンバーには生贄になってもらおう。
そんなミズキちゃんに私からもお願いをしてみることにした。
「シルバくん、私もヨシヨシしてもいいかな?」
「どーじょ!!」
あのでっかいもふもふは絶対気持ちいと思ったんだよね!!
その後、支払いで少し揉めたけれど、宝石の価値は同じようで何とかなった。
まさか、通貨が違うなんて思わないじゃない!
念のためにアイテムボックスにダイヤモンドを入れておいてよかった……
その後、ミヅキちゃんの案内で町を見て回る。
手芸屋さんのところでふと思いついて、ミヅキちゃんの瞳の紫と、シルバくんの黒、シンクの赤を購入し、お店の人に頼んで少し場所を借りる。
「ミヅキちゃん、ちょっと待っててね」
「うん?」
3色3本ずつ1メートルぐらいに切って、順番に結んでいく。
最初は難しいけど、慣れると単純作業だし、ミヅキちゃんは小さいからすぐにできるだろう。
最後に留め具用の木製ビーズを買って、これでよし。
「ごめんね、お待たせ」
「いえ、だいじょーぶですよ」
その後も、いろんな話をして、あっという間に夕方になった。
「おねーさん、これからどうしゅるの?」
その声は、私たちの帰る場所がないことを知っているかのようなそんな声に感じた。
「わかんないけど、きっと大丈夫」
オパールの力でここにきたのなら、きっとオパールの力で帰れるはずだ。
それより……
「ミヅキちゃん、今日一日付き合ってくれてありがとう」
そう言って私は、手芸屋さんで作らせてもらったミサンガを渡した。
「こりぇ」
「さっきのお店で作らせてもらったんだ。感謝の印だよ!」
「わ、わたし、なにも渡せにゃ……」
その時、シンクの羽がはらりと2枚落ちた。
シンクの方をミヅキちゃんは見つめるけど、シンクは知らん顔で毛繕いをしている。
ミヅキちゃんはもう!と少し拗ねたかのような顔をしたかと思うと、シンクに本当に嬉しそうにお礼を言った。
そして、私に1枚その綺麗な羽を渡してくれる。
「おともだちの、印だね!」
「うん!!」
私がそういうと、ミヅキちゃんは微笑んだ。
羽が嬉しくて、ギュッと抱きしめる。
次の瞬間、ミヅキちゃんが焦ったかのような顔をして何かを叫んだ。
でも、その言葉は私には聞こえなかった。
まるで、ここにきた時のように、私の意識はぐるりぐるりと回転するように落ちていったから。
ーー主。妾の主。大丈夫かえ?
目を覚ますと、セラフィが一番に目の中に飛び込んできた。
辺りを見渡すと、そこは見慣れた家の庭だった。
少し花や草が散らばっている。
「え?あれ??」
ミヅキちゃんや、シルバくんは??
そう尋ねる私を、みんな怪訝そうに見てくる。
ーーごめんなさい、ごめんなさい。
オパールの力で、私は今の今まで意識を失っていたそうだ。
セラフィが必死に治療してくれていたらしい。
じゃあ、あれは……夢?
そう思った瞬間、カサリと手の中に何かがあることに気づく。
広げると、そこには赤い羽が。
それに、アイテムボックスの中に入れていたダイヤモンドもない。
代わりにあるのは紫と赤と黒の刺繍糸。
……本当に、夢だったのだろうか?
もし、違うとしたら、また会えるだろうか?
あの可愛い女の子に。
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