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第4章 国主編
第75話 悪魔と契約した女 ~魔女イゾベル・ゴーディ~
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この世界では魔女という場合に2種類の意味が混同されて使われていた。
一つは悪魔と契約した女の意味。もう一つは単に魔術・魔法を使う魔術師あるいは魔導士の女の意味である。
ヨーロッパの中世で悪名の高い魔女狩りは13世紀にはまだ行われていない。魔女は存在していて、教会はその存在を禁忌としてはいたものの、あの社会的ヒステリーといえる魔女狩りは14世紀に始まると言われている。
また、魔術や魔法に関する教会のスタンスも曖昧だった。
魔術や魔法が使えるという者の中には胡散臭い者も相当おり、積極的に認める訳にはいかなかったが、一方で軍隊や冒険者として活躍している実利的な魔術師・魔導士も存在していたからだ。
◆
イゾベル・ゴーディはスコットランドのある湖畔に住む農夫の妻だった。14歳で結婚した夫は教養のない粗野な農夫だったが、イゾベルは農婦には珍しく美しくて読み書きもできる賢い女だった。
イゾベルが16歳となったとき、ふとしたきっかけで灰色の服の男と不倫の関係となった。夫に不満がある訳ではなかったが、魔が差したとしか言いようがない。
灰色の男は冷淡だがニヒルな魅力があり、なにより男の一物は一般的な人族よりもはるかに大きくて長く、それに貫かれたイゾベルの肉欲は留まることを知らなかった。
ある晩もイゾベルは男との逢引きの場所である人気のない教会へ向かった。
すると灰色の服の男は自分が悪魔であり、手先にならないかと誘った。
イゾベルは雷に打たれたような衝撃を受けたが、次の瞬間、何かに操られるかのように「はい」と返事をしていた。
すぐさま魔女の入団儀式が行われた。
悪魔は彼女の肩に噛みつくと吸いだした血をイゾベルに吐きかけた。
イゾベルは片手を額に、片手を踵につけて誓いの言葉を述べる。
「私は汝に私の両手の間にある一切のものを与える」
こうしてイゾベルは魔女となり、悪魔に一生使えることを誓い、十字架を踏みにじり、カトリック教会を否認し、契約の印として自分の髪、爪、血などを悪魔にささげた。
イゾベルは悪魔の下で魔術を学び、毒薬、飛行薬、使い魔を与えられた。
悪魔に与えられた使い魔は小さな黒猫で、イゾベルはジルという名前を付けた。
一定の知識を身に付けると、イゾベルは他の12人の仲間たちと一緒に夜の闇に乗じ墓荒らしなどするようになった。
だが、そのうちにイゾベルは悪魔に疎まれるようになっていった。彼女は異常に高い魔術の才能をもっており、悪魔と拮抗するようになってきたからだ。
悪魔の方は高位の悪魔ではなかったのだ。
イゾベルは焦りを覚えた。悪魔に慈悲などがあるはずがない。このままでは悪魔の怒りを買い、より上位の悪魔に殺されるのではないか?
そう考えたイゾベルは飛行薬を股間に塗り、箒に跨るとスコットランドから逃走を図っていた。
魔女の場合、時空魔法ではなく、飛行薬という膏薬を股間に塗ることにより箒で空を飛ぶのだ。
◆
イゾベルはまずはフランスに渡ると各地を放浪した。
しかし、しばらくすると悪魔はイゾベルの居場所を嗅ぎつけて追ってくる。どうも悪魔が付けた魔女の印がある限り、契約した魔女の居場所がわかるらしい。
それでもイゾベルは必死に逃げた。
フランドル伯国にたどり着いた時、ある噂を聞いた。
噂では、神聖帝国のロートリンゲン公国には暗黒騎士団という途轍もなく強い軍隊があって、その中に強力な魔導士の部隊があるということだった。
──その魔導士の部隊ならば私の魔術の力を評価して保護してくれたりはしないだろうか?
イゾベルは、藁にも縋る思いで、魔導士の部隊がいるというナンツィヒに向かった。
◆
イゾベルはナンツィヒの人気のない郊外に到着すると箒から降り立った。
しかし、背後から声かける者がいる。
「おや。君は魔女だね」
振り返ると快活そうな少女が魔法の杖に跨って空中に浮いていた。フランメである。
──ちっ。バレたか…
イゾベルは身構えて少女を睨んだ。
「そんな怖い顔しないでよ。魔女ということは魔導士団の入団希望者かな?」
イゾベルはホッとした。彼女はどうやら単に魔法が使える女の意味で魔女と言ったようだ。
「そ、そうなんです。私、この町が初めてでよくわからなくて…。魔導士団というのはどこにあるのですか?」
「君。ラッキーだよ。僕がその魔導士団の団長なんだ」
「さすがに今日は無理だから、明日にでも入団試験をしてあげよう。明日、この場所に来てよ」
というとフランメは一枚の地図をイゾベルに渡した。
「ありがとうございます。では、明日の試験をよろしくお願いいたします」
「じゃあ。頑張ってね」
◆
翌日。イゾベルは試験会場に向かった。
「やあ。約束どおり来てくれたね。
ところで君はどの属性の魔法が使えるんだい」
「火風水土の一通り使えます」
魔女だから闇魔法も使えるのだが、これは禁忌とされているので秘密にする。
「クアトルなんて凄いな。魔導士団でも数えるほどしかいないよ」
「恐れ入ります」
試験の結果、イゾベルは文句なく合格だった。
「凄い実力だね。これならすぐに小隊長くらいになれそうだ」
「私などまだまだです」
これで魔導士団には潜り込めた。あとはどうやって保護してもらうかだが…。
隊長は人が好さそうだから素直に相談してみようか…
イゾベルが次の一手を考えあぐねているうち、翌日となった。
翌日は早速に魔導士団の訓練の日だった。
魔導士団のメンバーが集まってくる。
見ると羊角族の者までいるではないか…まてよ、あれはサキュバスじゃないか?悪魔と契約しているイゾベルにはわかる。
──なぜサキュバスが魔導士団の中に?
魔導士団が揃うとロートリンゲン大公が視察にやってきた。
イゾベルの目は大公に釘付けになる。なんと見目麗しい男性なのだ…。
そして気づいた。大公に従っている妖艶な美女がいるが、あれは悪魔ではないか? それも相当な高位の…。
──どうなっているのだ。この国は。もしかして悪魔に乗っ取られているのではないか?
イゾベルは不安になった。
イゾベルは不安ながらも懸命に訓練に参加した。とにかくこの魔導士団が最後の希望の光であることに違いはない。
それを見ていたフリードリヒはフランメに尋ねた。
「フランメ。彼女は見ない顔だが?」
「ああ。彼女は昨日入隊したイゾベルっていうんだ。クアトルでなかなかの魔法の使い手だ。将来有望だよ」
「それはいいが、彼女は魔女ではないか?」
「魔女だけど。それが何か?」
「だから悪魔と契約した女だと言っている」
「えっ! それは見抜けなかった…」
フリードリヒは横に控えているアスタロトに目配せをした。
悪魔のことは悪魔に任せるのが一番いい。
訓練が終わるとイゾベルのもとにあの妖艶な美女がやって来るではないか。やっぱりバレたか。
しかし、イゾベルの足は恐怖で動けない。
「おまえは魔女だね。魔女がなぜこんなところにいる?」
イゾベルは答えに窮した。
しかし、このような高位の悪魔に逆らってもイゾベル程度の腕では瞬殺だろう。ここは素直に従うしかないか…
イゾベルはこれまでのいきさつを正直に話した。
「逃げたところで契約の印がある限り逃げ切れるものじゃない。
しょうがない。乗り掛かった舟だ。契約を上書きしてやるから今晩私の部屋に来い」
「わかりました。ありがとうございます」
イゾベルは恐怖を抑えながらやっとの思いで答えた。
夜。アスタロトの部屋に向かう。
アスタロトは高位の悪魔らしく簡単に契約を上書きしてしまった。
「さあ。誓約しな!」
「私は汝に私の両手の間にある一切のものを与える」
「これでおまえは私のものになった」
「私はこれからどうすれば?」
「このまま魔導士団で頑張ればいんじゃないか?」
「わかりました。そうします。
今日はありがとうございました」
逆らったら怖いのだろうが、アスタロトは話のわかりそうな悪魔だ。イゾベルは少し安心した。
◆
翌日。
アスタロトがフリードリヒの警護に付くと早速聞いてきた。
「マグダレーネ。昨日の魔女はどうした?」
