賢二と宙

雨宮大智

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5 食べること

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 日曜日のお昼のことです。母さんがスパゲッティを作っていました。沸とうしたお湯に、ひとつまみの塩と乾麺のスパゲッティを入れて、待つこと八分。その間に、ニンニクをオリーブオイルで炒め、ゆでたトマトでソースを作りました。

「もうすぐご飯よ」母さんがみんなを呼びました。
「お。今日はスパゲッティか」父さんはご機嫌です。
「ねぇ、お兄ちゃん。どうして人は物を食べなくてはならないの?」不思議そうに賢二が尋ねました。
「それはね、命をリレーしているからだよ」

 宙がすぐに答えました。
「リレーか……」父さんがつぶやきました。「昔、リレーのアンカーをしたことがあるんだ」
「へぇ、それは初耳ね」母さんが口をはさみました。
「うん。中学生の頃だからな。リレーのアンカーは、みんなの命を輝かすんだ」
「フィナーレね」母さんがキッチンのテーブルにパスタを運びながら、相槌をうちました。
「いのちのリレーも一緒さ。ヒトはアンカーなんだ。それ以上でも、それ以下でもないと思うよ」父さんがパスタをフォークで巻きながらつぶやきました。

 賢二が微笑みました。
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