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1.真っ白な世界に置いてけぼり?
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「~~~♪、~~♪」
鼻唄を歌いながら、オーブンから出来立てのクッキーを取り出すと、ナッツの香ばしい香りと甘いバニラオイルの香りが辺り一面広がる。
「うん、いい匂~い!」
スンスンと匂いを嗅いで、うふふと笑う。今日は、学校の帰りに友人の朱音の家で遊ぶ予定なのだ。せっかくなのでクッキーを焼いて持っていこうと、朝早くから頑張って起きて焼いた。
きっと喜んでくれるよね。と思いながら、1つ味見をと、まだ少し湯気の立つ熱々のクッキーをフーフーと息を吐きかけて冷ましながら口に放り込む。アーモンドプードルのサクサクっとした食感がたまらないっ!うん、美味しい!!
無事成功したのを確認し、すっかり甘い匂いが染み込んだエプロンを外して、脱衣場にある鏡を見る。少し癖っ毛の髪がボサボサになっていたのを見て、緩く三つ編みにして、満足げに「よし!」と微笑むと、学校へ行く準備をする。準備を終えると、クッキーの粗熱が冷めていたので、ざらざらーと袋に放り込み、鞄の中へ。
時刻は午前8:00。
「いってきます!」
そう言って、元気よく家を飛び出した。……筈だった。
けれども、目の前にあるのは、白い空間。
咄嗟に今出てきた方へと目を向ける。ない。なぜ!?
つい先ほどまであったはずの今までいたはずの家がまるで最初からなかったかのように存在しなかった。
「え、え?なんで?どうして??」
鞄の中から最新のスマートフォンを取り出す。
つい最近買ってもらったばかりのそれは私にとってすでに大事な宝物の一つだ。
「嘘でしょ……。圏外……」
いや待て、そもそもついさっきまで私は家にいたし、玄関から外に出ただけの筈だ。
なんで?どうして?
そんな感情が頭を過っていく。最近流行のアニメや漫画、小説みたいな召喚?でも、だったら、神様とか、それっぽいのがいてもおかしくないよね??
と頭を抱えていると1人の少年が立っていた。
黒髪、前髪で顔は隠れ、少し大きめのスウェットで手が隠れている。
だ、誰?本当に神様??
驚いていると、少年が口を開いた。
「あのさ、君、要らないんだよねー」
「は?」
「折角、いい感じの世界になってきたのに、君が入ると予定が狂うし、ほんと、邪魔。本当だったらあの子と彼が縁を結ぶ筈だったのに、君が入ったせいで修正しないといけないし」
「えっと、なに?どういう事?」
「なに?物分かりまで悪いわけ?僕は優しいから教えてやるけど、僕はね、君がいた世界の神様なわけ。で、あの世界が良い流れになるように見守ったり、時々手を回してるのだけどさー」
「は、はあ」
「な、の、に!!君が入ったせいで予定が大幅に狂ったんだよ。わかる?わかるわけないよねー?折角、毎年、毎月単位で珍しく頑張ってやってたのにっ」
君の所為で、ぱぁだよ、ぱぁ!!と指先が僅かに見える袖口が私に向けられる。よくわからないが、予定通りに行かないのは私が悪いらしい。そして、心底面倒くさそうに、怒りながら彼は続ける。
「しかもさ、1回なら偶然だと思うよ?でも、それが、何度も何度も何度も何度も……良い加減、優しい、優しーい僕でも怒るのは当たり前だよね?」
「えっと、よくわからないんですけど……」
「だからー!僕がくっつけようとしてる子に対して、君が馴れ馴れしすぎて、アプローチが成功しないんだよっ!」
前髪で見えないけど、見えていたらきっとかなり睨みつけている。そんな形相が目に浮かぶぐらいキツイ口調で責め立てる自称神様に私は呆然とした。
え、そんな、私が仲良くしてる子って……まさか、朱音のことだろうか?
「そうだよ!今日も本当はあの子に会う約束を取り付けさせようとしてたのに、君と遊ぶからってすぐ断られたんだ!!本当に邪魔、要らないっ!」
「え、それって私の所為なの?!」
「そうだって言ってんじゃん!!僕、もう、予定がこれ以上狂うの嫌なんだよね。……だからさー」
「な、なんか嫌な予感がする……」
「ピンポーン!此処は僕の世界じゃなくて、常世という神々が住まう場所さ。そんな場所に君みたいな、ちっぽけな虫が紛れ込んだとわかったら、当然、駆除されるだろうね」
「そんな!」
「ふふ、僕はね、無駄なことはしたくないんだ。だから、君を此処に招いて、今までの恨み辛みを吐き出してスッキリしたらそれでいいの。さーてと、邪魔者も居なくなったことだし、これで予定通りにことが進むぞー」
「ま、まってっ!!」
「じゃあねー」
言いたいことだけ言って、神様だという少年は姿を消した。元凶である少年が姿を消したということは、私は1人、この真っ白な世界に取り残されたということだ。
「なんで?……どうすれば良いのよーっ!!」
思わず、叫ぶけれどもその声は、誰にも聞かれることなく消えていった。
鼻唄を歌いながら、オーブンから出来立てのクッキーを取り出すと、ナッツの香ばしい香りと甘いバニラオイルの香りが辺り一面広がる。
「うん、いい匂~い!」
スンスンと匂いを嗅いで、うふふと笑う。今日は、学校の帰りに友人の朱音の家で遊ぶ予定なのだ。せっかくなのでクッキーを焼いて持っていこうと、朝早くから頑張って起きて焼いた。
きっと喜んでくれるよね。と思いながら、1つ味見をと、まだ少し湯気の立つ熱々のクッキーをフーフーと息を吐きかけて冷ましながら口に放り込む。アーモンドプードルのサクサクっとした食感がたまらないっ!うん、美味しい!!
