5 / 5
2-3≪アイザック≫
しおりを挟む
旅館に、人が訪ねてきた。
もう夜に近い時間だった。
すごく若い。少年だ。つるっとした、卵のような顔をしていた。
遅い時間に訪ねてきたことについて、長々とした言葉で謝られた。
メシア教会の司祭様に仕える従者だという。人は、悪くはなさそうだった。
「よろしくな。俺はアイザック」
「僕は、メイヨーといいます」
その後の話で、俺とともに召喚地に向かうというので、驚いてしまった。
「本当に? 同行者がいるなんて、聞いてない」
「アイザック様の召喚地までの道案内と、メシア様降臨の際の、身の回りのお手伝いをするようにと、申しつかっております」
「わかった。話はわかった。
俺には、敬語は使わなくていい」
「さようですか……」
「どうせ、短いつき合いだ。お互い、気づかれするようなことはやめよう」
「では、ほどほどに、言葉をくずさせていただきます……」
ほどほどって、なんだ? そう思ったが、言わなかった。
「今日の宿は? ここに泊まるのか」
「はい。明日は、よき時間に、このお部屋にごあいさつに参ります」
「ぜんぜん、ほどほどにくずれてないけど」
「難しいです。ほどほどの、かげんが」
「みたいだな。まあ、あんたがそれでいいなら、いいよ」
翌朝。夜明けからしばらくして、戸を叩く音が聞こえた。
「開いてる」
「どうも。では、そろそろ。お食事は、おすみですか」
「これから。あんたは?」
「これからです」
「じゃあ、下で食ってからだな」
食事処には、アンヌがいた。
一人で、テーブルを拭き上げている。
「おはようございます」
「おはよ。二人分」
「はじめての方ですね。料理番見習いのアンヌといいます」
「メ、メイヨーです……」
アンヌを見て、真っ赤になっている。
「なに意識してるんだよ」
「してないです……」
「今、早朝の方たちの分が、終わったところで。少し、お待たせするかも」
「いいよ。ゆっくりやって」
「はーい」
料理を待つ間、メイヨーと話をした。
情報は多いに越したことはない。メシア教会の人間が持ってる情報なら、なおさらだ。
「あちらには、すでに、たくさんの司祭様がお見えになっているそうです。
都で有名な方ですと、シモン様とか」
「シモン? 知らないな」
「年は二十一と、お若いですが、布教を熱心にされている方です」
「俺の七つ下か。メイヨーは? 何才なんだ」
「十六です」
「わっか。都を離れて、大丈夫なのか。親や家族は?」
「いません。幼い頃から、教会でお世話になっていました」
「なるほどね……」
もう夜に近い時間だった。
すごく若い。少年だ。つるっとした、卵のような顔をしていた。
遅い時間に訪ねてきたことについて、長々とした言葉で謝られた。
メシア教会の司祭様に仕える従者だという。人は、悪くはなさそうだった。
「よろしくな。俺はアイザック」
「僕は、メイヨーといいます」
その後の話で、俺とともに召喚地に向かうというので、驚いてしまった。
「本当に? 同行者がいるなんて、聞いてない」
「アイザック様の召喚地までの道案内と、メシア様降臨の際の、身の回りのお手伝いをするようにと、申しつかっております」
「わかった。話はわかった。
俺には、敬語は使わなくていい」
「さようですか……」
「どうせ、短いつき合いだ。お互い、気づかれするようなことはやめよう」
「では、ほどほどに、言葉をくずさせていただきます……」
ほどほどって、なんだ? そう思ったが、言わなかった。
「今日の宿は? ここに泊まるのか」
「はい。明日は、よき時間に、このお部屋にごあいさつに参ります」
「ぜんぜん、ほどほどにくずれてないけど」
「難しいです。ほどほどの、かげんが」
「みたいだな。まあ、あんたがそれでいいなら、いいよ」
翌朝。夜明けからしばらくして、戸を叩く音が聞こえた。
「開いてる」
「どうも。では、そろそろ。お食事は、おすみですか」
「これから。あんたは?」
「これからです」
「じゃあ、下で食ってからだな」
食事処には、アンヌがいた。
一人で、テーブルを拭き上げている。
「おはようございます」
「おはよ。二人分」
「はじめての方ですね。料理番見習いのアンヌといいます」
「メ、メイヨーです……」
アンヌを見て、真っ赤になっている。
「なに意識してるんだよ」
「してないです……」
「今、早朝の方たちの分が、終わったところで。少し、お待たせするかも」
「いいよ。ゆっくりやって」
「はーい」
料理を待つ間、メイヨーと話をした。
情報は多いに越したことはない。メシア教会の人間が持ってる情報なら、なおさらだ。
「あちらには、すでに、たくさんの司祭様がお見えになっているそうです。
都で有名な方ですと、シモン様とか」
「シモン? 知らないな」
「年は二十一と、お若いですが、布教を熱心にされている方です」
「俺の七つ下か。メイヨーは? 何才なんだ」
「十六です」
「わっか。都を離れて、大丈夫なのか。親や家族は?」
「いません。幼い頃から、教会でお世話になっていました」
「なるほどね……」
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします
皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。
完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる