どれだけ善行を積んでも死後の評価が0点なので悪行を繰り返す事にしました。49回目の人生

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第二話 迷子の女の子と迷子の俺

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1回目の人生でも何もしてこなかったが2回目、3回目と何をしたのかと聞かれると何も答えられないだろう。

「もし天国に行くことができたならこの話でお前と一緒に盛り上がりたいところだ」

2度目の死後の世界、俺は迷わずに【新しい人生】の扉へと向かった。
向かう途中、ふと何かが右肩に触れたような気がして、誰かいるのだろうかと恐る恐る振り向いてみるとそこには誰もおらず【新しい人生】のドアノブに手をかけた途端、確実に何かが俺に触れた。
慌てて後ろに下がって見ると、遠目で見なければ気づかなかった事に気付くことができた。
おそらく考える時に天使と悪魔が言い合うアレは実在するのだろうとこの瞬間に確信した。
なぜなら俺が手を掛けたドアノブは地獄行きの扉だったからだ。
きっと悪魔は俺を地獄に連れて行こうとしていたがそれを必死に天使が止めたのだろう。
そう思いつつ本物の【新しい人生】の扉へと向かった。

『ピロリロピロリロピロリロピロリ~』

どこか聞き覚えのあるピロピロの音を聞きながら目を覚ますと目の前に車があり、クラクションを鳴らされてしまった。
驚いて腰を抜かすと俺の右手には警備員が握っている赤い棒が握られていた。
どうやら次の人生は警備員で年齢はかなり高齢だろう。
そしてこの状況からするとここで車に轢かれてなくなったってところか、ここまで長生きしたんだ。
せめて次は0点ではなくて1点くらい増えてて欲しいところだ。
警備員としての仕事を終え、俺は自分のバックを漁った。
年齢が高齢であるためか免許証は無く、年齢と名前を確認するのは不可能だった。
どうせ今日この日に亡くなるんだ。
住所も名前も年齢も、全てどうでも良い。

「とにかく善行を重ねて見るとするか」

俺は近くにあった大きめのデパートに来た。
エスカレーターに乗ろうとした途端、短いスカートを履いた女性とその後ろに下心というか何と言うか、明らかに怪しい男が後を追っているのが見えたので俺はすかさず女性と怪しい男の間に入った。
その時に聞こえた舌打ちは俺の4度目の最後になるのかと少し覚悟をしたものだ。
善行を一回行うと寿命が1日増えるのか、今度は次の日がやってきた。
どこで夜を過ごしたかって?これは2回目の人生でもお世話になって1回目の人生ではお世話になることはなかった例のホテルだ。
歳をとったおじいちゃんが1人で例のホテルで1人きり、何も起きないはずもなく…いや何も起こらなかったのだが。

「今日も今日とていい朝…ってまだ暗いんですけど!?」

目が覚めてふと窓の方を見るとまだ暗い時間、時計を見て見ると時間はまだ早朝5時である事に気づくと同時に歳をとると早起きになると言う話を聞いたことがあるのを思い出した。

二度寝をしようか迷っていた矢先、隣の部屋から怒鳴り声と壁を殴るような音が聞こえた。
俺はその状況がそっち系のプレイでは無いと勝手に確信してフロントへ駆けつけた。
結果としてはそっち系のプレイでは無くて無理やりホテルに連れてこられた系の話だったという事でおそらく善行をまた一つ積んだのだろう。

「早起きは三文の徳…か。て事は俺の場合は3点の得なのか?」

この件で警察やら何やらが来たが俺は事情聴取を少しだけされた後に解放されてそのまま昼まで二度寝をした。

目が覚めて恐る恐るエレベーターに乗り、1階へと向かう。
今度はさっき聞いた警告音は聞こえず、無事に一階に辿り着く事ができた。
この時の俺はエレベーターが落下しなかった事への安心と同時にしばらく終わりが来ないなら家に帰らなくてはならないと言う事に気づき、認知症のフリ…と言うよりも側から見れば認知症のおじいちゃんなのだが交番に行って誰か家族を呼んでもらう事にした。

{あなたのご家族…みなさん亡くなられてますね}

警察のこの一言に思わず自分の耳を疑った。
疑うと言っても年齢が年齢で警察が言うには一人っ子、独身で両親はすでに他界していると言う話だったのだがそれを聞かされるまではなぜかショックを受けた。
この人の家族はみんな、天国に行く事ができたのだろうか。

「って言ってみて気づいたけどもしかして俺以外にも同じような体験してる人いるんじゃねぇ?」

いや冷静に考えたらそんなはずないか。
交番に行っても家族が全員亡くなっていると言われただけで特に収穫は無く、むしろこの人生を捨てたくなるような思いをさせられた気がしていた。
そんな時、小さな女の子が話しかけてきた。

「おじい…ちゃん?」

何やら別のおじいちゃんと間違えられたらしいが今までの経験上これはフラグに近い何かな気がして俺はその場すぐに離れた。
離れてすぐに後悔した。
これは自分にとっては最善の行動だったかもしれないがもしかしたらあの女の子が迷子なのではないかと思ったからだ。
もし迷子だとすれば、助ければ善行を…いや助けなければあの子が可哀想だ。
そう思って俺は迷子の子の方へと向かった。

そう、迷子の子の方へ向かった。
向かったはずなのに…。

「ここどこだろう?」

俺が迷子になってしまった。
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