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謀略の男爵 7
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体は痺れたように動かないのに、快楽だけは強く身を焦がしている体が厭わしい。
ぐったりと横たわる澪の膝裏に、手が差し入れられた。
「あ……」
ぐいと足を広げられて、秘めやかな蕾が晒される。濡れそぼる花芯から伝い降りた白蜜が、しとどに蕾を濡らした。
「綺麗な蕾だ。ここで何度も男を銜え込んだのかな?」
「や、やぁ……」
つぷりと指を差し挿れられる。蕾は美味そうに指にしゃぶりついた。
「奥に子種をたっぷり注がれて、あんあん言ったの?」
「そんな、の……ぅん、や、やっ……」
ずくりと指を埋められて、花筒は与えられた刺激を悦び、奥へ迎え入れるように蠕動する。それに連動するように、奥の口からしっとりと蜜が溢れた。
「おや……濡れてきたね。欲しがりな肉筒に私の硬いものをぶち込んであげよう」
「やっ、いや、やめて……やめて、叔父さまぁ」
必死に抵抗して体を捻ろうとするが、ほんの少し身じろぎした程度にしかならなかった。前立てを寛げた浩一郎は澪の両足を高く抱え上げて、その狭間に腰を押し入れる。
じゅく、と猛った先端が濡れた蕾を捲り上げようとした。
「いやっ、いや、若さま、たすけて、若さまぁ」
ガチリと硬質な音が、悲鳴を掻き消す。
雄芯が挿入される直前に、浩一郎は動きを止めた。
はっとして見上げれば、険しい形相をした晃久が螺旋階段の傍に立っていた。真っ直ぐに腕を伸ばして、拳銃の銃口を浩一郎の後頭部に向けている。
「澪から離れろ」
冷えた低い声音が発せられる。
浩一郎は澪から手を離すと、ゆっくりと背後を振り返った。
「やめろ、晃久。おまえは誰に銃をむけている」
「俺の大切な人を汚す者を、俺は自らの手で屠ろうとしている。澪は俺の花嫁だ。たとえ誰であろうと容赦はしない」
花嫁という言葉が、澪の胸に温かく染み渡る。
晃久は澪を花嫁として大切な人だと思ってくれていることを改めて認識した。
雨の日の誓いを守ろうと、助けに来てくれた。澪から離れようとしたのに、晃久は追いかけてきてくれたのだ。
浩一郎は身繕いをして立ち上がると、口端を引き上げる。
「私は、おまえの実の父親なんだぞ。晃久」
晃久は微動だにしなかった。銃口は変わらず浩一郎に照準を定めている。
「知っている。俺の両親に複雑な事情があったのは、子どもの頃から感づいていた。だが、それがどうした。俺は俺の花嫁を守り、家族を築き上げていくだけだ。叔父さんが俺の父親だと名乗るなら、せめて父親として息子の幸せを見守ってほしい」
しばしの沈黙が流れた。よく似た顔立ちの父と息子は無言で対峙する。やがて浩一郎は嘆息した。
「私はそんなにできた男じゃないんだよ。晃久が惹かれるものに、私も当然惹かれる。分かるだろう。……撃ちたければ、撃て」
晃久は手にしていた封筒を放り投げた。中に入っていた書類の束が、ばさりと零れ落ちる。
「鎌倉の土地の権利書だ。これをやるから、しばらく大人しくしていてくれ。父さん」
権利書に目を落としていた浩一郎は、上目で晃久を見た。
おそらく晃久は生れて初めて『父さん』と口にしたのではないだろうか。
口端を引き上げて皮肉めいた笑みを浮かべようとして失敗した浩一郎は、目頭を押さえた。
「息子に飼い慣らされるとはね。……まあ、悪くない」
「澪は連れて行く」
晃久は懐に拳銃を収めた。ソファに寝そべっている澪に上着を着せかけ、横抱きにして地下から攫っていく。
しっかりと腕に抱きしめられて、澪は安堵の息を零した。それと共に晃久の手を煩わせてしまったことに対する申し訳なさが浮上する。
「若さま……ごめんなさい。若さまの出生を叔父さまから聞いて、僕は若さまの傍にいられないと思ったんです。でも生れてくる子は大旦那様のひ孫ですから、大須賀家の養子になれます」
晃久は硬い表情を保ったまま、澪の顔を見下ろした。西島邸を出て粉雪を掻き分け、晃久の乗ってきた車に乗せられる。ハンドルを手にした晃久は車を発進させた。
「おまえの理屈は相変わらず飛躍しているな。なぜ俺の父親が浩一郎だと、澪と暮らせなくなるんだ。しかも養子だと?」
「はい……。僕がいれば、大須賀家と血のつながりがない若さまは心の傷を抉られます。だから若さまは他の令嬢と結婚して、僕が産んだ子を大須賀家の養子にすれば血筋は維持できます。若さまが僕を孕ませたのも、そういう理由から……なんですよね?」
澪は苦労して最後まで言い切った。というのも説明の終わりのほうで晃久の形相が恐ろしいものに変貌したからだ。
晃久は車を路肩に寄せて停車した。眦を吊り上げながら助手席の澪に目をむける。
「澪……おまえ、そんな回りくどいことを考えていたのか?」
ぐったりと横たわる澪の膝裏に、手が差し入れられた。
「あ……」
ぐいと足を広げられて、秘めやかな蕾が晒される。濡れそぼる花芯から伝い降りた白蜜が、しとどに蕾を濡らした。
「綺麗な蕾だ。ここで何度も男を銜え込んだのかな?」
「や、やぁ……」
つぷりと指を差し挿れられる。蕾は美味そうに指にしゃぶりついた。
「奥に子種をたっぷり注がれて、あんあん言ったの?」
「そんな、の……ぅん、や、やっ……」
ずくりと指を埋められて、花筒は与えられた刺激を悦び、奥へ迎え入れるように蠕動する。それに連動するように、奥の口からしっとりと蜜が溢れた。
「おや……濡れてきたね。欲しがりな肉筒に私の硬いものをぶち込んであげよう」
「やっ、いや、やめて……やめて、叔父さまぁ」
必死に抵抗して体を捻ろうとするが、ほんの少し身じろぎした程度にしかならなかった。前立てを寛げた浩一郎は澪の両足を高く抱え上げて、その狭間に腰を押し入れる。
じゅく、と猛った先端が濡れた蕾を捲り上げようとした。
「いやっ、いや、若さま、たすけて、若さまぁ」
ガチリと硬質な音が、悲鳴を掻き消す。
雄芯が挿入される直前に、浩一郎は動きを止めた。
はっとして見上げれば、険しい形相をした晃久が螺旋階段の傍に立っていた。真っ直ぐに腕を伸ばして、拳銃の銃口を浩一郎の後頭部に向けている。
「澪から離れろ」
冷えた低い声音が発せられる。
浩一郎は澪から手を離すと、ゆっくりと背後を振り返った。
「やめろ、晃久。おまえは誰に銃をむけている」
「俺の大切な人を汚す者を、俺は自らの手で屠ろうとしている。澪は俺の花嫁だ。たとえ誰であろうと容赦はしない」
花嫁という言葉が、澪の胸に温かく染み渡る。
晃久は澪を花嫁として大切な人だと思ってくれていることを改めて認識した。
雨の日の誓いを守ろうと、助けに来てくれた。澪から離れようとしたのに、晃久は追いかけてきてくれたのだ。
浩一郎は身繕いをして立ち上がると、口端を引き上げる。
「私は、おまえの実の父親なんだぞ。晃久」
晃久は微動だにしなかった。銃口は変わらず浩一郎に照準を定めている。
「知っている。俺の両親に複雑な事情があったのは、子どもの頃から感づいていた。だが、それがどうした。俺は俺の花嫁を守り、家族を築き上げていくだけだ。叔父さんが俺の父親だと名乗るなら、せめて父親として息子の幸せを見守ってほしい」
しばしの沈黙が流れた。よく似た顔立ちの父と息子は無言で対峙する。やがて浩一郎は嘆息した。
「私はそんなにできた男じゃないんだよ。晃久が惹かれるものに、私も当然惹かれる。分かるだろう。……撃ちたければ、撃て」
晃久は手にしていた封筒を放り投げた。中に入っていた書類の束が、ばさりと零れ落ちる。
「鎌倉の土地の権利書だ。これをやるから、しばらく大人しくしていてくれ。父さん」
権利書に目を落としていた浩一郎は、上目で晃久を見た。
おそらく晃久は生れて初めて『父さん』と口にしたのではないだろうか。
口端を引き上げて皮肉めいた笑みを浮かべようとして失敗した浩一郎は、目頭を押さえた。
「息子に飼い慣らされるとはね。……まあ、悪くない」
「澪は連れて行く」
晃久は懐に拳銃を収めた。ソファに寝そべっている澪に上着を着せかけ、横抱きにして地下から攫っていく。
しっかりと腕に抱きしめられて、澪は安堵の息を零した。それと共に晃久の手を煩わせてしまったことに対する申し訳なさが浮上する。
「若さま……ごめんなさい。若さまの出生を叔父さまから聞いて、僕は若さまの傍にいられないと思ったんです。でも生れてくる子は大旦那様のひ孫ですから、大須賀家の養子になれます」
晃久は硬い表情を保ったまま、澪の顔を見下ろした。西島邸を出て粉雪を掻き分け、晃久の乗ってきた車に乗せられる。ハンドルを手にした晃久は車を発進させた。
「おまえの理屈は相変わらず飛躍しているな。なぜ俺の父親が浩一郎だと、澪と暮らせなくなるんだ。しかも養子だと?」
「はい……。僕がいれば、大須賀家と血のつながりがない若さまは心の傷を抉られます。だから若さまは他の令嬢と結婚して、僕が産んだ子を大須賀家の養子にすれば血筋は維持できます。若さまが僕を孕ませたのも、そういう理由から……なんですよね?」
澪は苦労して最後まで言い切った。というのも説明の終わりのほうで晃久の形相が恐ろしいものに変貌したからだ。
晃久は車を路肩に寄せて停車した。眦を吊り上げながら助手席の澪に目をむける。
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