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新たな公爵の淫靡な命令 3
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「おまえの言うことはいつも回りくどい。僕に何をさせたいのか、具体的に言え」
鴇の漆黒の双眸が獰猛に眇められる。いつかの夜に見たものと同じ、欲を孕んだ昏い眸だった。
「では明確に言いましょう。俺を、満足させてください」
「だから、何をして……」
「しゃぶってください。口でしてあげたでしょう? あのときのように今度は俺の男根を、安珠の口で銜えるんです」
足元から戦慄が這い上がる。
あの夜のことを、鴇は無かったことになどしていないのだ。
「……それと金のこととは、無関係だろう」
「いいえ。安珠の覚悟を見せてほしいんです。やりたくないというのなら、さほど金をかけることもない件というわけで、別邸は売却します」
「そんなことさせるものか!」
「では、しゃぶってくれますよね? 華の和音と謳われた安珠ですから、さぞお上手なんでしょう」
華の和音。虚飾のその名を、この場で耳にすることになるとは思わなかった。
恋多き人と讃えられてきたが、実は安珠が誰とも未経験であることは鴇も勿論知らない。男の一物を銜えるくらい、何でもないだろうと思われている。
今さら否定するつもりはない。鴇は平然と口淫していたではないか。きっと、簡単なのだ。
震える唇から弱々しい声音が漏れる。
「……鴇を満足させれば、お母さまへの支援は打ち切らないな?」
「ええ。約束します」
母のためだ。仕方ない。何も考えず、ただしゃぶればいいだけのことだ。
震えそうになる足を叱咤させ、余裕の笑みを刻んでいる鴇の足元に跪く。
男の脚の狭間に屈むという格好だけでも、安珠の矜持を損なわせるには充分すぎるほどだった。
眼前には、男の股間。やや押し上げられているそれは布越しでも質量を感じてしまい、怯えが走る。自分以外の男のものを見たこともなければ、無論触ったこともない。口に銜えるなんて想像しただけで、嘔吐感が込み上げてくる。
「どうしました?」
「急かすな。僕のやり方でやる」
「では、お手並み拝見しましょう」
必死に鴇にしてもらったときの口淫を脳裏に思い返す。まずは、スラックスを下げるのだ。ジャケットの釦を外してベルトをまさぐる。他人のベルトなど外したことがないので、もたついてしまった。
鴇は背凭れに腕をかけて安珠の仕草を見下ろしている。男の視線を意識しないよう努めながら、スラックスと下着をやや下げた。
すると、既に勃ち上がっている逞しい男根が硬い下生えと共に姿を現す。
「……っ」
安珠は思わず瞠目して、雄々しい男根を凝視した。
自分のものとはまるで違う。何という太さ、そして長さ。
涼しい眼差しをしているくせに、とてつもない巨根の持ち主だ。こんなに大きなものを口に銜えなければならないのか。
一瞬臆したが、安珠はすぐに気を取り直した。
鴇に不慣れだと悟られてはならない。それに、何としてもやらなくてはならないのだ。この行為は、すべて母のため、椿小路公爵家のためだ。
覚悟をもって、天を穿つ雄芯にそろりと舌を這わせる。
初めて舐めた肉棒は火傷しそうなほどに熱かった。舌先でほんの少し触れただけで、熱杭はぴくりと脈打つ。
確か、根元のほうから幹を舐め上げるのだ。
鴇のやり方を踏襲して、ぬろりと肉棒を辿る。雄々しい匂いが充満し、鼻をついた。
「……っく」
頭上から鴇の小さな呻き声が耳に届く。
安珠の拙い愛撫でも感じるらしい。
括れの部分を何度も舌先で舐めると、先端からぷくりと蜜が溢れてきた。
冷淡そうに見える鴇もふつうの男で、口淫されれば快感を得るのだ。上目で鴇の表情を窺うと、苦しげに眉を寄せながら紅い舌を差し出す安珠を凝視して、息を荒げていた。
鴇は興奮している。
そうさせているのは自分なのだと思うと、胸の裡から優越感に似た高揚が湧き起こった。
淫らな紅い唇で熱い先端に口づけてみる。
以前鴇がしてくれたように、滲んだ蜜をちゅるりと吸い出してみた。そのまま口に含み、先端から太い肉棒を呑み込んでいく。
「んく……っ」
大きすぎて、とてもすべては含みきれない。苦慮していると、ふいに頭を優しく撫でられる。
「歯を立てないように、口を大きく開けて。無理して全部呑もうとしなくていいから」
無理なんかしていない。自分にだって、できる。
鴇の漆黒の双眸が獰猛に眇められる。いつかの夜に見たものと同じ、欲を孕んだ昏い眸だった。
「では明確に言いましょう。俺を、満足させてください」
「だから、何をして……」
「しゃぶってください。口でしてあげたでしょう? あのときのように今度は俺の男根を、安珠の口で銜えるんです」
足元から戦慄が這い上がる。
あの夜のことを、鴇は無かったことになどしていないのだ。
「……それと金のこととは、無関係だろう」
「いいえ。安珠の覚悟を見せてほしいんです。やりたくないというのなら、さほど金をかけることもない件というわけで、別邸は売却します」
「そんなことさせるものか!」
「では、しゃぶってくれますよね? 華の和音と謳われた安珠ですから、さぞお上手なんでしょう」
華の和音。虚飾のその名を、この場で耳にすることになるとは思わなかった。
恋多き人と讃えられてきたが、実は安珠が誰とも未経験であることは鴇も勿論知らない。男の一物を銜えるくらい、何でもないだろうと思われている。
今さら否定するつもりはない。鴇は平然と口淫していたではないか。きっと、簡単なのだ。
震える唇から弱々しい声音が漏れる。
「……鴇を満足させれば、お母さまへの支援は打ち切らないな?」
「ええ。約束します」
母のためだ。仕方ない。何も考えず、ただしゃぶればいいだけのことだ。
震えそうになる足を叱咤させ、余裕の笑みを刻んでいる鴇の足元に跪く。
男の脚の狭間に屈むという格好だけでも、安珠の矜持を損なわせるには充分すぎるほどだった。
眼前には、男の股間。やや押し上げられているそれは布越しでも質量を感じてしまい、怯えが走る。自分以外の男のものを見たこともなければ、無論触ったこともない。口に銜えるなんて想像しただけで、嘔吐感が込み上げてくる。
「どうしました?」
「急かすな。僕のやり方でやる」
「では、お手並み拝見しましょう」
必死に鴇にしてもらったときの口淫を脳裏に思い返す。まずは、スラックスを下げるのだ。ジャケットの釦を外してベルトをまさぐる。他人のベルトなど外したことがないので、もたついてしまった。
鴇は背凭れに腕をかけて安珠の仕草を見下ろしている。男の視線を意識しないよう努めながら、スラックスと下着をやや下げた。
すると、既に勃ち上がっている逞しい男根が硬い下生えと共に姿を現す。
「……っ」
安珠は思わず瞠目して、雄々しい男根を凝視した。
自分のものとはまるで違う。何という太さ、そして長さ。
涼しい眼差しをしているくせに、とてつもない巨根の持ち主だ。こんなに大きなものを口に銜えなければならないのか。
一瞬臆したが、安珠はすぐに気を取り直した。
鴇に不慣れだと悟られてはならない。それに、何としてもやらなくてはならないのだ。この行為は、すべて母のため、椿小路公爵家のためだ。
覚悟をもって、天を穿つ雄芯にそろりと舌を這わせる。
初めて舐めた肉棒は火傷しそうなほどに熱かった。舌先でほんの少し触れただけで、熱杭はぴくりと脈打つ。
確か、根元のほうから幹を舐め上げるのだ。
鴇のやり方を踏襲して、ぬろりと肉棒を辿る。雄々しい匂いが充満し、鼻をついた。
「……っく」
頭上から鴇の小さな呻き声が耳に届く。
安珠の拙い愛撫でも感じるらしい。
括れの部分を何度も舌先で舐めると、先端からぷくりと蜜が溢れてきた。
冷淡そうに見える鴇もふつうの男で、口淫されれば快感を得るのだ。上目で鴇の表情を窺うと、苦しげに眉を寄せながら紅い舌を差し出す安珠を凝視して、息を荒げていた。
鴇は興奮している。
そうさせているのは自分なのだと思うと、胸の裡から優越感に似た高揚が湧き起こった。
淫らな紅い唇で熱い先端に口づけてみる。
以前鴇がしてくれたように、滲んだ蜜をちゅるりと吸い出してみた。そのまま口に含み、先端から太い肉棒を呑み込んでいく。
「んく……っ」
大きすぎて、とてもすべては含みきれない。苦慮していると、ふいに頭を優しく撫でられる。
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