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6.バージン・クイーン2
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「歌穂と入ったんです」
「……え」
「へんですか?」
「大人の女性二人で、風呂に入るの?」
「はい。だって、歌穂だし」
くらっとした。
「いや、でも」
「わたしたちにとっては、ふつうなんです。施設のお風呂は、共同の、大きい浴槽で、みんなで入るんですよ。シャワー室も、あったけど」
「それは、施設にいた時の話だよな。施設から出ても、一緒に入ってたってこと?」
「はい。いつもじゃないです。『一緒に入る?』って、訊かれた時だけです。わたしから、歌穂を誘ったりも、します」
「そうか。……すごいな。
紘一と風呂に入る自分は、想像できない。旅館の温泉とかなら、二人で入ることもあったけど……」
「ねえ、れいじさん」
「うん?」
「明日は、はやく帰って……」
「うん」
「したいです」
甘い声だった。うわーっとなった。
「いや、ですか」
「違う。なんか、こう……」
「わかりました。言わなくて、いいです。わかったから」
祐奈の顔が赤くなっていた。
「もう、飲んじゃだめですよ。眠れなくなっちゃう、かも」
「そうだな」
「わたし、ねます。おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
ソファーから離れて、客間へと向かう。
祐奈の姿がドアの向こうに消えるまで、じっと見ていた。
紘一の寝室に戻った。
キングサイズのベッドの中央で、大の字になっていた。わざとだなと思った。
右足をどけさせて、ベッドのふちに座った。
「お前、いいかげんにしろよ」
「は? なんで? なにが?」
「ごめん。取り乱した」
「いいけどさ。何があったの?」
「祐奈と歌穂さん。二人で、風呂に入ったんだって」
「えぇえー? ほんとに?」
「本当だよ。祐奈が言ったんだから」
紘一の顔が、だんだん赤くなっていくのを見てしまった。
「やばい……。僕には、言わなくてよかったんじゃないの? 想像しちゃうじゃん……」
「想像するなよ」
「祐奈ちゃんって、素顔の方がかわいいんだよね。歌穂ちゃんは、もともと、がっつりメイクはしない派みたいだけど。
帰ってきた時、二人とも、風呂上がりのすっぴんでさ……。もう、どうにかなりそうだった」
「歌穂さんのことだけど。仕事の時は、もっと濃いメイクをしてたよ」
「そうなの?」
「うん。シャワーすれば、落ちるんだけど。メイクしてから、帰ったりしてた」
「その話、聞きたくない……」
「ごめん。やめよう」
頭を抱えて、背中を丸めていた。落ちこんでいるらしい。
俺に怒らないあたりが、紘一の人の良さを感じさせた。いいやつだな、と思うしかなかった。
「歌穂さんのこと。真剣なんだよな」
「もちろん……」
「不安にさせるなよ。これは、セックスしろっていう意味じゃない」
「分かってるよ。歌穂ちゃんと、話してたよね」
「聞こえてたのか」
「ううん。ただ、歌穂ちゃんが叫んでるところだけは、うっすら聞こえた」
よりによって、そこか。脱力してしまった。
「ごめん」
「『さいてー』とか、『あなたのものじゃない』とか。
『セックスについて、聞くんですか』とか。二人で、何の話をしてたの?」
「お前と歌穂さんの話だよ」
「やっぱり……」
「したくないの?」
「そんなわけ、ないじゃん……。でも、若すぎるし。バージンだとも、思ってなかったから」
「時間をかけようってこと?」
「うん。するのは、かんたんだし。したいとも、思ってるけど。
それだけじゃないなとも、思ってる……」
「紘一の彼女と、ちゃんと話したことなんて、なかったから。
すごく変な気分だよ」
「わかる。僕も、祐奈ちゃんと会うと、どきどきする。これは、変な意味じゃないよ」
「うん。分かるよ」
「……え」
「へんですか?」
「大人の女性二人で、風呂に入るの?」
「はい。だって、歌穂だし」
くらっとした。
「いや、でも」
「わたしたちにとっては、ふつうなんです。施設のお風呂は、共同の、大きい浴槽で、みんなで入るんですよ。シャワー室も、あったけど」
「それは、施設にいた時の話だよな。施設から出ても、一緒に入ってたってこと?」
「はい。いつもじゃないです。『一緒に入る?』って、訊かれた時だけです。わたしから、歌穂を誘ったりも、します」
「そうか。……すごいな。
紘一と風呂に入る自分は、想像できない。旅館の温泉とかなら、二人で入ることもあったけど……」
「ねえ、れいじさん」
「うん?」
「明日は、はやく帰って……」
「うん」
「したいです」
甘い声だった。うわーっとなった。
「いや、ですか」
「違う。なんか、こう……」
「わかりました。言わなくて、いいです。わかったから」
祐奈の顔が赤くなっていた。
「もう、飲んじゃだめですよ。眠れなくなっちゃう、かも」
「そうだな」
「わたし、ねます。おやすみなさい」
「うん。おやすみ」
ソファーから離れて、客間へと向かう。
祐奈の姿がドアの向こうに消えるまで、じっと見ていた。
紘一の寝室に戻った。
キングサイズのベッドの中央で、大の字になっていた。わざとだなと思った。
右足をどけさせて、ベッドのふちに座った。
「お前、いいかげんにしろよ」
「は? なんで? なにが?」
「ごめん。取り乱した」
「いいけどさ。何があったの?」
「祐奈と歌穂さん。二人で、風呂に入ったんだって」
「えぇえー? ほんとに?」
「本当だよ。祐奈が言ったんだから」
紘一の顔が、だんだん赤くなっていくのを見てしまった。
「やばい……。僕には、言わなくてよかったんじゃないの? 想像しちゃうじゃん……」
「想像するなよ」
「祐奈ちゃんって、素顔の方がかわいいんだよね。歌穂ちゃんは、もともと、がっつりメイクはしない派みたいだけど。
帰ってきた時、二人とも、風呂上がりのすっぴんでさ……。もう、どうにかなりそうだった」
「歌穂さんのことだけど。仕事の時は、もっと濃いメイクをしてたよ」
「そうなの?」
「うん。シャワーすれば、落ちるんだけど。メイクしてから、帰ったりしてた」
「その話、聞きたくない……」
「ごめん。やめよう」
頭を抱えて、背中を丸めていた。落ちこんでいるらしい。
俺に怒らないあたりが、紘一の人の良さを感じさせた。いいやつだな、と思うしかなかった。
「歌穂さんのこと。真剣なんだよな」
「もちろん……」
「不安にさせるなよ。これは、セックスしろっていう意味じゃない」
「分かってるよ。歌穂ちゃんと、話してたよね」
「聞こえてたのか」
「ううん。ただ、歌穂ちゃんが叫んでるところだけは、うっすら聞こえた」
よりによって、そこか。脱力してしまった。
「ごめん」
「『さいてー』とか、『あなたのものじゃない』とか。
『セックスについて、聞くんですか』とか。二人で、何の話をしてたの?」
「お前と歌穂さんの話だよ」
「やっぱり……」
「したくないの?」
「そんなわけ、ないじゃん……。でも、若すぎるし。バージンだとも、思ってなかったから」
「時間をかけようってこと?」
「うん。するのは、かんたんだし。したいとも、思ってるけど。
それだけじゃないなとも、思ってる……」
「紘一の彼女と、ちゃんと話したことなんて、なかったから。
すごく変な気分だよ」
「わかる。僕も、祐奈ちゃんと会うと、どきどきする。これは、変な意味じゃないよ」
「うん。分かるよ」
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