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伯爵家の花嫁 4
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「あぁ、んぁ、い、いい、あっ、あっ、いっ……いくぅ」
ふるりと揺れた花芯が、晃久の腹に白蜜を吹きかけた。同時に体の深いところで、ぶわりと膨れ上がった雄芯が爆ぜる。先端を呑み込むように包んだ奥の口は、迸る白濁を美味そうに飲み干した。
「ああ……奥の口が飲んでるな。おまえの奥はとても心地良い。俺の精は美味いか?」
「は……い……。おいしいです……晃久さまの、いっぱい、飲みたいです」
倒れ込んだ体を、優しく腕に抱き留められる。
宥めるように背をさすられて、澪は浅い息を継ぎながら晃久の首筋に頬を寄せた。
汗ばんだ体と倦怠感に包まれて、瞼を閉じる。晃久の指先が、さらりと漆黒の髪を梳いた。
「澪……愛している」
「僕もです……、愛してます、晃久さま」
少し身を起こせば、晃久の雄々しい唇が傍にある。唇を寄せて、柔らかい口づけを交わした。愛しい人に手を伸ばせば触れられる喜びに、澪は至上の幸福を感じた。
そのとき、もぞりと腹の中で何かが動いた。
「あ……なに?」
「どうした」
まさかと思い、下腹に手を遣る。
確かに、息づいている。新たな命が澪の体に宿っていた。
「子が……お腹の中で動きました」
晃久も、そっと澪の腹に触れた。彼は確信をもって微笑む。
「澪のように素直な子になるといいな。俺たちふたりで、子を育てるんだ」
「晃久さま……。僕は、世界一幸せです」
「俺もだ。澪」
ふたりは抱き合い、互いの存在を確かめ合う。
世界にたったひとりの、運命のつがい。
そして大切な人との間に誕生した、新たな命の尊さを胸に刻んだ。
神聖な神社の一角で、ふたりだけの神前式は執り行われた。
正絹の緞子地の白無垢は、しなやかで上品な光沢を纏う。晴れの日に相応しく、眩い輝きを放つ打掛を、少しお腹が大きくなった澪は体に負担のかからないようゆるりと着こなしていた。
白粉を施した化粧に、紅を引いた唇は清楚でたおやかだ。座して花婿が迎えに来るのを待っていると、白足袋が目に入り、純白の綿帽子越しに見上げる。羽二重の羽織に縞織りの袴という、伝統的な花婿装束を着用した晃久が現れた。
「いくひさしく、お願いいたします」
頭を下げて、白無垢を纏う澪は楚々と手を付く。
晃久は片膝をついて澪に手を差し出した。
「来い、澪」
愛する人の手を取り、抱え起こされる。
身重のためか、晃久はいつも以上に澪の体を気遣ってくれた。
先日、長沢の診療所を訪れて、間違いなく妊娠していると認定された。いずれ生まれてくる子のためにも式を挙げて、正式に夫婦になりたいと晃久は望んでくれたのだ。様々な不安はあったが、澪としても名実共に晃久のものになりたいという思いがあった。彼と一緒なら、きっとどんな困難も乗り越えられる。
幼い頃、ふたりの間で約束した晃久の花嫁になる夢が、今日叶う。
澪は感慨深く、神前に立った。
朱塗りの柱に囲まれた斎場は御簾が巡らされており、前方は朱の鳥居が構えている。白木で組まれた台座には三つの三方が置かれ、それぞれに神饌が供物として捧げられていた。
入場した斎主より、修祓の儀が行われる。大幣が振られて、穢れを払う厳かな儀式に、晃久と澪は深く頭を垂れた。
祝詞が奏上され、続いて三献の儀が執り行われる。新郎新婦が御神酒で三三九度の盃を飲み交わす。澪は口だけを付けた朱塗りの盃を晃久に返杯した。盃は小中大と三つあり、それぞれを交換する。
その作業は、本当に晃久と結婚するのだという実感を胸にじわりと滲ませた。晃久が誓詞を開くときにはもう、感激で涙が零れ落ちそうになる。
共に誓いの言葉を述べなければならないのに。
泣き出しそうになり、紅を引いた唇を噛みしめている澪に、晃久はそっと声をかける。
「澪……泣いてもいい。俺と共に奏上できるか?」
「はい……。晃久さま」
背に手を添えられながら、純白の誓詞を共に手にする。ふたりで声を出して読み上げた。澪は震える声を絞り出しながら、朗々と語る晃久に懸命に付いていった。
「今後は信頼と愛情を以て輔け合い、励まし合って良い家庭を築いていきたいと存じます」
すべての誓詞奏上を行うことができた。続いて玉串を神前に捧げ、二礼二拍手一礼をする。
巫女が三方に乗せられた指輪を捧げる。晃久は小さいほうの指輪を手に取った。そして澪に、真っ直ぐに向き直る。
「生涯、大切にする。おまえは今日から死んでもずっと、俺の妻だ」
ふるりと揺れた花芯が、晃久の腹に白蜜を吹きかけた。同時に体の深いところで、ぶわりと膨れ上がった雄芯が爆ぜる。先端を呑み込むように包んだ奥の口は、迸る白濁を美味そうに飲み干した。
「ああ……奥の口が飲んでるな。おまえの奥はとても心地良い。俺の精は美味いか?」
「は……い……。おいしいです……晃久さまの、いっぱい、飲みたいです」
倒れ込んだ体を、優しく腕に抱き留められる。
宥めるように背をさすられて、澪は浅い息を継ぎながら晃久の首筋に頬を寄せた。
汗ばんだ体と倦怠感に包まれて、瞼を閉じる。晃久の指先が、さらりと漆黒の髪を梳いた。
「澪……愛している」
「僕もです……、愛してます、晃久さま」
少し身を起こせば、晃久の雄々しい唇が傍にある。唇を寄せて、柔らかい口づけを交わした。愛しい人に手を伸ばせば触れられる喜びに、澪は至上の幸福を感じた。
そのとき、もぞりと腹の中で何かが動いた。
「あ……なに?」
「どうした」
まさかと思い、下腹に手を遣る。
確かに、息づいている。新たな命が澪の体に宿っていた。
「子が……お腹の中で動きました」
晃久も、そっと澪の腹に触れた。彼は確信をもって微笑む。
「澪のように素直な子になるといいな。俺たちふたりで、子を育てるんだ」
「晃久さま……。僕は、世界一幸せです」
「俺もだ。澪」
ふたりは抱き合い、互いの存在を確かめ合う。
世界にたったひとりの、運命のつがい。
そして大切な人との間に誕生した、新たな命の尊さを胸に刻んだ。
神聖な神社の一角で、ふたりだけの神前式は執り行われた。
正絹の緞子地の白無垢は、しなやかで上品な光沢を纏う。晴れの日に相応しく、眩い輝きを放つ打掛を、少しお腹が大きくなった澪は体に負担のかからないようゆるりと着こなしていた。
白粉を施した化粧に、紅を引いた唇は清楚でたおやかだ。座して花婿が迎えに来るのを待っていると、白足袋が目に入り、純白の綿帽子越しに見上げる。羽二重の羽織に縞織りの袴という、伝統的な花婿装束を着用した晃久が現れた。
「いくひさしく、お願いいたします」
頭を下げて、白無垢を纏う澪は楚々と手を付く。
晃久は片膝をついて澪に手を差し出した。
「来い、澪」
愛する人の手を取り、抱え起こされる。
身重のためか、晃久はいつも以上に澪の体を気遣ってくれた。
先日、長沢の診療所を訪れて、間違いなく妊娠していると認定された。いずれ生まれてくる子のためにも式を挙げて、正式に夫婦になりたいと晃久は望んでくれたのだ。様々な不安はあったが、澪としても名実共に晃久のものになりたいという思いがあった。彼と一緒なら、きっとどんな困難も乗り越えられる。
幼い頃、ふたりの間で約束した晃久の花嫁になる夢が、今日叶う。
澪は感慨深く、神前に立った。
朱塗りの柱に囲まれた斎場は御簾が巡らされており、前方は朱の鳥居が構えている。白木で組まれた台座には三つの三方が置かれ、それぞれに神饌が供物として捧げられていた。
入場した斎主より、修祓の儀が行われる。大幣が振られて、穢れを払う厳かな儀式に、晃久と澪は深く頭を垂れた。
祝詞が奏上され、続いて三献の儀が執り行われる。新郎新婦が御神酒で三三九度の盃を飲み交わす。澪は口だけを付けた朱塗りの盃を晃久に返杯した。盃は小中大と三つあり、それぞれを交換する。
その作業は、本当に晃久と結婚するのだという実感を胸にじわりと滲ませた。晃久が誓詞を開くときにはもう、感激で涙が零れ落ちそうになる。
共に誓いの言葉を述べなければならないのに。
泣き出しそうになり、紅を引いた唇を噛みしめている澪に、晃久はそっと声をかける。
「澪……泣いてもいい。俺と共に奏上できるか?」
「はい……。晃久さま」
背に手を添えられながら、純白の誓詞を共に手にする。ふたりで声を出して読み上げた。澪は震える声を絞り出しながら、朗々と語る晃久に懸命に付いていった。
「今後は信頼と愛情を以て輔け合い、励まし合って良い家庭を築いていきたいと存じます」
すべての誓詞奏上を行うことができた。続いて玉串を神前に捧げ、二礼二拍手一礼をする。
巫女が三方に乗せられた指輪を捧げる。晃久は小さいほうの指輪を手に取った。そして澪に、真っ直ぐに向き直る。
「生涯、大切にする。おまえは今日から死んでもずっと、俺の妻だ」
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