やくたたずのメシア -崩壊寸前の世界に救世主を召喚したら、一才くらいの子が来ちゃった-

福守りん

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1-1≪ネーネ≫

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 あたしたちの世界≪シンシアリー≫は、こわれかかってる。
 世界を守っていた神さまたちの力がなくなって、悪いものたちを抑えることができなくなってる。
 あたしが生まれたころは、こうじゃなかったらしい。
 今は、街も、野山も、モンスターだらけになってしまった。

 モンスターとはいっても、ざんぎゃくひどうというわけじゃない。
 人間がやってるカフェに入れば、お金をはらうし、道ばたで倒れているお年よりがいたら、助けてあげたりもする。

 でも、モンスターは、モンスターだ。人間じゃない。
 きほんてきに、人間のルールは守ってくれない。
 モンスターがふえすぎた小学校では、がっきゅうほうかいがすさまじいことになってるんだって。
 ぜんぶ、モンスターのせい。
 大人たちは、そう言ってる。


「このままでは、世界が滅びる!」

 えらい人が、テレビの中で叫んでる。

「はやく、メシアを召喚するべきだ!」

 メシアというのは、救世主さまのことらしい。

「かあさん。メシアって、どんな人?」
「そうねえ。わからないけど。神さまだから。人じゃないんじゃないの」
「そっか……」
「モンスターがふえすぎたのよ。こまるわ……。駅前で、朝からずっとお酒を飲んで、歌ったりして」
「いるねー。たしかに。でも、お金をはらって買ったお酒なら、いいんじゃない?」
「それは、そうだけど」
「メシアが来たら、モンスターはいなくなる?」
「あたりまえじゃない! だって、モンスターは人間じゃないのよ。みんな、いなくなってほしいわ」
「うーん……」

* * *

 あたしには、モンスターのともだちがいる。
 かあさんには、ないしょだ。そっとうされても、こまるし。
 小学生のころから仲がよかった。だから、中学生になっても、そのまま。

「ロッテちゃん。あーそぼ」
 家まで行って、窓の外から呼んだ。
「あー。ネーネちゃん」
「おうちの中に、入ってもいい?」
「いいよー。今、ちょうど、おかしつくってるの」
「えっ。すごい」
「いっしょに、つくろー」

 ロッテちゃんは、頭に小さな角が二つはえている。
 角には、ピンク色のリボンがついている。これは、ロッテちゃんのおかあさんが作ってくれたものらしい。

「クッキーだあー。クッキーだよね?」
「そうだよー」
「わー。ココアのもあるっ」
「うふふ」
「かたぬき、していい?」
「いいよー」 
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