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第5章 皇帝編
第194話 モンゴル帝国の分裂(1) ~モンゴル帝国帝位継承戦争~
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アレッポ攻防戦に先立つこと数か月前。
モンゴル帝国のモンケハーンは東征軍を統括する弟のフビライに不信感を抱いていた。
東征を急ぐモンケに対して、フビライは漠南漢地大総督に任命された後、南宋を侵攻するに当たって、正面攻撃による短期決戦を避け、雲南・大理遠征を行うなど長期戦の構えを明らかにしていたのだ。
「フビライは何をしているの。いつになったら南宋を討伐できるのだ!」
フビライは後方のドロン・ノールに腰を据えて動かず、ここに遊牧宮廷の補給基地となる都城の開平府を築き、姚枢ら漢人のブレーンを登用して中国を安定して支配する道を模索していた。
モンケハーンには、この動きが東方で自立を目指しているようにも見えた。
フビライを南宋作戦の責任者から更迭し、南宋への戦線を東方三王家筆頭でテムゲ・オッチギンの孫タガチャルにまかせたがすぐに撤退してしまう。
「もはやフビライに任せはおけぬ。我が自ら陣頭指揮に立って終わらせてくれるわ!」
自ら陝西に入って親征を開始し、河南から四川の南宋領を転戦したが、釣魚城攻略中に、軍中で流行した疫病に罹って陣没した。
急死したモンケは、後継者をはっきりときめておらず、後継者争いが発生する。
後継者候補は大きく分けてフビライ、フラグ、アリクブケらのモンケの弟とモンケの遺児があったが、焦点は弟たちとなった。
だが、フラグは遠くイランの地で遠征を行っており、帝位争奪に参加しようと思っても間に合わないのは明白であり、結局最有力候補はフビライとアリクブケに絞られた。
遊牧民の末子相続の風習やアリクブケが帝国の本拠地たるモンゴル高原にあることからいって、アリクブケがかなり優勢だった。
その上、フビライは生前のモンケと南宋侵攻の方針で対立しており、モンケの旧臣、遺児たちもこぞってアリクブケを支持しており、フビライは圧倒的に不利な状況にあった。
しかし、多くの者がフビライの性急な北還を予想している中で、フビライはあえて南進を続け、鄂州を攻め始めた。
これには急いで北還することで配下の軍、特に漢人部隊が離散することを防ぎ、モンケの死により散り散りになった諸将を味方に引き入れる目的があった。
結果、この狙いは見事に的中し、遠征途上にあったモンゴル軍の諸将は続々とフビライの下に結集し、特に東方三王家の軍を率いるタガチャルがフビライの陣営に入ったことで、日和見を決め込んでいた多くの軍団もフビライ軍に合流した。
フビライは、金蓮川のチャブイからの密使から、金蓮川のアラムダールと燕京のドルジが民兵の徴集を開始しており、至急北還するよう催促された。ここに至ってようやくフビライは全軍に北還を命じた。
フビライは本拠地、金蓮川でクリルタイを開き、大ハーン即位を一方的に宣言した。
これに対し、アリクブケ側はフビライの即位を聞くとそれに対抗して、こちらもクリルタイを開き大ハーンに即位した。
帝国始まって以来初めて大ハーンが2人並び立ち、4年に及ぶモンゴル帝国帝位継承戦争相争うことになった
が、フビライ側に付いた将兵の多くがこの戦争に自分たちの未来を賭けており、戦意旺盛だったのに対し、アリクブケ側はただモンケ以来のカラコルム政権に逆らわなかっただけという者が多く、戦意に乏しかった。
さらに、フラグの西征、フビライの東征という2大遠征でモンゴル高原の兵力はさして多くはなかった。
また、フビライが華北農耕地帯の豊かな物資を背景にカラコルムへの輸出を差し止めるという経済封鎖を行ったため、初戦からフビライ側が優勢に進んでいた。
◆
アレッポ攻防戦の敗戦後、フラグは大ハーン崩御の知らせを受けた。
フラグはカラコルムへ向かって引き返し始めたが、帰路の途上で次兄フビライと弟アリクブケによる帝位継承戦争が始まったことを聞くと、西アジアに留まり自立王朝としてイルハン朝を開くことを決断した。
イルハン国の建国の成り行きで、西アジア地域を占拠して自立したため、隣接するジュチ・ウルスのベルケとはホラズム、アゼルバイジャンとグルジアの支配権を巡って対立した。
皇位継承については、ベルケはアリクブケを支持し、フラグは、これに対抗して、フビライと友好関係を結んだ。
ジュチ・ウルスのベルケはガイア帝国のマムルーク朝と友好を結び、イルハン朝挟撃の構えを見せた。
これに対し、フラグはマムルーク朝の背後にあるビザンチン帝国と友好を結ぼうと密使を送ってきたが、フリードリヒに臣従するジュチ・ウルスと敵対する相手をコンスタンツェ女帝が全く相手にするはずがなかった。
ベルケは、必勝を期するため、神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒに援軍を要請した。
「ハトゥンは側室待遇だし、舅殿の要請には答えねばなるまい…それに宗主国としての面子もあるしな…」
フリードリヒは暗黒騎士団の出撃を決めた。
その一方で、マムルーク朝には越境して偵察軍を派遣することでイルハン国に圧力をかけるように要請した。
マムルーク朝もイルハン国とは国境を接する当事者であり、スルターナのシャジャル・アッドゥルは二つ返事でこれを了承した。
◆
暗黒騎士団の出撃準備が進む中、深夜にフリードリヒの寝所を密かに訪れた者がいた。
──城の警備をかい潜るとは…何者だ?
妖艶な美女だったが、闇の気配があり、その威圧感が半端ない。明らかに人族ではない。
「こんな夜更けに何者だ?」
「私の名はマーレ」
──タラサの母親と同じ名前だ。まさか…
「もしかしてティアマトなのか?」
「あら。一発で正体がばれるなんて…さすがだねえ」
ティアマトは、メソポタミア神話における原初の海の女神で、淡水の神アプスーと交わり、より若い神々を生み出した。
その容姿は龍の姿をしている。ドラゴンではなく、蛇のように長い東洋風の龍だ。
だが、新しい神々と対立したため邪龍などと呼ばれる。
ティアマトは、神々と戦うべく、自らが生み出したムシュマッヘという七岐の大蛇ほか10の怪物からなる武装集団を率いていた。
「そのティアマトが私に何の用だ?」
「私は昔からメソポタミアを縄張りにしていてね。だが、モンゴルとかいう奴らに蹂躙されちまった。私は縄張りを荒らされたくないのさ」
「心情は理解するが、だからどうだというのだ?」
「リリスのように、あんたに味方になってもらって、奴らを追い払いたいのさ」
フリードリヒは脈絡なくリリスの話題を振られ、当惑気味に問うた。
「なぜリリスのことを知っている?」
「友達とまでは言わないけれど、昔からのお隣さんだからねえ…」
ティアマトは愛妾であるタラサの母だから、実質的に義母のようなものだ。
それに、どの道ジュチ・ウルスの見方をすることは既定路線だし…
「わかった。いいだろう。どの道、イルハン国にはもう一撃加えておく予定だった」
そこでフリードリヒは話題を変えた。
「ところで、あなたに会わせたい人がいる」
「いったい誰のことだい?」
「タラサだ」
「えっ! タラサがここにいるのかい?」
ティアマトは、意表を突かれたとばかり、驚いた表情をしている。
「ああ。今は俺の愛妾をやっていて、子供もいる」
「なんと子供まで…それはぜひ会ってみたいねえ」
「わかった。手配しよう」
そこでティアマトは一転してなまめかしい表情になるとフリードリヒを誘惑してくる。
「それで…報酬の方はリリスと同じでいいんだろう?」
そして…
◆
翌朝。
早速、タラサと子供たちを呼びだしたが、部屋に入って来るなり、フリードリヒの横に控える妖艶な美女を見て不思議そうな顔をした。
「フリードさん。会わせたい人って?」
「ああ。この人だ。マーレさんだよ」
「ええっ!」
タラサは驚愕した。
タラサは、もう30代も後半の歳にもかかわらず、フリードリヒの眷属化が進んでおり、20代前半の容姿を保っていた。
紹介された美女は、若々しく、容姿だけ見ると20代後半くらいに見える…
「本当にお母ちゃんなの?」
ティアマトは感極まって、タラサを抱きしめると言った。
「ああ。タラサなのね。置き去りにしてしまって、ごめんね」
「もういいんです。こうして会えたんだから…」
しばらくして、感情が治まってくるとタラサは子供たちを紹介した。
「こちらが子供たちです」
「お祖母様。長女のマーレです。お祖母様の名前をいただきました。これからよろしくお願いします」
「まあ、そうなんだね」と言うとティアマトはタラサ同様に抱きしめる。
が、ふと気づくと言った。
「あなた。お腹が大きいのかい?」
「ええ。あと半年くらいです」
「すると、あたしは、会って早々にお祖母さんどころか、もうすぐひいお祖母さんになっちまうのかい」
ティアマトは、呆れたような顔をして言った。
その言いぶりが可笑しくて、一同は失笑した。
笑いが収まったあと、ティアマトは真顔になって言った。
「タラサはあたしの正体のことは聞いているのだろう」
「はい。フリードさんから聞きました」
「なら今更だね」
「そうだよ。お母ちゃんも一緒に暮らそうよ。このお城では異形の者は珍しくないから、大丈夫だよ。
ね。いいでしょ。フリードさん」
タラサは出会った頃のような甘えた声で頼んでくる。
これにはフリードリヒも拒否できなかった。
「ああ。そうだな」
「やったあ!」
このように、ティアマトの来訪というびっくりイベントはあったものの、出撃準備は整い、フリードリヒは暗黒騎士団を率いてジュチ・ウルスのベルケのもとへ進発した。
もちろんタラサも参陣したし、ティアマトとその怪物軍団も同行することになった。
モンゴル帝国のモンケハーンは東征軍を統括する弟のフビライに不信感を抱いていた。
東征を急ぐモンケに対して、フビライは漠南漢地大総督に任命された後、南宋を侵攻するに当たって、正面攻撃による短期決戦を避け、雲南・大理遠征を行うなど長期戦の構えを明らかにしていたのだ。
「フビライは何をしているの。いつになったら南宋を討伐できるのだ!」
フビライは後方のドロン・ノールに腰を据えて動かず、ここに遊牧宮廷の補給基地となる都城の開平府を築き、姚枢ら漢人のブレーンを登用して中国を安定して支配する道を模索していた。
モンケハーンには、この動きが東方で自立を目指しているようにも見えた。
フビライを南宋作戦の責任者から更迭し、南宋への戦線を東方三王家筆頭でテムゲ・オッチギンの孫タガチャルにまかせたがすぐに撤退してしまう。
「もはやフビライに任せはおけぬ。我が自ら陣頭指揮に立って終わらせてくれるわ!」
自ら陝西に入って親征を開始し、河南から四川の南宋領を転戦したが、釣魚城攻略中に、軍中で流行した疫病に罹って陣没した。
急死したモンケは、後継者をはっきりときめておらず、後継者争いが発生する。
後継者候補は大きく分けてフビライ、フラグ、アリクブケらのモンケの弟とモンケの遺児があったが、焦点は弟たちとなった。
だが、フラグは遠くイランの地で遠征を行っており、帝位争奪に参加しようと思っても間に合わないのは明白であり、結局最有力候補はフビライとアリクブケに絞られた。
遊牧民の末子相続の風習やアリクブケが帝国の本拠地たるモンゴル高原にあることからいって、アリクブケがかなり優勢だった。
その上、フビライは生前のモンケと南宋侵攻の方針で対立しており、モンケの旧臣、遺児たちもこぞってアリクブケを支持しており、フビライは圧倒的に不利な状況にあった。
しかし、多くの者がフビライの性急な北還を予想している中で、フビライはあえて南進を続け、鄂州を攻め始めた。
これには急いで北還することで配下の軍、特に漢人部隊が離散することを防ぎ、モンケの死により散り散りになった諸将を味方に引き入れる目的があった。
結果、この狙いは見事に的中し、遠征途上にあったモンゴル軍の諸将は続々とフビライの下に結集し、特に東方三王家の軍を率いるタガチャルがフビライの陣営に入ったことで、日和見を決め込んでいた多くの軍団もフビライ軍に合流した。
フビライは、金蓮川のチャブイからの密使から、金蓮川のアラムダールと燕京のドルジが民兵の徴集を開始しており、至急北還するよう催促された。ここに至ってようやくフビライは全軍に北還を命じた。
フビライは本拠地、金蓮川でクリルタイを開き、大ハーン即位を一方的に宣言した。
これに対し、アリクブケ側はフビライの即位を聞くとそれに対抗して、こちらもクリルタイを開き大ハーンに即位した。
帝国始まって以来初めて大ハーンが2人並び立ち、4年に及ぶモンゴル帝国帝位継承戦争相争うことになった
が、フビライ側に付いた将兵の多くがこの戦争に自分たちの未来を賭けており、戦意旺盛だったのに対し、アリクブケ側はただモンケ以来のカラコルム政権に逆らわなかっただけという者が多く、戦意に乏しかった。
さらに、フラグの西征、フビライの東征という2大遠征でモンゴル高原の兵力はさして多くはなかった。
また、フビライが華北農耕地帯の豊かな物資を背景にカラコルムへの輸出を差し止めるという経済封鎖を行ったため、初戦からフビライ側が優勢に進んでいた。
◆
アレッポ攻防戦の敗戦後、フラグは大ハーン崩御の知らせを受けた。
フラグはカラコルムへ向かって引き返し始めたが、帰路の途上で次兄フビライと弟アリクブケによる帝位継承戦争が始まったことを聞くと、西アジアに留まり自立王朝としてイルハン朝を開くことを決断した。
イルハン国の建国の成り行きで、西アジア地域を占拠して自立したため、隣接するジュチ・ウルスのベルケとはホラズム、アゼルバイジャンとグルジアの支配権を巡って対立した。
皇位継承については、ベルケはアリクブケを支持し、フラグは、これに対抗して、フビライと友好関係を結んだ。
ジュチ・ウルスのベルケはガイア帝国のマムルーク朝と友好を結び、イルハン朝挟撃の構えを見せた。
これに対し、フラグはマムルーク朝の背後にあるビザンチン帝国と友好を結ぼうと密使を送ってきたが、フリードリヒに臣従するジュチ・ウルスと敵対する相手をコンスタンツェ女帝が全く相手にするはずがなかった。
ベルケは、必勝を期するため、神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒに援軍を要請した。
「ハトゥンは側室待遇だし、舅殿の要請には答えねばなるまい…それに宗主国としての面子もあるしな…」
フリードリヒは暗黒騎士団の出撃を決めた。
その一方で、マムルーク朝には越境して偵察軍を派遣することでイルハン国に圧力をかけるように要請した。
マムルーク朝もイルハン国とは国境を接する当事者であり、スルターナのシャジャル・アッドゥルは二つ返事でこれを了承した。
◆
暗黒騎士団の出撃準備が進む中、深夜にフリードリヒの寝所を密かに訪れた者がいた。
──城の警備をかい潜るとは…何者だ?
