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第一章 はじまり

20話 お供兼護衛です④

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「その子が生まれる時にですね、この世界に変化が起こったのですよ」

「変化……?」

 世界に変化とは……どういうこと?

「世界に変化というよりもウーラノス様に変化が起こったというべきでしょうか……」

 アリーシアは微笑ましそうに思い出しているような顔をした。

 よく見るとプロメテウス、ネレウス、イナンナ、エメまでもが柔らかい笑みを見せている。

 知らないのは私だけのようだ。

 話を進めるようにアリーシアへと視線を向ける。

「ウーラノス様は出会ったのですよ、運命に……!」

「……運命」

 なんとなく、なんとなーく、予想が……つく……。

 アリーシアは更に微笑みを深めて私を見て言った。

「アマネ様、あなたをウーラノス様が見つけた日ですよ!!」

「……」

 やっぱりか……。みんなの視線でなんとなく気づいてた。ウーラノス様も私と相性が良いとかなんとか言っていたもんね~。

 だけど、私を見つけたから世界に変化が起こった理由が分からない。

「それで、私をウーラノス様が見つけたからといって、なんでそれが世界に変化が起きるくらいになるわけ??」

 アリーシアは私の問いに堪え切れず笑い声が漏れながら言う。

「ふふっ! それはですね、ウーラノス様はアマネ様という運命に出会った。 ウーラノス様は、それはもう雷が落ちたくらいの衝撃でした。 言うなればアマネ様を一目見た時から恋に落ちたと言いましょうか……」

 なんか顔が熱くなってきた。

 チラッと精霊王達の方を見るとなんかニヤニヤしているような気がする……。見なきゃよかった……。

 その間もアリーシアは話を続ける。

「ウーラノス様はアマネ様に一目惚れをし、恋を知ったのですよ。 それは愛を知る一歩をウーラノス様はやっと踏み出したのです。 愛は世界の成長に必要不可欠なもの。 そして世界の創造神が愛を知った。 それは連動してこのアズフェールにも影響しました」

「要するに、愛が世界に変化を起こしたってことね」

「そうです。 簡単に言うとそうです」

 なんか気恥ずかしい気もするが、ウーラノス様が愛を知り、連動してこの世界アズフェールが成長したってことね……。

「愛のパワーはすごいのですよ、アマネ様。 まだまだこの世界は未熟で問題もあります……。 ですが、アマネ様がこの世界にいらしてくれたから世界が良い方へと成長したのです。 ありがとうございます、アマネ様」

 アリーシアはニッコリ笑う。私はまた顔が熱くなった気がした……。

「それで、愛で世界が成長したからハーフの精霊の子が生まれたの?」

「ええ、そうですよ。 二人の愛の結晶、どちらに傾く訳ではなく平等に等しく二人の愛を受け取った結果二つの属性を引き継いだのでしょう」

 アリーシアはそう言って私の膝の上にいるトラの赤ちゃんを優しく見つめた。そしてアリーシアは話を続ける。

「この子は世界が成長したという証です。 成長したきっかけはアマネ様」

「ですからアマネ様のお供にピッタリだと思いましたの!」

 イナンナはいいお供候補でしょというように微笑んだ。

「確かに可愛いだけじゃなく二つの属性を持つことで力も強そうです」

「こいつの成長が楽しみだな!!」

 ネレウスとプロメテウスも楽しそうだ。

 私はトラの赤ちゃんを見た。すると、トラの赤ちゃんも私の方を見上げていた。

 可愛いトラの赤ちゃんに私はまた頭を撫でた。トラの赤ちゃんも満足そうにゴロゴロ言っている。

 私はトラの赤ちゃんに話しかけた。

「ねえ、君は私のお供になりたい?」

 トラの赤ちゃんは無邪気に言う。

「うん! ぼくはアマネしゃまのおやくにたちたい!!」

「ママとパパが恋しくない?」

「うーん、たまにあいたくなるけど……、あまねしゃまがいてくれるならだいじょうぶ!!」

 あら……。私は嬉しいけど、親離れ早すぎない、この子……。

 その思いが顔に出てしまったのだろうか、イナンナがトラの赤ちゃんをフォローする。

「アマネ様、精霊は親離れはすごく早い方ですわ。 ごく稀に親にべったりの子もいますけど、大体はこの子と同じですわ」

 へぇ~とひとつ学んだ私。精霊は親離れが早いと……。

「親は? 子離れできてるの?」

「親も大体同じ感じですわ」

 ふーん、親も子も大丈夫なら……。

「じゃあ、私と一緒に来てくれる?」

「うん!! アマネしゃま!!」

 ならこの子にも名前をつけなきゃね~。何がいいかな……?この子の他にもお猿さんとライオンさんの名前も考えなきゃ……。

「みんなの名前を決めないとね~。 うーんと……」

 名前を決めないといけないけど、まだ一人来ていない精霊王がいるよね……。だからきっと……。

「ああ、最後の精霊王が来たようですよ、アマネ様」

 アリーシアがそう言って扉へと向かう。

 ……やっぱり思った通り、名付けのタイミングでみんな来る。

 なんでよ?謎なんだけど……。

 私は名前を決めないといけないのになかなか考えさせてくれない精霊王達のタイミングに思わず遠い目になる。

 そんな状態の私の前にアリーシアと共にシルフィーネが登場する。

「やっほーアマネ様! 元気~?」

「アハハ……、元気だよ」

 みんなの名前を付けられたらね……。

 私の状態に不思議そうなシルフィーネだったがそんなことは些細なこと!と言わんばかりに元気に言う。

「アマネ様! お供候補を連れて来たよ!! きっとアマネ様も気にいると思う!! 入ってきてー!!」

 ――そう言って現れたのは立派な狼だった。


 
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