淫神の孕み贄

沖田弥子

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浴室の後戯 4

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 薄らと目を開けると、熱の籠もった双眸に間近から見つめられていた。
 シャンドラに、接吻されている。
 驚いたセナは腕を上げて、強靱な肩を押し戻そうとした。
 けれど、びくともしない。上から覆い被さられているので、全く身動きが取れなかった。

「んっ、ん、んぅ」

 ちゅう、と雄々しい唇に吸われた。その甘い刺激に、びくんと腰が跳ねる。快感に緩んだ肉環から、とろりと淫液が溢れた。
 少し唇を離してセナの顔を窺ったシャンドラは、ふっと微笑んだ。

「可愛いです」
「……え」

 彼の笑顔を初めて見た。その表情は、年相応の青年らしい邪気のない笑みで、無表情よりずっと血肉の通う人間らしさが感じられた。
 茫然と見上げていたセナの体から力が抜ける。
 その隙に、ぐいと片手で腰を持ち上げられた。弾みで足が大きく開いてしまう。
 体を密着させたシャンドラは、驚きのひとことを放つ。

「挿れますね」
「えっ……何を?」

 ぱちぱちと瞳を瞬かせる。舌を挿れてもいいかという意味だろうか。
 緩んだ肉環に、ぐっと硬い先端が押し当てられた。その熱に、シャンドラが何をしようとしているのかわかってしまう。

「あっ……だめ、だめです!」

 身を捻ろうとするけれど、覆い被さられて腰を持ち上げられている体勢なので身動きが取れない。完全にシャンドラに一手を取られてしまった状態だ。
 抵抗しようと腰を揺らせば、濡れた肉環が亀頭を舐る。そうすると屹立はいっそう漲り、柔らかく綻んだ肉環を舐め上げた。

「問題ありません。これは後戯です」
「え……どういうことです?」
「舞踏会で昂ぶったままでしょう。セナ様の体を慰めて、淫紋を動かせという、王の命令です」

 セナは目を見開いた。
 この淫蕩な湯浴みは、もはや七日間を終えようとしているラシードが、最後にシャンドラを派遣して淫紋を動かそうと画策したことなのだ。
 あらゆる手段を用いてセナに快楽を与えようとするラシードの執念には驚かされる。
 けれどそれも、セナを愛するがゆえなのだ。
 勝負に負けてしまったら、ラシードは二度とセナを抱けなくなるから。

「あ……で、でも、後戯ということなら、この状態で充分です」

 後戯とは、くちづけたり髪を撫でたりすることではないだろうか。それなのにシャンドラは明らかに挿入しようとしている。もし中で出されたら、妊娠してしまうかもしれない。
 セナが必死に腰をずらそうと身を捻ると、シャンドラは眉根を寄せた。

「それは俺に拷問を与えるということです。とてつもない無慈悲です」
「ええ? ……そんな」
「妊娠のことなら心配ありません。兄上から聞いているかもしれませんが、高祖母が王の娘なので、俺も王族の血を引くアルファなのです。ただ俺の母は異国の下女だったので、正妻の子である兄上とは異母兄弟になります」
「そうなんですか。異母兄弟だから髪の色も……あ、ぁっ」

 くちゅ、と猛った雁首が探り当てた蕾に挿し入れられる。
 連夜の遊戯ですっかり綻んだ肉環は、ぱくりと口を開けて、美味そうに楔を食んだ。

「あぁっ……あ、ん、やぁあ……っ」

 ズチュズチュと、太い雄芯が柔襞を擦り上げていく。 
 すでにずぶ濡れの花筒は、いやらしい水音を立てながら男根を呑み込んでいった。

「すごい……吸い込まれますね」

 シャンドラは深い息を吐きながら、ゆっくりと腰を押し進めていく。

「あぁあ……、あっ、入って……あぁ……ん」

 淫猥な体は雄を求めていたことを知らされた。
 たまらない悦楽に満たされて、セナは背を反らせる。そうすると、さらに腰が密着して、自ら受け入れるかのように両足が大きく開いていった。
 ずちゅ、ぐちゅと卑猥な音を響かせながら、深く味わうかのように、蠕動した媚肉は剛直をしゃぶる。
 けれどシャンドラは、ずりゅ……と腰を引いて雄芯を抜こうとした。
 突然空虚さを覚えた花筒に、セナは思わずシャンドラの肩に縋りつく。

「あっ……いや、抜かないで……」
「抜きません。ゆっくり、擦りましょう」

 ズチュ、グチュ……と、また楔は絡みつく媚肉を撫で上げながら、奥深くへ挿入されていった。
 心は戸惑っているのに、花筒に雄芯を収められると満たされた心地になる。セナはオメガの肉欲に抗えず、シャンドラの楔を受け入れた。
 浅い息を継ぎながら、押し込まれる熱杭の力強さを花筒で感じていたけれど、奥まで届く寸前に肉棒は引いてしまう。

「あうぅ……」

 そしてまた、ゆっくりと、焦らすかのように楔を押し込まれていく。
 ゆるゆると花筒を撫でるような抽挿は、決定的な刺激を与えられない。
 下腹は熱くなり、弾けることのできない熱の塊が出口を求めて渦を巻く。
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