転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる

文字の大きさ
65 / 215
第3章 軍人編

第48話 対デンマーク戦争(2) ~ハンブルク奪還~

しおりを挟む
 ハンザ都市連合艦隊を率いるリューベック市長ヨハン・ヴィッテンボルクが挨拶あいさつにやってきた。

「このたびはご助成かたじけなく存じます。しかも、あの名高い暗黒騎士団ドンクレリッターとは」
「ああ。私を使わせた皇帝に感謝することだな」

「で、今回はどのような作戦で?」
「我々がデンマーク軍を町から追い出す。やつらは海上へと逃走するだろうからあなたは艦隊で追撃してくれ」

「そんな簡単におっしゃりますが、相手はほぼ10倍の数の敵ですぞ」
「なに。暗黒騎士団ドンクレリッターに問題はない」

「はあ…」
 ヴィッテンボルクは単なる若造の強がりなのか、根拠があってのことなのか計りかねているようだ。

 ──実戦を見ればわかることさ。

 続いてホルシュタイン伯のテオドール・フォン・バードヴィーデンも挨拶あいさつにやってきた。

 ハンブルグは自由都市であるが位置的にはホルシュタイン伯領内にある。しかし、ホルシュタイン伯領はデンマーク王ヴァルデマーⅡ世に実効支配されている状態で、事実上の権力は持っていなかった。

「これはツェーリンゲン卿。ご加勢痛み入る」
「なに。私を使わせた陛下の御心みこころに感謝することですな」
「全くそのとおりで…」

 ──なんだかえないおっさんだな…。だが権力を持っていないのだからしょうがあるまい。

    ◆

 いよいよデンマーク軍との戦いだ。
 部隊をあらかじめ打ち合わせておいた配置につかせる。

 それを目視したデンマーク軍の見張りは、想定より早い援軍の到着に右往左往している。今がチャンスだ。

 騎馬の活躍の場面が少ないので、今回は第1・第2中隊は歩兵である。

 第1中隊長のアダルベルトと第2中隊長のカロリーナに指示を出す。
「私が町の門を破壊したら突撃だ。敵と適当に戦ったら上手く偽装敗走してくれよ」
「「了解しました」」

 皆が配置に着いたことを確認し、フリードリヒはエクスプロージョンの魔法を発動する。
 ハンブルクの町の門は大爆発し、爆音がこだました。爆発の煙がモクモクと天高く昇っていく。

 門周辺にいた敵は爆風を受けて多くの者が傷つき、混乱している。

突撃アングリフせよ!」

 アダルベルトを先頭に、第1・第2中隊がときの声をあげながら穴の開いた門めがけて突撃していく。

 先頭が門を抜け接敵した。
 アダルベルトはアロンダイトで次々と敵を切り伏せ、無双している。

 その頃、ようやく外壁の上の敵が体制を整え、突入途中の味方に対して矢を放ち始めた。
 ホムンクルスのマリーが時空反転フィールドで矢を反転させると、反転してきた矢に敵は傷つき、目を白黒させている。

 アダルベルトが指示を出す。
「ローラとキャリーは壁の上の敵を頼む」
「「了解」」

 2人は時空魔法で空中に瞬間的に足場を作り、反復横跳びの要領で空中に駆け上がると壁の上に降り立った。

 弓兵は驚き、剣を抜いてかかってくるが、弓兵の剣など2入に通用するものではない。
 2人は集中して半眼になると、背中合わせになり、互いの背を守りながら2刀流で次々と敵を切り伏せていった。

 フィリップ・リストのは、マリー、ローザ、タラサ、エディタをメンバーとし第1中隊の中でも一際強かった。

 フリップは技に物を言わせて次々と敵をほふっていく。
 マリーはフリードリヒ譲りの2刀流で無双していた。

 ローザ、タラサ、エディの3人は力技である。ローザとエディが大剣クレイモアを一振りすると、やわな剣など砕いて一撃で敵を切り伏せていく。

 タラサは、超重量級のモルゲンスタインを左右の手に持ち、有無を言わさず剣やよろいもろとも敵を砕いていく。

「おめえらこんなもやしっ子相手に何やってんだよ」

 身長2メートルは超えていると思われる筋骨隆々としたマッチョ男が両手にバトルアックスを持って襲ってきた。
 いかにもヴァイキングの末裔まつえいといった感じの残忍そうな男だ。

 タラサが男に一撃を加えるが、男はモルゲンスタインを簡単に受け止めた。

 ──タラサの一撃を止められる者がいるとは!

 のメンバーは驚愕きょうがくした。

 そこにアダルベルトが割って入る。
 大男と打ち合っているがアダルベルトが押され気味に見える。

 ──あの赤髪のアダルが?

 フィリップは違和感の正体をすぐに理解した。そろそろ潮時ということだ。
 フィリップは伍のメンバーに目配せをするとメンバーもその意図を理解したようだ。

 そのままじりじりと後退して行く。

「こいつらやっと疲れてきやがった」
「ああ。あんな調子で戦っちゃあいつまでも持たないさ」

 敵軍からそんな会話が聞こえる。

 ガキンと一際大きな打ち合いの音がすると、アダルベルトは打ち合っていた大男と距離をとった。

「このままではらちが明かない。いったん撤退だ!」
「「「了解」」」

「そうはいくか。追撃して殲滅せんめつしてくれる。俺に続け!」
 と命令を下しているバトルアックスの大男は中隊長か何かだったようだ。

 アダルベルトとフィリップの殿しんがりを務めながら敗走を偽装しつつ撤退していく。
 どうやら上手くだまされてくれたようだ。

 デンマーク軍が追撃し、町の門の外まで釣り出されると、第1・第2中隊は突然左右に展開した。
 デンマーク軍の正面にあらわれたのはダークナイトの軍団であった。

 始めてみる異形いぎょうの姿に恐怖したデンマーク軍の足が止まった。
 恐怖に引きつるデンマーク軍の兵士をダークナイトは無慈悲にほふっていく。

 「突撃アングリフ! 敵を削れ」
 ヴェロニアの一声で、両脇からはバイコーン騎兵が突撃をかけてくる。

 バトルアックスの大男は啞然あぜんとしていたところを、ヴェロニアのバイコーンに蹴散らされ、そこを狙ったダークナイトに一刀両断に切り伏せられて絶命した。

 追撃してきたデンマーク軍は隊長をやられて混乱におちいっている。

 ここでフリードリヒはペガサス騎兵を投入する。
「ペガサス騎兵はこれ以上の援軍が来ないよう足止めしろ」
「了解しました」

 ペガサス騎兵は門から出ようとしているデンマーク軍を襲う。
炸裂弾さくれつだん投下ファーレン!」

 投下位置付近にいる敵兵は爆風や破片を浴びて血まみれになって助けを求めている。

「続けて弓放てアタッケ!」
 ペガサス騎兵から矢の雨が敵に降り注ぐ。
 これに牽制けんせいされて敵の増援は門から出ることができない。

 1時間もすると門の外に釣り出されたデンマーク軍は制圧された。これで敵軍の2割、千人ぐらいは削ったはずだ。

 フリードリヒは攻勢に出る。
「よしっ。反転攻勢に転じる。ダークナイトを前面に押し出し、再突入せよ!」
「「「おーっ!」」」

「ペガサス騎兵と魔道小隊は空から援護だ!」
「「「おーっ!」」」

 今度はヴェロニアの第3中隊も下馬して歩兵となり、全軍で町へ突入する。

 ダークナイトは身長2メートルを超える体格のうえアダマンタイト級の剣技を持っている。並みの兵士ではとても歯がたたない。
 また、魔力が尽きるまで動き続けることができ疲れを知らない。

 デンマーク軍は防戦一方となった。

 さて、こんなときは敵の指揮官の首を狩るのが一番だ。
 フリードリヒは千里眼クレヤボヤンスで敵の指揮官の位置を探る。

 見つけた。最後尾でふるえているかと思えば、前線に近いところで指揮をしているではないか。ここは指揮官を打ち取れば敵の士気はガタ落ちに違いない。

 だが、ここからだと弓の射線も通りそうにない。
 こんなときこそあれの出番だ。

 フリードリヒはマジックバッグから聖剣クラウ・ソラスを取り出した。

「行け! クラウ・ソラス。敵指揮官を打ち取れ!」

 クラウ・ソラスは敵をかいくぐると光のような速さで敵指揮官に向かっていき、その心臓をつらぬいた。
 指揮官の心臓から鮮血がほとばしる。

 周りにいた副官らがあわてて体を支えるが、既に絶命していた。

 これで副官は撤退を決意したようだ。
 デンマーク軍は港に向けて撤退していく。

 これを容赦なくダークナイトが追撃し、空からはペガサス騎兵の矢が、魔道小隊の魔法が雨のように降り注ぐ。

 これでトータル3割ぐらいの敵を削っただろう。

 しかし、敵は抜かりなく艦船を用意していたらしく、次々と乗り込んでは海上へのがれていく。

 ──これで終わりだと思うなよ。

 これも想定内。事前の準備が生きるというものだ。
 二度と帝国に攻め込むことがないよう、完膚かんぷなきまでたたいてやる。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...