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第2章 学園・学校編
第28話 シュバーベン軍事学校入学 ~異例の入学試験~
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今日はシュバーベン軍事学校の入学試験の日である。
フリードリヒはアダルベルトと連れ立ってきていた。
数は少ないが女性の受験者たちもいて、2人のツーショットを遠巻きに眺めては何やら囁いている。
「アダルベルト。今日はくれぐれも油断するなよ。君の実力ならば合格は必至だ」
「もちろん心得ております。あのような物をいただいてしまった以上、私は死んでもフリードリヒ様に着いていきます。そのためにも、不合格などあってはならないことです」
先日、フリードリヒはヴィヴィアンから得たアロンダイトをアダルベルトに貸し与えた。極力さりげない感じでわたしたつもりだったのだが、アダルベルトはいたく感激してしまい、以来「一生ついていきます」とか「死んでも着いていきます」とか連呼しているのだった。
前々から従者のような接し方をされて居心地の悪いフリードリヒだったが、これは火に油を注いでしまったようだ。
しかし、剣も死蔵されるよりは腕の良い使い手に使われた方が幸せだろう。フリードリヒにはアロンダイトの使い手は、アダルベルト以外に思いつかなかったのだ。
マルコルフ、アウリール、ヤンの3人組もやって来た。
「ようフリードリヒ。今日は余裕だな。フリードリヒなら鼻歌を歌っていても合格だろう」
とマルコルフは皮肉めいたことを言う。
「何を言う。いちおう本気で受ける気だぞ。試験官の腕にもよるがな」
「フリードリヒこそいつも通りニヒルだな」
「何を失礼な。私ほど性格のいい男はいないぞ」
「よく言うぜ」
一同はニヤリと笑った。
どうやら彼らは受験の緊張とは無縁のようだ。
◆
入学試験は学科と実技があるのだが、軍事学校だけあって実技の配分が圧倒的に高く、学科はついでといった感じだ。
実技は各々が得意な得物で戦う武技と魔法の試験となっている。
武技の試験は試験官との立ち合いと受験生同士の対戦の2種類から構成されている。もちろん真剣ではなく木剣での試合だ。
受験生同士の対戦は必ずしも勝敗が合否に直結するものではなく、建前はあくまでも実力を見るためのものだ。そうはいっても受験生も試験官も勝ちにこだわるのが人情だ。誰が対戦相手なのかと受験生は緊張しながら組合せを確認していた。
試験官との武技の試験が始まった。試験官は、現役の近衛騎士である。
当然に受験生がかなうはずもなく、何合か打たせて実力を見た後はあっという間に打ちのめされていく。
アダルベルトの順番がやってきた。
試験官は、近衛騎士団長のコンラディン・フォン・チェルハが務めるようだ。それだけ赤髪のアダルを評価しているということなのだろう。
「それでは、始め!」のかけ声とともに試験が開始された。
両者が攻守を入れ替えながら激しく打ち合っている。その素早い動きは常人には目で追えないほどのものだろう。
アダルベルトは気により目一杯身体強化をしていて気合が入りまくりである。コンラディンの方も気による身体強化を使っているようだ。純粋な人族にしてはたいしたものだ。
実戦さながらのレベルの高い激しい戦いぶりに、受験生ばかりか試験官をやっていた近衛騎士たちもあっけにとられている。
そのうちアダルベルトの方が押し気味になったが、「そこまで」の声がかかり、試験時間が終了となった。
「あれ。現役の近衛騎士よりも強いんじゃないか?」
「あいつは赤髪のアダルだ。知らないのか?」
「なるほど。あいつが。どうりで強いはずだ」
受験生たちが口々にアダルのことを話題にしている。
そしてフリードリヒの順番が回ってきた。
今回もコンラディンが相手をしてくれるようだ。白銀のアレクをそれだけ評価してくれているのだろう。
「フーちゃん頑張って!」とヴィオランテの声が聞こえる。どうやら実家の権力を使って潜り込んだらしい。気の抜けそうなかけ声だが、せっかくなのでヴィオランテに向けて軽く手を振る。ヴィオランテは嬉しそうに手を振り返している。
気を取り直してフリードリヒが剣を構えると「二刀流かよ」と驚きの声が受験生から聞こえる。
気にせずフリードリヒは精神を集中して半眼になると戦闘態勢を整えた。これに対しコンラディンは正統な中段の構えをとる。
「それでは、始め」
両者が激しく打ち合いを始める。コンラディンは回避の仕方が上手い。どうやら2刀流との戦闘経験があるようだ。さすが団長なことはある。
──これは面白い。
フリードリヒは試験が楽しくなってきた。コンラディンは冒険者で言えばぎりぎりオリハルコンといったところか。これならばと気による身体強化もあえて軽めで済ませる。
だんだんとコンラディンに余裕がなくなってきた。そして隙をみてコンラディンの首筋に剣を突き付けようとする矢先、「そこまで」の声で試験時間が終了となった。
試験時間が若干短かったようにも思えるが、隊長が負けては面目が保てないということなのだろう。
「こんなに強いやつがまだいるのかよ」
「あれは白銀のアレクだぜ」
「ああ。例のオリハルコン冒険者か」
受験生たちがフリードリヒのことを話題にしてざわついている。
その後、マルコルフ、アウリール、ヤンの3人組も近衛騎士の試験官たちと遜色のない戦いぶりをみせていた。合格は間違いないだろう。
「今年の学園卒業生は一体どうなっているんだ?」
「白銀のアレクと赤髪のアダルがあの3人を鍛えまくったらしい」
「そういうことか」
と受験生たちは学園について噂していた。
次は受験生同士の対戦だ。
アダルベルトは一撃で相手を倒していた。
これはマルコルフ、アウリール、ヤンの3人組も同様だった。
これでは相手の実力が測れなくて試験官が困ると思うのだが…。
フリードリヒの番が回ってきた。
相手の男は妙に威張ってふんぞり返っている。
「はっはっはっ。このアロイス・フォン・ケーラー様に当たるとは貴様も運がないな。悪く思うなよ」
「…………」
──何を言っているんだ。こいつは?さっきの俺の戦いを見ていなかったのか?
後で知ったことだが、アロイスはホーエンシュタウフェン家の親戚筋の公爵家の子息だということだ。さぞやちやほやされて育ったのだろう。
フリードリヒはアダルベルトのように一撃で倒してやろうと思っていたのだが方針を変えた。こういうやつは痛い目にあわせるに限る。
「それでは、始め」
アロイスは言うだけあって他の受験生よりは強かったが、冒険者で言えばシルバー止まりだろう。オリハルコンのフリードリヒにかなうはずもなく、攻撃は次々と回避されていく。
フリードリヒは相手を気絶させることのないよう適度に手を抜いて、アロイスを何度も打ち据えていく。
その度に「ううっ」という呻き声が聞こえるが、アロイスは必至に耐えている。
が、ついに苦痛に耐えかねて倒れた。
「はあっ。はあっ。はあっ。はあっ」と荒い息をして喘いでいる。
「君。もう降参した方が…」と試験官が忠告する。
「ケーラー家の子息たるもの…これしきで降参など…できるか!」
アロイスは力を振り絞って再び立ち上がった。
根性だけはあるのだな。フリードリヒはそこだけは評価した。
しかし、そこは男には容赦のないフリードリヒのこと。
棒立ちになっているアロイスに容赦なく2撃3撃と加え、ボコボコにするとついに再度よろよろと倒れた。
「そこまで」
ついに、試験官からストップがかかった。
アロイスは意識が朦朧としている。言葉もまともにしゃべれないようだ。
フリードリヒは最後の後始末とばかりに、光魔法のヒールで傷を治してやった。
そこにアロイスの従者たちが駆け寄ってきた。
「アロイス様。ご無事ですか?」
「ううっ」と呻き声しかあげられない。
従者たちが恨みがましい目でフリードリヒをにらんでいる。
「そこは弱いのに降参しない奴が悪いのだ」と言いたかったが、状況を悪化させそうだったので控えた。
とりあえず、知らんぷりを装う。
そのあと。魔法の試験があったが、魔法は寸止めができないため的を狙って魔法を放出するという学園の試験とほぼ同じ内容だった。
ここでもヴィオランテが応援してくれて、少し恥ずかしかった。
赤髪のアダルが4属性を使えるクアトルということは知れ渡っていたのであまり驚かれなかった。
フリードリヒはアロイスの怪我を光魔法で治癒するところを見られてしまったので、火・風・水・土に加え光の5属性が使える
クインクということにしておいた。本当は他の闇魔法なども使えるのだが、これは禁忌だから当面秘匿しておく方が賢明だ。
近衛魔導士長のウルリヒ・フォン・ヨードルは、ようやく2人が来てくれたと大喜びだった。
◆
試験を終わった帰り道。ヴィオランテがフリーダを引き連れて校門で待っていてくれた。
「フーちゃんカッコよかったです」とヴィオランテが感想を述べた。
「そうか。惚れ直しただろう?」
「そうね」
冗談で返したつもりだったが真正面から答えを返されてしまった。これは少し恥ずかしい。
ヴィオランテが嬉しそうにほほ笑んだので、フリードリヒもほほ笑んだ。
その横でアダルベルトとフリーダが頬を染めながら見つめ合っていた。
「言葉くらいかけてやれよ」と思ったが、2人は2人の世界があるのだろうから放っておくことにする。
ヴィオランテはいつも通りにフリードリヒの腕にひっついてきて話を始めた。
実は、ヴィオランテは前世の紅葉がしていたデザインの仕事をかなり覚えていた。本人もデザインを考えるのが好きで自分の服なども自作していたそうだ。
ヴィオランテは服のセンスが妙にいいなと思っていたが、そういうことだった。
それがきっかけでヴィオランテにはタンバヤ商会のデザインの仕事を頼むことになった。デザイン料はもちろん彼女個人に支払っている。その金額は既にかなりの金額になりつつあった。
そうこうしているうちに、ヴィオランテに迎えの馬車が来たので見送りをした。帰りがけ、休みの日にデートをする約束をする。
基本的にヴィオランテは高貴な家の姫なので一人で外出することを許されていない。いつもフリーダが付き添っていて手持ち無沙汰にしていたが、最近はアダルベルトも入れてダブルデートのパターンにしている。これはこれで楽しいのだ。
フリードリヒはアダルベルトと連れ立ってきていた。
数は少ないが女性の受験者たちもいて、2人のツーショットを遠巻きに眺めては何やら囁いている。
「アダルベルト。今日はくれぐれも油断するなよ。君の実力ならば合格は必至だ」
「もちろん心得ております。あのような物をいただいてしまった以上、私は死んでもフリードリヒ様に着いていきます。そのためにも、不合格などあってはならないことです」
先日、フリードリヒはヴィヴィアンから得たアロンダイトをアダルベルトに貸し与えた。極力さりげない感じでわたしたつもりだったのだが、アダルベルトはいたく感激してしまい、以来「一生ついていきます」とか「死んでも着いていきます」とか連呼しているのだった。
前々から従者のような接し方をされて居心地の悪いフリードリヒだったが、これは火に油を注いでしまったようだ。
しかし、剣も死蔵されるよりは腕の良い使い手に使われた方が幸せだろう。フリードリヒにはアロンダイトの使い手は、アダルベルト以外に思いつかなかったのだ。
マルコルフ、アウリール、ヤンの3人組もやって来た。
「ようフリードリヒ。今日は余裕だな。フリードリヒなら鼻歌を歌っていても合格だろう」
とマルコルフは皮肉めいたことを言う。
「何を言う。いちおう本気で受ける気だぞ。試験官の腕にもよるがな」
「フリードリヒこそいつも通りニヒルだな」
「何を失礼な。私ほど性格のいい男はいないぞ」
「よく言うぜ」
一同はニヤリと笑った。
どうやら彼らは受験の緊張とは無縁のようだ。
◆
入学試験は学科と実技があるのだが、軍事学校だけあって実技の配分が圧倒的に高く、学科はついでといった感じだ。
実技は各々が得意な得物で戦う武技と魔法の試験となっている。
武技の試験は試験官との立ち合いと受験生同士の対戦の2種類から構成されている。もちろん真剣ではなく木剣での試合だ。
受験生同士の対戦は必ずしも勝敗が合否に直結するものではなく、建前はあくまでも実力を見るためのものだ。そうはいっても受験生も試験官も勝ちにこだわるのが人情だ。誰が対戦相手なのかと受験生は緊張しながら組合せを確認していた。
試験官との武技の試験が始まった。試験官は、現役の近衛騎士である。
当然に受験生がかなうはずもなく、何合か打たせて実力を見た後はあっという間に打ちのめされていく。
アダルベルトの順番がやってきた。
試験官は、近衛騎士団長のコンラディン・フォン・チェルハが務めるようだ。それだけ赤髪のアダルを評価しているということなのだろう。
「それでは、始め!」のかけ声とともに試験が開始された。
両者が攻守を入れ替えながら激しく打ち合っている。その素早い動きは常人には目で追えないほどのものだろう。
アダルベルトは気により目一杯身体強化をしていて気合が入りまくりである。コンラディンの方も気による身体強化を使っているようだ。純粋な人族にしてはたいしたものだ。
実戦さながらのレベルの高い激しい戦いぶりに、受験生ばかりか試験官をやっていた近衛騎士たちもあっけにとられている。
そのうちアダルベルトの方が押し気味になったが、「そこまで」の声がかかり、試験時間が終了となった。
「あれ。現役の近衛騎士よりも強いんじゃないか?」
「あいつは赤髪のアダルだ。知らないのか?」
「なるほど。あいつが。どうりで強いはずだ」
受験生たちが口々にアダルのことを話題にしている。
そしてフリードリヒの順番が回ってきた。
今回もコンラディンが相手をしてくれるようだ。白銀のアレクをそれだけ評価してくれているのだろう。
「フーちゃん頑張って!」とヴィオランテの声が聞こえる。どうやら実家の権力を使って潜り込んだらしい。気の抜けそうなかけ声だが、せっかくなのでヴィオランテに向けて軽く手を振る。ヴィオランテは嬉しそうに手を振り返している。
気を取り直してフリードリヒが剣を構えると「二刀流かよ」と驚きの声が受験生から聞こえる。
気にせずフリードリヒは精神を集中して半眼になると戦闘態勢を整えた。これに対しコンラディンは正統な中段の構えをとる。
「それでは、始め」
両者が激しく打ち合いを始める。コンラディンは回避の仕方が上手い。どうやら2刀流との戦闘経験があるようだ。さすが団長なことはある。
──これは面白い。
フリードリヒは試験が楽しくなってきた。コンラディンは冒険者で言えばぎりぎりオリハルコンといったところか。これならばと気による身体強化もあえて軽めで済ませる。
だんだんとコンラディンに余裕がなくなってきた。そして隙をみてコンラディンの首筋に剣を突き付けようとする矢先、「そこまで」の声で試験時間が終了となった。
試験時間が若干短かったようにも思えるが、隊長が負けては面目が保てないということなのだろう。
「こんなに強いやつがまだいるのかよ」
「あれは白銀のアレクだぜ」
「ああ。例のオリハルコン冒険者か」
受験生たちがフリードリヒのことを話題にしてざわついている。
その後、マルコルフ、アウリール、ヤンの3人組も近衛騎士の試験官たちと遜色のない戦いぶりをみせていた。合格は間違いないだろう。
「今年の学園卒業生は一体どうなっているんだ?」
「白銀のアレクと赤髪のアダルがあの3人を鍛えまくったらしい」
「そういうことか」
と受験生たちは学園について噂していた。
次は受験生同士の対戦だ。
アダルベルトは一撃で相手を倒していた。
これはマルコルフ、アウリール、ヤンの3人組も同様だった。
これでは相手の実力が測れなくて試験官が困ると思うのだが…。
フリードリヒの番が回ってきた。
相手の男は妙に威張ってふんぞり返っている。
「はっはっはっ。このアロイス・フォン・ケーラー様に当たるとは貴様も運がないな。悪く思うなよ」
「…………」
──何を言っているんだ。こいつは?さっきの俺の戦いを見ていなかったのか?
後で知ったことだが、アロイスはホーエンシュタウフェン家の親戚筋の公爵家の子息だということだ。さぞやちやほやされて育ったのだろう。
フリードリヒはアダルベルトのように一撃で倒してやろうと思っていたのだが方針を変えた。こういうやつは痛い目にあわせるに限る。
「それでは、始め」
アロイスは言うだけあって他の受験生よりは強かったが、冒険者で言えばシルバー止まりだろう。オリハルコンのフリードリヒにかなうはずもなく、攻撃は次々と回避されていく。
フリードリヒは相手を気絶させることのないよう適度に手を抜いて、アロイスを何度も打ち据えていく。
その度に「ううっ」という呻き声が聞こえるが、アロイスは必至に耐えている。
が、ついに苦痛に耐えかねて倒れた。
「はあっ。はあっ。はあっ。はあっ」と荒い息をして喘いでいる。
「君。もう降参した方が…」と試験官が忠告する。
「ケーラー家の子息たるもの…これしきで降参など…できるか!」
アロイスは力を振り絞って再び立ち上がった。
根性だけはあるのだな。フリードリヒはそこだけは評価した。
しかし、そこは男には容赦のないフリードリヒのこと。
棒立ちになっているアロイスに容赦なく2撃3撃と加え、ボコボコにするとついに再度よろよろと倒れた。
「そこまで」
ついに、試験官からストップがかかった。
アロイスは意識が朦朧としている。言葉もまともにしゃべれないようだ。
フリードリヒは最後の後始末とばかりに、光魔法のヒールで傷を治してやった。
そこにアロイスの従者たちが駆け寄ってきた。
「アロイス様。ご無事ですか?」
「ううっ」と呻き声しかあげられない。
従者たちが恨みがましい目でフリードリヒをにらんでいる。
「そこは弱いのに降参しない奴が悪いのだ」と言いたかったが、状況を悪化させそうだったので控えた。
とりあえず、知らんぷりを装う。
そのあと。魔法の試験があったが、魔法は寸止めができないため的を狙って魔法を放出するという学園の試験とほぼ同じ内容だった。
ここでもヴィオランテが応援してくれて、少し恥ずかしかった。
赤髪のアダルが4属性を使えるクアトルということは知れ渡っていたのであまり驚かれなかった。
フリードリヒはアロイスの怪我を光魔法で治癒するところを見られてしまったので、火・風・水・土に加え光の5属性が使える
クインクということにしておいた。本当は他の闇魔法なども使えるのだが、これは禁忌だから当面秘匿しておく方が賢明だ。
近衛魔導士長のウルリヒ・フォン・ヨードルは、ようやく2人が来てくれたと大喜びだった。
◆
試験を終わった帰り道。ヴィオランテがフリーダを引き連れて校門で待っていてくれた。
「フーちゃんカッコよかったです」とヴィオランテが感想を述べた。
「そうか。惚れ直しただろう?」
「そうね」
冗談で返したつもりだったが真正面から答えを返されてしまった。これは少し恥ずかしい。
ヴィオランテが嬉しそうにほほ笑んだので、フリードリヒもほほ笑んだ。
その横でアダルベルトとフリーダが頬を染めながら見つめ合っていた。
「言葉くらいかけてやれよ」と思ったが、2人は2人の世界があるのだろうから放っておくことにする。
ヴィオランテはいつも通りにフリードリヒの腕にひっついてきて話を始めた。
実は、ヴィオランテは前世の紅葉がしていたデザインの仕事をかなり覚えていた。本人もデザインを考えるのが好きで自分の服なども自作していたそうだ。
ヴィオランテは服のセンスが妙にいいなと思っていたが、そういうことだった。
それがきっかけでヴィオランテにはタンバヤ商会のデザインの仕事を頼むことになった。デザイン料はもちろん彼女個人に支払っている。その金額は既にかなりの金額になりつつあった。
そうこうしているうちに、ヴィオランテに迎えの馬車が来たので見送りをした。帰りがけ、休みの日にデートをする約束をする。
基本的にヴィオランテは高貴な家の姫なので一人で外出することを許されていない。いつもフリーダが付き添っていて手持ち無沙汰にしていたが、最近はアダルベルトも入れてダブルデートのパターンにしている。これはこれで楽しいのだ。
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