やくたたずのメシア -崩壊寸前の世界に救世主を召喚したら、一才くらいの子が来ちゃった-

福守りん

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2-1≪ネーネ≫

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 あたしは、十六才になった。
 高校には行かずに、村で働いている。
 ロッテちゃんも、あたしと同じパン屋で働いている。

 いつも、週末になると、二人で墓地に行く。
 ルカさんのお墓まいりをするためだ。

「ネーネ。もう、そろそろ、来なくていいよ」
「ううん。来たいの。忘れたくないから」
「でも……。もう、亡くなったから。ねえさんは、もどってこないの」
「うん。それは、わかってるけど……」
「ネーネは、やさしいね。ありがとう」
「そんなこと、ない」
 ロッテのことは、未だに、母さんには話せていない。
 本当は、知っている気もしていた。ただ、あたしに面と向かって、ロッテのことを言わないだけで。
「どっちが、モンスターなんだろうね」
「……え?」
「モンスターって、『怪物』って意味だよね。
 ルカさんを殺した人たちは、人間じゃないよね。『モンスター人間』って、呼べばいいのかな」
「ネーネ。人に聞かれたら、困るよ」
「わかってる」
「しょうがないの。モンスターに生まれたんだから。受け入れなきゃ……」
「意味がわからない。ねえ、この村の外に行ったら、モンスターの人たちが、自由に暮らせる場所があったりしないかな」
「あるかも……しれないけど。わたしは、行けないと思う」
「どうして?」
「こわいの。知らない場所で、生きていかれない……」
「そっか。そうだよね……」


 そんなふうに、言っていたのに。
 次に会った時には、ロッテは覚悟を決めていた。
「村を出ようと思うの」
「えっ」
「知り合いのおじさんが、受け入れてくれるって……。ここより、ずっと田舎なんだけど……。人間と共存できるコミュニティがあるんだって」
「ほんとに? だまされてない?」
「ない……と思う」
「一人で行くの? 家族は?」
「母さんは乗り気で、父さんはあんまり……。どうしよう?」
「どうしようって……」
 ロッテが、行ってしまう。もう、二度と会えなくなるかもしれない……。
 その時、ふっと、自分でも驚くような考えが浮かんだ。
「ねえ。あたしも、行っていいかな?」
「ええっ?」
「村の暮らしも、正直、あきてきたの。あたしには、耕せるたんぼも、畑もないし……。
 一生、パン屋で売り子をしてる自分なんて、想像したくない。
 母さんが許してくれたら、ロッテと一緒に行く!」
「ふ、ふえー」
「わっ。泣いたっ」
「う、う、うれしいー」
「うれしいんだ。よかった」
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