やくたたずのメシア -崩壊寸前の世界に救世主を召喚したら、一才くらいの子が来ちゃった-

福守りん

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2-3≪アイザック≫

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 旅館に、人が訪ねてきた。
 もう夜に近い時間だった。
 すごく若い。少年だ。つるっとした、卵のような顔をしていた。
 遅い時間に訪ねてきたことについて、長々とした言葉で謝られた。
 メシア教会の司祭様に仕える従者だという。人は、悪くはなさそうだった。
「よろしくな。俺はアイザック」
「僕は、メイヨーといいます」

 その後の話で、俺とともに召喚地に向かうというので、驚いてしまった。
「本当に? 同行者がいるなんて、聞いてない」
「アイザック様の召喚地までの道案内と、メシア様降臨の際の、身の回りのお手伝いをするようにと、申しつかっております」
「わかった。話はわかった。
 俺には、敬語は使わなくていい」
「さようですか……」
「どうせ、短いつき合いだ。お互い、気づかれするようなことはやめよう」
「では、ほどほどに、言葉をくずさせていただきます……」
 ほどほどって、なんだ? そう思ったが、言わなかった。
「今日の宿は? ここに泊まるのか」
「はい。明日は、よき時間に、このお部屋にごあいさつに参ります」
「ぜんぜん、ほどほどにくずれてないけど」
「難しいです。ほどほどの、かげんが」
「みたいだな。まあ、あんたがそれでいいなら、いいよ」


 翌朝。夜明けからしばらくして、戸を叩く音が聞こえた。
「開いてる」
「どうも。では、そろそろ。お食事は、おすみですか」
「これから。あんたは?」
「これからです」
「じゃあ、下で食ってからだな」

 食事処には、アンヌがいた。
 一人で、テーブルを拭き上げている。
「おはようございます」
「おはよ。二人分」
「はじめての方ですね。料理番見習いのアンヌといいます」
「メ、メイヨーです……」
 アンヌを見て、真っ赤になっている。
「なに意識してるんだよ」
「してないです……」
「今、早朝の方たちの分が、終わったところで。少し、お待たせするかも」
「いいよ。ゆっくりやって」
「はーい」

 料理を待つ間、メイヨーと話をした。
 情報は多いに越したことはない。メシア教会の人間が持ってる情報なら、なおさらだ。
「あちらには、すでに、たくさんの司祭様がお見えになっているそうです。
 都で有名な方ですと、シモン様とか」
「シモン? 知らないな」
「年は二十一と、お若いですが、布教を熱心にされている方です」
「俺の七つ下か。メイヨーは? 何才なんだ」
「十六です」
「わっか。都を離れて、大丈夫なのか。親や家族は?」
「いません。幼い頃から、教会でお世話になっていました」
「なるほどね……」
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