4 / 5
2-2≪アイザック≫
しおりを挟む
救世主が、来るらしい。
ひどくあやしい噂話を、いたるところで聞くようになったのは、いつからだろうか。
国のえらいさんが、召喚の準備をしているというのは、人づてに聞いて知っていた。
眉唾だな、と思った。
俺の仕事はモンスター・ハンターだ。
だが、実際のところは違う。
モンスターを狩って、生け捕りにする。それから、ある場所までつれていって、解放する。
俺はモンスターを殺しまくった男だと思われているが、そうじゃない。
むしろ、生かしている……と思う。
人間たちに殺されるよりは、慣れない場所でも、自由に生きていた方がマシだ。そう思うモンスターは、大勢いる。
「アイザック。仕事だ」
「どーも」
「メシア様の召喚に合わせて、召喚地の周辺のモンスターを排除したい」
「殺しても構わないってことですか」
「そうだな。抵抗するならば」
「了解っす」
うなずいた。従順なふりは、苦手じゃなかった。
使えるやつだと思われていた方がいい。その方が、俺にとって有益な情報を引きだしやすい。
「メシア様ってのは、あれですか。年は……。あと、どんな格好だとか……」
「わからん」
「わからないんですか?」
「その時ごとに、異なった姿で現れる。そういうものなのだ」
司祭様のたるんだ頬を見ながら、「そういうもんですか」とつぶやいた。
都にくる時の定宿にしている、古めかしい旅館に戻って、荷作りをした。
俺の武器は、野山の獣以外の血を吸うことはない。だから、どれも真新しく見える。
下に下りて、酒場もかねた食事処で夕食を頼んだ。
「しばらく、空けるわ」
厨房の中にいる、料理番に声をかけた。返事はなかったが、うなずかれたので、伝わってはいるのだろう。俺とは違って無口な男だから、しょうがない。
「あら。今度は、どちらへ?」
髪を白い頭巾で隠した、料理番見習いのアンヌが、幼い声で訊いてきた。
「村。だいぶ、へんぴなところにあるらしい」
「それじゃあ、お土産は期待できないですね」
「うん。まあ、なんか……買ってくるよ」
「ほんとですか。うれしいです」
ひどくあやしい噂話を、いたるところで聞くようになったのは、いつからだろうか。
国のえらいさんが、召喚の準備をしているというのは、人づてに聞いて知っていた。
眉唾だな、と思った。
俺の仕事はモンスター・ハンターだ。
だが、実際のところは違う。
モンスターを狩って、生け捕りにする。それから、ある場所までつれていって、解放する。
俺はモンスターを殺しまくった男だと思われているが、そうじゃない。
むしろ、生かしている……と思う。
人間たちに殺されるよりは、慣れない場所でも、自由に生きていた方がマシだ。そう思うモンスターは、大勢いる。
「アイザック。仕事だ」
「どーも」
「メシア様の召喚に合わせて、召喚地の周辺のモンスターを排除したい」
「殺しても構わないってことですか」
「そうだな。抵抗するならば」
「了解っす」
うなずいた。従順なふりは、苦手じゃなかった。
使えるやつだと思われていた方がいい。その方が、俺にとって有益な情報を引きだしやすい。
「メシア様ってのは、あれですか。年は……。あと、どんな格好だとか……」
「わからん」
「わからないんですか?」
「その時ごとに、異なった姿で現れる。そういうものなのだ」
司祭様のたるんだ頬を見ながら、「そういうもんですか」とつぶやいた。
都にくる時の定宿にしている、古めかしい旅館に戻って、荷作りをした。
俺の武器は、野山の獣以外の血を吸うことはない。だから、どれも真新しく見える。
下に下りて、酒場もかねた食事処で夕食を頼んだ。
「しばらく、空けるわ」
厨房の中にいる、料理番に声をかけた。返事はなかったが、うなずかれたので、伝わってはいるのだろう。俺とは違って無口な男だから、しょうがない。
「あら。今度は、どちらへ?」
髪を白い頭巾で隠した、料理番見習いのアンヌが、幼い声で訊いてきた。
「村。だいぶ、へんぴなところにあるらしい」
「それじゃあ、お土産は期待できないですね」
「うん。まあ、なんか……買ってくるよ」
「ほんとですか。うれしいです」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?


どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします
皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。
完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる