21 / 82
第一章 はじまり
20話 お供兼護衛です④
しおりを挟む「その子が生まれる時にですね、この世界に変化が起こったのですよ」
「変化……?」
世界に変化とは……どういうこと?
「世界に変化というよりもウーラノス様に変化が起こったというべきでしょうか……」
アリーシアは微笑ましそうに思い出しているような顔をした。
よく見るとプロメテウス、ネレウス、イナンナ、エメまでもが柔らかい笑みを見せている。
知らないのは私だけのようだ。
話を進めるようにアリーシアへと視線を向ける。
「ウーラノス様は出会ったのですよ、運命に……!」
「……運命」
なんとなく、なんとなーく、予想が……つく……。
アリーシアは更に微笑みを深めて私を見て言った。
「アマネ様、あなたをウーラノス様が見つけた日ですよ!!」
「……」
やっぱりか……。みんなの視線でなんとなく気づいてた。ウーラノス様も私と相性が良いとかなんとか言っていたもんね~。
だけど、私を見つけたから世界に変化が起こった理由が分からない。
「それで、私をウーラノス様が見つけたからといって、なんでそれが世界に変化が起きるくらいになるわけ??」
アリーシアは私の問いに堪え切れず笑い声が漏れながら言う。
「ふふっ! それはですね、ウーラノス様はアマネ様という運命に出会った。 ウーラノス様は、それはもう雷が落ちたくらいの衝撃でした。 言うなればアマネ様を一目見た時から恋に落ちたと言いましょうか……」
なんか顔が熱くなってきた。
チラッと精霊王達の方を見るとなんかニヤニヤしているような気がする……。見なきゃよかった……。
その間もアリーシアは話を続ける。
「ウーラノス様はアマネ様に一目惚れをし、恋を知ったのですよ。 それは愛を知る一歩をウーラノス様はやっと踏み出したのです。 愛は世界の成長に必要不可欠なもの。 そして世界の創造神が愛を知った。 それは連動してこのアズフェールにも影響しました」
「要するに、愛が世界に変化を起こしたってことね」
「そうです。 簡単に言うとそうです」
なんか気恥ずかしい気もするが、ウーラノス様が愛を知り、連動してこの世界アズフェールが成長したってことね……。
「愛のパワーはすごいのですよ、アマネ様。 まだまだこの世界は未熟で問題もあります……。 ですが、アマネ様がこの世界にいらしてくれたから世界が良い方へと成長したのです。 ありがとうございます、アマネ様」
アリーシアはニッコリ笑う。私はまた顔が熱くなった気がした……。
「それで、愛で世界が成長したからハーフの精霊の子が生まれたの?」
「ええ、そうですよ。 二人の愛の結晶、どちらに傾く訳ではなく平等に等しく二人の愛を受け取った結果二つの属性を引き継いだのでしょう」
アリーシアはそう言って私の膝の上にいるトラの赤ちゃんを優しく見つめた。そしてアリーシアは話を続ける。
「この子は世界が成長したという証です。 成長したきっかけはアマネ様」
「ですからアマネ様のお供にピッタリだと思いましたの!」
イナンナはいいお供候補でしょというように微笑んだ。
「確かに可愛いだけじゃなく二つの属性を持つことで力も強そうです」
「こいつの成長が楽しみだな!!」
ネレウスとプロメテウスも楽しそうだ。
私はトラの赤ちゃんを見た。すると、トラの赤ちゃんも私の方を見上げていた。
可愛いトラの赤ちゃんに私はまた頭を撫でた。トラの赤ちゃんも満足そうにゴロゴロ言っている。
私はトラの赤ちゃんに話しかけた。
「ねえ、君は私のお供になりたい?」
トラの赤ちゃんは無邪気に言う。
「うん! ぼくはアマネしゃまのおやくにたちたい!!」
「ママとパパが恋しくない?」
「うーん、たまにあいたくなるけど……、あまねしゃまがいてくれるならだいじょうぶ!!」
あら……。私は嬉しいけど、親離れ早すぎない、この子……。
その思いが顔に出てしまったのだろうか、イナンナがトラの赤ちゃんをフォローする。
「アマネ様、精霊は親離れはすごく早い方ですわ。 ごく稀に親にべったりの子もいますけど、大体はこの子と同じですわ」
へぇ~とひとつ学んだ私。精霊は親離れが早いと……。
「親は? 子離れできてるの?」
「親も大体同じ感じですわ」
ふーん、親も子も大丈夫なら……。
「じゃあ、私と一緒に来てくれる?」
「うん!! アマネしゃま!!」
ならこの子にも名前をつけなきゃね~。何がいいかな……?この子の他にもお猿さんとライオンさんの名前も考えなきゃ……。
「みんなの名前を決めないとね~。 うーんと……」
名前を決めないといけないけど、まだ一人来ていない精霊王がいるよね……。だからきっと……。
「ああ、最後の精霊王が来たようですよ、アマネ様」
アリーシアがそう言って扉へと向かう。
……やっぱり思った通り、名付けのタイミングでみんな来る。
なんでよ?謎なんだけど……。
私は名前を決めないといけないのになかなか考えさせてくれない精霊王達のタイミングに思わず遠い目になる。
そんな状態の私の前にアリーシアと共にシルフィーネが登場する。
「やっほーアマネ様! 元気~?」
「アハハ……、元気だよ」
みんなの名前を付けられたらね……。
私の状態に不思議そうなシルフィーネだったがそんなことは些細なこと!と言わんばかりに元気に言う。
「アマネ様! お供候補を連れて来たよ!! きっとアマネ様も気にいると思う!! 入ってきてー!!」
――そう言って現れたのは立派な狼だった。
10
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる