転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる

文字の大きさ
49 / 215
第2章 学園・学校編

第33話 ゼウスのダンジョン(2) ~ミノタウロスとキマイラ~

しおりを挟む
 翌日。いやらしい迷宮がひたすら続く。

 定番の落とし穴があり、突然に床板が下に開いた。
 反射神経のよい者は咄嗟とっさに飛び退いたが、ヘルミーネとプドリスが悲鳴を上げながら下に滑り落ちていく。

 落とし穴の底には剣が林立しており、毒も塗られているようだ。まともに落ちたら命がない。

 フリードリヒは、即座に念動力サイコキネシスで二人を引き上げた。

「おい。気をつけろよ」
「わかってるわよ」とヘルミーネは仏頂面で答える。
 プドリスは「主様。ありがとうございます」と目をうるうるさせている。本当に泣き虫なやつだ。

 しばらく進むと、また大広間があった。入った途端に入り口が閉まる。また、例のパターンだ。

 アイスグリズリーが30匹ほどの集団で現れた。

 プドリスが先ほどの汚名返上とばかりに、張り切っている。
「ここは私に任せてください。
 炎よ来たれ。煉獄れんごくの業火。ヘルファイア!」

 アイスグリズリーは一瞬で消し炭となった。
 ──本当は魔力を温存してほしいんだけどな…

「プドリス。よくやった」
「えへへっ」
 プドリスの頭を撫でてやる。褒めるときは素直に褒めないとね。

 しばらくは通常の戦闘が続き、また大広間があった。
 牛の頭と人間の体を持った凶暴な怪物が両手にバトルアックスを持ち、待ち構えている。

 ミノタウロスだ。迷宮といえばミノタウロスは定番だ。
 ミノタウロスはこちらをみてよだれをたらしながら咆哮ほうこうしている。
 迷宮にささげられた人間を食べていたというから、人間が好物なのだろう。

「ここはあたいが行くぜ」とヴェロニアが名乗り出た。
 先ほどのプドリスの活躍をみて思うところがあるのだろう。

「わかった。だが、無理はするなよ」

 ヴェロニアがミノタウロスへ突進し、両者が激しく激突する。

 ミノタウロスは3メートルに届こうかという身長だが、ヴェロニアはハルバートという長柄武器を使っているので、何とか対抗できている。

 激しく打ち合っているがヴェロニアも押し負けていない。ヴェロニアの怪力も進歩しているようだ。

 しかし、相手の攻撃スピードが上がった。今までは小手調べということか。

 ヴェロニアが攻撃を受け切れずに押されていく。
 ミノタウロスの攻撃がヴェロニアの脇腹をかすり、血がほとばしった。ヴェロニアの顔が苦痛に歪む。

 その一瞬のすきをついてヴェロニアの脳天をミノタウロスのバトルアックスが襲った。

 そこへ素早くフリードリヒが割って入り、バトルアックスを受け止めた。すかさずもう一方のバトルアックスがフリードリヒを襲うがこれも受け止め、膠着こうちゃく状態となった。

「選手交代だ!」

 ヴェロニアを下がらせると、ベアトリスが素早くヴェロニアの治療をする。

「光よ来たれ。癒しの光。ヒール!」

 それを見届けたフリードリヒはバトルアックスをはじき返すと後退し、仕切り直しをする。
 精神を集中し、半眼となった。同時にプラーナで身体を強化する。

 魔法で片を付けることもできるだろうが、ここは相手に敬意を表して肉弾戦でいくことにする。

 ミノタウロスが襲いかかってくる。先ほどよりも更にスピードがアップしている。パワーだけではないということのようだ。

 すさまじいスピードの打ち合いは常人の目には留まらないだろう。武器同士がぶつかり合い火花が散っている。

 ──なかなかやるな。ならばこちらも本気で行くか。

 フリードリヒは、神力を使って狂戦士バーサク化し、スピードとパワーが格段に上昇した。

 これにはミノタウロスも付いてこられないようだ。
 フリードリヒの方が優勢になっていく。

 フリードリヒの攻撃がミノタウロスの右腕を直撃した。
 が、切り落とすには至らない。

 ──ちっ。丈夫なやつめ。

 再度、右腕の傷を狙う。
 傷ついた腕では避けきれず、今度は右腕を切断できた。

 ミノタウロスの右腕がバトルアックスを握ったまま床に転がり、同時に右腕から血が噴出する。

 ミノタウロスは、なおも抵抗を続けるが、左腕一本では勝負にならない。

 間もなく左腕も切り落とされてしまった。
 ミノタウロスは両腕からおびただしく出血し、顔面蒼白になっている。

「完敗だ。殺せ」
 ミノタウロスはあきらめたように言った。

 ここは無抵抗の者を殺すのは忍びない。

「私は才能を愛する。あなたほどの腕を持っているのなら、眷属になって欲しいのだが…」
「我を許すというのか?」

「そのとおりだ」
「だが、ゼウス様に申し訳がたたぬ」

「ゼウス様は『遊んでやる』といっておられた。そこまで本気ではないと思うぞ」
「ならば承知した。眷属になろう」

「名前は上書きでいいか?」
「お任せする」
 次の瞬間、魔力を持っていかれる。大物だけにそれなりの量だ。

「では、腕を治してやろう」
 フリードリヒはハイヒールで切断した両腕を接合した。

「かたじけない」
「もう眷属になったんだ。気にすることはない。流した血は戻らないからしばらくは養生することだな」
「承知した」

 ミノタウロスと別れ、ダンジョンを進む。

「あいつを肉弾戦で倒すとは、さすが旦那だな」
 ヴェロニアが感心している。

「私は私で君たちの知らないところで、いろいろと努力しているのだ」
「才能だけじゃないってか」
「そういうことだ」

 大広間があった。入った途端に入り口が閉まる。
 今度はダイアウルフの30匹ほどの群が現れた。

 ダイアウルフは更新世に生きていた大型の狼である。この世界では現存しているようだ。

「今回は魔法を温存しろよ」とプドリスらに釘を刺しておく。

 狼は連携して攻撃してくるだけに手強てごわい。

「こちらもしっかり連携して対抗するんだ」
 メンバーに指示を出す。

 こちらは王道パターンだ。
 ローザ、ヘルミーネ、カタリーナを前衛、ヴェロニアを中衛に据え、ネライダ、ベアトリス、プドリスの後衛陣が牽制けんせいする。ミーシャとパールは遊撃として回り込む敵に対処する。

 フリードリヒも今回は遊撃に回ることにして、すきをついて回り込もうとするダイアウルフをほふっていく。

 今回もダイアウルフを殲滅せんめつするのに小一時間かかった。

 ここで小休止する。

「もう少し進んだら、今日は終わりにしよう」
「そうですね。もう魔力も減ってきましたし」
 ベアトリスが答えた。

 しばらく通常戦闘を続けながら進むと再び大広間があった。

 獅子の頭、ヤギの胴、ドラゴンの尾を持つ怪物がそこに控えていた。
 キマイラである。

「こいつは口から火を吐くはず。注意しろ」

 言うや否や、キマイラはすかさず火を吐いて攻撃してくる。
 メンバーは必死に回避している。

 フリードリヒは考える。
 キマイラは前面では火の攻撃、後ろに回ってもドラゴンの尾があるということで、一見するとすきがなさそうだが、上から背中を狙うのはどうだろう。いいアイデアではないか。

 フリードリヒは、マジックバッグから杖を取り出すとこれに跨り飛翔した。

「やつの注意を引き付けておいてくれ」とメンバーに頼む。

 キマイラは空中のフリードリヒに気づいたが、これを攻撃しようと上を向くと前衛陣が威嚇いかくするのでフリードリヒを攻撃しかねている。

 魔法でもいいが、ここは弓でいってみよう。
 フリードリヒはキマイラの上にたどり着くと弓を構え、その背中に放った。同時に、念動力サイコキネシスで弓を加速する。

 弓のスピードは加速を続けることで乗算的に上がっていく。距離が短いので音速とまではいかないが亜音速程度には加速されるはずだ。

 キマイラに命中すると「ブシュッ」という音を立ててそのからだを貫通した。キマイラはすさまじい悲鳴を上げて苦しんでいる。出血も著しい。

 フリードリヒは容赦なく2射目、3射目と放っていく。その度にキマイラの絶叫が部屋にとどろく。

 5射目を射たところで、キマイラは倒れ込んだ。もう虫の息である。

 フリードリヒは地面に降りるとキマイラに話しかけた。
「さて、ここで首をねるのは簡単だが、どうする?」
「ま…待って…くれ」

「おまえもゼウス様のお遊びに付き合わされてたいへんだな。私の眷属になるのなら命は助けてやるが、どうする?」
「わ…わかった」

「ならば、まずは傷を治してやろう」
 フリードリヒは光魔法のハイヒールを発動した。キマイラの傷がみるみる回復していく。

「名前は上書きでよいな」
「了解した」
 今回も大物だけにかなりの魔力量を持っていかれる。

「流した血は戻らないからしばらくは養生することだな」
「かたじけない」

 キマイラの部屋を後にすると、その日に野営する場所を探す。

「さすがは主様。上から背中を狙うとは思いつきませんでした」とネライダがめてきた。彼女の場合、お世辞ではなく、本気で言ってくれているところがうれしい。

「確かに、あの窮地きゅうちではなかなか思いつかないですよね」とベアトリスが賛同する。

「…………」
 真正面から褒められると照れてしまい、言葉が返せないフリードリヒであった。

 大物を倒したところで疲労もピークに達していたので、その日はこれで店じまいし、ダンジョン内で一泊することにした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...