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クリスマス・イブ
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12月24日、クリスマス・イブ。昨晩からの雪で、街は真っ白に覆われていた。ホワイト・クリスマスだ。それだけでアリスは幸せだった。一日、ご機嫌な気分でアリスは過ごした。銀一色に染め上げられた世界は、何もかもが新鮮だった。教会に降り積もった雪。野原を水平線にする雪。大きなツララ。それまでの世界とはまるで違った世界がそこにはあった。
「母さん、やっとだよ。やっとクリスマス・イブだね! サンタさん来るかな」
「絶対にやって来るわよ」
「うん。外で遊んでくるね」とアリスは大はしゃぎだ。
「足元に気をつけてね。それから、夕飯は少し早く帰ってくるのよ」
「はーい」もうご機嫌で、アリスは外に飛び出した。
今日はマリアと遊ぶ約束をしていた。マリアもサンタさんがいると思っている。今日は二人にとって特別な日だった。マリアは言う。
「今日、ぜったいホワイトクリスマスにしてくださいって、神様にお願いしたの。そしたらみて!」
「すごい、マリア! きっと祈りが通じたのよ。ホワイトクリスマスなんて何年振りかしら。胸がすごくドキドキする」
「何をして遊ぶ?」
「私、真っ白い野原に足跡残そう」と、アリスは目を輝かせる。
「いいなぁ。私もやりたい」
「じゃ、一緒にしよう」 二人は何の跡もない銀世界となった野原に、赤い長靴で足跡を残した。歩む後ろには二人の足跡がポツンポツンと並んで模様になっていた。それだけでは飽き足りず、大の字に寝転んで、銀色の大地に大きな姿を残した。
「あらあらアリス、ひどい格好」ニースは思わず苦笑する。家に帰ったアリスは全身雪まみれだった。アリスは思わずエヘヘ、と照れ笑いをする。
「さぁ、着替えてらっしゃい」こんな時でもニースは優しい。大いにはしゃいでいるアリスを見て、喜んでさえいるようだ。
「アリス見て! ご馳走よ」
生活は苦しかったが、いままでのクリスマスの中でも一番見事な料理が食卓を彩っていた。母親のニースが丹精こめて作った料理は、質素ながら愛情で溢れている。
「おいしい! このスープ」
心から温まるパンプキンスープを丸く両手でくるみ込んで、アリスはほっと一息をついた。
「ねえ、母さん。お父さんってどんな人だったの」
その質問は、アリスにとって、口にしないことを心がけているものだった。ニースに、父さんとの思い出を呼び起こし、悲しませるからだ。でも今日のご機嫌なアリスは、つい口にしてしまった。和やかな雰囲気がニースの心を穏やかにさせたのだろうか。ニースは少し遠い目をしながら答えた。
「そうね、とても優しい人だったわ。まるでサンタクロースね」そこまで言うと、くすくすっとニースは笑った。
「サンタクロース?」ニースが笑顔で答えてくれたので、アリスは安堵した。
「いつだったかしら、プレゼントを山のように抱えてきてね」
「それで?」
「今日は、僕がサンタクロースになるんだって。張り切っちゃって」アリスは瞳を輝かせながら、聞き入っていた。
「それでね、近所の子どもたちみんなにプレゼントを配って歩いたのよ」
「いいなぁ、アリスももらいたかった」
「アリスが生まれるずっと前の話よ」
ふふ、と柔らかくニースが笑う。
「それでね、サンタクロースはホントにいるんだぞ、って言ってまわったのよ」
「父さんは本当にサンタさんになったのね」
「さあ、どうかしらね。もしかしたら、ホントになってしまったかもしれないわよ。父さんがサンタクロースになってしまったらどうする?」と、ニースはいたずらっぽく、また笑った。
「それだったら、娘のところに真っ先にプレゼントを渡しにくるはずだわ」
ちょっとわざとらしく眉をしかめてアリスは言った。それから、「アリスもプレゼントもらいたいよ」と、うつむき加減でつぶやいた。
「きっと夜更けに、アリスのところへもやってくるわ」 ニースは意味ありげにウィンクしてみせた。
「ほんと? じゃあ、寝ないで待ってる。サンタになった父さんに会いたいもの。だってもうずっと会ってないもの。絶対に会いたいよ」
「そうよね。じゃあ、今晩は頑張って起きていてね」
そう言うとニースは、クリスマスのご馳走がのっていたお皿を片付けはじめた。
「母さん、やっとだよ。やっとクリスマス・イブだね! サンタさん来るかな」
「絶対にやって来るわよ」
「うん。外で遊んでくるね」とアリスは大はしゃぎだ。
「足元に気をつけてね。それから、夕飯は少し早く帰ってくるのよ」
「はーい」もうご機嫌で、アリスは外に飛び出した。
今日はマリアと遊ぶ約束をしていた。マリアもサンタさんがいると思っている。今日は二人にとって特別な日だった。マリアは言う。
「今日、ぜったいホワイトクリスマスにしてくださいって、神様にお願いしたの。そしたらみて!」
「すごい、マリア! きっと祈りが通じたのよ。ホワイトクリスマスなんて何年振りかしら。胸がすごくドキドキする」
「何をして遊ぶ?」
「私、真っ白い野原に足跡残そう」と、アリスは目を輝かせる。
「いいなぁ。私もやりたい」
「じゃ、一緒にしよう」 二人は何の跡もない銀世界となった野原に、赤い長靴で足跡を残した。歩む後ろには二人の足跡がポツンポツンと並んで模様になっていた。それだけでは飽き足りず、大の字に寝転んで、銀色の大地に大きな姿を残した。
「あらあらアリス、ひどい格好」ニースは思わず苦笑する。家に帰ったアリスは全身雪まみれだった。アリスは思わずエヘヘ、と照れ笑いをする。
「さぁ、着替えてらっしゃい」こんな時でもニースは優しい。大いにはしゃいでいるアリスを見て、喜んでさえいるようだ。
「アリス見て! ご馳走よ」
生活は苦しかったが、いままでのクリスマスの中でも一番見事な料理が食卓を彩っていた。母親のニースが丹精こめて作った料理は、質素ながら愛情で溢れている。
「おいしい! このスープ」
心から温まるパンプキンスープを丸く両手でくるみ込んで、アリスはほっと一息をついた。
「ねえ、母さん。お父さんってどんな人だったの」
その質問は、アリスにとって、口にしないことを心がけているものだった。ニースに、父さんとの思い出を呼び起こし、悲しませるからだ。でも今日のご機嫌なアリスは、つい口にしてしまった。和やかな雰囲気がニースの心を穏やかにさせたのだろうか。ニースは少し遠い目をしながら答えた。
「そうね、とても優しい人だったわ。まるでサンタクロースね」そこまで言うと、くすくすっとニースは笑った。
「サンタクロース?」ニースが笑顔で答えてくれたので、アリスは安堵した。
「いつだったかしら、プレゼントを山のように抱えてきてね」
「それで?」
「今日は、僕がサンタクロースになるんだって。張り切っちゃって」アリスは瞳を輝かせながら、聞き入っていた。
「それでね、近所の子どもたちみんなにプレゼントを配って歩いたのよ」
「いいなぁ、アリスももらいたかった」
「アリスが生まれるずっと前の話よ」
ふふ、と柔らかくニースが笑う。
「それでね、サンタクロースはホントにいるんだぞ、って言ってまわったのよ」
「父さんは本当にサンタさんになったのね」
「さあ、どうかしらね。もしかしたら、ホントになってしまったかもしれないわよ。父さんがサンタクロースになってしまったらどうする?」と、ニースはいたずらっぽく、また笑った。
「それだったら、娘のところに真っ先にプレゼントを渡しにくるはずだわ」
ちょっとわざとらしく眉をしかめてアリスは言った。それから、「アリスもプレゼントもらいたいよ」と、うつむき加減でつぶやいた。
「きっと夜更けに、アリスのところへもやってくるわ」 ニースは意味ありげにウィンクしてみせた。
「ほんと? じゃあ、寝ないで待ってる。サンタになった父さんに会いたいもの。だってもうずっと会ってないもの。絶対に会いたいよ」
「そうよね。じゃあ、今晩は頑張って起きていてね」
そう言うとニースは、クリスマスのご馳走がのっていたお皿を片付けはじめた。
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