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6.バージン・クイーン2

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 翌朝。紘一の部屋から、祐奈をつれて帰ることにした。
 車の中の祐奈は、機嫌がよかった。理由は分かっている。
 後部座席に座る祐奈の横には、歌穂さんが座っていた。

「たのしかったね。歌穂ー」
「うん。楽しかった。
 すいません。あたしまで、送ってもらっちゃって」
「いいよ。それより、向こうに残りたくなかった?
 紘一、さびしそうな顔してたけど」
「いいんです。入りびたったり、したくないんで」
 さっぱりしていた。
 昨日の夜、俺の前で泣いていた姿とは、まるで違っていた。
「そうか。
 大学の合格発表は、いつ?」
「えっとー……。来月の中旬までには、出そろうはずです」
「受かってるといいね。結果が出たら、教えてね」
 祐奈が、歌穂さんに言った。
「うん。もちろん」

 新宿で、歌穂さんと別れた。
 つまらなくなったのか、祐奈は後部座席に座ったまま、寝てしまった。


 マンションの駐車場に着いた。
 外から後部座席に回って、祐奈を起こした。
「着いたよ」
「あ、……はあい」
 俺にもたれかかってくる体を、強く抱きよせた。
「だめ、ここじゃ……」
「分かってる。このまま、つれていってあげるから」
「そんなの、だめです。起きるから、まって……」
「分かった。いいよ」

 五分も経たないうちに、顔がしっかりしてきた。
 自分で歩けそうだと判断して、ドアを開けた。祐奈は、俺の腕に手をかけて、歩きだした。

 部屋に着くと、祐奈は脱衣所に入っていった。
 少ししてから、廊下に出てきた。
 寝室に向かおうとする祐奈を、後ろから追いかけた。
 ベッドに上がって、布団に潜りこもうとしている。眠そうだった。
「疲れた?」
「うん……。すこし。一昨日の夜、遅かったじゃないですか。わたしのせいで」
「レイトショーだけど、終電には間に合う時間だったよ」
「でも、お仕事の後だったのに。ごめんなさい」
「それは、いいから。昨日は、あれから眠れた?」
「ううん。あんまり……」
「どうして?」
「あなたと話してから、ちゃんと寝ようと思って、がんばったんですけど。なかなか、眠れなくて……。
 けっきょく、三時くらいになっちゃって。
 リビングに行って、外を見てました」
「夜景が、きれいだったから?」
「うん……。ううん」
 不意に、ぞわっと鳥肌が立った。紘一の部屋には、ベランダがついている。リビングの窓を開ければ、外に出られるはずだ。
「ベランダに、出たりしてないよな」
「出てないです。出る理由も、ないです」
「よかった」
「きれいだけど、こわくて……。わたし、ほんの二ヶ月くらい前まで……」
 続く言葉を、祐奈は言わなかった。細い肩が、ぶるっと震えるのを見た。
「もう、行けないかも……。沢野さんの、お部屋には」
「そんなに恐かったんだったら、俺を呼んでくれれば」
「それは、考えましたけど。寝室には入らないでって、歌穂から言われてたし。
 もう、寝てるだろうと思って」
「そうか。ごめん。気づかなくて」
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