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トランキル帝国編

お客様

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毒餌を使うことしか伝えてないけど、大丈夫だろうか?
心配そうな表情を浮かべたままの私にアンバーがまだ怒った様子で言いきった。

ーもう放っておけばいいんですわ!
ー毒草もリンゴもあるし~大丈夫でしょ~。

それに続くラリマーの言葉に、他の子たちも頷く。
そうだよね。でも、気になるんだよなぁ・・・あの子。
凄く思いつめた顔をしていたから。
とりあえず、またオパールとオニキスに頼んで様子だけでも見ておこうかな。

「オパール、オニキーーー」
「失礼する。ここが鍛冶屋【Casualidad】だろうか?」

2匹に頼もうとした時だった。
程よく日焼けしたような肌。明るい金色の髪。頭についた二つの丸い耳に彼が獣人であるとわかる。
それから研ぎ澄まされたナイフのように鋭い瞳、シャープな顔立ちは青年のようだけれども、頬に僅かに残った丸みがまだ彼は幼い事を教えてくれる。

「確かにここが【Casualidad】ですけど・・・」
「!やはりか」

嬉しそうににかっと笑う彼は、太陽を思わせる。

「あ、あの、あなたは?」
「私か?私は、レグルス。貴公きこうのことを聞き、お願いに参った。どうか、私に武器を作ってはくれないだろうか?」
「ぶ、武器ですか?」
「ああ」
「えーと、それなら、お店の中に既製品が」
「いや、既製品ではなく、素材持ち込みでお願いしたいのだ」
「素材?」
「これだ」

レグルスさんはそういうと軽々と持っていた大きな革袋をわたしの目の前に置いた。
ドサリと重そうな音がなった。
恐る恐る袋を覗くと中から巨大なライオンの頭が見えた。

「キマイラだ。私が倒した」

少し得意げな表情でレグルスさんはそれを取り出した。
ヤギの首元からライオンの顔がくっついており、尻尾の部分には蛇の頭がある。
これが、キマイラ。
生き物を弄んだかのようなその姿に若干引いていると、脳内辞書がどの素材が鍛冶で使えるのかを教えてくれる。
まず、ライオンの牙。そのまま加工しなくても大きく剣として使えそうな程に鋭いそれを加工すれば、炎を放つ魔剣になる。
それからヤギの角。これはナイフに出来るようだ。だが、牙に比べて性能は落ちる。
爪は使えないようだ。
それと、蛇の頭の尻尾。これは蛇の目を加工し、杖にすることができる。
武器として使えるのは、この3点だけのようだ。
だが、体の皮は強固で防御に優れており伸び縮みもするので防具に使えるし、一応体の肉も食べられる。
食べたいとは思わないけど・・・。
とりあえず、解体できない事を伝えてどうして武器が欲しいのか、聞いてみることにしよう。
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