無事成功したのを確認し、すっかり甘い匂いが染み込んだエプロンを外して、脱衣場にある鏡を見る。少し癖っ毛の髪がボサボサになっていたのを見て、緩く三つ編みにして、満足げに「よし!」と微笑むと、学校へ行く準備をする。準備を終えると、クッキーの粗熱が冷めていたので、ざらざらーと袋に放り込み、鞄の中へ。
時刻は午前8:00。
「いってきます!」
そう言って、元気よく家を飛び出した。……筈だった。
けれども、目の前にあるのは、白い空間。
咄嗟に今出てきた方へと目を向ける。ない。なぜ!?
つい先ほどまであったはずの今までいたはずの家がまるで最初からなかったかのように存在しなかった。
「え、え?なんで?どうして??」
鞄の中から最新のスマートフォンを取り出す。
つい最近買ってもらったばかりのそれは私にとってすでに大事な宝物の一つだ。
「嘘でしょ……。圏外……」
いや待て、そもそもついさっきまで私は家にいたし、玄関から外に出ただけの筈だ。
なんで?どうして?
そんな感情が頭を過っていく。最近流行のアニメや漫画、小説みたいな召喚?でも、だったら、神様とか、それっぽいのがいてもおかしくないよね??
と頭を抱えていると1人の少年が立っていた。
黒髪、前髪で顔は隠れ、少し大きめのスウェットで手が隠れている。
だ、誰?本当に神様??
驚いていると、少年が口を開いた。
「あのさ、君、要らないんだよねー」
「は?」
「折角、いい感じの世界になってきたのに、君が入ると予定が狂うし、ほんと、邪魔。本当だったらあの子と彼が縁を結ぶ筈だったのに、君が入ったせいで修正しないといけないし」
「えっと、なに?どういう事?」
「なに?物分かりまで悪いわけ?僕は優しいから教えてやるけど、僕はね、君がいた世界の神様なわけ。で、あの世界が良い流れになるように見守ったり、時々手を回してるのだけどさー」
「は、はあ」
「な、の、に!!君が入ったせいで予定が大幅に狂ったんだよ。わかる?わかるわけないよねー?折角、毎年、毎月単位で珍しく頑張ってやってたのにっ」
君の所為で、ぱぁだよ、ぱぁ!!と指先が僅かに見える袖口が私に向けられる。よくわからないが、予定通りに行かないのは私が悪いらしい。そして、心底面倒くさそうに、怒りながら彼は続ける。
「しかもさ、1回なら偶然だと思うよ?でも、それが、何度も何度も何度も何度も……良い加減、優しい、優しーい僕でも怒るのは当たり前だよね?」
「えっと、よくわからないんですけど……」
「だからー!僕がくっつけようとしてる子に対して、君が馴れ馴れしすぎて、アプローチが成功しないんだよっ!」
前髪で見えないけど、見えていたらきっとかなり睨みつけている。そんな形相が目に浮かぶぐらいキツイ口調で責め立てる自称神様に私は呆然とした。
え、そんな、私が仲良くしてる子って……まさか、朱音のことだろうか?
「そうだよ!今日も本当はあの子に会う約束を取り付けさせようとしてたのに、君と遊ぶからってすぐ断られたんだ!!本当に邪魔、要らないっ!」
「え、それって私の所為なの?!」
「そうだって言ってんじゃん!!僕、もう、予定がこれ以上狂うの嫌なんだよね。……だからさー」
「な、なんか嫌な予感がする……」
「ピンポーン!此処は僕の世界じゃなくて、常世という神々が住まう場所さ。そんな場所に君みたいな、ちっぽけな虫が紛れ込んだとわかったら、当然、駆除されるだろうね」
「そんな!」
「ふふ、僕はね、無駄なことはしたくないんだ。だから、君を此処に招いて、今までの恨み辛みを吐き出してスッキリしたらそれでいいの。さーてと、邪魔者も居なくなったことだし、これで予定通りにことが進むぞー」
「ま、まってっ!!」
「じゃあねー」
言いたいことだけ言って、神様だという少年は姿を消した。元凶である少年が姿を消したということは、私は1人、この真っ白な世界に取り残されたということだ。
「なんで?……どうすれば良いのよーっ!!」
思わず、叫ぶけれどもその声は、誰にも聞かれることなく消えていった。
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