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第一章 はじまり

4話 ウーラノスの世界

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 ウーラノスの迫力に少し引き気味の私だったが、肝心なことを聞くのを忘れていた。

「そもそもウーラノス様の世界ってどんな世界なんですか?」

 ずっとウーラノスの世界の管理をって言われていてもどんな世界かまだ聞いていないのだ。

「あっ! そうですね、まだお話していませんでした!」

 ウーラノスも今気づいたようでハッとした。

「僕の世界は天音さんの世界からすればファンタジー要素が溢れる世界ですね」

 ウーラノスの世界はアズフェールと言って天音が住んでいた地球とは違い典型的なファンタジーの世界。剣と魔法の世界。文明的も地球より遅れている。しかし、似ている箇所もあるらしい。例えば、食べ物とかは同じ物も存在してるようだ。他にも似たような文化などがあるらしい……。

 アズフェールには存在している生き物に関しては様々な種族がいる。大まかに知識ある生き物として人族、獣人族、竜人族、妖精族、小人族、巨人族、魔族、天族、海族が存在する。

 更に細かく言うと例えば獣人族なら獅子族や狼族、犬族、ウサギ族、猫族……など様々な獣人がいる。
 
 妖精族ならエルフ、花族、木族、土族……など。

 小人族にはドワーフなど。

 巨人族には鬼族など。

 魔族にはダークエルフ、吸血鬼族……など。

 海族には、人魚族、魚人……など。

 人族と竜人族、天族はそのままらしい。

 その他の生き物として魔獣と幻獣呼ばれる存在がいる。

 魔獣はその名の通り魔力を持った動物。たまに知識ある魔獣も存在する。

 幻獣は言葉を話せたり知識がある獣。

 と言った感じの生命がアズフェールには存在する。

 ウーラノスからアズフェールの話を聞いて私は思った。

 小説や漫画に出てきそうな世界ね。少しワクワクちゃうじゃない……。

 私はファンタジー要素が溢れる物語が大好きだ。小説や漫画、映画などたくさん見てきた。だから、ウーラノスのアズフェールの話を聞いて思わずウズウズしてしまった。

 ウーラノスは私はの様子に気づいたようで期待を込めて問う。

「どうですか? ファンタジー要素満載の世界は地球の若者には人気だと思うんですが、少しは僕の世界が魅力的に思えますか!?」

 確かに、小説や漫画の主人公に憧れている子供や若い子なら『異世界転生キター!!』とか思いそうだが、私はそこまで若くない。現実を社会を嫌でも知ってしまっている大人なのだ。そう簡単には流されない。

「確かに魅力的ですが……」

「ですが?」

 ウーラノスの表情が途端に期待した顔から不安な顔に変わる。

 その様子に少し悪い気もする。だから困った顔をしながら答えた。

「これまで地球の日本で生きてきた私が異世界のファンタジー要素満載の世界で順応できるか不安ですし、何より日本の食文化に慣れてしまってますからね。 ウーラノス様の世界って地球より文明が未熟だって先程言いましたよね? 日本は美味しい食べ物が沢山ありましたから。 それが食べれなくなるのは嫌です。 そう簡単に食の質を変えることはできません」

 そう、日本ではそれこそ美味しい食べ物、料理が沢山溢れていた。日本だけじゃなく世界中で沢山美味しい料理があった。それを今から異世界へ行って食べれなくなるのは天音にとっては無理な話だった。

「……いやいや! 僕の世界にも美味しい物は……」

「唐揚げとビール、ラーメンに餃子。それにハンバーガーやピザ、お米は絶対必要だし」

「……」

「それにアイスでしょ、色んな甘い物でしょ、飲み物もお茶にジュースに炭酸飲料も飲みたい!」

「……」

「まだまだ沢山美味しい物食べたいのよ! だから、転生までしてストレスを溜めたくないです。 観光で行くなら是非とも行ってみたいですけどね!」

 私の答えにウーラノスはどんどんしょんぼり顔になっていく。

 しかし、私はひとつ忘れていることがあった。

「天音さんの言うことは分かりました……。 確かに僕の世界にはその様な食べ物はまだありません……。 でも! これからそんな食べ物が出来るかもしれませんよ! それなら死を選んでどこの世界に転生するかもしれない未来を選択するより僕の世界で楽しむ方が……」

「ちょ、ちょっと待って!!」

 何か聞き捨てならないことを聞いた様な……。

「はい??」

「今、死を選んで他の世界に転生するって聞こえたけど……」

 私は顔を引き攣りそうになった。

「ああ、そうですね。 もし僕の世界へ転生しなければ天音さんは輪廻転生の流れに戻すのでまた地球に生まれ変わるかは分かりません」

 それってもう日本の美味しいご飯食べれないってことじゃーん! それに最初からウーラノス様の世界に転生することが決まっている様なものじゃーん!

 私は頭を抱えながら心の中で叫んだ。

 そういえば最初の方にもう元の世界には帰れないって言われてたな……。

 今更思い出した。自分が思うより混乱していた様だ……。

 自分の不甲斐なさに更に落ち込む。

 そんな私のことを気の毒に思ったウーラノスはひとつ提案をする。

「もし、僕の世界へと来てくれるなら年に何度か地球の料理をお持ちしますよ!」

 私はその言葉に顔を上げる。

「きっと料理くらいなら地球の神様も許してくれると思いますし、まあお店に売っている料理になりますがね」

 今の天音にとってはウーラノスからの提案はとても魅力的過ぎた……。

 



 
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