妖艶な美女だったが、闇の気配があり、その威圧感が半端ない。明らかに人族ではない。
「こんな夜更けに何者だ?」
「私の名はマーレ」
──タラサの母親と同じ名前だ。まさか…
「もしかしてティアマトなのか?」
「あら。一発で正体がばれるなんて…さすがだねえ」
ティアマトは、メソポタミア神話における原初の海の女神で、淡水の神アプスーと交わり、より若い神々を生み出した。
その容姿は龍の姿をしている。ドラゴンではなく、蛇のように長い東洋風の龍だ。
だが、新しい神々と対立したため邪龍などと呼ばれる。
ティアマトは、神々と戦うべく、自らが生み出したムシュマッヘという七岐の大蛇ほか10の怪物からなる武装集団を率いていた。
「そのティアマトが私に何の用だ?」
「私は昔からメソポタミアを縄張りにしていてね。だが、モンゴルとかいう奴らに蹂躙されちまった。私は縄張りを荒らされたくないのさ」
「心情は理解するが、だからどうだというのだ?」
「リリスのように、あんたに味方になってもらって、奴らを追い払いたいのさ」
フリードリヒは脈絡なくリリスの話題を振られ、当惑気味に問うた。
「なぜリリスのことを知っている?」
「友達とまでは言わないけれど、昔からのお隣さんだからねえ…」
ティアマトは愛妾であるタラサの母だから、実質的に義母のようなものだ。
それに、どの道ジュチ・ウルスの見方をすることは既定路線だし…
「わかった。いいだろう。どの道、イルハン国にはもう一撃加えておく予定だった」
そこでフリードリヒは話題を変えた。
「ところで、あなたに会わせたい人がいる」
「いったい誰のことだい?」
「タラサだ」
「えっ! タラサがここにいるのかい?」
ティアマトは、意表を突かれたとばかり、驚いた表情をしている。
「ああ。今は俺の愛妾をやっていて、子供もいる」
「なんと子供まで…それはぜひ会ってみたいねえ」
「わかった。手配しよう」
そこでティアマトは一転してなまめかしい表情になるとフリードリヒを誘惑してくる。
「それで…報酬の方はリリスと同じでいいんだろう?」
そして…
◆
翌朝。
早速、タラサと子供たちを呼びだしたが、部屋に入って来るなり、フリードリヒの横に控える妖艶な美女を見て不思議そうな顔をした。
「フリードさん。会わせたい人って?」
「ああ。この人だ。マーレさんだよ」
「ええっ!」
タラサは驚愕した。
タラサは、もう30代も後半の歳にもかかわらず、フリードリヒの眷属化が進んでおり、20代前半の容姿を保っていた。
紹介された美女は、若々しく、容姿だけ見ると20代後半くらいに見える…
「本当にお母ちゃんなの?」
ティアマトは感極まって、タラサを抱きしめると言った。
「ああ。タラサなのね。置き去りにしてしまって、ごめんね」
「もういいんです。こうして会えたんだから…」
しばらくして、感情が治まってくるとタラサは子供たちを紹介した。
「こちらが子供たちです」
「お祖母様。長女のマーレです。お祖母様の名前をいただきました。これからよろしくお願いします」
「まあ、そうなんだね」と言うとティアマトはタラサ同様に抱きしめる。
が、ふと気づくと言った。
「あなた。お腹が大きいのかい?」
「ええ。あと半年くらいです」
「すると、あたしは、会って早々にお祖母さんどころか、もうすぐひいお祖母さんになっちまうのかい」
ティアマトは、呆れたような顔をして言った。
その言いぶりが可笑しくて、一同は失笑した。
笑いが収まったあと、ティアマトは真顔になって言った。
「タラサはあたしの正体のことは聞いているのだろう」
「はい。フリードさんから聞きました」
「なら今更だね」
「そうだよ。お母ちゃんも一緒に暮らそうよ。このお城では異形の者は珍しくないから、大丈夫だよ。
ね。いいでしょ。フリードさん」
タラサは出会った頃のような甘えた声で頼んでくる。
これにはフリードリヒも拒否できなかった。
「ああ。そうだな」
「やったあ!」
このように、ティアマトの来訪というびっくりイベントはあったものの、出撃準備は整い、フリードリヒは暗黒騎士団を率いてジュチ・ウルスのベルケのもとへ進発した。
もちろんタラサも参陣したし、ティアマトとその怪物軍団も同行することになった。
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※表紙絵は「茜328」様からいただいたファンアートを使用させていただきました! 素敵なイラストをありがとうございます!
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