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4.スイート・キング2

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「君を送ったら、向こうに泊まる?」
「あ、はい。わかんない。歌穂の、様子によっては」
「そうか」
「いやですか……?」
「うーん。年末年始は、ずっと一緒にいると思ってたから。少しだけ、がっかりしてる」
「ごめんなさい……。なるべく、行きっぱなしにならないように、します」
「いや。いいよ。歌穂さんの人生に関わることだから。後悔のないように、してくれれば」
 ぶわっと、涙と、感謝の気持ちがわいてきた。
「なんなの? 人生何周目ですか? 悟っちゃってるじゃないですか!」
「悟ってない。当たり前のことしか、言ってない」
「泣きそうです。すき。だいすき……」
 言ってる途中から、礼慈さんの顔が、どんどん赤くなっていった。
 がしっと、両肩を手でつかまれて、びっくりした。
「あっ、なに……?」
「やっぱり、行かせたくない。俺も行っていい?」
「悟ってないぃー……」
「ごめん」
「わたしと、歌穂と、あなたのセットは、だめです……。だめな、感じがします」
「そうだな」
「とにかく、電話します。ビデオ通話とかで、話すこともできるし……。
 歌穂は、たぶん、パソコンは持ってないから。礼慈さんのノートパソコンで、調べてもらったり、するかも」
「いいよ。持っていってもいい」
「ありがとう……」

 結局、歌穂と相談して、歌穂のアパートに行くことにした。
 ノートパソコンは、借りていった。wi-fiの機械も、礼慈さんがつけてくれた。
 車で、新宿にある歌穂のアパートの前まで、送ってくれた。
 古めかしいアパートの外観を見て、礼慈さんは、びっくりしていた。でも、なにも言わなかった。
 「いってきます」と言ったら、「いってらっしゃい」と言ってくれた。
 運転席の方に、体を乗りだして、頬にキスをした。して、逃げてきた。
 礼慈さんが「あぁー」と声を上げて、ハンドルに上半身をかぶせて、ぐったりしたけど、それは見なかったことにした。ごめんなさい……。

 アパートに着いたら、すぐに、歌穂から、ものすごい勢いで、なにがあったのかを聞かされた。
 大変だったらしい。でも、幸せそうだった。
 数学が苦手な歌穂に、どの科目で受験したいかを聞いた。それと、地域はどこかいいのか、とか。
 高校生の頃は、ちゃんと勉強していたのを知ってるので、そんなに心配はしてなかった。問題は、忘れてないかどうか……。そのことは、歌穂も気にしていた。

 夕方になる頃には、歌穂が受験する大学が決まった。
 三つ、受けることになった。

「春から、大学生かも」
「いいと思う。受かったら、お祝いさせてね」
「うん……。ありがとう」
 幼い顔になった歌穂が、お礼を言ってくれた。きゅーんとした。
「沢野さんの『運命の輪』は、歌穂だったのかも」
「まさか。あぁ……でも、そうかもしれない。
 あの人、あたしのことが好きなんだって。先週の日曜まで、会ったこともなかったのに」
「歌穂ー。
 自分のこと、大事にしてね。かんたんに、あげなくていいんだからね」
「あたしは、物じゃないし。沢野さんは、急いでない……みたいだよ」
「イケメンの余裕、かなあ?」
「だろうね。もてそうだし」
「それは、わかる……」
「西東さんもだけどね。こっちに来てて、大丈夫?
 もう、帰ってくれていいから。ありがとう」
「そう? じゃあ、うん……。
 夕ごはんとか、作っておく? 歌穂、疲れたでしょ」
「いいよ。気持ちだけ、もらっとく。
 電車で帰るの?」
「あ、どうしよう……。礼慈さんに、聞いてみる。
 迎えに、来てもらえるかも」
「愛されてるねー」
「う、うん」
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