104 / 206
10.アズ・ポーン1
1-2
しおりを挟む
大アルカナを机に並べた。
椅子に座ってもらって、あたしも横に座った。
「これは、占いっていうよりは、あたしにとって、カードを引いた人が、どんな人かっていうのを知るためのものだったりします」
「第一印象ってこと?」
「ですね。あたしは『ファースト・インプレッション』って、呼んでます。
一枚だけ、引いてもらっていいですか」
「これ」
引いたカードを、あたしに渡してくる。
「愚者ですね」
「フール?」
「日本語だと、愚者。道化とも呼ばれてます。
あたしは、好きなカードですよ。
自由だし、気ままな感じ……。トリックスターって、わかりますか?」
「うん。わかる。狂言回し、かな」
「そんな感じです。
大アルカナの0番のカードです。特別なカードだって、言う人もいます」
「そうなんだ」
男の子が近づいてきた。北斗さんの友達っぽかった。
「ユウヤー。この後、どうする?」
「帰るよ」
「飲みに行かねーの?」
「うん。ちょっと、父さんの病状が悪くて。しばらく、お酒は控えるつもり」
「まじかー。お大事に」
「うん。ごめんね」
ユウヤ? 友也じゃないの?
「お父さん、大変ですね。お大事に……」
「ありがとう。去年の冬から、急に悪くなって……。
これ、言わないでね。末期の胃癌なんだ。だから、もう、長くはないと思う」
「そうなんですか……」
「うん。覚悟は、してるつもり。
在宅でケアしてるんだ。大したことはできないけど、なるべく、そばにいるようにはしてる。
今日は、たまには、サークルにも顔を出したいなと思って。思いきって、来てみたんだ」
「そうだったんですね。
あたし、……あの、あたしになんて、誰も興味ないと思うけど。
あたし、彼がいます。このサークルに来たのは、出会い目的とかじゃ、ないです」
「心配しないで。ここは、そういうところじゃないから。
もちろん、恋愛するのは自由だけど。サークル内では、飲み会は禁止なんだ」
「そうなんですね。北斗さんの連絡先、もらってもいいですか?」
「いいよ」
LINEを交換した。
スマホに表示されたユーザー名は、「ユウヤ」だった。えぇっ?と思った。
「南さんは一年?」
「そうです」
「僕は二年。失礼だけど、年は上だよね」
「フリーターしてたんで。二十一」
「僕より、二つも上なんだ。だったら、敬語はいらないよ。
名前も、下の名前で。ぜんぜん」
「いいの?」
「うん」
「あの。ユウヤって、呼ばれてたけど。友也だよね?」
「あー。あだ名なんだよね。
友也って、読みづらいみたいで。友也って、何度も読み間違われてるうちに、ユウヤが、正式なあだ名に」
「そうなんだ。面白いね」
「ややこしいけどね。僕はユウヤなんだなって、思いかける時もある」
「ふうん……」
面白い子だなと思った。それに、話がしやすい。
品があるし、礼儀正しい。
かわいい感じだった。祐奈が、もし男だったら、こんな感じだったんじゃないかなって、思うくらいに……。
友達になれそうだなと思った。
見学だけのつもりだったけど、このサークルに入ろうと決めた。
椅子に座ってもらって、あたしも横に座った。
「これは、占いっていうよりは、あたしにとって、カードを引いた人が、どんな人かっていうのを知るためのものだったりします」
「第一印象ってこと?」
「ですね。あたしは『ファースト・インプレッション』って、呼んでます。
一枚だけ、引いてもらっていいですか」
「これ」
引いたカードを、あたしに渡してくる。
「愚者ですね」
「フール?」
「日本語だと、愚者。道化とも呼ばれてます。
あたしは、好きなカードですよ。
自由だし、気ままな感じ……。トリックスターって、わかりますか?」
「うん。わかる。狂言回し、かな」
「そんな感じです。
大アルカナの0番のカードです。特別なカードだって、言う人もいます」
「そうなんだ」
男の子が近づいてきた。北斗さんの友達っぽかった。
「ユウヤー。この後、どうする?」
「帰るよ」
「飲みに行かねーの?」
「うん。ちょっと、父さんの病状が悪くて。しばらく、お酒は控えるつもり」
「まじかー。お大事に」
「うん。ごめんね」
ユウヤ? 友也じゃないの?
「お父さん、大変ですね。お大事に……」
「ありがとう。去年の冬から、急に悪くなって……。
これ、言わないでね。末期の胃癌なんだ。だから、もう、長くはないと思う」
「そうなんですか……」
「うん。覚悟は、してるつもり。
在宅でケアしてるんだ。大したことはできないけど、なるべく、そばにいるようにはしてる。
今日は、たまには、サークルにも顔を出したいなと思って。思いきって、来てみたんだ」
「そうだったんですね。
あたし、……あの、あたしになんて、誰も興味ないと思うけど。
あたし、彼がいます。このサークルに来たのは、出会い目的とかじゃ、ないです」
「心配しないで。ここは、そういうところじゃないから。
もちろん、恋愛するのは自由だけど。サークル内では、飲み会は禁止なんだ」
「そうなんですね。北斗さんの連絡先、もらってもいいですか?」
「いいよ」
LINEを交換した。
スマホに表示されたユーザー名は、「ユウヤ」だった。えぇっ?と思った。
「南さんは一年?」
「そうです」
「僕は二年。失礼だけど、年は上だよね」
「フリーターしてたんで。二十一」
「僕より、二つも上なんだ。だったら、敬語はいらないよ。
名前も、下の名前で。ぜんぜん」
「いいの?」
「うん」
「あの。ユウヤって、呼ばれてたけど。友也だよね?」
「あー。あだ名なんだよね。
友也って、読みづらいみたいで。友也って、何度も読み間違われてるうちに、ユウヤが、正式なあだ名に」
「そうなんだ。面白いね」
「ややこしいけどね。僕はユウヤなんだなって、思いかける時もある」
「ふうん……」
面白い子だなと思った。それに、話がしやすい。
品があるし、礼儀正しい。
かわいい感じだった。祐奈が、もし男だったら、こんな感じだったんじゃないかなって、思うくらいに……。
友達になれそうだなと思った。
見学だけのつもりだったけど、このサークルに入ろうと決めた。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる