25 / 44
四章 幻の龍を追って
☆【1】塔の住人
しおりを挟む
※ついに、メインヒロインと叉雷が出会います(やっとか!)
※降魔師は、あれです。ひらたく言うと、魔法使いです
※降魔寮は、○○ー○ッ○ーの寮みたいな感じです
※降魔主と祭主は対立関係にあります
※このへんの設定は、正直作者ですらうろ覚えです
※当時のネタ帳を早急に探す必要がある……
※ネタ帳に作中の地図とか描いていた。いたい
希莉江と別れた後の叉雷と捺夏
「まったくもう。やっと安心した。キリエと会ってから、いろいろと心配事が多かったよ。まー、アンディの手には負えないだろうね。やんちゃだった頃のおれよりひどい」
「まあ、いいんじゃないの。先生とは気が合うと思うよ」
叉雷は笑っている。ようやく肩の荷が下りた気分だった。
「顔は可愛かったね。ちょっとびっくりするくらい」
「そうだな。可愛いかったよ。顔だけじゃなくて、性格も」
「惚れたの?」
訊き返す捺夏は、ぽかんと口を開けて目を丸くしている。
「バカだな。妹みたいだったなってことさ」
「そうか。叉雷の家には、きょうだいがいないもんな」
「……」
叉雷は一瞬、何かを口にする素振りを見せたが、すぐに唇を閉ざしてしまった。
「ああ。うちで引き取ってもいいかとも思ったけど、肝心のおれが村にいないんじゃあ、どうしようもない」
「大丈夫。アンディなら上手くやってくれるよ。また帰りに寄ろうよ」
「そうだな」
「これから、どうするの?」
「ちょっと知人に逢いに」
「こんな場所に知り合いなんていたっけ?」
「お前なあ。去年絽々の背に乗せて、ここまで送った人を忘れるかなあ」
「あっ!」
捺夏は、片方の手のひらにもう一方の拳を当てるという古典的な身振りをした。
「宝花楼様か!」
「そ」
「懐かしいなあ。もう一年も前になるのか」
「手紙が届いたんだ」
「いつ?」
「つい最近だよ。キリエが来る前の日だ」
「白来降魔学の最高学府といえば、降魔寮だよね」
「ああ。降魔の塔とも呼ぶらしいな」
「彼女、降魔師たちを指導する降魔博士だっけ。凄いねえ。あんなに若いのに」
「そうだな」
「でも、あの子の魔術は一つも見せてもらえなかったけど」
「この国じゃ、魔術は全て帝のためにあるのさ。『大義無き魔は罰せらるるべし』――ってね」
叉雷の足取りは迷わない。
「おいおい。どこが入り口だよ?」
「黙ってついてこい。兵士に怪しまれるぞ」
「塔衛士だろ?」
「……どっちも同じさ」
「お前はここで待ってろ」
「えー」
捺夏が唇を尖らせる。
「入る前から追い出されるのは御免だ。絽々は中に入れてもらえないよ」
「しょうがないなあ。いつ頃出てくるの?」
「分からない。少し話をしてくる。そうだな――。二時間くらいしたら、ここで落ち合おう」
「あっそう。じゃあ、おれ一旦繁華街まで戻る」
「了解」
「行くよー」
黒っぽい人影が目の端を掠めた。
「……?」
僅かに顔を右に振り、叉雷はぴたりと足を止める。正面からその人物に向き直った。
そこには、小柄な少女が立っていた。水に濡れた鴉のような、漆黒の着物を身に纏っている。
目深に被った黒い頭巾の下から、不思議な色の瞳が覗いていた。それは虹のような七色に煌めいて、眩しい光を反射させている。背格好から察するに、年の頃は十四、五か。
白い手が頭巾を首の後ろへ落とすと、並み外れた美貌が叉雷の前に現れた。滑らかそうな黒髪は、色素の薄い頬の辺りで切り揃えされている。
「……!」
薄暗い回廊に光が射したように思えて、我知らず後退りそうになる。
「どうか?」
静かな声が問いかけてくる。少女は眉一つ動かさない。
「いえ」
叉雷は左手を左目の前に翳して、瞳の中に飛び込んでくる光の量を抑えた。だが、それでもなお眩しいのか、両目はきつく絞られたままであった。
「君の名前は?」
「……」
少女は数秒の間、何かを探るような視線で叉雷を見つめていた。
「私は千鶴。この学舎で、宝花楼様の側仕えをしています」
やがて、幾分堅さの取れた声音で答える。
「おれは叉雷。淵沼の村の生まれです」
「淵沼――」
「ど田舎です。高い山の麓にあります」
「いいえ。存じております。白蓮山ですね」
「こちらへ」
「……驚いたな」
「どうか?」
「宝花楼様の式神かと思いました」
「――なぜ?」
「あなたが、あまりにも美しいので」
「ご冗談を」
少女は被り直した頭巾の陰で笑ったようだった。
「火燦宝花楼様」
「お客人をお連れ致しました」
「この度はお助け頂きまして、誠に有り難く存じます」
※降魔師は、あれです。ひらたく言うと、魔法使いです
※降魔寮は、○○ー○ッ○ーの寮みたいな感じです
※降魔主と祭主は対立関係にあります
※このへんの設定は、正直作者ですらうろ覚えです
※当時のネタ帳を早急に探す必要がある……
※ネタ帳に作中の地図とか描いていた。いたい
希莉江と別れた後の叉雷と捺夏
「まったくもう。やっと安心した。キリエと会ってから、いろいろと心配事が多かったよ。まー、アンディの手には負えないだろうね。やんちゃだった頃のおれよりひどい」
「まあ、いいんじゃないの。先生とは気が合うと思うよ」
叉雷は笑っている。ようやく肩の荷が下りた気分だった。
「顔は可愛かったね。ちょっとびっくりするくらい」
「そうだな。可愛いかったよ。顔だけじゃなくて、性格も」
「惚れたの?」
訊き返す捺夏は、ぽかんと口を開けて目を丸くしている。
「バカだな。妹みたいだったなってことさ」
「そうか。叉雷の家には、きょうだいがいないもんな」
「……」
叉雷は一瞬、何かを口にする素振りを見せたが、すぐに唇を閉ざしてしまった。
「ああ。うちで引き取ってもいいかとも思ったけど、肝心のおれが村にいないんじゃあ、どうしようもない」
「大丈夫。アンディなら上手くやってくれるよ。また帰りに寄ろうよ」
「そうだな」
「これから、どうするの?」
「ちょっと知人に逢いに」
「こんな場所に知り合いなんていたっけ?」
「お前なあ。去年絽々の背に乗せて、ここまで送った人を忘れるかなあ」
「あっ!」
捺夏は、片方の手のひらにもう一方の拳を当てるという古典的な身振りをした。
「宝花楼様か!」
「そ」
「懐かしいなあ。もう一年も前になるのか」
「手紙が届いたんだ」
「いつ?」
「つい最近だよ。キリエが来る前の日だ」
「白来降魔学の最高学府といえば、降魔寮だよね」
「ああ。降魔の塔とも呼ぶらしいな」
「彼女、降魔師たちを指導する降魔博士だっけ。凄いねえ。あんなに若いのに」
「そうだな」
「でも、あの子の魔術は一つも見せてもらえなかったけど」
「この国じゃ、魔術は全て帝のためにあるのさ。『大義無き魔は罰せらるるべし』――ってね」
叉雷の足取りは迷わない。
「おいおい。どこが入り口だよ?」
「黙ってついてこい。兵士に怪しまれるぞ」
「塔衛士だろ?」
「……どっちも同じさ」
「お前はここで待ってろ」
「えー」
捺夏が唇を尖らせる。
「入る前から追い出されるのは御免だ。絽々は中に入れてもらえないよ」
「しょうがないなあ。いつ頃出てくるの?」
「分からない。少し話をしてくる。そうだな――。二時間くらいしたら、ここで落ち合おう」
「あっそう。じゃあ、おれ一旦繁華街まで戻る」
「了解」
「行くよー」
黒っぽい人影が目の端を掠めた。
「……?」
僅かに顔を右に振り、叉雷はぴたりと足を止める。正面からその人物に向き直った。
そこには、小柄な少女が立っていた。水に濡れた鴉のような、漆黒の着物を身に纏っている。
目深に被った黒い頭巾の下から、不思議な色の瞳が覗いていた。それは虹のような七色に煌めいて、眩しい光を反射させている。背格好から察するに、年の頃は十四、五か。
白い手が頭巾を首の後ろへ落とすと、並み外れた美貌が叉雷の前に現れた。滑らかそうな黒髪は、色素の薄い頬の辺りで切り揃えされている。
「……!」
薄暗い回廊に光が射したように思えて、我知らず後退りそうになる。
「どうか?」
静かな声が問いかけてくる。少女は眉一つ動かさない。
「いえ」
叉雷は左手を左目の前に翳して、瞳の中に飛び込んでくる光の量を抑えた。だが、それでもなお眩しいのか、両目はきつく絞られたままであった。
「君の名前は?」
「……」
少女は数秒の間、何かを探るような視線で叉雷を見つめていた。
「私は千鶴。この学舎で、宝花楼様の側仕えをしています」
やがて、幾分堅さの取れた声音で答える。
「おれは叉雷。淵沼の村の生まれです」
「淵沼――」
「ど田舎です。高い山の麓にあります」
「いいえ。存じております。白蓮山ですね」
「こちらへ」
「……驚いたな」
「どうか?」
「宝花楼様の式神かと思いました」
「――なぜ?」
「あなたが、あまりにも美しいので」
「ご冗談を」
少女は被り直した頭巾の陰で笑ったようだった。
「火燦宝花楼様」
「お客人をお連れ致しました」
「この度はお助け頂きまして、誠に有り難く存じます」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる