89 / 112
初夜 2
しおりを挟む
「え?」
驚きすぎて眸を瞠ったままだったが、ふつうは閉じるものなのだろうか。というか、なぜ閉じなければならないのか。安珠は戸惑いながら視線を彷徨わせた。吐息のかかるほど傍で、鴇はくすりと微笑む。
「安珠の好きなようにしていいよ。でも唇は少し開いてくれると嬉しいな」
「え……こう?」
初心者の素直さで、言われたとおりに唇を開いてしまう。
後頭部を大きな掌で支えられると、鴇が口を開けながら精悍な顔を傾けるさまが視界いっぱいに広がった。
「んっ」
ぬるりと、熱くて濡れたものが口腔に挿し入れられる。
それが鴇の舌だということを、淫らな動きで中を掻き回されてから気づいた。
「あ……んくっ、……ん、ふ……」
歯列を辿り、頬裏をなぞられる。口蓋をくすぐられると、敏感なそこはびくりと体を跳ねさせた。
「くっ……んぅう……」
顔を逸らして逃れようとしても、頭の後ろを押さえられているので敵わない。伸ばした手は男の背を掻いた。
強靱な筋肉が指先に触れる。鴇は服を着ているときは冷淡な容貌のためか痩せて見えるのに、裸になると男らしく鍛え上げられた肉体を纏っていた。
鴇は殊更反応の良い口蓋を舐り続ける。初心な体は乾いた土に水が染み込むように、鋭敏に快感を掬う。
「ん、ん、ふ……んん……っ」
腰奥に熱の塊が凝っているような錯覚が過ぎる。
それが突如、苛烈に弾けた。びくり、びくりと腰が淫らに跳ね上がる。
「あっ、あっ、んぅ……」
舌を絡められ、じゅるりと啜られる。達した刺激の残滓まで吸い上げられた。
快楽の余韻に痺れながら濡れた舌を擦り合わせ、唾液を呑み込む。ようやく解放された唇は銀糸でつながれた。
「あ、はぁ……息が、できない……」
肩で大きく息をする。苦しくて、でもきもちよくて、甘い痺れが体中を支配していた。
鴇は何ともないようで、散々貪った安珠の濡れた唇をまた音を立てて吸う。
「鼻で息するんだよ。ちゃんとできてたから大丈夫」
「あ……。そうだったのか……」
夢中で口づけを受けていたので無自覚だった。己の体に意識をむければ、下肢の濡れた感触に気づかされる。
ライトが照らす淡い橙色の光に浮き上がる滑らかな肌を確かめるように、鴇は大きな掌でじっくりと撫で下ろす。首筋に押し当てられた唇は、鎖骨を辿り、鳩尾まで真っ直ぐに下りていく。
「安珠……もしかして、キスだけで達した?」
臍に舌先を捩入れて、男の舌と唇は下腹に及ぶ。
鴇の手は知らぬ間にベルトを外して、スラックスを引き下げていた。濡れた下穿きも花芯も、露わにされてしまう。
「あ……あ……だって、感じて……」
白い腿を撫で下ろした鴇は、膝裏に手をかけた。その眸は獰猛に眇められている。
「見せて。安珠の、一番奥のほうを」
蝶が羽を開くように、ゆっくりと、淫靡に、両足は開かれていった。
誰にも見せたことのない奥の窄まりが晒される。
外気に触れた冷たさと相反する男の手の熱さに、安珠はぶるりと背を震わせた。
「これが、安珠の蕾……」
感嘆の息を吐いた鴇の顔が、大きく開かれた己の足の狭間にある。
そこは自分でも見たことのない秘められた箇所だ。あんなところを誰かに凝視される日が来るなんて。
「ひっ」
ぬぐ、と奥の窄まりに熱いものを挿入された感覚が走る。
熱くて、濡れていて、意思を持ったそれは肉環をくぐり抜け、まだ硬い花筒を探る。
ぴちゃり、ぴちゃりと卑猥な水音が鳴り響く。あまりのことに惑乱した安珠は悲鳴を上げた。
「ひぃ……っ、いや、いやだ、鴇……やぁあ……」
「前戯をさせて。安珠の蕾はとても硬いんだ。傷つけたくないから」
伸び上がった鴇は小刻みに震える安珠の頬に、口づけをひとつ落とす。まるで子どもを宥めるような仕草に、胸の嵐は少々収まる。
乱れた薄茶の髪を大きな掌で掻き上げて、安珠の様子をじっくりと観察した鴇は体をずらした。はだけられた胸元へ唇を寄せる。
「あっ」
胸の突起をぬろりと舐め上げられ、甘い刺激に喉元を反らせる。
口腔に含まれ、飴をしゃぶるように舌先で転がされた。じゅるりときつく吸い上げられて硬く張り詰めた突起をまたねっとりと濡れた舌で弄られる。
驚きすぎて眸を瞠ったままだったが、ふつうは閉じるものなのだろうか。というか、なぜ閉じなければならないのか。安珠は戸惑いながら視線を彷徨わせた。吐息のかかるほど傍で、鴇はくすりと微笑む。
「安珠の好きなようにしていいよ。でも唇は少し開いてくれると嬉しいな」
「え……こう?」
初心者の素直さで、言われたとおりに唇を開いてしまう。
後頭部を大きな掌で支えられると、鴇が口を開けながら精悍な顔を傾けるさまが視界いっぱいに広がった。
「んっ」
ぬるりと、熱くて濡れたものが口腔に挿し入れられる。
それが鴇の舌だということを、淫らな動きで中を掻き回されてから気づいた。
「あ……んくっ、……ん、ふ……」
歯列を辿り、頬裏をなぞられる。口蓋をくすぐられると、敏感なそこはびくりと体を跳ねさせた。
「くっ……んぅう……」
顔を逸らして逃れようとしても、頭の後ろを押さえられているので敵わない。伸ばした手は男の背を掻いた。
強靱な筋肉が指先に触れる。鴇は服を着ているときは冷淡な容貌のためか痩せて見えるのに、裸になると男らしく鍛え上げられた肉体を纏っていた。
鴇は殊更反応の良い口蓋を舐り続ける。初心な体は乾いた土に水が染み込むように、鋭敏に快感を掬う。
「ん、ん、ふ……んん……っ」
腰奥に熱の塊が凝っているような錯覚が過ぎる。
それが突如、苛烈に弾けた。びくり、びくりと腰が淫らに跳ね上がる。
「あっ、あっ、んぅ……」
舌を絡められ、じゅるりと啜られる。達した刺激の残滓まで吸い上げられた。
快楽の余韻に痺れながら濡れた舌を擦り合わせ、唾液を呑み込む。ようやく解放された唇は銀糸でつながれた。
「あ、はぁ……息が、できない……」
肩で大きく息をする。苦しくて、でもきもちよくて、甘い痺れが体中を支配していた。
鴇は何ともないようで、散々貪った安珠の濡れた唇をまた音を立てて吸う。
「鼻で息するんだよ。ちゃんとできてたから大丈夫」
「あ……。そうだったのか……」
夢中で口づけを受けていたので無自覚だった。己の体に意識をむければ、下肢の濡れた感触に気づかされる。
ライトが照らす淡い橙色の光に浮き上がる滑らかな肌を確かめるように、鴇は大きな掌でじっくりと撫で下ろす。首筋に押し当てられた唇は、鎖骨を辿り、鳩尾まで真っ直ぐに下りていく。
「安珠……もしかして、キスだけで達した?」
臍に舌先を捩入れて、男の舌と唇は下腹に及ぶ。
鴇の手は知らぬ間にベルトを外して、スラックスを引き下げていた。濡れた下穿きも花芯も、露わにされてしまう。
「あ……あ……だって、感じて……」
白い腿を撫で下ろした鴇は、膝裏に手をかけた。その眸は獰猛に眇められている。
「見せて。安珠の、一番奥のほうを」
蝶が羽を開くように、ゆっくりと、淫靡に、両足は開かれていった。
誰にも見せたことのない奥の窄まりが晒される。
外気に触れた冷たさと相反する男の手の熱さに、安珠はぶるりと背を震わせた。
「これが、安珠の蕾……」
感嘆の息を吐いた鴇の顔が、大きく開かれた己の足の狭間にある。
そこは自分でも見たことのない秘められた箇所だ。あんなところを誰かに凝視される日が来るなんて。
「ひっ」
ぬぐ、と奥の窄まりに熱いものを挿入された感覚が走る。
熱くて、濡れていて、意思を持ったそれは肉環をくぐり抜け、まだ硬い花筒を探る。
ぴちゃり、ぴちゃりと卑猥な水音が鳴り響く。あまりのことに惑乱した安珠は悲鳴を上げた。
「ひぃ……っ、いや、いやだ、鴇……やぁあ……」
「前戯をさせて。安珠の蕾はとても硬いんだ。傷つけたくないから」
伸び上がった鴇は小刻みに震える安珠の頬に、口づけをひとつ落とす。まるで子どもを宥めるような仕草に、胸の嵐は少々収まる。
乱れた薄茶の髪を大きな掌で掻き上げて、安珠の様子をじっくりと観察した鴇は体をずらした。はだけられた胸元へ唇を寄せる。
「あっ」
胸の突起をぬろりと舐め上げられ、甘い刺激に喉元を反らせる。
口腔に含まれ、飴をしゃぶるように舌先で転がされた。じゅるりときつく吸い上げられて硬く張り詰めた突起をまたねっとりと濡れた舌で弄られる。
0
お気に入りに追加
1,130
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる