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八章 明日を生きる力
☆【2】悪の発露
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「私はあなたを拒否します」
静かな声が聞こえた。叉雷が振り返ると、千鶴はどこか悲しいような眼で眼前の光景を見据えていた。
「いつだって、僕に選択の余地などなかった」
「僕を殺すのか?」
「……ええ」
「それなら僕は、その前にお前を殺そう」
「知らなかっただろう。僕はいつでもお前を見ていた」
「あなたの殺意は感じていた。いつも」
「――これが殺意だと? これが?! 何を今さら、寝ぼけたことを」
「お前をずっと殺したかったのは僕の方だ。殺意なんて生ぬるいもんじゃない! 僕はお前を殺してようやく生きられる。その力も、お前の瞳も体も、心も、全て僕がもらう」
「この世には二つの答えしかない。生きるか死ぬか。それしかないんだ」
「僕は勝つ方を選ぶ」
「お前の牙にはかからないよ。……ゴミ溜めのようなこの世界を、僕が代わりに焼き払ってやろう。世の中には、お前には想像もつかぬほどのおぞましい現実がごろごろと転がっている」
「お前は永久にそこにいろ。聖女のような顔をしていながら、お前の本性は手足の生えた蛇そのものだ――。そこにいて、無益な繰り言を繰り返しているがいい。その隙に、僕は全てを獲って先へ行く」
「お前があえて取りこぼした残り滓も、至上の輝石も全て僕のものだ」
「あなたは力を己だけのものにしてしまう」
「だから何だ! そんなことが、お前が僕の上に立つ理由になるとでも?」
「ここから去りなさい。二度は云いません」
「千鶴……いや、滅びの魔女! 僕の求婚を断った時から、お前は僕の呪いにかかった!」
「人の生き血を啜り、その肉を喰らわねば、死に値する苦痛を感じ続けるという呪いをなっ!」
「こんなもの……」
千鶴――灰弩の言葉を信じるならば、「滅びの魔女」――は、軽く笑ったようだった。
「私は、この国が興る前から生きていた」
「なっ……!」
何を。灰弩の瞳が呑み込んだ言葉の続きを語る。
「私は風。漂いながら、どこにでもゆける。私がそれを望みさえすれば。だから私は多くのものを見た」
「あなたが生まれるところも見た。村人が集って春を祝う、その時の篝火を見た」
「天駆ける無数の流星を見た。地上に溢れる海の氾濫を見た。あなたの小さな妹が、血を啜られ、肉を貪られながら、あなたの両手で天に召されるところを見た」
「おのれ――」
「麦の生え揃った畑の傍にある家の二階で、あなたが母に毒を盛るところを見た」
「私は知っている。あなたが、人の生き血を啜り肉を喰らう鬼だということを。あなたがハイデンフェルトと呼ばれていたことも」
「この……化け者め!」
「お互い様でしょうに」
眉を潜めた哀しい笑い方をする。
「私は全てを視ることができる。ただ私がそう望むだけで」
「それでも、この先の未来だけは視ることができない。私には、私自身を占うことはできない」
「幾年も、幾年も私は生きた。姿を変え、名を変え、心を変えて。どれほどの苦痛を与えられても、本当の意味で死ぬことを許されなかった」
「あなたは己の絶望を語った。けれど、私もまた、あなたと同じように天から与えられた絶望を抱えている」
「お前の絶望など、知りたくもないッ!」
「ええ。知ることが最善の策とは限らないわ」
「お前のために喚び寄せた怪物たちは、お前に傷一つつけることすらできなかった! お前は一体何者なんだ? なぜ僕の邪魔ばかりする?」
「私たちに必要なのは、お互いへの理解ではないでしょう」
「そうだな。僕が望むのは、お前の死だけだ!」
「さあ、決着をつけようじゃないか」
灰弩の言葉が合図となった。
「collapse」 (灰弩の呪文、せめて単語じゃなくて英文で)←★これは、書いてる時の自分に対するつっこみです
千鶴の足下を支えていた地面がぼろぼろと崩れて陥没する。一塊の岩だけが浮き上がり、千鶴を乗せたまま静止する。
「珠火」
ボッ、と音が鳴る。千鶴の両手の甲に、青白い炎が生まれて燃える。
ひゅっと手を振り出す。楕円の形をした炎は、優雅な軌道を描いて灰弩を襲う。
「子供騙しだな」
灰弩の指先で順番に弾かれた二つの炎が、別々の場所で地面に激突する。それと同時に、落下点の周囲は一瞬にして燃え尽くされた。後には、人が十人潜れるほどの巨大な穴が生まれている。
「雷糸」
轟音を伴った白い稲妻が灰弩を目掛けて疾る。まさに青天の霹靂だと叉雷が考える間もなく、灰弩は軽く手を振るだけで雷を霧散させた。
「千鶴!」
「cremation!」
灰弩が片手を振り上げた。赤を超え、黒くさえ見える炎が千鶴を呑み込む。千鶴は、見ている叉雷がもどかしく思うほど緩慢な動きで両手を広げる。
「水花」
上に向けた掌から溢れたのは、大量の液体だった。熱された水が蒸発する音が聞こえてくる。
「凄いな」
叉雷が感嘆する。この頃には、これから先に何が起こったとしても、さほど驚かずに済むような気がしていた。
「なぜ……。なぜなんだ」
灰弩は狂おしい眼差しで千鶴を見ている。
「これだけの力を、なぜお前だけが」
「これが力ですって? あなたはこんなものが欲しいの?」
「違う。これは力なんかじゃない。私の業。私の――罪」
「私が生まれた時、この星は一度滅びてしまったのよ」
「どういうことだ?!」
割って入った声は叉雷のものである。
「君は一体……」
「今から千年と三百年もの昔、私の父は掟を破って母と結ばれた。やがて産み落とされた私には自我がなかった。ただ、本能のままに雨を降らせ、焔を吐いた。父と母によって止められるまで、私はこの星を喰らい続けた」
「不思議だとは思わなかったの? 各地に遺された都市の残骸や、見慣れない機械の化石を見ても? この星には高度に進んだ文明が存在していた。それは人によって滅びたのではなく――」
叉雷は口元を抑えた。ぶわりと噴き出した汗が、彼の項を滑り落ちてゆく。
「私が生まれたために滅びてしまったのよ」
斜め前に立つ千鶴を見る。微笑んでいる。その美しさ。その危うさ。
千鶴は千年以上も生き続けたのだという。それは何という孤独だろう――。叉雷は雷に撃たれたように動けないでいる。
冬薙は正しかった。聡明な友人に拍手を送りたい気分だ。
「だから私は誓った。この命は全て人のために捧げると。たとえ我が一族が滅びようとも、人だけはこの星で生き長らえ得るようにと」
虹色の瞳が燃えている。
「あなたは人を殺す。生きるためではなく、楽しむために殺す。だから私は、あなたを許さない。私が滅ぼしてしまった後のこの星には、多くの漂流者が侵入してきた。私はそれらの全てを根絶やしにしようとしたけれど、この星を護りきることができなかった。
そして今になって、あなたの遙かな祖先の遺した血が、あなたの人生を狂わせている」
「私があえてあなたの牙を受けた――とは、あなたは決して認めたくはないでしょうね」
「何、だと」
「来なさい。ハイデンフェルト=サージェ」
叉雷は千鶴の微笑みを見ている。微笑みながら、相対する者の血を灼き骨を砕く程の憤りを感じていることが分かる。――そうだ、君は怒っていたんだ。すとんと胸に落ちてきた思いに納得する。ずっと、ずっと。遙か彼方の過去から、今まで。今、この瞬間まで。
「あなたが私を選んだように、私もあなたを狙っていたのよ。あなたの傍を離れる訳には行かなかった。私を完全に取り込んだのだと、あなたに思わせなくてはならなかった」
「さあ、姿を現しなさい」
