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第5章 皇帝編
第174話 ロートリンゲン学園 ~ブリュンヒルデの学園生活~
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この世界に義務教育はまだない。
教育のレベルは低く、知識階級といえば、まずは教会関係者と貴族であるが、貴族でも地位の低いものは文盲であることも珍しくなかった。
フリードリヒは、ロートリンゲン大公となった折、教育改革についても着手することとし、学校制度の整備を文部科学卿のゲプハルト・フォン・ツァーベルに命じていた。
この一環として、首都ナンツィヒにもアウクスブルクのシュタウフェン学園に習って、ロートリンゲン学園が5年前に設立されていた。その後、学園は5年の実績を積み、次第に名門校と世間にはとらえられてきていた。
ロートリンゲン学園は、シュタウフェン学園と同じく、12歳から14歳ごろまでの2年間を修業期間としており、中等的な学問や社会的な作法から武芸にいたるまで幅広い教育が行われる。
入学に当たっては、初等教育を受けたことを前提とした入学試験をクリアする必要があった。
現代の感覚でいうと中学校に近い性格の学校である。
◆
ブリュンヒルデは12歳となった。
庶子とはいえ、皇帝の娘であるから、当然に学園で教育を受けるということになった。
だが、学園に行くとなるとヴィオランテにフリーダ・フォン・アイヒェンドルフというご学友兼ボディーガードがついていたように、誰かを付けた方が安心だ。
いや。ブリュンヒルデの場合は、ボディーガードは不要だから、むしろ暴走を止める役といった方が適切か…
フリードリヒとヴィオランテは、ブリュンヒルデを呼んだ。
「これから学園に通うに当たり、ご学友が必要だと思うのだが…」
「そんなのリーンがいれば十分ですわ。お父様」
──しかし、いつまでたっても舎弟のままでいいのか…それに欲しいのは舎弟ではなく、ブリュンヒルデを制止する監督役なのだが…
だが、同じ年頃でそのようなことができる人は思い当たらない。
「…どう思う?ヴィオラ?」
「そうねえ…すぐには思い当たらないからリーンハルトでいいんじゃないかしら。それで本人はどうなの?」
今日もブリュンヒルデの後ろに控えているリーンハルトは言った。
「もちろんお引き受けいたします。身命を賭して、姫様のお命を守る所存でございます」
──そんなに力まなくともいいんだが…
「わかった。本人がいいなら、当面、そのようにしよう」
◆
ブリュンヒルデは、2年間の冒険者生活で、帝国に10人程度しかいないアダマンタイト冒険者まで昇格していた。実力的にはオリハルコンに届いているとは思われるが、運悪くSSSランクの獲物には巡り合えなかったのだ。
しかし、白銀のアレックスほどではないにしても、「ブラッディ・ヒルデ」の名は帝国中に轟いていた。
そして、「ブラッディ・ヒルデ」といういかにもな二つ名と相まって、ブリュンヒルデは、怖い女とか、癇癪持ちといった無責任なイメージが世間には広まっていた。
いよいよ学園登校の初日がやってきた。
身分の高い貴族は、通常は、馬車で送り迎えがされる。
しかし、ブリュンヒルデは言った。
「馬車なんかに乗っていたら体が鈍ってしまうわ。学校までは近いし、歩きましょう。行くわよ。リーン」
「はい。姫様」
ブリュンヒルデが着ているのはヴィオランテがデザインしたセーラー服であり、この学園の制服であった。
リーンハルトが着ているのは同じくヴィオランテがデザインしたブレザーである。
ブリュンヒルデは肩で風を切って颯爽と歩いている。
通常は従者が先導するのだろうが、ブリュンヒルデの場合は逆だった。彼女が先頭を歩き、リーンハルトがそれに従っている。
それをみたナンツィヒの人々は賛否両論あり、噂のネタとするのだった。
学園に着くと入学試験の順位が掲示されていた。
ブリュンヒルデは、リーンハルトと一緒に眺めてみる。
1位はブリュンヒルデだった。
