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11.スイート・キング5
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「お風呂は、シャワーだけにして、もう寝ます」
「うん。分かった」
「いっしょに、入る?」
「……えっ」
「まだ、はじまってないから。今日は、しても……いい」
「いいの?」
「うん。したい?」
「もちろん」
てれてるような顔が、かわいかった。もぞもぞと起き上がって、座りこんだ。
「先週、歌穂と沢野さんが、来てくれたじゃないですか」
「うん?」
「わたし、思いました。沢野さん、大変だなあーって」
「言ってたな」
「……言ってましたね。好きだったら、したくなりますよね。
わたしね、あの……」
「うん」
「気になってます。沢野さんは、いつまで、がまんするんでしょうか。
まさか、歌穂が卒業するまで……」
「それは……無理だろ。
俺が紘一と同じ立場で、歌穂さんが君だったと仮定して、考えてみたことがある。一ヶ月で限界を迎えるだろうなと思った」
「一ヶ月……」
「短い?」
「ううん。それぐらいで、しようとしてましたよね。わたしたち」
「ああ。そうだったな」
礼慈さんの手がのびてきて、わたしの髪をもてあそぶ。前髪は、自分で切っているけれど、後ろは、どんどん長くなってきていた。
「長すぎですか?」
「そうでもない。切りたい?」
「そろそろ、切らないと。まずい気がします」
「切ってきていいよ。俺のカードを持っていって」
「ありがとうー」
「かわいい」
礼慈さんの笑顔の方が、よっぽどかわいいと思った。
返事もしないで、てれていた。
「かわいい……」
礼慈さんが、ラグマットに崩れ落ちていった。
「大丈夫ですか?」
「瀕死だよ」
「大変ですね……」
シャワーを浴びてる時は、なにもなかった。礼慈さんは、髪は濡らさなかった。
バスタオルで、それぞれ体を拭いている時に、あっと思った。
「ごめんね」
「え?」
「ジムで、してきたのに。シャワーは、しなくても……」
「いいよ。気にしないで」
「うん……」
寝室で、セックスをした。
もう何度もしてるのに、ぜんぜん慣れない。
どきどきしているわたしを見て、礼慈さんはうれしそうだった。
「よかった?」
「……はい」
「つらかったら、家事はしなくていいから」
「うん。ありがとう……」
まだ裸のままで、だっこしてもらっていた。
すごく、幸せな気分だった。
「ねえ、あのね……」
「うん?」
「こういうことって、ただ、あの……したいっていう気持ちだけじゃ、ないですよね。相手に、近づきたいっていう、気持ち……。
あなたとするたびに、うれしいって、いとおしいって、思うの。うまく、言えないけど……」
「うん。分かるよ」
「沢野さんが、歌穂を大事にしてくれてるのは、うれしいけど……。
いつかは、するんだったら。お互いの気持ちが、ちゃんと、向かいあってるうちに……。いちばん、したいって思う時に、できたらいいなって……」
「そうだな。紘一は、分かってると思うよ。待てると思う。
今まで、あいつがつき合ってきた人たちのことは、あんまり知らないけど。もっと、大人の女性ばかりだっただろうなとは、思う」
「沢野さんは、困ってるかも……。
歌穂は、変わってるから」
「自慢してるみたいだな」
「してます。すごく独特な感性があるって、わたし、思ってて……。それが、大好きです」
「……俺のライバルは、歌穂さんかもしれないな」
「えっ?」
「女性のことで、女性に妬くなんて、思ってなかった」
「やいたの……?」
「うん。うちで一緒にお風呂に入るのは、できれば、俺と紘一がいない時にして」
「そ、そうですよね……。ごめんなさい。
わたしたち、楽しんじゃってました」
「分かってたよ。たまに、祐奈と歌穂さんの声とか、笑い声が聞こえてきて……。
あんな体験は、もういい」
「それって、……きもちわるかった? それとも」
「めちゃくちゃ興奮した。分かってるだろ」
「は、はい……」
「ごめん。あの日は、やさしくできなかった気がする」
「わ、わたしの方こそ。ごめんね」
「謎の歌も聞こえた。あれは、何?」
「施設の歌です。あるの。施設にいた子しか、知りません」
「だからか。童謡みたいだったけど、聞いたことがなかったから。紘一と二人で、これは一体、何の歌なんだ?!って」
「そんなに、聞こえてたの……。はずかしい……」
「かわいかったよ。ほんとに」
「油断してました」
「いや。いいんだけど」
「ごめんね」
礼慈さんの目を見て、謝った。
目が合った。きれいな目が、細くなっていって……。
笑ってくれた。
キスをした。長い、長い、キスをした。
「うん。分かった」
「いっしょに、入る?」
「……えっ」
「まだ、はじまってないから。今日は、しても……いい」
「いいの?」
「うん。したい?」
「もちろん」
てれてるような顔が、かわいかった。もぞもぞと起き上がって、座りこんだ。
「先週、歌穂と沢野さんが、来てくれたじゃないですか」
「うん?」
「わたし、思いました。沢野さん、大変だなあーって」
「言ってたな」
「……言ってましたね。好きだったら、したくなりますよね。
わたしね、あの……」
「うん」
「気になってます。沢野さんは、いつまで、がまんするんでしょうか。
まさか、歌穂が卒業するまで……」
「それは……無理だろ。
俺が紘一と同じ立場で、歌穂さんが君だったと仮定して、考えてみたことがある。一ヶ月で限界を迎えるだろうなと思った」
「一ヶ月……」
「短い?」
「ううん。それぐらいで、しようとしてましたよね。わたしたち」
「ああ。そうだったな」
礼慈さんの手がのびてきて、わたしの髪をもてあそぶ。前髪は、自分で切っているけれど、後ろは、どんどん長くなってきていた。
「長すぎですか?」
「そうでもない。切りたい?」
「そろそろ、切らないと。まずい気がします」
「切ってきていいよ。俺のカードを持っていって」
「ありがとうー」
「かわいい」
礼慈さんの笑顔の方が、よっぽどかわいいと思った。
返事もしないで、てれていた。
「かわいい……」
礼慈さんが、ラグマットに崩れ落ちていった。
「大丈夫ですか?」
「瀕死だよ」
「大変ですね……」
シャワーを浴びてる時は、なにもなかった。礼慈さんは、髪は濡らさなかった。
バスタオルで、それぞれ体を拭いている時に、あっと思った。
「ごめんね」
「え?」
「ジムで、してきたのに。シャワーは、しなくても……」
「いいよ。気にしないで」
「うん……」
寝室で、セックスをした。
もう何度もしてるのに、ぜんぜん慣れない。
どきどきしているわたしを見て、礼慈さんはうれしそうだった。
「よかった?」
「……はい」
「つらかったら、家事はしなくていいから」
「うん。ありがとう……」
まだ裸のままで、だっこしてもらっていた。
すごく、幸せな気分だった。
「ねえ、あのね……」
「うん?」
「こういうことって、ただ、あの……したいっていう気持ちだけじゃ、ないですよね。相手に、近づきたいっていう、気持ち……。
あなたとするたびに、うれしいって、いとおしいって、思うの。うまく、言えないけど……」
「うん。分かるよ」
「沢野さんが、歌穂を大事にしてくれてるのは、うれしいけど……。
いつかは、するんだったら。お互いの気持ちが、ちゃんと、向かいあってるうちに……。いちばん、したいって思う時に、できたらいいなって……」
「そうだな。紘一は、分かってると思うよ。待てると思う。
今まで、あいつがつき合ってきた人たちのことは、あんまり知らないけど。もっと、大人の女性ばかりだっただろうなとは、思う」
「沢野さんは、困ってるかも……。
歌穂は、変わってるから」
「自慢してるみたいだな」
「してます。すごく独特な感性があるって、わたし、思ってて……。それが、大好きです」
「……俺のライバルは、歌穂さんかもしれないな」
「えっ?」
「女性のことで、女性に妬くなんて、思ってなかった」
「やいたの……?」
「うん。うちで一緒にお風呂に入るのは、できれば、俺と紘一がいない時にして」
「そ、そうですよね……。ごめんなさい。
わたしたち、楽しんじゃってました」
「分かってたよ。たまに、祐奈と歌穂さんの声とか、笑い声が聞こえてきて……。
あんな体験は、もういい」
「それって、……きもちわるかった? それとも」
「めちゃくちゃ興奮した。分かってるだろ」
「は、はい……」
「ごめん。あの日は、やさしくできなかった気がする」
「わ、わたしの方こそ。ごめんね」
「謎の歌も聞こえた。あれは、何?」
「施設の歌です。あるの。施設にいた子しか、知りません」
「だからか。童謡みたいだったけど、聞いたことがなかったから。紘一と二人で、これは一体、何の歌なんだ?!って」
「そんなに、聞こえてたの……。はずかしい……」
「かわいかったよ。ほんとに」
「油断してました」
「いや。いいんだけど」
「ごめんね」
礼慈さんの目を見て、謝った。
目が合った。きれいな目が、細くなっていって……。
笑ってくれた。
キスをした。長い、長い、キスをした。
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