賢二と宙

雨宮大智

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1 夜について

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 夜が迫っていました。随分と日が暮れるのが早くなってきました。中学三年生のそらと、三つ年下の小学六年生の賢二が、草原で遊んでいました。

「おーい、ご飯だぞー」
 遠くから二人の兄弟に祖母が声をかけました。日はとっぷりと暮れました。

「お兄ちゃん、どうして夜になってしまうの?」弟の賢二はたずねました。
「それはね、賢二。夜は考えたり、ものを書いたりするために、訪れるんだよ」
 そう兄の宙が答えました。
「考えるために?」いぶかしげに賢二は繰り返しました。
「夜は昼の行動を、夜になって考えるんだ」
「うーん、今ひとつピンとこないなぁ」
「日記は夜の最後に書くだろ。それと同じさ」
「ああ、それなら分かる」
「僕らは世界の書記官なんだ。夜の日記で世界のすべてを書きつけるんだよ」

 兄の宙が教えました。弟の賢二は、瞳を輝かせました。二人にとって、心地良い時間が過ぎていきました。
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