6 / 6
エレベーターのトリック
しおりを挟む商店街
-城南銀行-
看板
ビルの角地に有る銀行
蘭子来る
「いらっしゃいませ」
蘭子、銀行員に警察手帳を見せる
「こういう者ですが」
蘭子、銀行員と何やら話している
「少しお待ち下さい」
銀行員がカウンターに行き資料を持って来る
「ありがとうございます」
蘭子が言って資料を見て大きく頷く
下町
「田島」表札
-玄関-
下駄箱の上にクマのぬいぐるみが置いてある
足の裏にHの刺繍
-居間-
田島幸太郎、加奈子と美穂がテーブルを囲んで座っている
美穂が幸太郎に
「お義兄さん、警察に捕まったって......」
「美穂ちゃんは心配しなくて大丈夫だよ」
幸太郎、美穂をなだめる
部屋のチャイムが鳴る
インターホンの画面に蘭子と仲村が写っている
「刑事さん、お待ち下さい」
元の居間
蘭子と仲村入って来る
「お邪魔します。やっぱり美穂さんもここにいらっしゃいましたね」
蘭子、美穂を見て言う
「今回の星野さん殺しの一件、犯人がわかりましたよ」
「えっ!」
一同、ハッとする
「加奈子さん!美穂さん!幸太郎さん!そして本部で黙秘を続けている将志さん!あなた方は皆、共犯ですね!そして幸太郎さん!貴方が主犯です!」
幸太郎、ビクッとする
「こ、こんな足でどうやって人を殺したというのかね!」
「自分でやらなくても復讐の方法はありますよ。貴方の口座から湯浅将志さんに500万円振り込んでいますよね」
と蘭子が資料を見せる
「貴方は湯浅将志に頼んで星野さんを殺させた」
「ど、どうしてそれを!」
「最初に幸太郎さんのお宅に伺った時、テーブルの上に無造作に通帳が置いてありました。貴方は『ついうっかり』とおっしゃったので最近その通帳を使ったのだと思ったわ」
「ウゥゥゥ......開き直ったんだ!星野のヤツ!」
-回想-
星野が道端でタバコを吸っている
幸太郎が
「慎介はお前が殺した様なものだ!」
「何を今更。あれはれっきとした事故ですよ」
「美穂とまだ続いているのなら、せめて、せめて慎介の為にも離婚して美穂を幸せにしてやってくれ!」
「あの女には情けを掛けてるだけさ。まー、ひなたは俺の子だから認知位はしてやってもいいけど。最もマンションの1つでも与えとけばホイホイ俺の言う事を聞くアホな女さ。旦那が死んでよっぽど寂しいのかね」
「なにをー!慎介の事だけにとどまらず、美穂の事までバカにしやがって」
幸太郎、星野に殴りかかろうとする
「その身体で何が出来るんです?ケガしないうちに早く帰った方がいいですよ」
星野、せせら笑う
-回想終わり-
元の居間
「でも、加奈子と美穂は関係無いんだ!」
幸太郎が言う
「直接手を下していなくても殺人事件に関わったという事は立派な犯罪です」
蘭子、加奈子と美穂に向かって言う
-回想-
星野さんが非常階段で屋上に上がる
屋上には誰も居ない
星野さんが電話を掛ける
湯浅が電話に出る
「下に下りて来て下さい」
湯浅が言って星野さんが下りて来る
湯浅、慌てて非常階段に酢酸ナトリウムをまいてそのまま非常階段で逃げ去る
-回想終わり-
「私の推測ですが、湯浅さんが電話で星野さんを屋上に呼び出した。屋上に誰も居ないので星野さんが湯浅さんに電話した。電話に出た湯浅さんが下りて来る様に促した。自分の薬局で仕入れた酢酸ナトリウムを持ち出していて非常階段にまいた。加奈子さんの持っている合鍵を使って。次の日、星野さんが死んでいるのを確認する為に美穂さん、貴女が10階まで行きましたね。事件当日の犯人の足跡は雨で流されていたはずなのに女性の足跡が有りました。次の日に階段から下りてきた美穂さん、貴女の物ですね。加奈子さんが出勤した時にはエレベーターは4階で止まっていた。どう考えても不自然です。美穂さんは私達がエレベーターから降りた後、ひなたちゃんに死体を見せるわけにはいかなかったので一度5階でひなたちゃんを一人で降ろし帰宅させ、美穂さんが一人で10階まで上がった。そして、星野さんが何階で死んでいるのか分からなかった為10階から一階ずつ下りてきて4階で星野さんが死んでいるのを確認した。エレベーターで4階から5階に上がり、降りる寸前に4階のボタンを押してから帰宅した。4階でエレベーターを止めておく為です。だから加奈子さんが出勤した時エレベーターは4階に止まっていた。それは星野さんが4階で死んでいるという合図だった。そして加奈子さんが第一発見者になるというシナリオよ!監視カメラの映像には私達以外の利用者は居なかったんですよ!違いますか!」
蘭子が加奈子と美穂に言う
「ウゥゥゥ......」
と言葉を無くす加奈子と美穂
「加奈子さん、貴女は最初から星野さんに近づく為に星野さんの家政婦になった。そうですよね。半年前の求人雑誌を調べた所、家政婦の求人は何処にも無かったわ」
「その通りです。私は弟を死なせた星野が憎かった。いつか、いつか復讐しようと機会を狙っていました」
加奈子がうなだれる
「それで、皆で星野さん殺害計画を立てた?」
蘭子が言う
「そうですよ。私達家族は皆、星野を憎んでいましたから」
幸太郎が言う
蘭子が
「それは違うわよね?美穂さん。少なくとも貴女は今でも星野さんを愛してた」
と言う
「ど、どうしてそれを?」
「お宅にお邪魔した時、ご主人の慎介さんの写真が一枚も有りませんでした。しかも、慎介さんが亡くなってから旧姓の矢口に戻られてる。貴女は慎介さんを愛していないと思ったわ。ひなたちゃんが持っているクマさんのぬいぐるのHの刺繍は星野さんからの贈り物の証のHですね。星野さんのスマホに美穂さんとひなたちゃんの3人で写っているデータが複数あったわ」
「ウゥゥゥ......あの人は、慎ちゃんは最初は優しかったんです......」
-回想-
慎介、美穂と向かい合ってテーブルの前に座っている
「美穂、お腹の子供は星野との子供なのか!」
慎介が声を荒らげる
「それは、それは、慎ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい」
「そうか!どうして、どうしてあんな男の!」
慎介、椅子を投げたりテーブルの上の物を投げて暴れる
-回想終わり-
「それから慎ちゃんは私に頻繁に暴力を振るう様になって......私が、私が悪いんです。慎ちゃんは私が殺した様なものなんです。私が慎ちゃんを裏切ったせいで慎ちゃんは......でも私は変貌して行く慎ちゃんから逃げたくて、それで、それで星野さんと......」
「それなのに美穂さんも共犯になったのは幸太郎さんからの言葉ですね?」
蘭子が言う
「はい」
と美穂
-回想-
幸太郎と美穂が居間でテーブルに向かい合って座っている
「美穂ちゃん、星野はお前の事なんて愛していない!遊ばれてるだけだ!アイツは酷い男だ!いい加減に目を覚ましてくれ!」
「......分かりました......お義父さん」
うつ向く美穂
-回想終わり-
「私がバカだったんです。慎ちゃんが亡くなった後も星野さんと関係を持ってたなんて。でもひなたの為にはそうするしかなか無かったんです。でも、でも......星野さん殺しに加わったのは慎ちゃんへのせめてもの償いです」
「そうでしたか。でも、美穂さん、星野さんの自宅から離婚届けと婚姻届けが見つかりましたよ。星野さんは口では酷い事を言っていたかもしれないけど真央さんとは離婚して美穂さんと結婚するつもりだったのよ。本心は美穂さんとの将来をきちんと考えていたのよ」
「婚姻届けが!」
泣き崩れる美穂
蘭子が葵刑事に電話する
警視庁
取調室
葵刑事と湯浅が向かい合って座っている
葵刑事のスマホの着信音が鳴る
葵刑事、席を立って電話に出る
「分かったわ」
葵刑事が静かに言う
「湯浅さん、田島幸太郎と奥さんの加奈子さんそれに美穂さんが自白しましたよ」
「ウゥゥゥ......」
肩を落とす湯浅
「田島家」
-居間-
2階からドタバタと言う足音
「佑樹君とひなたちゃんも2階にいますね。ひなたちゃんのぬいぐるみが玄関の下駄箱の上に置いてありました」
「は、はい......私が保育園から佑樹君を連れ去りました。ひなたを迎えに行ったら、佑樹君が、家に帰りたくないと私に泣き付いてきたもので......」
美穂が言う
「佑樹君はひなたちゃんとは異母兄妹。ネグレクトに有ってる佑樹君を見て見ぬふりをする事は出来なかったのね」
蘭子が言う
「はい、そうです......」
美穂が泣き崩れる
部屋のチャイムが鳴る
「はい、どちら様ですか?」
加奈子がインターホン越しに言う
「星野真央と申します」
「星野?」
加奈子、不思議がる
「私が呼びました」
蘭子が言う
加奈子、玄関に出向き真央を部屋に招き入れる
2階から佑樹が降りて来て
「ママッ!」
と真央に抱きつく
「ネグレクトでも子供は母親が一番なんスね」
仲村が感心した様に言う
「こんな可愛い子の面倒を見なかったなんて......佑樹が居なくなって初めて分かったわ。仕事は辞めて、これからは佑樹の面倒をちゃんとみるわ」
佑樹を抱きしめ泣きながら言う真央
「美穂さんが罪を償うまでひなたちゃんの面倒も私が見るわ。星野が愛した人の子。私が責任を持って面倒みなくちゃね!」
真央、照れ笑いしながら言う
「ウゥゥゥ......ありがとうございます......」
泣き崩れる美穂
「さぁ、行きましょうか」
蘭子が言って仲村と一緒に、田島幸太郎と湯浅加奈子、矢田美穂を連行する
警視庁
捜査一課
窓の外を見ている蘭子
「何してるんスか?」
仲村が言う
「星を眺めてるのよ」
「こんな都会で星なんか見えます?」
「どんな空の下でも星は消えないわ。星野さんも美穂さんとひなたちゃん、そして佑樹君との生活を夢見て星に託していたのかも」
「蘭子さんも案外ロマンチストなんスね」
「なぁに?生意気言って。あっ、流れ星!」
「えっ、どこ、どこ?」
仲村、窓の外を見る
「ばぁーか」
「あっ、騙したッスね!」
仲村、蘭子の額を人差し指でパチンと弾こうとする
サッと避ける蘭子
「10万年早いわよ」
蘭子、胸元をパチンと弾く
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
RoomNunmber「000」
誠奈
ミステリー
ある日突然届いた一通のメール。
そこには、報酬を与える代わりに、ある人物を誘拐するよう書かれていて……
丁度金に困っていた翔真は、訝しみつつも依頼を受け入れ、幼馴染の智樹を誘い、実行に移す……が、そこである事件に巻き込まれてしまう。
二人は密室となった部屋から出ることは出来るのだろうか?
※この作品は、以前別サイトにて公開していた物を、作者名及び、登場人物の名称等加筆修正を加えた上で公開しております。
※BL要素かなり薄いですが、匂わせ程度にはありますのでご注意を。
どんでん返し
あいうら
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~
ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが…
(「薪」より)
呪王の鹿~南宮大社380年目の謎に挑む~
hoshinatasuku
ミステリー
関ヶ原の戦いで全焼し、再建から380年が経過した美濃一之宮・南宮大社。江戸初期より社殿に巧みに隠されてきた暗号に気付いた若き史学博士・坂城真。真は亡き祖母と交わした約束を思い出し解読に挑む。幼馴染みで役場観光係の八神姫香と共に謎解きを進めるのだが、解けたそれは戦国の世を収束させた徳川家への呪法だった。そして突如解読を阻む怪しい者が現れ、真は執拗に狙われてゆく。
【なろう・カクヨムでも同小説を投稿済】
オボロアカツキ。
ウキイヨ。
ミステリー
これまで数々の「夢」を叶えようとすれば、現実的問題に阻まれ、いつしか「夢」と言う言葉が嫌いなった洋平は、ある日を境に「夢」を叶えるチャンスを手に入れる。しかし1ヵ月と言う期間と叶える為のルールが存在する中、彼の「夢」を阻む存在や事態が彼に立ちはだかる。そしていつしかそれは、彼にとって人生史上とてつもない事件に巻き込まれていくのであった。
日沈む処の神使~出雲竜宮の赤烏~
hoshinatasuku
ミステリー
出雲を訪れていた史学博士・坂城真。その真に恋する幼なじみの八神姫香と、母の咲耶が
同行していたが、突然陰の組織を名乗る男が咲耶を誘拐した。咲耶を返してほしければとある神社の謎を解けと要求してきた。それも期限は僅か一日半。真は焦るが、偶然出会った大学時代の後輩・重栖世理奈が謎解きの手伝いを申し出る。しかし世理奈も真に首っ丈で、姫香と世理奈は真を巡って女の戦いへ。彼女らに巻き込まれた真は謎を解き、無事咲耶を救出できるのか。
前世の記憶から引き出された真実
ゆきもと けい
ミステリー
前世の記憶があるという少年。事故で亡くなったという前世の記憶。それは本当なのか、確認する為に旅行に出た親子だが、その真実を知った時、本当の恐怖が始まることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
カトレアシリーズ、楽しみにしておりました。
蘭子の聡明さと繊細さ、仲村のセンスの良さと愛嬌が魅力の、引きつけられるキャラクターが繰り出す、このカトレアシリーズにハマっております。
伏線の数々にワクワクし、紐解いたときのスッキリ感がたまらなく楽しく拝読させていただけました。
次回作も楽しみにしています。
複雑に入り組んだ伏線を、物の見事に全て綺麗に回収してくれて、スッキリ爽快!!日曜劇場『VIVANT』みたいで最高でした!!ありがとうございます♪
jeymama様
最高の褒め言葉
凄く嬉しい😃🎶です
ありがとうございます!
続編ずっと待ってました!!
蘭子と流星の掛け合いがリズミカルで大好き!!エレベーターのトリックにもワクワクしますね〜めっちゃ楽しみです!!
jeymama様
今回も感想ありがとうございます!
時間を掛けて書き上げた甲斐がありました
また宜しくお願いします