ブリュンヒルデは、頭脳も運動神経もフリードリヒ譲りなのでこれは当然だ。
2位は、イングヒルト・フォン・ザクセンという女性だった。
「ザクセンというからには親戚なのかしら?」
「そうかもしれませんね」
「ダメね。ちゃんと調べておきなさいよ」
「申し訳ございません。姫様」
3位にリーンハルトが入っていた。
「リーンハルト。ダメねえ。3位なんて…」
「面目次第もございません」
ブリュンヒルデが教室に着くと高位の貴族の子息たちが続々と挨拶にやってきた。
しかし、態度が微妙にぎこちない。やはり怖いとか癇癪持ちとかいう噂のせいなのだろう。
──私、癇癪持ちなんかじゃないのに…
そこでひそひそ声が聞こえた。
「なんでも『ブラッディ・ヒルデ』とかいう二つ名の乱暴者だそうよ」
「おお。怖い…私たちはできるだけ関わらないようにしましょう」
それを耳にしたリーンハルトが苦情を言おうと一歩踏み出そうとした時、それを制止してブリュンヒルデが進み出た。
「あなたたち! なんて…」
だが、突然豪華な意匠の扇子が差し出され、ブリュンヒルデの視界を塞いだ。
ブリュンヒルデは、これで言葉を詰まらせた。
ブリュンヒルデが扇子を差し出した者を見ると、金髪碧眼でストレートの髪をロングにしたなかなかの美女だ。
「あなた。なぜ邪魔をするの?」
「あのような下賎の者に姫様がかかずらわる必要はありませんわ」
「でも、誤解を解かないと…」
「陰で人の悪口を言うなど、その者は自らの品性を下げているだけですわ。いずれ回り回って自らに報いが返ってきます。姫様が手を差し伸べるまでもありませんわ。放置しておけば良いのです」
「そ、それも一理あるわね…ところで、あなた名前は?」
「これは申し遅れました。私、イングヒルト・フォン・ザクセンと申します。以後、お見知りおき願います」
「悪いけどあなたのことは記憶にないの。『ザクセン』ということは親戚か何かなのかしら?」
「姫殿下とは直接血のつながりはありませんが、私のお祖父様は前モゼル公爵の弟です。つまり、陛下の側室のヘルミーネ一様は私の従弟叔母になります」
「そう。ヘルミーネお姉さまの…では私の姻族な訳ね。こちらこそ、よろしくお願いするわ」
というと2人は優雅に微笑みあった。
美貌の2人が微笑みあう姿に、周りの男子生徒たちはたちまち魅了され、顔を赤くした。
だが、リーンハルトは思うのだ。
──あの姫様を止めるとは…何者なのだ…?
◆
その日は授業がなく、入学式と明日以降の授業のオリエンテーションのみだった。
席決めがあったが、右後方の廊下側の隅がご学友のリーンハルトでその前がブリュンヒルデだった。これは警備上の理由による。いつでも廊下から避難できるようにするためだ。
そしてブリュンヒルデの横はイングヒルト、リーンハルトの横はアンネリース・フォン・フロシャウアーという女性になった。
アンネリースは伯爵家の子女で、イングヒルトとは古くからの知己ということだ。
友人の友人は友人ということで、3人はたちまち意気投合した。
席が近くなったおかげで、オリエンテーションの最中もイングヒルトは暇があればブリュンヒルデをうっとりと眺めている。
その様子を見ているリーンハルトは、何か気まずい感じがしていた。
そして、放課後。
イングヒルトがブリュンヒルデに言った。
「姫殿下。今度、我が家に遊びに来てはいただけませんか? 歓迎いたしますわ」
「あら。それもいいわね。では、後で日程を詰めましょう」
「ありがとう存じます」
そして4人で校門へ向かった。
ブリュンヒルデが徒歩で帰ろうとするとイングヒルトに声をかけられた。
「姫殿下。馬車はどうされたのです?」
「あんなものに乗っていたら体が鈍ってしまうから断ったわ」
「姫殿下。いけませんわ。身分が上の者がその違いを見せつけることも世の中の秩序維持のためには必要なことなのです。それと体を鍛えることは別物ですわ。
それに徒歩で従者を連れ歩くなど、姫殿下には似合いません。優雅ではありませんもの」
「わかったわよ…」
結局、翌日からブリュンヒルデは馬車で通うことになった。
◆
