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第2章 春爛漫
2-1 アルバイトの募集
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その春、私は山河女子文化短期大学に入学した。受験勉強の努力がみのり、無事現役で合格できたのだった。大学は文系の二年制の短期大学で、県内にいくつかある国公立大学のひとつだった。
「圭子さん、聞いてください。私、短大に合格したんです」
圭子叔母さんにそう報告すると、圭子さんは凄く喜んでくれた。
「入学したら、何かアルバイトをしたいと考えているんです」
圭子さんは、少し考えてから口を開いた。
「どこか、当てはあるの?」
「いえ。これから探そうかと考えているところなんです」
「フリーペーパーの編集とか、やってみない?」
「フリーペーパーですか? 編集?」
私は目を丸くして尋ね返した。
「知り合いに、山河市でフリーペーパーの編集長をしている人が居てね、その人がこの間、アルバイトを探していたのよ。編集者のアシスタントを」
圭子さんは優しいまなざしで説明してくれた。
「あんずちゃんさえ、良かったらなんだけど……」
「一体、どんな仕事をするんですか?」
私は突然のことに驚きながら尋ね返した。
「詳しくは、編集長の高幡さんに聞いて欲しいんだけど、食べ物屋さんのフードを紹介したり、お店のPRの文章を書くのよ」
「私に出来るでしょうか?」
私は不安で一杯だった。けれど、同じくらい希望と期待に溢れていた。
⎯⎯ 文章を書く。
それは私が、ずっと憧れてきたことだった。
「私、これまで書いたものが、小論文位なんです。大丈夫でしょうか?」
「頑張れば、なんとかなるわよ。人生、やってみなければ分からないものよ」
圭子さんはそう言うと、お紅茶を一口飲んだ。私もお茶置きのクッキーをひとつつまんだ。
それが、人生初のアルバイトになるとは、その時全く実感が沸かなかったのである。
「圭子さん、聞いてください。私、短大に合格したんです」
圭子叔母さんにそう報告すると、圭子さんは凄く喜んでくれた。
「入学したら、何かアルバイトをしたいと考えているんです」
圭子さんは、少し考えてから口を開いた。
「どこか、当てはあるの?」
「いえ。これから探そうかと考えているところなんです」
「フリーペーパーの編集とか、やってみない?」
「フリーペーパーですか? 編集?」
私は目を丸くして尋ね返した。
「知り合いに、山河市でフリーペーパーの編集長をしている人が居てね、その人がこの間、アルバイトを探していたのよ。編集者のアシスタントを」
圭子さんは優しいまなざしで説明してくれた。
「あんずちゃんさえ、良かったらなんだけど……」
「一体、どんな仕事をするんですか?」
私は突然のことに驚きながら尋ね返した。
「詳しくは、編集長の高幡さんに聞いて欲しいんだけど、食べ物屋さんのフードを紹介したり、お店のPRの文章を書くのよ」
「私に出来るでしょうか?」
私は不安で一杯だった。けれど、同じくらい希望と期待に溢れていた。
⎯⎯ 文章を書く。
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「頑張れば、なんとかなるわよ。人生、やってみなければ分からないものよ」
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それが、人生初のアルバイトになるとは、その時全く実感が沸かなかったのである。
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