アスタロトは魔女のいきさつをフリードリヒに話して聞かせた。
「そうか。おまえと契約したのか」
「わらわは人族とは契約をしない主義なのだが…」
「何っ! おまえと契約している魔女はイゾベル一人ということか?」
「ああ。それがどうした?」
「魔女というのは13人で一組だろう。そんな気持ちの悪いことをするな!」
──ああ。変なところでコンプリート癖を出さないで欲しい…
アスタロトは心の中で苦笑した。
「ああ。わかったよ。頭はわらわだから、あと11人揃えればいいんだな」
「それで結構だ」
「しかし、その辺の娘を適当に魔女にしてしまっていいいのか?」
「いや。それは…」
フリードリヒは思案する…
「そうだ。死刑囚の女ならば問題ないだろう。それを適当に攫ってくればいい」
「ああ。わかったよ」
──ああ。面倒くさい。なんでこんな男に惚れちまったんだろう。惚れた方が負けってか…
それに、なんだかんだいって面食いなところがあるからな。誰でもいいという訳にはいかないだろう。
結局、アスタロトは神聖帝国中を駆けずり回り、美猊の死刑囚11人を見繕った。
もちろん代わりにダミーの死体を置いて、悲嘆のあまり自殺したように見せかけてある。
彼女らは命を諦めていた者たちなので、皆が魔女の契約に素直に従った。
アスタロトはそろった魔女たちをフリードリヒに披露した。
「おお。さすがに仕事が早いな。それに美人ぞろいだ。素晴らしい」
「ところで、揃ったはいいが、こいつらに何をさせるんだ?」
「それは…」
──揃えることに夢中で、何も考えてなかったんだろう!
「マグダレーネの配下だから私の身辺警護をやらせよう。名付けてフリードリヒ親衛隊だ。
それには強くなってもらわないと困る。明日から魔術を特訓してくれ」
「承知いたしました」
こうして、なりゆきでフリードリヒ親衛隊が誕生したのだった。
一つは悪魔と契約した女の意味。もう一つは単に魔術・魔法を使う魔術師あるいは魔導士の女の意味である。
ヨーロッパの中世で悪名の高い魔女狩りは13世紀にはまだ行われていない。魔女は存在していて、教会はその存在を禁忌としてはいたものの、あの社会的ヒステリーといえる魔女狩りは14世紀に始まると言われている。
また、魔術や魔法に関する教会のスタンスも曖昧だった。
魔術や魔法が使えるという者の中には胡散臭い者も相当おり、積極的に認める訳にはいかなかったが、一方で軍隊や冒険者として活躍している実利的な魔術師・魔導士も存在していたからだ。
◆
イゾベル・ゴーディはスコットランドのある湖畔に住む農夫の妻だった。14歳で結婚した夫は教養のない粗野な農夫だったが、イゾベルは農婦には珍しく美しくて読み書きもできる賢い女だった。
イゾベルが16歳となったとき、ふとしたきっかけで灰色の服の男と不倫の関係となった。夫に不満がある訳ではなかったが、魔が差したとしか言いようがない。
灰色の男は冷淡だがニヒルな魅力があり、なにより男の一物は一般的な人族よりもはるかに大きくて長く、それに貫かれたイゾベルの肉欲は留まることを知らなかった。
ある晩もイゾベルは男との逢引きの場所である人気のない教会へ向かった。
すると灰色の服の男は自分が悪魔であり、手先にならないかと誘った。
イゾベルは雷に打たれたような衝撃を受けたが、次の瞬間、何かに操られるかのように「はい」と返事をしていた。
すぐさま魔女の入団儀式が行われた。
悪魔は彼女の肩に噛みつくと吸いだした血をイゾベルに吐きかけた。
イゾベルは片手を額に、片手を踵につけて誓いの言葉を述べる。
「私は汝に私の両手の間にある一切のものを与える」
こうしてイゾベルは魔女となり、悪魔に一生使えることを誓い、十字架を踏みにじり、カトリック教会を否認し、契約の印として自分の髪、爪、血などを悪魔にささげた。
イゾベルは悪魔の下で魔術を学び、毒薬、飛行薬、使い魔を与えられた。
悪魔に与えられた使い魔は小さな黒猫で、イゾベルはジルという名前を付けた。
一定の知識を身に付けると、イゾベルは他の12人の仲間たちと一緒に夜の闇に乗じ墓荒らしなどするようになった。
だが、そのうちにイゾベルは悪魔に疎まれるようになっていった。彼女は異常に高い魔術の才能をもっており、悪魔と拮抗するようになってきたからだ。
悪魔の方は高位の悪魔ではなかったのだ。
イゾベルは焦りを覚えた。悪魔に慈悲などがあるはずがない。このままでは悪魔の怒りを買い、より上位の悪魔に殺されるのではないか?
そう考えたイゾベルは飛行薬を股間に塗り、箒に跨るとスコットランドから逃走を図っていた。
魔女の場合、時空魔法ではなく、飛行薬という膏薬を股間に塗ることにより箒で空を飛ぶのだ。
◆
イゾベルはまずはフランスに渡ると各地を放浪した。
しかし、しばらくすると悪魔はイゾベルの居場所を嗅ぎつけて追ってくる。どうも悪魔が付けた魔女の印がある限り、契約した魔女の居場所がわかるらしい。
それでもイゾベルは必死に逃げた。
フランドル伯国にたどり着いた時、ある噂を聞いた。
噂では、神聖帝国のロートリンゲン公国には暗黒騎士団という途轍もなく強い軍隊があって、その中に強力な魔導士の部隊があるということだった。
──その魔導士の部隊ならば私の魔術の力を評価して保護してくれたりはしないだろうか?
イゾベルは、藁にも縋る思いで、魔導士の部隊がいるというナンツィヒに向かった。
◆
イゾベルはナンツィヒの人気のない郊外に到着すると箒から降り立った。
しかし、背後から声かける者がいる。
「おや。君は魔女だね」
振り返ると快活そうな少女が魔法の杖に跨って空中に浮いていた。フランメである。
──ちっ。バレたか…
イゾベルは身構えて少女を睨んだ。
「そんな怖い顔しないでよ。魔女ということは魔導士団の入団希望者かな?」
イゾベルはホッとした。彼女はどうやら単に魔法が使える女の意味で魔女と言ったようだ。
「そ、そうなんです。私、この町が初めてでよくわからなくて…。魔導士団というのはどこにあるのですか?」
「君。ラッキーだよ。僕がその魔導士団の団長なんだ」
「さすがに今日は無理だから、明日にでも入団試験をしてあげよう。明日、この場所に来てよ」
というとフランメは一枚の地図をイゾベルに渡した。
「ありがとうございます。では、明日の試験をよろしくお願いいたします」
「じゃあ。頑張ってね」
◆
翌日。イゾベルは試験会場に向かった。
「やあ。約束どおり来てくれたね。
ところで君はどの属性の魔法が使えるんだい」
「火風水土の一通り使えます」
魔女だから闇魔法も使えるのだが、これは禁忌とされているので秘密にする。
「クアトルなんて凄いな。魔導士団でも数えるほどしかいないよ」
「恐れ入ります」
試験の結果、イゾベルは文句なく合格だった。
「凄い実力だね。これならすぐに小隊長くらいになれそうだ」
「私などまだまだです」
これで魔導士団には潜り込めた。あとはどうやって保護してもらうかだが…。
隊長は人が好さそうだから素直に相談してみようか…
イゾベルが次の一手を考えあぐねているうち、翌日となった。
翌日は早速に魔導士団の訓練の日だった。
魔導士団のメンバーが集まってくる。
見ると羊角族の者までいるではないか…まてよ、あれはサキュバスじゃないか?悪魔と契約しているイゾベルにはわかる。
──なぜサキュバスが魔導士団の中に?
魔導士団が揃うとロートリンゲン大公が視察にやってきた。
イゾベルの目は大公に釘付けになる。なんと見目麗しい男性なのだ…。
そして気づいた。大公に従っている妖艶な美女がいるが、あれは悪魔ではないか? それも相当な高位の…。
──どうなっているのだ。この国は。もしかして悪魔に乗っ取られているのではないか?
イゾベルは不安になった。
イゾベルは不安ながらも懸命に訓練に参加した。とにかくこの魔導士団が最後の希望の光であることに違いはない。
それを見ていたフリードリヒはフランメに尋ねた。
「フランメ。彼女は見ない顔だが?」
「ああ。彼女は昨日入隊したイゾベルっていうんだ。クアトルでなかなかの魔法の使い手だ。将来有望だよ」
「それはいいが、彼女は魔女ではないか?」
「魔女だけど。それが何か?」
「だから悪魔と契約した女だと言っている」
「えっ! それは見抜けなかった…」
フリードリヒは横に控えているアスタロトに目配せをした。
悪魔のことは悪魔に任せるのが一番いい。
訓練が終わるとイゾベルのもとにあの妖艶な美女がやって来るではないか。やっぱりバレたか。
しかし、イゾベルの足は恐怖で動けない。
「おまえは魔女だね。魔女がなぜこんなところにいる?」
イゾベルは答えに窮した。
しかし、このような高位の悪魔に逆らってもイゾベル程度の腕では瞬殺だろう。ここは素直に従うしかないか…
イゾベルはこれまでのいきさつを正直に話した。
「逃げたところで契約の印がある限り逃げ切れるものじゃない。
しょうがない。乗り掛かった舟だ。契約を上書きしてやるから今晩私の部屋に来い」
「わかりました。ありがとうございます」
イゾベルは恐怖を抑えながらやっとの思いで答えた。
夜。アスタロトの部屋に向かう。
アスタロトは高位の悪魔らしく簡単に契約を上書きしてしまった。
「さあ。誓約しな!」
「私は汝に私の両手の間にある一切のものを与える」
「これでおまえは私のものになった」
「私はこれからどうすれば?」
「このまま魔導士団で頑張ればいんじゃないか?」
「わかりました。そうします。
今日はありがとうございました」
逆らったら怖いのだろうが、アスタロトは話のわかりそうな悪魔だ。イゾベルは少し安心した。
◆
翌日。
アスタロトがフリードリヒの警護に付くと早速聞いてきた。
「マグダレーネ。昨日の魔女はどうした?」
アスタロトは魔女のいきさつをフリードリヒに話して聞かせた。
「そうか。おまえと契約したのか」
「わらわは人族とは契約をしない主義なのだが…」
「何っ! おまえと契約している魔女はイゾベル一人ということか?」
「ああ。それがどうした?」
「魔女というのは13人で一組だろう。そんな気持ちの悪いことをするな!」
──ああ。変なところでコンプリート癖を出さないで欲しい…
アスタロトは心の中で苦笑した。
「ああ。わかったよ。頭はわらわだから、あと11人揃えればいいんだな」
「それで結構だ」
「しかし、その辺の娘を適当に魔女にしてしまっていいいのか?」
「いや。それは…」
フリードリヒは思案する…
「そうだ。死刑囚の女ならば問題ないだろう。それを適当に攫ってくればいい」
「ああ。わかったよ」
──ああ。面倒くさい。なんでこんな男に惚れちまったんだろう。惚れた方が負けってか…
それに、なんだかんだいって面食いなところがあるからな。誰でもいいという訳にはいかないだろう。
結局、アスタロトは神聖帝国中を駆けずり回り、美猊の死刑囚11人を見繕った。
もちろん代わりにダミーの死体を置いて、悲嘆のあまり自殺したように見せかけてある。
彼女らは命を諦めていた者たちなので、皆が魔女の契約に素直に従った。
アスタロトはそろった魔女たちをフリードリヒに披露した。
「おお。さすがに仕事が早いな。それに美人ぞろいだ。素晴らしい」
「ところで、揃ったはいいが、こいつらに何をさせるんだ?」
「それは…」
──揃えることに夢中で、何も考えてなかったんだろう!
「マグダレーネの配下だから私の身辺警護をやらせよう。名付けてフリードリヒ親衛隊だ。
それには強くなってもらわないと困る。明日から魔術を特訓してくれ」
「承知いたしました」
こうして、なりゆきでフリードリヒ親衛隊が誕生したのだった。
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