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8.トリッキー・ナイト3
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布団の中に、入りこんだ。腕で、抱きよせてくれた。
あったかかった。
あたしからも抱きついた。西東さんよりも小柄なはずだけど、すごく大きく感じた。
ごつごつしていて、かたい。男の人の体だった。
首すじに、顔をうめた。沢野さんの匂いがした。シャンプーの香りは、あたしのと同じだけど。
あたしの腰や背中を、沢野さんの手がなでる。声が出そうになった。
「さわっても、いい?」
「よくない」
「……どうして?」
「結婚したくなるから」
「なんですか。それ」
あきれてしまった。
「自由でいてほしい。歌穂ちゃんには」
「自由……?」
「僕と恋愛してほしいっていう、気持ちはある。だけど、そういうことは一切抜きで、そばにいるだけでも、僕は幸せだと思える……気がする」
「今、こうしてるみたいに?」
「そう。あったかいね」
「興奮してる、みたいですけど」
「それはね。歌穂ちゃんだって、同じなんじゃないかな」
図星だった。
「キスだけ。そうしたら、向こうに戻ります」
「うん。いいよ」
言葉が終わるのと同時に、キスをしていた。
ふれるだけのキスだった。沢野さんは口を閉じてて、そこに、あたしを入れてくれるつもりはなさそうだった。
「どうして?」
「自重しただけ」
「ふうん……?」
沢野さんが、腰を動かして、あたしのあそこに、自分のそれをこすりつけるようなしぐさをした。また、声が出そうになった。我慢したけど。
「なんですか……。もう」
「本能に従ってみただけ。戻っていいよ」
腕をほどかれてしまった。あっさりしていた。
自分の布団に戻った。
「ひとりで、しますか?」
「しないよ」
「あたし、見ててもいいですよ」
「面白くないよ。見ても」
「そうかな……」
いつか、見てみたいなと思った。そんなふうに思ったのは、はじめてだった。
「さわのさん」
「うん」
「あたし、ほんとは……」
あなたと、セックスがしたかったの。
言おうとして、やめた。
だって。沢野さんだって、したいはずだった。あたしの、うぬぼれじゃなければ……。
でも、まだしたくないって、言われるんだろう。予想はついた。
沢野さんにすがりつくあたしを、あたしは、見たくないなと思った。自分の姿を、自分で見ることは、はなからできないけど。
「歌穂ちゃん?」
「ううん。あの、明日、物件を見に行くじゃないですか」
「うん」
「いい部屋があったら、お金、出してくれるの?」
「いいよ。もちろん」
もちろん、がついた。ふうっと、意識が飛びそうになった。
「だめですよ。そんなこと、言っちゃ……」
「なんで?」
「だって、あたし……あたしたち」
「うん」
「つき合ってるんでしたっけ」
沢野さんが、ものすごく悲しそうな顔をするのを見てしまった。
「かーほーちゃーんー?」
「え、だって。さっき、『恋愛してほしい』って、言って、でも、否定したじゃないですか。そういうことは抜きでも、いいって」
「つき合ってるよ! 大学の学費も、全部出すよ!」
「えぇ……」
「なんで、『えぇ』なの?」
「だって。そこまでしてもらったら、ふつう、結婚しなきゃいけない案件ですよ。
それどころか、セックスだって……」
沢野さんが、すごくいやそうな顔をした。しかめっつらだった。
「それとこれとは、話が別だから」
「べつ、ですかね」
「別だよ。お願いだから、僕に払わせて」
「あ、はい。よろしくお願いします」
あったかかった。
あたしからも抱きついた。西東さんよりも小柄なはずだけど、すごく大きく感じた。
ごつごつしていて、かたい。男の人の体だった。
首すじに、顔をうめた。沢野さんの匂いがした。シャンプーの香りは、あたしのと同じだけど。
あたしの腰や背中を、沢野さんの手がなでる。声が出そうになった。
「さわっても、いい?」
「よくない」
「……どうして?」
「結婚したくなるから」
「なんですか。それ」
あきれてしまった。
「自由でいてほしい。歌穂ちゃんには」
「自由……?」
「僕と恋愛してほしいっていう、気持ちはある。だけど、そういうことは一切抜きで、そばにいるだけでも、僕は幸せだと思える……気がする」
「今、こうしてるみたいに?」
「そう。あったかいね」
「興奮してる、みたいですけど」
「それはね。歌穂ちゃんだって、同じなんじゃないかな」
図星だった。
「キスだけ。そうしたら、向こうに戻ります」
「うん。いいよ」
言葉が終わるのと同時に、キスをしていた。
ふれるだけのキスだった。沢野さんは口を閉じてて、そこに、あたしを入れてくれるつもりはなさそうだった。
「どうして?」
「自重しただけ」
「ふうん……?」
沢野さんが、腰を動かして、あたしのあそこに、自分のそれをこすりつけるようなしぐさをした。また、声が出そうになった。我慢したけど。
「なんですか……。もう」
「本能に従ってみただけ。戻っていいよ」
腕をほどかれてしまった。あっさりしていた。
自分の布団に戻った。
「ひとりで、しますか?」
「しないよ」
「あたし、見ててもいいですよ」
「面白くないよ。見ても」
「そうかな……」
いつか、見てみたいなと思った。そんなふうに思ったのは、はじめてだった。
「さわのさん」
「うん」
「あたし、ほんとは……」
あなたと、セックスがしたかったの。
言おうとして、やめた。
だって。沢野さんだって、したいはずだった。あたしの、うぬぼれじゃなければ……。
でも、まだしたくないって、言われるんだろう。予想はついた。
沢野さんにすがりつくあたしを、あたしは、見たくないなと思った。自分の姿を、自分で見ることは、はなからできないけど。
「歌穂ちゃん?」
「ううん。あの、明日、物件を見に行くじゃないですか」
「うん」
「いい部屋があったら、お金、出してくれるの?」
「いいよ。もちろん」
もちろん、がついた。ふうっと、意識が飛びそうになった。
「だめですよ。そんなこと、言っちゃ……」
「なんで?」
「だって、あたし……あたしたち」
「うん」
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沢野さんが、ものすごく悲しそうな顔をするのを見てしまった。
「かーほーちゃーんー?」
「え、だって。さっき、『恋愛してほしい』って、言って、でも、否定したじゃないですか。そういうことは抜きでも、いいって」
「つき合ってるよ! 大学の学費も、全部出すよ!」
「えぇ……」
「なんで、『えぇ』なの?」
「だって。そこまでしてもらったら、ふつう、結婚しなきゃいけない案件ですよ。
それどころか、セックスだって……」
沢野さんが、すごくいやそうな顔をした。しかめっつらだった。
「それとこれとは、話が別だから」
「べつ、ですかね」
「別だよ。お願いだから、僕に払わせて」
「あ、はい。よろしくお願いします」
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