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秘密のレッスン 1
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傾きかけていた公爵家の財政はひとまず持ち直したようだった。
鴇と晃久は度々事業のための打ち合わせを行い、物件の視察に出かけているようだ。なぜか鴇は安珠を晃久に会わせようとしないので詳細は分からない。
目に見える変化としては、数多くいた使用人を解雇したので屋敷内は閑散とした。残っているのは山崎やキユなど勤めた年月が長く、転職を考えていない者ばかりである。
父が存命だった頃は当主の靴を履かせるための使用人や毎朝髪を整えるための理容師を雇い、大勢の執事たちを抱えていたのだが、鴇はそれらすべてを経費の無駄だと人員削減した。
鴇は自分で着替えを行い、自ら屈んで靴を履く。しかも安珠の着替えまで鴇が手ずから行うので、そのための使用人は必要なくなった。掃除や調理は使用人が行うので不便はないが、老齢の下男が腰を痛めたときには鴇が薪を割っていた。
庶子の下男が公爵に出世すれば偉ぶるものだろうと想像に易いのだが、鴇は公爵家を立て直そうという使命に燃えているのか、常に謙虚な姿勢を崩さない。
彼が安珠を見下そうものなら庶子めと罵ってやるのに、人前では安珠を立て、甲斐甲斐しく世話を焼くものだから文句を吐く気も失せてしまう。資金繰りは順調で、使用人たちの評判も良いので、鴇は申し分ない当主といえた。母や史子への支援金も滞りなく支払われている。
ただしそのための契約は、口淫から体をつなげることに移行したらしい。
安珠としては鴇の雄芯を口で銜えるか、肉筒で受け止めるかの違いでしかないので、鴇の望むとおりで構わない。驚いたのは彼の執拗さだ。
初めて体をつなげて以来、鴇は箍が外れたように安珠を求めだした。まるで、これまでの分を取り戻そうとするかのように雄々しい肉棒と甘い言葉を駆使して一晩に幾度も挑んでくる。日中は執務があるが、それが終われば安珠を抱き上げてすぐさま寝室に連れ込む。
鴇から快楽を教え込まされた体は、瞬く間に淫らな雌に変貌していく。後ろから貫かれる体勢で揺さぶられ、安珠は高い嬌声を上げた。
「あっ、あん、あぁっ、いく、い……っ、あっあ……!」
また達してしまい、びくびくと腰を震わせながら枕に突っ伏す。花筒にはたっぷり白濁が注がれて、ぐちゅりと中を濡らしていた。そこを全く力を失っていない楔で掻き回され、新たな愉悦を生み出す。
「もう……やだ……」
絶倫の鴇は何度放出しても満足することを知らない。初めてのときに一回で済んだのは、実は彼が手加減してくれたからなのだと今さら思い知った。
「まだだよ。安珠の中は食い締めてきて俺の肉棒を離さないじゃないか。また奥で出してあげるね」
体を返されて、足を高く抱え上げられる。ずんずんと腰を推し進められて快楽をねじ込まれ、絶頂の余韻が残る体は瞬く間に火が点る。
「ひあぁああ、あぁん、あっ、あっ、らめぇ、んぁ、あっん」
甘い喘ぎ声で泣き喚く安珠は、凄絶に乱れて快楽を貪る。男の抽挿に合わせて腰を振り立て、接吻をせがんで逞しい首根に腕を回す。
「んん……ふ、ぅん……」
濡れた舌を擦り合わせ、ちゅるりと吸い上げる。目を合わせただけで、互いが求めているものを察するほどふたりは情交を重ねていた。
絡めた舌の感触を堪能している間にも、逞しい腰は小刻みに奥を穿つ。感じるところを硬い先端で突かれ、びくりと体が跳ね上がった。
「んっ……はぁっ、そこ、……あ、あっ、かんじる……」
「ここはね、子種を呑む口だよ。たくさん注いであげようね」
「えっ? 子種を……」
オメガは男でも妊娠可能な体だという。
その事実を知らなかったわけではないが、これまであえて見ないふりをしてきた。男に生まれた自分が妊娠するなんて、全く想像がつかない。つい先日までは、妊娠するための具体的な方法すら知らなかったくらいだ。
けれど、今まさに最奥に押し込まれた男根から迸る子種が、安珠を孕ませようとしている。急速に現実を認識した安珠は怯えた。
「だ、だめだ。妊娠する……」
鴇の肩を押し戻そうとしたが、強靱な体はびくともしない。いっそう華奢な体をきつく抱き返された。そして鴇は怖ろしいひとことを吐く。
「俺の子を孕ませるよ」
最奥をずくずくと穿たれて絶頂へと導かれていく。連日の快楽に蕩かされ、雄の味を覚え込まされた体は為す術もなかった。
「あっ、あう、あんん、らめ、鴇……あ、いく、あぁんん」
ぐうっと沈められた砲身の先端から、欲の飛沫が迸る。
絶頂に達した体をきつく抱き留められながら、奥の口に夥しい量の子種が注ぎ込まれていった。
「あ……あ……、孕んじゃう……」
つう、と眦から雫が零れ落ちる。鴇は愛おしそうにそれを舐め取った。
「大丈夫。何も心配いらない」
鴇がどういうつもりなのか分からない。
けれどひとたび熱が冷めてしまえば、閨での睦言なので考えても詮無いことだと思い直す。行為の最中は安珠もわけがわからなくなって、自分でも何を口走ったのか理解していないことも多々ある。
だから孕ませるだとかいったことは即ち、戯れ言なのだと解釈した。現に鴇は行為が終わると、安珠に口移しで水を飲ませた後は腕枕をしながら違う話をする。
鴇と晃久は度々事業のための打ち合わせを行い、物件の視察に出かけているようだ。なぜか鴇は安珠を晃久に会わせようとしないので詳細は分からない。
目に見える変化としては、数多くいた使用人を解雇したので屋敷内は閑散とした。残っているのは山崎やキユなど勤めた年月が長く、転職を考えていない者ばかりである。
父が存命だった頃は当主の靴を履かせるための使用人や毎朝髪を整えるための理容師を雇い、大勢の執事たちを抱えていたのだが、鴇はそれらすべてを経費の無駄だと人員削減した。
鴇は自分で着替えを行い、自ら屈んで靴を履く。しかも安珠の着替えまで鴇が手ずから行うので、そのための使用人は必要なくなった。掃除や調理は使用人が行うので不便はないが、老齢の下男が腰を痛めたときには鴇が薪を割っていた。
庶子の下男が公爵に出世すれば偉ぶるものだろうと想像に易いのだが、鴇は公爵家を立て直そうという使命に燃えているのか、常に謙虚な姿勢を崩さない。
彼が安珠を見下そうものなら庶子めと罵ってやるのに、人前では安珠を立て、甲斐甲斐しく世話を焼くものだから文句を吐く気も失せてしまう。資金繰りは順調で、使用人たちの評判も良いので、鴇は申し分ない当主といえた。母や史子への支援金も滞りなく支払われている。
ただしそのための契約は、口淫から体をつなげることに移行したらしい。
安珠としては鴇の雄芯を口で銜えるか、肉筒で受け止めるかの違いでしかないので、鴇の望むとおりで構わない。驚いたのは彼の執拗さだ。
初めて体をつなげて以来、鴇は箍が外れたように安珠を求めだした。まるで、これまでの分を取り戻そうとするかのように雄々しい肉棒と甘い言葉を駆使して一晩に幾度も挑んでくる。日中は執務があるが、それが終われば安珠を抱き上げてすぐさま寝室に連れ込む。
鴇から快楽を教え込まされた体は、瞬く間に淫らな雌に変貌していく。後ろから貫かれる体勢で揺さぶられ、安珠は高い嬌声を上げた。
「あっ、あん、あぁっ、いく、い……っ、あっあ……!」
また達してしまい、びくびくと腰を震わせながら枕に突っ伏す。花筒にはたっぷり白濁が注がれて、ぐちゅりと中を濡らしていた。そこを全く力を失っていない楔で掻き回され、新たな愉悦を生み出す。
「もう……やだ……」
絶倫の鴇は何度放出しても満足することを知らない。初めてのときに一回で済んだのは、実は彼が手加減してくれたからなのだと今さら思い知った。
「まだだよ。安珠の中は食い締めてきて俺の肉棒を離さないじゃないか。また奥で出してあげるね」
体を返されて、足を高く抱え上げられる。ずんずんと腰を推し進められて快楽をねじ込まれ、絶頂の余韻が残る体は瞬く間に火が点る。
「ひあぁああ、あぁん、あっ、あっ、らめぇ、んぁ、あっん」
甘い喘ぎ声で泣き喚く安珠は、凄絶に乱れて快楽を貪る。男の抽挿に合わせて腰を振り立て、接吻をせがんで逞しい首根に腕を回す。
「んん……ふ、ぅん……」
濡れた舌を擦り合わせ、ちゅるりと吸い上げる。目を合わせただけで、互いが求めているものを察するほどふたりは情交を重ねていた。
絡めた舌の感触を堪能している間にも、逞しい腰は小刻みに奥を穿つ。感じるところを硬い先端で突かれ、びくりと体が跳ね上がった。
「んっ……はぁっ、そこ、……あ、あっ、かんじる……」
「ここはね、子種を呑む口だよ。たくさん注いであげようね」
「えっ? 子種を……」
オメガは男でも妊娠可能な体だという。
その事実を知らなかったわけではないが、これまであえて見ないふりをしてきた。男に生まれた自分が妊娠するなんて、全く想像がつかない。つい先日までは、妊娠するための具体的な方法すら知らなかったくらいだ。
けれど、今まさに最奥に押し込まれた男根から迸る子種が、安珠を孕ませようとしている。急速に現実を認識した安珠は怯えた。
「だ、だめだ。妊娠する……」
鴇の肩を押し戻そうとしたが、強靱な体はびくともしない。いっそう華奢な体をきつく抱き返された。そして鴇は怖ろしいひとことを吐く。
「俺の子を孕ませるよ」
最奥をずくずくと穿たれて絶頂へと導かれていく。連日の快楽に蕩かされ、雄の味を覚え込まされた体は為す術もなかった。
「あっ、あう、あんん、らめ、鴇……あ、いく、あぁんん」
ぐうっと沈められた砲身の先端から、欲の飛沫が迸る。
絶頂に達した体をきつく抱き留められながら、奥の口に夥しい量の子種が注ぎ込まれていった。
「あ……あ……、孕んじゃう……」
つう、と眦から雫が零れ落ちる。鴇は愛おしそうにそれを舐め取った。
「大丈夫。何も心配いらない」
鴇がどういうつもりなのか分からない。
けれどひとたび熱が冷めてしまえば、閨での睦言なので考えても詮無いことだと思い直す。行為の最中は安珠もわけがわからなくなって、自分でも何を口走ったのか理解していないことも多々ある。
だから孕ませるだとかいったことは即ち、戯れ言なのだと解釈した。現に鴇は行為が終わると、安珠に口移しで水を飲ませた後は腕枕をしながら違う話をする。
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