やくたたずのメシア -崩壊寸前の世界に救世主を召喚したら、一才くらいの子が来ちゃった-

福守りん

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1-2≪ネーネ≫

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「ネーネじゃん」
「あっ。ルカさん」
 ロッテのおねえさんが、二階から下りてきた。
「なに? クッキー?」
「そうだよー」
「焼けたら、わたしにもちょうだい」
「いいよー」
「元気だった? ひさしぶりに会った気がする」
「うん。元気」
「みたいだね。ロッテ。わたし、ちょっと出かけてくるから。鍵をかけておいて」
「はーい」

 クッキーが焼けた。すごく、おいしそうな匂いだった。
「ネーネちゃん」
「うん?」
「いっつも、遊びに来てくれて、ありがとうー」
「どうしたの? きゅうに……」
「わたし、モンスターだから。ネーネちゃんのおかあさんが知ったら、きっと、怒るよね」
「大丈夫だよ。言わないもん」
「そっかー」
「へんだよね。なんで、ひみつにしないといけないのかな。
 これからも、ずっと、ともだちでいようね」
「うん! ありがとうー」

 できあがったクッキーは、これまでで、いちばん甘くて、おいしい味がした。


 でも、ルカさんは、あたしたちがつくったクッキーを食べられなかった。

 その日の夜。
 村のはずれで、変わりはてた姿になったルカさんが見つかった。
 きれいな顔が、血まみれになって、はれ上がっていた。
 ルカさんは、その時、もう生きてはいなかった。
 たぶん、殺されたんだと思う。
 人間に……。
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