乙女怪盗ジョゼフィーヌ

沖田弥子

文字の大きさ
上 下
16 / 54
第三章 パーティーでシャンパンを

パーティーへの予告状

しおりを挟む
「それじゃあ…ん?仕事が入った。開始は十分後だ。5分ごとに送りつける。準備しておけ!」

 リオンが自分勝手な言葉を残して転移した。

「……」

 皆、少ない情報の中での早い展開に呆然としていた。

(これは…)

 サイカはリオンが転移した後に何かの紙が落ちているのを見つけた。近づいて確認すると、それは指示がメモされた紙切れであった。

(『十分後』って、まさかコレやるってこと?)

「みんな、来てください!」

 サイカはすぐに人を集めた。

 メモのの内容は箇条書きで7つ書かれていた。

・5分ごとにモンスターを送る。旗を立ててある。

・送りつけるモンスターはお前らではやれない。罠に嵌めてアイテムで攻撃しろ

・家は安全

・周りは崖、落ちるな

・外付け倉庫に必要なものはだいたい入れてある

・トイレは玄関入って左に進め

・危なくなったら球を割れ

 の以上である。

「旗?」

 カイトが疑問に思って呟く。

「あそこだと思うよ」

 リュートが答える。そこには、きの棒に白い布を括り付けただけの見窄らしい旗があった。

「アレか…」

「私はこっちの方が気になるのだけどアイテム?この魔道具のことかしら?」

 サリアがリオンが残した武器を指して言った。

 「ん、多分そう、しかも、機械タイプのお高いヤツ」

 アヤメが答える。

「ちょっと!あなた達、そんなに集まったら他の人が見れなくなります!離れてください!」

 サイカはギュウギュウに詰めてメモを見るリュート達を引き剥がした。

「そう言われてもな~、見ながら試したいし…」

 カイトが名残惜しそうにメモを覗く。

「じゃあ、こうしよう!」

 そこで、リュートがある提案をした。

ーーーーーーーー

「はーい、注目!」

 『触媒魔法』で形成されたホワイトボード前でリュートが呼びかける。

「これから、メモの内容について話していこうと思います。リオンさんの話では十分後に訓練が始まるとのことです」

 リュートは『闇魔法』で作られたチョークでメモの内容はをボードに書き連ねた。

「まず一つ目、見ての通りだね、シンプルだ。旗はあそこにある。トウカ先生の助言通りにラウド先生をけしかけよう」

 説明を終えると文を射線で消した。

「二つ目、パワーレベリングです。今年は大変な年になりそうです」

 リュートが線を引こうとした時、リョウカ質問をした。

「えっと、どう言うことなのです?」

 申し訳なさそうに聞く。

「パワーレベリングの特徴は分かる?」

「それは分かるのです!」


 この世界でのパワーレベリングとは遥か格上の相手を実力関係なしに倒す行為である。大量のマナを一気に吸収するため大幅な成長を可能にする。
 しかし、一見やり得にも思えるパワーレベリングだが欠点がある。人が吸収できるマナの総量にはがあり、それは地道な訓練でしか増やすことが出来ない。

「そういう事だね」

「どう言う事です!?サイカっちは分かるのです?」

「…今は目の前のことを考えてください」

 サイカが目を逸らして答える。

「何なのです!?意味わからなくて怖いです!」

「フフ…知らない方が良いものとは結構ございますよ」

 ニナがリョウカの耳元で囁く。

「…ッ!いっそ教えるのです。覚悟できれば多少マシになるのです!」

(うぁー…)

 サイカはニナの黒い本性を垣間見た。

「三つ目はそのままの意味だと思う。いないと思うけど戦いたく無い人は中に避難すればいい」

(?いないと思う?私、訓練で命掛けたく無いのです。皆んな分かってるのです?)

 リョウカは一人理解できずに混乱する。

「アヤメーー!」

 リュートが家の前に立つアヤメに声をかけた。

「ふんっ!」

 アヤメが玄関の柱を殴る。

「この通り」

 リュートが前を向く。

(どの通りなのです!?意味がわからないのです!意味がわからなすぎて…意味がわからないのです!)

 リョウカの思考は混沌を極めた。

「四つ目、カリスに軽く調べてもらったところ、円形に出っぱった台地みたいになってる。安全装置みたいなの多分無いから」

 リュートが線を引く。

(あっ、これは理解できたのです!)

「五つ目、倉庫はあそこ。魔道具のコアはおそらくそこにある」

「有ったわよー!」

 サリアがコアを片手に手を振る。

(これも余裕なのです!)

 リョウカに活力が戻る。

「六つ目はいいとして七つ目、球は使ってないサリアたちの班のを使えってことだと思う。ここで一つ問題がある。」

 リュートが線を引き、真剣な表情で言う。

「何なのです?」

 リョウカが声に出して聞く。

「時間がない、40秒で支度しろ!」

 リュートが叫んだ。

(絶対終わらないのです!)

ーーーーーー
 クラスメイト全員が魔道具を装備して旗を囲んでいる。
 装備は多種多様であり大きく分けての近接、援護、遠距離の三種類がある。コアの構成は皆、機動と防御に特化させて攻撃を魔道具に頼る形となっている。
 旗から近い順に近接部隊、援護部隊、遠距離部隊に分かれた。近接、援護の部隊は適当に、遠距離部隊はピクシーが担当した。
 部隊の手前には申し訳程度の壁と家の前まで通じる塹壕が引かれている。

(ほ、本当に終わったのです。皆んな速いのです…)

 皆が息を呑み標的を待つ。

 5、4、3、2、1

 旗の真上に丸々と太った齧歯動物ラット系モンスターが現れた。

(来たっ!)

 リュート達はモンスターに一斉に襲い掛かる。

「え……」

 カイトは呆気ない結果に思わず声を漏らした。
 遠距離部隊の放った攻撃がモンスターの脳天を貫通したのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

王女、豹妃を狩る

遠野エン
ファンタジー
ベルハイム王国の王子マルセスは身分の差を超えて農家の娘ガルナと結婚を決意。王家からは驚きと反対の声が上がるが、マルセスはガルナの自由闊達な魅力に惹かれ押し切る。彼女は結婚式で大胆不敵な豹柄のドレスをまとい、周囲をあ然とさせる。 ガルナは王子の妻としての地位を得ると、侍女や家臣たちを手の平で転がすかのように振る舞い始める。王宮に新しい風を吹かせると豪語し、次第に無茶な要求をし出すようになる。 マルセスの妹・フュリア王女はガルナの存在に潜む危険を察知し、独自に調査を開始する。ガルナは常に豹柄の服を身にまとい人々の視線を引きつけ、畏怖の念を込めて“豹妃”というあだ名で囁かれるのだった。

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

忘れられた薔薇が咲くとき

ゆる
恋愛
貴族として華やかな未来を約束されていた伯爵令嬢アルタリア。しかし、突然の婚約破棄と追放により、その人生は一変する。全てを失い、辺境の町で庶民として生きることを余儀なくされた彼女は、過去の屈辱と向き合いながらも、懸命に新たな生活を築いていく。 だが、平穏は長く続かない。かつて彼女を追放した第二王子や聖女が町を訪れ、過去の因縁が再び彼女を取り巻く。利用されるだけの存在から、自らの意志で運命を切り開こうとするアルタリア。彼女が選ぶ未来とは――。 これは、追放された元伯爵令嬢が自由と幸せを掴むまでの物語。

田舎者の俺が貴族になるまで

satomi
ファンタジー
見た目は麗しの貴公子の公爵令息だが長期間田舎暮らしをしていたため、強い田舎訛りと悪い姿勢が板についてしまった。 このままでは王都で社交などとんでもない!公爵家の長男がこのままでは! ということで、彼は努力をするのです。 わりと都合主義です。

処理中です...