「ハイデンフェルトに宿るドラクーラ。アルカード=ザカー」
静かな声が聞こえた。叉雷が振り返ると、千鶴はどこか悲しいような眼で眼前の光景を見据えていた。
「いつだって、僕に選択の余地などなかった」
「僕を殺すのか?」
「……ええ」
「それなら僕は、その前にお前を殺そう」
「知らなかっただろう。僕はいつでもお前を見ていた」
「あなたの殺意は感じていた。いつも」
「――これが殺意だと? これが?! 何を今さら、寝ぼけたことを」
「お前をずっと殺したかったのは僕の方だ。殺意なんて生ぬるいもんじゃない! 僕はお前を殺してようやく生きられる。その力も、お前の瞳も体も、心も、全て僕がもらう」
「この世には二つの答えしかない。生きるか死ぬか。それしかないんだ」
「僕は勝つ方を選ぶ」
「お前の牙にはかからないよ。……ゴミ溜めのようなこの世界を、僕が代わりに焼き払ってやろう。世の中には、お前には想像もつかぬほどのおぞましい現実がごろごろと転がっている」
「お前は永久にそこにいろ。聖女のような顔をしていながら、お前の本性は手足の生えた蛇そのものだ――。そこにいて、無益な繰り言を繰り返しているがいい。その隙に、僕は全てを獲って先へ行く」
「お前があえて取りこぼした残り滓も、至上の輝石も全て僕のものだ」
「あなたは力を己だけのものにしてしまう」
「だから何だ! そんなことが、お前が僕の上に立つ理由になるとでも?」
「ここから去りなさい。二度は云いません」
「千鶴……いや、滅びの魔女! 僕の求婚を断った時から、お前は僕の呪いにかかった!」
「人の生き血を啜り、その肉を喰らわねば、死に値する苦痛を感じ続けるという呪いをなっ!」
「こんなもの……」
千鶴――灰弩の言葉を信じるならば、「滅びの魔女」――は、軽く笑ったようだった。
「私は、この国が興る前から生きていた」
「なっ……!」
何を。灰弩の瞳が呑み込んだ言葉の続きを語る。
「私は風。漂いながら、どこにでもゆける。私がそれを望みさえすれば。だから私は多くのものを見た」
「あなたが生まれるところも見た。村人が集って春を祝う、その時の篝火を見た」
「天駆ける無数の流星を見た。地上に溢れる海の氾濫を見た。あなたの小さな妹が、血を啜られ、肉を貪られながら、あなたの両手で天に召されるところを見た」
「おのれ――」
「麦の生え揃った畑の傍にある家の二階で、あなたが母に毒を盛るところを見た」
「私は知っている。あなたが、人の生き血を啜り肉を喰らう鬼だということを。あなたがハイデンフェルトと呼ばれていたことも」
「この……化け者め!」
「お互い様でしょうに」
眉を潜めた哀しい笑い方をする。
「私は全てを視ることができる。ただ私がそう望むだけで」
「それでも、この先の未来だけは視ることができない。私には、私自身を占うことはできない」
「幾年も、幾年も私は生きた。姿を変え、名を変え、心を変えて。どれほどの苦痛を与えられても、本当の意味で死ぬことを許されなかった」
「あなたは己の絶望を語った。けれど、私もまた、あなたと同じように天から与えられた絶望を抱えている」
「お前の絶望など、知りたくもないッ!」
「ええ。知ることが最善の策とは限らないわ」
「お前のために喚び寄せた怪物たちは、お前に傷一つつけることすらできなかった! お前は一体何者なんだ? なぜ僕の邪魔ばかりする?」
「私たちに必要なのは、お互いへの理解ではないでしょう」
「そうだな。僕が望むのは、お前の死だけだ!」
「さあ、決着をつけようじゃないか」
灰弩の言葉が合図となった。
「collapse」 (灰弩の呪文、せめて単語じゃなくて英文で)←★これは、書いてる時の自分に対するつっこみです
千鶴の足下を支えていた地面がぼろぼろと崩れて陥没する。一塊の岩だけが浮き上がり、千鶴を乗せたまま静止する。
「珠火」
ボッ、と音が鳴る。千鶴の両手の甲に、青白い炎が生まれて燃える。
ひゅっと手を振り出す。楕円の形をした炎は、優雅な軌道を描いて灰弩を襲う。
「子供騙しだな」
灰弩の指先で順番に弾かれた二つの炎が、別々の場所で地面に激突する。それと同時に、落下点の周囲は一瞬にして燃え尽くされた。後には、人が十人潜れるほどの巨大な穴が生まれている。
「雷糸」
轟音を伴った白い稲妻が灰弩を目掛けて疾る。まさに青天の霹靂だと叉雷が考える間もなく、灰弩は軽く手を振るだけで雷を霧散させた。
「千鶴!」
「cremation!」
灰弩が片手を振り上げた。赤を超え、黒くさえ見える炎が千鶴を呑み込む。千鶴は、見ている叉雷がもどかしく思うほど緩慢な動きで両手を広げる。
「水花」
上に向けた掌から溢れたのは、大量の液体だった。熱された水が蒸発する音が聞こえてくる。
「凄いな」
叉雷が感嘆する。この頃には、これから先に何が起こったとしても、さほど驚かずに済むような気がしていた。
「なぜ……。なぜなんだ」
灰弩は狂おしい眼差しで千鶴を見ている。
「これだけの力を、なぜお前だけが」
「これが力ですって? あなたはこんなものが欲しいの?」
「違う。これは力なんかじゃない。私の業。私の――罪」
「私が生まれた時、この星は一度滅びてしまったのよ」
「どういうことだ?!」
割って入った声は叉雷のものである。
「君は一体……」
「今から千年と三百年もの昔、私の父は掟を破って母と結ばれた。やがて産み落とされた私には自我がなかった。ただ、本能のままに雨を降らせ、焔を吐いた。父と母によって止められるまで、私はこの星を喰らい続けた」
「不思議だとは思わなかったの? 各地に遺された都市の残骸や、見慣れない機械の化石を見ても? この星には高度に進んだ文明が存在していた。それは人によって滅びたのではなく――」
叉雷は口元を抑えた。ぶわりと噴き出した汗が、彼の項を滑り落ちてゆく。
「私が生まれたために滅びてしまったのよ」
斜め前に立つ千鶴を見る。微笑んでいる。その美しさ。その危うさ。
千鶴は千年以上も生き続けたのだという。それは何という孤独だろう――。叉雷は雷に撃たれたように動けないでいる。
冬薙は正しかった。聡明な友人に拍手を送りたい気分だ。
「だから私は誓った。この命は全て人のために捧げると。たとえ我が一族が滅びようとも、人だけはこの星で生き長らえ得るようにと」
虹色の瞳が燃えている。
「あなたは人を殺す。生きるためではなく、楽しむために殺す。だから私は、あなたを許さない。私が滅ぼしてしまった後のこの星には、多くの漂流者が侵入してきた。私はそれらの全てを根絶やしにしようとしたけれど、この星を護りきることができなかった。
そして今になって、あなたの遙かな祖先の遺した血が、あなたの人生を狂わせている」
「私があえてあなたの牙を受けた――とは、あなたは決して認めたくはないでしょうね」
「何、だと」
「来なさい。ハイデンフェルト=サージェ」
叉雷は千鶴の微笑みを見ている。微笑みながら、相対する者の血を灼き骨を砕く程の憤りを感じていることが分かる。――そうだ、君は怒っていたんだ。すとんと胸に落ちてきた思いに納得する。ずっと、ずっと。遙か彼方の過去から、今まで。今、この瞬間まで。
「あなたが私を選んだように、私もあなたを狙っていたのよ。あなたの傍を離れる訳には行かなかった。私を完全に取り込んだのだと、あなたに思わせなくてはならなかった」
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「ハイデンフェルトに宿るドラクーラ。アルカード=ザカー」
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