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第二章 エウクラトア聖王国

15話 エウクラトア聖王国について③

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「そういう意味でいうと、教皇だけではなくアーデン公爵家もバルフォア公爵家も役目を忘れていますわね~」

 うふふとナレスは笑いながら言っているけど、その笑みはなんとなく恐ろしい。

 ナレスの言葉にギエルが無邪気そうな顔で毒を吐く。

「本当だよ! 自分達が権力を握りたいからって教皇に擦り寄ったりしてさ! お前達の先祖はそんな子孫にがっかりしてるよ! きっと!」

 ……子供の姿で言うの怖いからやめて欲しいな。精霊だから歳で言ったらきっと結構生きているんだろうけどさ、慣れないよ……。

 こればっかりはこちらが慣れないといけないなって思ったところで、話は戻り公爵家の役目とは?と疑問に思う。

「その公爵家の役目って?」

「初代教皇を決めた時に公爵家は協力するだけではなく、時には教皇を諌める役目も初代教皇から与えられたのです」

 初代教皇は一番高い地位にいることで自分が過ちを犯してしまった時の事を考えて公爵家にその諌める役目を与えた。

 そして、これからの教皇になる者達にも傲慢にならない様にと願いを込めて……。

「全くしてないね、その役目」

 初代教皇が可哀想だよ……。あと、初代公爵達ね。子孫が傲慢になってるわ、役目を忘れているわで可哀想……。

「だから、クロスウェル家だけが役目を果たしているということなんです」

 そうなるとクロスウェル公爵家の人に会ってみたいような気もするよ!

 機会があればぜひ会ってみようと思う。

「あとは枢機卿の四人ですが、簡単にいうとこの四人は教皇のイエスマンです」

「枢機卿は建国から在ったの?」

「いいえ、枢機卿ができたのは建国から百年が経った頃でしょうか……。 その時は教会が大きくなり過ぎたので教会の中でも階級を決めたのがはじまりです。そして、教会が権力を持ち始めたのは教皇が愚かになり始めた時代からですね。 それまでは教会はありましたけど純粋なウーラノス様を祀る宗教でした。 しかし、今は教皇の好き勝手できるような腐敗した教会の上層部しかおりません」

 顔を顰めていうイエル。

「まあ、教会が全面的に教皇のバックについたことで公爵家も口を大きくして諌めることが出来なくなった一つの原因ですわね……」

 ちょっと疲れたように話すイーセス。

「やっぱり、宗教を味方につけると力は大きくなるね……」

 宗教は民衆も信仰しているからそれなりに大きい力を持っているからね。下手なことをしたらそれこそ命取りになるだろうな……。

 ざっとだけど、力関係は分かった。後は神の使徒について各々のがどう行動してくるかによって変わってくるだろうと思う。

「とりあえず、権力がある者達は分かったよ。 後は神の使徒についてどう行動してくるか、だね」

 私がそういうとロリーナが反応する。

「お話の途中申し訳ございません……。 そのことについてご報告がございます」

「ああ、先程言っていたことだね。 今話に入ってきたということは偽物の使徒について何か行動があったのかい?」

 マーエルのその問いにロリーナは肯定する。

「はい……。 まさに、あちら側が動いたとの報告が」

「そうか……。 それじゃあここで話せ」

 マーエルはロリーナの答えを聞き、少し険しい顔をしながら言った。

「かしこまりました。 首都に潜入している部下から神の使徒の歓迎パーティーで重大発表をするとの情報が入りました。 つきましては城へ潜入している者に確認いたしましたところ、皇子の婚約者を変えるとのことです……」

「やはりそうきましたか……」

 ナレスは予想していた展開のようであまり驚いていない。

「なら、皇子の次の婚約者はおのずと予想できますわね」

 イーセスが言う通りにこの展開で婚約者の変更と言えば皇子の婚約者はきっとお披露目されるであろう神の使徒になるだろうと思う。

 だけど変更ということは皇子の元の婚約者は誰なのだろうと私は思った。

「今の皇子の婚約者は誰なの?」

 私の疑問に答えてくれたのはイエル。

「今現在ではアーデン公爵家のご令嬢マルヴィナ嬢が皇子の婚約者です」

 教皇側にいるアーデン公爵家。アーデン公爵には息子一人、娘一人いるらしい。その娘であるマルヴィナ嬢が今現在皇子の婚約者。

「結構婚約してから長いの?」

「皇子は現在18歳、マルヴィナ嬢はその一つ下の17歳。 婚約したのは皇子が8歳の時でございます」

「十年か……。 長いね。 その婚約者変更には納得しているのかな? 二人は……」

 十年も婚約していたならそれなりに好き同士でもなくとも情くらいはあると思うの。まあ、無いかもしれないけど……。

「なんとも言えませんわ。 そのことについては何かあるかしら、ロリーナ?」

 イーセスは二人の様子についてロリーナへと問う。

「今はまだ教皇や上層部だけのお話でございます。 アーデン公爵にもお二人にもまだお伝えしていないようでした」

「教皇と枢機卿あたりの暴走かな?」

 ギエルがそう推理する。ギエルは大人に混じって話をちゃんと理解している。対してラネスは話に飽きたのか私の側へといつの間にか来ていた。そして、シスト遊んでいる。

 うん、可愛らしい戯れ合いだ。今思ったけどラネスは大精霊だとしてもまだ子供なのかなって思った。

 可愛い二人に少し癒されたところで私は再び話へと集中する。

「教皇と枢機卿の暴走ならアーデン公爵はどうでるのかな?」

 アーデン公爵と娘の関係性が気になるところ。よく小説とかであるパターンは娘を政略の道具と考えている父親か、めっちゃ溺愛している父親のどちらかだ。

 アーデン公爵はどうなのだろう……??


 


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