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プレゼント
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翌朝、アリスは大はしゃぎだった。手にはプレゼントの包みと手紙を持っている。
「母さん、サンタさん! 来たの、本当に来たの!」
「よかったわね!」ニースは瞳を輝かせて、一緒になって手を取り合って喜んだ。
「プレゼントの包みを開けてもいい?」
「もちろんよ、はやく母さんにも見せてちょうだい」
「わぁ、素敵!」
包みをとくと、そこにはふかふかの赤色の毛糸帽子があった。アリスはさっそくかぶってみる。
「うふふ、あったかい」
「お似合いよ、アリス。サンタさんとお揃いね。小さなサンタさん」
「アリスね、来年は、これをlかぶってサンタさんのお手伝いをするの。プレゼントをサンタさんと一緒に配るのよ」
「あら、とてもいい子ね。頑張るのよ」
「手紙も開けていい?」
「もちろんよ、さあ早く母さんにも読んで聞かせてちょうだい」ガサゴソと手紙を開けるアリスの手が緊張でぎこちない。
「さぁ、読むよ」とアリスはたどたどしく読み出した。
大好きなアリスへ。
元気で暮らしていますか。
母さんと仲良くしていますか。
父さんは今、人と人が殺しあう戦いの場にいます。
とても悲しい気分で毎日を過ごしています。
そんな一日の中では、アリスのことを考えている時だけが幸せです。
はやくこの戦争が終わることを切に願ってやみません。
そして、アリスとお母さんとまた一緒に暮らせる日を心待ちにしています。
メリー・クリスマス、私の大事なアリス。
ニースは半分読み終えたところから泣いていた。
「大丈夫よ、きっと父さんは帰ってくるわ」涙声でニースが言った。
「昨日の夜ね、父さんとあったの。戦争が終わったら、きっと元気で帰ってくる。だって、昨日の夜だって来てくれたんだもの。海なんてひと飛びよ。きっと時間がなかっただけよ。だって父さんはサンタクロースだもの」
「そうね、きっと、そうね」ニースの顔は半分泣き、半分笑顔だった。
「忘れてた、母さん、メリー・クリスマス!」アリスが叫んだ。
「メリー・クリスマス、アリス。父さんから手紙が届いて良かったね」ニースは泣きじゃくっていた。
「どうしたの、母さん。そんなに父さんからの手紙が嬉しいの?」
「そうなの、嬉しくて……」半分は言葉にならなかった。
アリスは、そっとニースの手を握った。
アリスの父の戦死通知が届いたのは、クリスマスの10日前の事だった。ニースは5年経った今も、そのことをアリスに伝えていない。 多分、一生伝えることはないだろう。それでもいいと思っている。
それからしばらくして長い長い戦争は終わった。
サンタさんとアリスの父は、一生アリスの心の中に棲み続けるだろう。思い出でも良かった。アリスは、父さんからの最後の手紙を今でも大事にしまっている。ずっと、アリスの心の支えになってくれるだろう。
髭もじゃのサンタさんなんていなくていい、いまのアリスにとっては、父が最高のサンタクロースで、だれもそれを否定したりできないことは、ニースが一番良く分かっていた。
今年も、もうすぐクリスマスがやってくる。
メリー・クリスマス、プレゼントの用意はできた? 誰もがサンタクロースになれる日よ。
『存在するのは、信じるから』
『存在しないのは、信じないから』
アリスはそういって、私たちにプレゼントを渡してくれた。
(結)
「母さん、サンタさん! 来たの、本当に来たの!」
「よかったわね!」ニースは瞳を輝かせて、一緒になって手を取り合って喜んだ。
「プレゼントの包みを開けてもいい?」
「もちろんよ、はやく母さんにも見せてちょうだい」
「わぁ、素敵!」
包みをとくと、そこにはふかふかの赤色の毛糸帽子があった。アリスはさっそくかぶってみる。
「うふふ、あったかい」
「お似合いよ、アリス。サンタさんとお揃いね。小さなサンタさん」
「アリスね、来年は、これをlかぶってサンタさんのお手伝いをするの。プレゼントをサンタさんと一緒に配るのよ」
「あら、とてもいい子ね。頑張るのよ」
「手紙も開けていい?」
「もちろんよ、さあ早く母さんにも読んで聞かせてちょうだい」ガサゴソと手紙を開けるアリスの手が緊張でぎこちない。
「さぁ、読むよ」とアリスはたどたどしく読み出した。
大好きなアリスへ。
元気で暮らしていますか。
母さんと仲良くしていますか。
父さんは今、人と人が殺しあう戦いの場にいます。
とても悲しい気分で毎日を過ごしています。
そんな一日の中では、アリスのことを考えている時だけが幸せです。
はやくこの戦争が終わることを切に願ってやみません。
そして、アリスとお母さんとまた一緒に暮らせる日を心待ちにしています。
メリー・クリスマス、私の大事なアリス。
ニースは半分読み終えたところから泣いていた。
「大丈夫よ、きっと父さんは帰ってくるわ」涙声でニースが言った。
「昨日の夜ね、父さんとあったの。戦争が終わったら、きっと元気で帰ってくる。だって、昨日の夜だって来てくれたんだもの。海なんてひと飛びよ。きっと時間がなかっただけよ。だって父さんはサンタクロースだもの」
「そうね、きっと、そうね」ニースの顔は半分泣き、半分笑顔だった。
「忘れてた、母さん、メリー・クリスマス!」アリスが叫んだ。
「メリー・クリスマス、アリス。父さんから手紙が届いて良かったね」ニースは泣きじゃくっていた。
「どうしたの、母さん。そんなに父さんからの手紙が嬉しいの?」
「そうなの、嬉しくて……」半分は言葉にならなかった。
アリスは、そっとニースの手を握った。
アリスの父の戦死通知が届いたのは、クリスマスの10日前の事だった。ニースは5年経った今も、そのことをアリスに伝えていない。 多分、一生伝えることはないだろう。それでもいいと思っている。
それからしばらくして長い長い戦争は終わった。
サンタさんとアリスの父は、一生アリスの心の中に棲み続けるだろう。思い出でも良かった。アリスは、父さんからの最後の手紙を今でも大事にしまっている。ずっと、アリスの心の支えになってくれるだろう。
髭もじゃのサンタさんなんていなくていい、いまのアリスにとっては、父が最高のサンタクロースで、だれもそれを否定したりできないことは、ニースが一番良く分かっていた。
今年も、もうすぐクリスマスがやってくる。
メリー・クリスマス、プレゼントの用意はできた? 誰もがサンタクロースになれる日よ。
『存在するのは、信じるから』
『存在しないのは、信じないから』
アリスはそういって、私たちにプレゼントを渡してくれた。
(結)
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