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六章 本能
☆【1】飛天
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「この上に乗って」
「乗ってどうするんだ?」
「天を翔るのよ」
「誰が?!」
「私とあなたが」
千鶴は真顔だった。
「どうやって!」
「しっかり掴まっていて。振り落とされないように」
「川が、あんなに遠くに……」
千鶴は、黒い羽織に隠していた両手を外気に晒した。すらりと伸びた腕が東の方向を射す。
「このまま、日が昇る方向に進む」
「東へ?」
「彼らは闇を好む。だからこそ、光の前では無力なのよ」
「この布は一体何なんだ? まるで、生きているみたいじゃないか」
「……」
「金翅鳥の化身よ」
「伽楼羅か」
「ええ。カルラ、ガルーダ……。名は色々あるけれど、意味するところは唯一つ」
「鳥、鳳凰。神と契り、不死となった翼ある者。龍とも称される蛇神ナーガの天敵」 叉雷が知っている伽楼羅とは、そういうものだった。
「それはどうかしら……」
千鶴は今、意味深な含み笑いを洩らさなかっただろうか? 数秒後には相変わらずの強風に混じって、かき消されてしまったが……。
「いずれにしても、彼ら彼女らは鳥よ。神の使いと呼ぶには、少し悪戯心が過ぎるけれど」
高い山の中にある、祠に着く
「千鶴?」
返事は無い。ぐったりとした肢体に手で触れて、あまりの冷たさに戦いた。
「――千鶴!」
「乗ってどうするんだ?」
「天を翔るのよ」
「誰が?!」
「私とあなたが」
千鶴は真顔だった。
「どうやって!」
「しっかり掴まっていて。振り落とされないように」
「川が、あんなに遠くに……」
千鶴は、黒い羽織に隠していた両手を外気に晒した。すらりと伸びた腕が東の方向を射す。
「このまま、日が昇る方向に進む」
「東へ?」
「彼らは闇を好む。だからこそ、光の前では無力なのよ」
「この布は一体何なんだ? まるで、生きているみたいじゃないか」
「……」
「金翅鳥の化身よ」
「伽楼羅か」
「ええ。カルラ、ガルーダ……。名は色々あるけれど、意味するところは唯一つ」
「鳥、鳳凰。神と契り、不死となった翼ある者。龍とも称される蛇神ナーガの天敵」 叉雷が知っている伽楼羅とは、そういうものだった。
「それはどうかしら……」
千鶴は今、意味深な含み笑いを洩らさなかっただろうか? 数秒後には相変わらずの強風に混じって、かき消されてしまったが……。
「いずれにしても、彼ら彼女らは鳥よ。神の使いと呼ぶには、少し悪戯心が過ぎるけれど」
高い山の中にある、祠に着く
「千鶴?」
返事は無い。ぐったりとした肢体に手で触れて、あまりの冷たさに戦いた。
「――千鶴!」
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