翌日。席に着くと早速女子3人の会話が始まった。
アンネリースが言う。
「ねえねえ。このクラスでめぼしい男子はいる?」
「そうねえ。これといって気になる男子はいないわ」とイングヒルト。
ブリュンヒルデも「私もこれといっていないわ」と続く。
アンネリースは「私はねえ…」と言いながらリーンハルトに流し目を送った。
リーンハルトはこれにドギマギしながら言う。
「私はあくまでも姫様の従者ですから、そのようなことにかまけている訳には…」
アンネリースが突っ込む。
「『そのようなこと』って何よ? 私まだ何も言ってないんだけど…」
これがブリュンヒルデにうけてしまった。
「はっはっはっはっ」と声をあげ、腹を抱えて笑っている。
これにはクラスの男子たちが驚いた。
ブリュンヒルデは美の女神の娘だけあって、その美しさは完璧で、そのせいか凛として近寄りがたい雰囲気があったからだ。
その意外な一面を見せられてクラスの男子は認識を新たにした。
イングヒルトはこれをたしなめた。
「姫殿下。そのような笑い方は皇族としていかがなものかと…」
「そんなこと言っても、無理っ」
リーンハルトは恥ずかしくなって、真っ赤になっている。
ようやく落ち着いてきたブリュンヒルデが言った。
「でも、リーンを玩具にしていいのは私だけだからね」
「そんな…姫様…酷い…」とそのいい様に不満なリーンハルト。
ブリュンヒルデは構わず言葉を続ける。
「でも、本気だっていうなら別だけれど…」
そして視線をアンネリースに向けると、今度は彼女が赤くなっていた。
──これは意外に本気なのか…でも、リーンは鈍そうだからな…
そこでイングヒルトが話題を変えた。
「そうそう。私の家に遊びに来てくださる件はどうなりましたの?」
「両親に聞いたらいつでもいいと言っていたわ。早速、今度の日曜日はどうかしら?」
「もちろん大丈夫ですわ。歓迎の用意をしてお待ちしております」
「リーン。あなたも行くのよ。いいわね」
「えっ。警備の者は他に付くのでは?」
「警備はアーノルドがいれば十分よ。あなたは使い走り要員ね」
「はいはい。姐御のあるところ舎弟ありということですね」
「私のどこが姐御よ!」というとブリュンヒルデはリーンハルトをポカリと叩いた。
「痛っ! こういう時は手加減をするものですよ…」
「十分手加減しているじゃない。あなたが柔なだけよ」
そこでイングヒルトが笑い声をあげた。
「ほっほっほっ。お2人とも仲がよろしいのですね。息がぴったりですわ」
指摘された2人は赤くなって言った。
「別に…」とブリュンヒルデ。
「そんなこと…」とリーンハルト。
そんな2人を不安げに見つめるアンネリースがいた。
──この2人ってどういう関係!?
◆
翌日曜日。
ブリュンヒルデはイングヒルトの家へ向かった。
ブリュンヒルデは馬車に乗っており、その左右をリーンハルトと人造人間のアーノルドが騎馬で固めている。
イングヒルト宅は公爵に相応しい豪華な邸宅だった。
出資した事業が最近の好景気にも乗って大成功し、左うちわらしい。
イングヒルトとザクセン公夫妻が出迎えてくれた。
ザクセン公が言った。
「これは姫殿下。わざわざお越しいただきましてありがとう存じます」
「こちらこそお招きいただき、ありがとうございます」
「それにしても立派な護衛の方ですな」とザクセン公は身長2メートルを超えようかという立派な体格のアーノルドを見上げている。
「…………」
「彼は無口なので気にしないでください。それから食べ物も口にしませんからお構いなく」
「そうでございますか…」と怪訝な顔をするザクセン公。
──奴隷という訳でもなさそうだが…
「それでは拙宅へどうぞ」
「失礼いたします。リーンは一緒に来なさい」
「はい。姫様」
そしてお茶を飲みながらしばし歓談した後、イングヒルトが言った。
「では、姫殿下は私の部屋までお越しくださいませ」
リーンハルトがいつものようにブリュンヒルデに従おうとするとイングヒルトに止められた。
「ここから先は女の園ですの。殿方は遠慮していただけるかしら」
「女の園? …わ、わかった…」
そして2人はイングヒルトの私室に入った。
バタリとドアを閉めるとイングヒルトの目が怪しく光った。
「私、前々から姫殿下の美貌にメロメロでしたのよ。それで姫殿下にぜひ着ていただきたいドレスがあるのですけれど…着ていただけますか?」
「ドレスを? 私のために?」
「ええ。姫殿下のために、姫殿下のことを思いながら丹精込めて私が作りましたの。着ていただけますわよね」
──なんだかちょっとだけ重たい話だな…
「わ、わかったわ」
「では、これなんかいかがですか?」
「こ、これを…!?」
イングヒルトが持ってきたドレスはゴシック調でフリフリだらけのいかにも少女趣味なドレスだった。
ヴィオランテがデザインしたアダルトな感じの服に慣れていたブリュンヒルデは少し違和感を覚えたが…
──ええい。こうなったら是非もない…
ブリュンヒルデは着替えようと、今着ている服を脱いだ。
「ちょっとお待ちになって…」
「なんだ?」
「あ~ん。素晴らしいプロポーションですわ。文句のつけようがありません。まさに生ける芸術ですわ」
とイングヒルトが言うと一歩下がってブリュンヒルデの体を隅々まで眺めている。
相手が女とはいえ、そんなにじっくりと下着姿を眺めてられると恥ずかしくなってきた。
「あ、あんまり見ないでくれるとうれしい…」
「これは大変失礼いたしました。では、ドレスを着ていただけますか?」
「ああ…」
ドレスを着てみるとサイズがぴったりだった。
自分のサイズなどどこで調べたのか…
ブリュンヒルデは聞いてみる。
「どうかな?」
「あ~ん。感動ですわ。これ以上の幸福はありません」
感動のあまり、イングヒルトの目はハートになっている。
「ついては、この姿を絵に残しておきたいのですけれど…ポーズをとっていただけますか?」
「ああ。これでどうかな?」
「ここはもうちょっとこういう感じで…」
イングヒルトはブリュンヒルデを手取り足取り触りながらポーズを付けていく。女同士とはいえ、少し恥ずかしい。
「では、そのままポーズをとっていてくださいね」
絵を描くイングヒルトの目が真剣だ。
こちらも少し緊張してしまう。
「あら。表情が硬いですわ。もっとリラックスなさって」
──こういうのをまな板の鯉というのだな…鯉の気持ちが少しだけわかった…
だが、20分もするとイングヒルトは言った。
「では、次のドレスをよろしいかしら?」
「ええっ!もう描けたのか?」
「基本的なデッサンだけですわ。姫殿下の姿はしっかり記憶しましたから後は完璧に仕上げますから…」
「そういうこと…」
「で、まだあるわけね?」
「もちろんですわ」
結局、その日は3着を順番に着せ替えられた。
こうなってくるとファッションショーのモデルのようだ。
まだドレスはあるようだったが、何着あるのかは怖くて聞けなかった。
その後、その日は夕食をご馳走になって帰った。
◆
数週間後。
ブリュンヒルデのもとに完成した絵が届けられた。
かなりの大きさの絵だ。
しかし、この絵をどうしたものか…
自分の部屋に飾るのもなんだかナルシストっぽいし…
悩んでいたところを義母のヴィオランテに見られた。
「あら。その絵はどうしたの?」
「学園の友達が書いてくれたんです」
「ちょっとよく見せて」
「どうぞ」
ヴィオランテは真剣に見ている。
「う~ん。なかなかの腕前ね。それにドレスのデザインも少女趣味なところはあるけれどなかなかだわ。このドレスはどうしたの?」
「それもその友達が作ったんです」
「まあ。そうなのね。それはいい話を聞いたわ。こういうセンスのある子を探していたのよ。名前はなんていうのかしら?」
「イングヒルト・フォン・ザクセンです」
「ああ。ヘルミーネさんの親戚の方ね。そういえばあなたと同じ歳の娘がいると言っていたわ…じゃあ、この子は早速キープすべきね」
というとヴィオランテはスタスタと歩いて去っていった。
──この絵はどうしたものか…
◆
イングヒルトが書いた絵は、結局、フリードリヒが私室に飾ることになった。
「愛娘の絵姿ならば何枚でも大丈夫だぞ」と調子のいいことを言っていたが本当だろうか?
教育のレベルは低く、知識階級といえば、まずは教会関係者と貴族であるが、貴族でも地位の低いものは文盲であることも珍しくなかった。
フリードリヒは、ロートリンゲン大公となった折、教育改革についても着手することとし、学校制度の整備を文部科学卿のゲプハルト・フォン・ツァーベルに命じていた。
この一環として、首都ナンツィヒにもアウクスブルクのシュタウフェン学園に習って、ロートリンゲン学園が5年前に設立されていた。その後、学園は5年の実績を積み、次第に名門校と世間にはとらえられてきていた。
ロートリンゲン学園は、シュタウフェン学園と同じく、12歳から14歳ごろまでの2年間を修業期間としており、中等的な学問や社会的な作法から武芸にいたるまで幅広い教育が行われる。
入学に当たっては、初等教育を受けたことを前提とした入学試験をクリアする必要があった。
現代の感覚でいうと中学校に近い性格の学校である。
◆
ブリュンヒルデは12歳となった。
庶子とはいえ、皇帝の娘であるから、当然に学園で教育を受けるということになった。
だが、学園に行くとなるとヴィオランテにフリーダ・フォン・アイヒェンドルフというご学友兼ボディーガードがついていたように、誰かを付けた方が安心だ。
いや。ブリュンヒルデの場合は、ボディーガードは不要だから、むしろ暴走を止める役といった方が適切か…
フリードリヒとヴィオランテは、ブリュンヒルデを呼んだ。
「これから学園に通うに当たり、ご学友が必要だと思うのだが…」
「そんなのリーンがいれば十分ですわ。お父様」
──しかし、いつまでたっても舎弟のままでいいのか…それに欲しいのは舎弟ではなく、ブリュンヒルデを制止する監督役なのだが…
だが、同じ年頃でそのようなことができる人は思い当たらない。
「…どう思う?ヴィオラ?」
「そうねえ…すぐには思い当たらないからリーンハルトでいいんじゃないかしら。それで本人はどうなの?」
今日もブリュンヒルデの後ろに控えているリーンハルトは言った。
「もちろんお引き受けいたします。身命を賭して、姫様のお命を守る所存でございます」
──そんなに力まなくともいいんだが…
「わかった。本人がいいなら、当面、そのようにしよう」
◆
ブリュンヒルデは、2年間の冒険者生活で、帝国に10人程度しかいないアダマンタイト冒険者まで昇格していた。実力的にはオリハルコンに届いているとは思われるが、運悪くSSSランクの獲物には巡り合えなかったのだ。
しかし、白銀のアレックスほどではないにしても、「ブラッディ・ヒルデ」の名は帝国中に轟いていた。
そして、「ブラッディ・ヒルデ」といういかにもな二つ名と相まって、ブリュンヒルデは、怖い女とか、癇癪持ちといった無責任なイメージが世間には広まっていた。
いよいよ学園登校の初日がやってきた。
身分の高い貴族は、通常は、馬車で送り迎えがされる。
しかし、ブリュンヒルデは言った。
「馬車なんかに乗っていたら体が鈍ってしまうわ。学校までは近いし、歩きましょう。行くわよ。リーン」
「はい。姫様」
ブリュンヒルデが着ているのはヴィオランテがデザインしたセーラー服であり、この学園の制服であった。
リーンハルトが着ているのは同じくヴィオランテがデザインしたブレザーである。
ブリュンヒルデは肩で風を切って颯爽と歩いている。
通常は従者が先導するのだろうが、ブリュンヒルデの場合は逆だった。彼女が先頭を歩き、リーンハルトがそれに従っている。
それをみたナンツィヒの人々は賛否両論あり、噂のネタとするのだった。
学園に着くと入学試験の順位が掲示されていた。
ブリュンヒルデは、リーンハルトと一緒に眺めてみる。
1位はブリュンヒルデだった。
ブリュンヒルデは、頭脳も運動神経もフリードリヒ譲りなのでこれは当然だ。
2位は、イングヒルト・フォン・ザクセンという女性だった。
「ザクセンというからには親戚なのかしら?」
「そうかもしれませんね」
「ダメね。ちゃんと調べておきなさいよ」
「申し訳ございません。姫様」
3位にリーンハルトが入っていた。
「リーンハルト。ダメねえ。3位なんて…」
「面目次第もございません」
ブリュンヒルデが教室に着くと高位の貴族の子息たちが続々と挨拶にやってきた。
しかし、態度が微妙にぎこちない。やはり怖いとか癇癪持ちとかいう噂のせいなのだろう。
──私、癇癪持ちなんかじゃないのに…
そこでひそひそ声が聞こえた。
「なんでも『ブラッディ・ヒルデ』とかいう二つ名の乱暴者だそうよ」
「おお。怖い…私たちはできるだけ関わらないようにしましょう」
それを耳にしたリーンハルトが苦情を言おうと一歩踏み出そうとした時、それを制止してブリュンヒルデが進み出た。
「あなたたち! なんて…」
だが、突然豪華な意匠の扇子が差し出され、ブリュンヒルデの視界を塞いだ。
ブリュンヒルデは、これで言葉を詰まらせた。
ブリュンヒルデが扇子を差し出した者を見ると、金髪碧眼でストレートの髪をロングにしたなかなかの美女だ。
「あなた。なぜ邪魔をするの?」
「あのような下賎の者に姫様がかかずらわる必要はありませんわ」
「でも、誤解を解かないと…」
「陰で人の悪口を言うなど、その者は自らの品性を下げているだけですわ。いずれ回り回って自らに報いが返ってきます。姫様が手を差し伸べるまでもありませんわ。放置しておけば良いのです」
「そ、それも一理あるわね…ところで、あなた名前は?」
「これは申し遅れました。私、イングヒルト・フォン・ザクセンと申します。以後、お見知りおき願います」
「悪いけどあなたのことは記憶にないの。『ザクセン』ということは親戚か何かなのかしら?」
「姫殿下とは直接血のつながりはありませんが、私のお祖父様は前モゼル公爵の弟です。つまり、陛下の側室のヘルミーネ一様は私の従弟叔母になります」
「そう。ヘルミーネお姉さまの…では私の姻族な訳ね。こちらこそ、よろしくお願いするわ」
というと2人は優雅に微笑みあった。
美貌の2人が微笑みあう姿に、周りの男子生徒たちはたちまち魅了され、顔を赤くした。
だが、リーンハルトは思うのだ。
──あの姫様を止めるとは…何者なのだ…?
◆
その日は授業がなく、入学式と明日以降の授業のオリエンテーションのみだった。
席決めがあったが、右後方の廊下側の隅がご学友のリーンハルトでその前がブリュンヒルデだった。これは警備上の理由による。いつでも廊下から避難できるようにするためだ。
そしてブリュンヒルデの横はイングヒルト、リーンハルトの横はアンネリース・フォン・フロシャウアーという女性になった。
アンネリースは伯爵家の子女で、イングヒルトとは古くからの知己ということだ。
友人の友人は友人ということで、3人はたちまち意気投合した。
席が近くなったおかげで、オリエンテーションの最中もイングヒルトは暇があればブリュンヒルデをうっとりと眺めている。
その様子を見ているリーンハルトは、何か気まずい感じがしていた。
そして、放課後。
イングヒルトがブリュンヒルデに言った。
「姫殿下。今度、我が家に遊びに来てはいただけませんか? 歓迎いたしますわ」
「あら。それもいいわね。では、後で日程を詰めましょう」
「ありがとう存じます」
そして4人で校門へ向かった。
ブリュンヒルデが徒歩で帰ろうとするとイングヒルトに声をかけられた。
「姫殿下。馬車はどうされたのです?」
「あんなものに乗っていたら体が鈍ってしまうから断ったわ」
「姫殿下。いけませんわ。身分が上の者がその違いを見せつけることも世の中の秩序維持のためには必要なことなのです。それと体を鍛えることは別物ですわ。
それに徒歩で従者を連れ歩くなど、姫殿下には似合いません。優雅ではありませんもの」
「わかったわよ…」
結局、翌日からブリュンヒルデは馬車で通うことになった。
◆
翌日。席に着くと早速女子3人の会話が始まった。
アンネリースが言う。
「ねえねえ。このクラスでめぼしい男子はいる?」
「そうねえ。これといって気になる男子はいないわ」とイングヒルト。
ブリュンヒルデも「私もこれといっていないわ」と続く。
アンネリースは「私はねえ…」と言いながらリーンハルトに流し目を送った。
リーンハルトはこれにドギマギしながら言う。
「私はあくまでも姫様の従者ですから、そのようなことにかまけている訳には…」
アンネリースが突っ込む。
「『そのようなこと』って何よ? 私まだ何も言ってないんだけど…」
これがブリュンヒルデにうけてしまった。
「はっはっはっはっ」と声をあげ、腹を抱えて笑っている。
これにはクラスの男子たちが驚いた。
ブリュンヒルデは美の女神の娘だけあって、その美しさは完璧で、そのせいか凛として近寄りがたい雰囲気があったからだ。
その意外な一面を見せられてクラスの男子は認識を新たにした。
イングヒルトはこれをたしなめた。
「姫殿下。そのような笑い方は皇族としていかがなものかと…」
「そんなこと言っても、無理っ」
リーンハルトは恥ずかしくなって、真っ赤になっている。
ようやく落ち着いてきたブリュンヒルデが言った。
「でも、リーンを玩具にしていいのは私だけだからね」
「そんな…姫様…酷い…」とそのいい様に不満なリーンハルト。
ブリュンヒルデは構わず言葉を続ける。
「でも、本気だっていうなら別だけれど…」
そして視線をアンネリースに向けると、今度は彼女が赤くなっていた。
──これは意外に本気なのか…でも、リーンは鈍そうだからな…
そこでイングヒルトが話題を変えた。
「そうそう。私の家に遊びに来てくださる件はどうなりましたの?」
「両親に聞いたらいつでもいいと言っていたわ。早速、今度の日曜日はどうかしら?」
「もちろん大丈夫ですわ。歓迎の用意をしてお待ちしております」
「リーン。あなたも行くのよ。いいわね」
「えっ。警備の者は他に付くのでは?」
「警備はアーノルドがいれば十分よ。あなたは使い走り要員ね」
「はいはい。姐御のあるところ舎弟ありということですね」
「私のどこが姐御よ!」というとブリュンヒルデはリーンハルトをポカリと叩いた。
「痛っ! こういう時は手加減をするものですよ…」
「十分手加減しているじゃない。あなたが柔なだけよ」
そこでイングヒルトが笑い声をあげた。
「ほっほっほっ。お2人とも仲がよろしいのですね。息がぴったりですわ」
指摘された2人は赤くなって言った。
「別に…」とブリュンヒルデ。
「そんなこと…」とリーンハルト。
そんな2人を不安げに見つめるアンネリースがいた。
──この2人ってどういう関係!?
◆
翌日曜日。
ブリュンヒルデはイングヒルトの家へ向かった。
ブリュンヒルデは馬車に乗っており、その左右をリーンハルトと人造人間のアーノルドが騎馬で固めている。
イングヒルト宅は公爵に相応しい豪華な邸宅だった。
出資した事業が最近の好景気にも乗って大成功し、左うちわらしい。
イングヒルトとザクセン公夫妻が出迎えてくれた。
ザクセン公が言った。
「これは姫殿下。わざわざお越しいただきましてありがとう存じます」
「こちらこそお招きいただき、ありがとうございます」
「それにしても立派な護衛の方ですな」とザクセン公は身長2メートルを超えようかという立派な体格のアーノルドを見上げている。
「…………」
「彼は無口なので気にしないでください。それから食べ物も口にしませんからお構いなく」
「そうでございますか…」と怪訝な顔をするザクセン公。
──奴隷という訳でもなさそうだが…
「それでは拙宅へどうぞ」
「失礼いたします。リーンは一緒に来なさい」
「はい。姫様」
そしてお茶を飲みながらしばし歓談した後、イングヒルトが言った。
「では、姫殿下は私の部屋までお越しくださいませ」
リーンハルトがいつものようにブリュンヒルデに従おうとするとイングヒルトに止められた。
「ここから先は女の園ですの。殿方は遠慮していただけるかしら」
「女の園? …わ、わかった…」
そして2人はイングヒルトの私室に入った。
バタリとドアを閉めるとイングヒルトの目が怪しく光った。
「私、前々から姫殿下の美貌にメロメロでしたのよ。それで姫殿下にぜひ着ていただきたいドレスがあるのですけれど…着ていただけますか?」
「ドレスを? 私のために?」
「ええ。姫殿下のために、姫殿下のことを思いながら丹精込めて私が作りましたの。着ていただけますわよね」
──なんだかちょっとだけ重たい話だな…
「わ、わかったわ」
「では、これなんかいかがですか?」
「こ、これを…!?」
イングヒルトが持ってきたドレスはゴシック調でフリフリだらけのいかにも少女趣味なドレスだった。
ヴィオランテがデザインしたアダルトな感じの服に慣れていたブリュンヒルデは少し違和感を覚えたが…
──ええい。こうなったら是非もない…
ブリュンヒルデは着替えようと、今着ている服を脱いだ。
「ちょっとお待ちになって…」
「なんだ?」
「あ~ん。素晴らしいプロポーションですわ。文句のつけようがありません。まさに生ける芸術ですわ」
とイングヒルトが言うと一歩下がってブリュンヒルデの体を隅々まで眺めている。
相手が女とはいえ、そんなにじっくりと下着姿を眺めてられると恥ずかしくなってきた。
「あ、あんまり見ないでくれるとうれしい…」
「これは大変失礼いたしました。では、ドレスを着ていただけますか?」
「ああ…」
ドレスを着てみるとサイズがぴったりだった。
自分のサイズなどどこで調べたのか…
ブリュンヒルデは聞いてみる。
「どうかな?」
「あ~ん。感動ですわ。これ以上の幸福はありません」
感動のあまり、イングヒルトの目はハートになっている。
「ついては、この姿を絵に残しておきたいのですけれど…ポーズをとっていただけますか?」
「ああ。これでどうかな?」
「ここはもうちょっとこういう感じで…」
イングヒルトはブリュンヒルデを手取り足取り触りながらポーズを付けていく。女同士とはいえ、少し恥ずかしい。
「では、そのままポーズをとっていてくださいね」
絵を描くイングヒルトの目が真剣だ。
こちらも少し緊張してしまう。
「あら。表情が硬いですわ。もっとリラックスなさって」
──こういうのをまな板の鯉というのだな…鯉の気持ちが少しだけわかった…
だが、20分もするとイングヒルトは言った。
「では、次のドレスをよろしいかしら?」
「ええっ!もう描けたのか?」
「基本的なデッサンだけですわ。姫殿下の姿はしっかり記憶しましたから後は完璧に仕上げますから…」
「そういうこと…」
「で、まだあるわけね?」
「もちろんですわ」
結局、その日は3着を順番に着せ替えられた。
こうなってくるとファッションショーのモデルのようだ。
まだドレスはあるようだったが、何着あるのかは怖くて聞けなかった。
その後、その日は夕食をご馳走になって帰った。
◆
数週間後。
ブリュンヒルデのもとに完成した絵が届けられた。
かなりの大きさの絵だ。
しかし、この絵をどうしたものか…
自分の部屋に飾るのもなんだかナルシストっぽいし…
悩んでいたところを義母のヴィオランテに見られた。
「あら。その絵はどうしたの?」
「学園の友達が書いてくれたんです」
「ちょっとよく見せて」
「どうぞ」
ヴィオランテは真剣に見ている。
「う~ん。なかなかの腕前ね。それにドレスのデザインも少女趣味なところはあるけれどなかなかだわ。このドレスはどうしたの?」
「それもその友達が作ったんです」
「まあ。そうなのね。それはいい話を聞いたわ。こういうセンスのある子を探していたのよ。名前はなんていうのかしら?」
「イングヒルト・フォン・ザクセンです」
「ああ。ヘルミーネさんの親戚の方ね。そういえばあなたと同じ歳の娘がいると言っていたわ…じゃあ、この子は早速キープすべきね」
というとヴィオランテはスタスタと歩いて去っていった。
──この絵はどうしたものか…
◆
イングヒルトが書いた絵は、結局、フリードリヒが私室に飾ることになった。
「愛娘の絵姿ならば何枚でも大丈夫だぞ」と調子のいいことを言っていたが本当だろうか?
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